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今がチャンスだ!売り抜けろ!

たこちゅう流用台紙

「たこちゅう」は、1976年〜1977年に発売されたロッテのチョコレート菓子である。

細長いビニールのパッケージの中に、紙製の箱に入ってプラスチック製のオマケが2個付いていた。

純正たこちゅう

純正たこちゅう(太目)

純正たこちゅう(型破損タイプ)

純正たこちゅう(最後期型)

当時は大流行し、品薄のオリジナルを補うように、多くのパチモンが流通した。

当時の子供達も、パチモンであることを認識した上で、駄菓子屋で安く沢山買えるパチモンを好んだ。

中小の駄玩具製造業者が、純製品を、さらには他社のパチモンを真似て、多くの種類のパチモンが作られた。

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「たこちゅう」は爆発的に流行したがその人気の衰えも早かったようで、販売期間が1年程と短くかった。

純正品が無くなるとパチモンも人気を失ったもののようで、アタリ籤やガチャに転用され、

すぐに姿を消してしまったようである。

自転車に乗って、近所の駄菓子屋に聞いてまわったり、観光地では古くからありそうなお土産屋で

売れ残りを探したりしたが、全く見つけることができなかった。

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しかし、インターネットができたことで状況は一変した。

某クションで当時から奇跡的に残っていたものが出品されたり、

懐かしい昭和のアイテムを扱うショップで売りにだされたりすることも出てきた。

特に、廃業した玩具店や駄菓子屋のデッドストックが、全国の業者やコレクターから出品されることで、

パッケージや販売メーカーの情報も徐々に得られるようになってきた。

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たこちゅうのパチモンには、多くの系統・種類が見つかっており、9系統、20種類以上が確認されている。

パチモンタコチュウの分類の詳細は、

タコチュウ分類一覧表」を参照されたい。

様々な種類のパチモン

写真の後列は大型のパチモンで、左からH型、H2型、H3型、I型、J型、J4型、J2型、J3型、M型、K型である。

前列はC型、C2型、E型、A型、A2型、D型、B型、P型、B2型、F型、O型、G型、L型である。

これらのパチモンは、多くは大小2種類で一つの系統をなしており、様々な販売形態とパッケージがわかってきてる。

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<パチモンタコチュウの販売形態>

UFO消しゴマ(L・G型)

スペースインベーダー(K・L型)

UFO軍団(G型)

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たこちゅうセット(K・L・G型)

たこちゅうセット(K・L・G型)

たこちゅうセット小台紙(K・L・G型)

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キッスだこ(H・C型)

商品名なし(H・C型)

商品名なし(H・C型)

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タコチュー(C2型)

NEW FASHION ACCESSARY(B型)

たこちゅう(J・B型)

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商品名なし(J・P型)

たこちゅう(J3・O型)

チュチュたこちゃん チュ!(J2・F型)

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チュチュたこ(J2・F型)

たこチュー(M型)

たこチュー(M型)

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明治製菓の「ピコタン」(1974年)や「明治合体チョコボール」(1975年)のパチモンは、

ほとんどが商品名に「ブロック」という名称が使われている。

それに対して「たこちゅう」のパチモンは、「たこ」や「ちゅ」という語がつかわれて、オリジナルの商品名に近くなっている。

専用のプラスチックケースに入り、名前の入ったシールが貼られているものが多い。

また、大台紙にホチキス留めされた、タグ付き袋入りや、小台紙に袋入りのものも見つかっている。

他にも引き籤のアタリや、ハズレの景品として使われたものも見つかっている。

当時の記憶では、ガチャガチャに入っていたことも覚えている。

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当時、パチモン駄玩具を最も手にいれやすかったのは、近所の駄菓子屋であった。

狭い店の中はさまざまな駄菓子や駄玩具が並び、周りの壁には台紙にホチキス留めされた小袋が吊るされてあった。

ピコタンや明治合体チョコボールにも、このような販売形態のものが多く見られた。

1袋は50円で、大きな台紙からむしり取って買っていた。

大台紙に小袋入りの例

人間ブロック

(顔ありC型)

人形ブロック

(顔なしD型)

合体基地

(A型)

ミニUFO遭遇消ゴム

(C-2型)

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このような販売形態は、タコチュウのパチモンでも見られた。

パチモンH・C型の販売形態

入っていたのはH(大型)・C(小型)と命名したタイプであった。

他のタイプのパチモンとちがって、このタイプは顔が彫り込みになっていた。

パチモンH・C型

ロッテの純正は、同様に目が彫り込みになっている。

純正前期型

他のパチモンはどれも目がエンボス(線が盛り上がっている)になっているが、

パチモンH・C型だけが、純正と同様に彫り込みになっており、デザインも非常に近い。

左がエンボス、右側が彫り込み

純正では眠り目と泣き目が別れていたが、パチモンH・C型では「泣き眠り目」と命名した

両者の特徴が混ざっているデザインになっている。

このデザインは、純正たこちゅうにスッポリダコが追加された、純正としては最も後期のタイプの箱のイラストに、

同じものを見ることができる。

純正最後期緑箱A型、パチタコH型泣き眠り目

純正たこちゅうのパッケージが確認されていないので、

たこちゅうパッケージに、このような顔デザインがあったかどうかは不明である。

パチモンの泣き眠り目のデザインが、この箱から作られたものとすると、

パチモンタコチュウが作られはじめたのは、たこちゅうの人気に翳りが出てからと言うことになり、

パチモンに多くの種類があることから推測される当時のパチモン人気と矛盾する。

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最初の出現が何時頃であったかは置いておいて、

パチモンたこちゅうに広く見られるこの泣き眠り目を比較してみる。

泣き眠り目の例(後列左からJ型、H型、前列左からA型、A2型、B型、C型、D型)

写真からもわかるように、H・C型以外のパチモンはエンボスになっている。

純正は、スッポリタイプと名付けた脚吸盤がキャップ状になったタイプを追加した際、

最晩期型と命名したタイプでは眠り目が省略され、泣き目だけになって顔が4種類になった。

前述の純正たこちゅうの箱に泣き眠り目が描かれたのが、この最晩期型の出現時である。

後列が純正前期の5種類、前列が最後期型の4種類

純正で顔の種類が4種類に減ったのは、泣き眠り目にまとめて4種類になったH・C型と類似している。

しかし、だからといって最晩期型の発売時期に、このH・C型が作られたとは思えない。

H・C型には、引き籤のアタリとして扱われていたと思われる「キッスだこ」いう、箱入りで販売されていた例がある。

「赤玉(当り)おすきな「タコ」を2コとって下さい」と箱に書かれている。

後に、引き籤のハズレとしてパチモンタコチュウが使われている例も見つかっているが、

少なくともこのH・C型は、パチモンと言えども人気があり、アタリとして尊重されていたことを示すと思われる。

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パチモンタコチュウは、様々な種類が知られているが、顔等のデザインが純正により近いものが古く、

顔の種類が減った方が純正の影響が少ないものとして、より後発のタイプと考えている。

純正は目のデザインが低く彫り込まれているが、

多くのパチモンはデザインが盛り上げられている。これをエンボスされていると称する。

C・H型は、純正と同様に彫り込みになっている。

しかし、前述の様に純正の泣き目と眠り目は、泣き眠り目と言う形に統合されてしまった。

これに対して泣き目と眠り目が別れているパチモンも見つかっている。

K型とL型と命名したタイプである。

上段左から純正太目泣き目、眠り目、純正後期泣き目、眠り目、純正最後期泣き目

下段左からK型眠り目、L型泣き目、眠り目、H型泣き眠り目、C型泣き眠り目

K型・L型は、H型をはじめとする他の大型パチモンよりも小さいが、純正サイズより大きい独自のサイズである。

同じシリーズに純正と同じサイズの小型のものがあり、これをG型と命名した。

顔は、エンボスではあるが普通目のデザインがある。そして純正にない笑った目のタイプもある。

素材は水に浮くもので、純正の初期型と似ている。

大きなK型は普通目の他に怒り目タイプもあり、笑い目以外はどれも純正のデザインを意識したものになっている。

左からK型怒り目、眠り目、L型眠り目、泣き目

このK・L・G型は、パッケージの調査からマルコー産業の商品であることがわかっている。

「たこちゅうセット」というシールの貼られた、りんご型のケースに入ったものには、

「マルコー」、「オリジナル」といった文字の書かれた帯が封入されていた。

ケースの中にある帯

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同じシリーズと思われる帽子型のケースに入ったものが見つかっているが、

これも「たこちゅうセット」とというシールが貼られていた。

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これらのケースに貼られたベレー帽を被った泣き目と両目を瞑っているリボンをつけたタコのイラストが、

先に紹介したH・C型の大台紙にも見つかった。

純正のパッケージの詳細がわかっていないため、このモチーフが純正の初期のパッケージにあったかどうかは未確認である。

しかし、もし、純正の模倣で無かった場合、マルコー産業のパッケージを参考にして、

H・C型のパッケージが作られたと考えられる。

左からK・L・G型シール、H・C型系大台紙(部分)

このことから、K・L・G型からH・C型が派生したように派生図を変更した。

G・K・L型系列をH・C型の上位に修正

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G・K・L型を一応上位としたがそこからの派生は確認できておらず、中途半端な大きさのK・L型は、他に類似するサイズが見つかっていない。

それよりも、純正のデザインにはより近いC・H型のほうが、多くの派生型と思われるものが見つかっている。

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先に紹介した泣き眠り目は、他にもA・A2型、B・J型、D・I型でも見つかっている。

これらのタイプでは、顔のデザインは全てエンボス(線が)盛り上がっている。

泣き眠り目の例(後列左からJ型、H型、前列左からA型、A2型、B型、C型、D型)

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A・A2型は発見例が少なく、当時はA型が1個だけ、たしかガチャガチャで入手したものがあるに過ぎなかった。

脚と口の吸盤は肉圧で深く吸着力が非常に高かった。

そのA型は泣き眠り目で、目を横切るラインの傾きは急で、ほぼ45°にもなるものであった。

某クションで同じような顔のパチモンが見つかった。

吸盤は当時からあるものよりも扁平で、本体は直径が若干小さい。

同時に普通目の型破損なのか、白目なのか、2種類あることがわかった。これをA2型と命名した。

左からA型、A2型

後述のB・J型も泣き眠り目と普通目しかなく、エンボスの泣き眠り目であることから、

A型系はB・J型のパチモンかと思ったが、その後、A型にも普通目とウインクが確認された。

こちらはA2型と違い、瞳が描かれている。

B・J型よりも顔の数が増えたことから、B・J型からの派生では無く、系統的にはC・H型の下にあたるものとした。

左から当時持っていたA型、新しく入手した3個のA型

A型とA2型は近い系統であると思われていたが、A型にも赤の白目タイプが見つかった。

このためA2型で見られた顔のタイプは両方ともA型で確認されたため、

A2型はA型の吸盤の形が違う型違いであることがわかった。

左から3個目と5個目がA2型

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当時、大型でエンボスの泣き眠り目のパチタコがあり、これをJ型と称することとした。

脚と口の付け根はほぼ同じ長さで、肉圧で吸着力の高い吸盤が特徴的であった。

吸着力の強さからA型と同じ系列化と思われたが、後に普通目も見つかり、

顔の種類数と色の特徴から、脚吸盤の付け根が長く薄い吸盤を持つB型と同じ系列であることがわかった。

泣き眠り目の横線も水平に近く、この点も非常によく似ている。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

某クションでパチモンをまとめて入手した際、

このB型とJ型と同じ形状的特徴を持った顔の模様の無いものが見つかり、

このことからもB型とJ型は同じ系列であることが確かめられた。

この顔の無いタイプをB2型、J4型と称することにした。

左からB型正面・側面、B2型正面・側面

左からJ型正面・側面、J型正面・側面

このタイプは、「たこちゅう」という商品名がある小台紙が入ったプラケース入りが見つかった。

小台紙にはハチマキと扇子を持つ大ダコが描かれている。

ハチマキはロッテの純正の最後期にスッポリ型が追加された時期のパッケージに見られるようである。

商品名の右に「W」に顔のロゴが描かれている。

興味深いのは、この「Wに顔」のロゴが入っている、C・H型と非常によく似た小台紙が見つかっていることである。

左側が「Wに顔」のロゴの入った小台紙、右側がC・H型系列の小台紙

Wの入った小台紙は、C・H型の小台紙を下敷きに、かなり本気でトレースしたかと思われる出来で、

影やハイライトの位置もかなり正確に模倣している。

小台紙と一緒に袋に入っていたのは、パチタコのJ型と、吸盤の付け根が極端に短い小型の新種パチモンであった。

小型の新種には、J型とB型にしかない、蛍光ピンクがあった。

この色は他のパチタコにはなく、J型とB型が同じ系統であると確信するに至った独特の色調で、

これによってJ・B型には、小さいサイズが2種類あることがわかった。

この新種のパチタコをP型と命名した。

顔は普通目の1種類しか無い。

以前、白いJ型が見つかっているが、P型と近いサンプルであると思われる。

この「W」が入った小台紙は、今の所大きな台紙に付いた状態では見つかっていない。

しかし、形態からも大台紙にホチキス留めされて売られていたものと思われる。

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この「W」が入った小台紙は、本体が立方体で吸盤が3つ付いているものが入っている例も見つかった。

C・H型の大台紙に左上の一つだけが「W」ロゴのある小台紙がホチキス留めされている。

他の小台紙が横向きに大きなホチキスで留められているが、

「W」の小台紙のみは、普通サイズのホチキスが縦に留めてあった。

つまり、もともとあったC・H型の小台紙を剥がして、後から3吸盤の入った「W」ロゴの小台紙を追加したと思われる。

中には3吸盤が8個入っている。先にJ・B・P型系列に見られた蛍光ピンクが入っており、

この蛍光ピンクは「W」に顔のロゴのメーカーに独自のものであったと考えられる。

J・B・P型系列と3吸盤の大台紙は見つかっていないが、C・H型の大台紙を真似していた可能性がある。

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他にも大台紙に、タグ付き袋入りのパチタコも見つかった。

商品名は「たこチュー」である。たこちゅうを微妙に変えて「チュー」と延ばしたとことがあざとい感じである。

この手の大台紙には12袋付いているのが一般的だが、

この台紙は30袋付きである。価格はこの頃の袋入り駄玩具の平均的な価格である50円と書かれている。

大台紙のタイトル部分には、ハチマキとリボンを付けた大ダコが描かれている。

中身は本体が楕円形で、脚吸盤は円錐形で、純正にも見られる放射状の足突起がエンボスされている。

口吸盤も吸着力が低く、直径も小さい。非常にラフな出来のパチモンであると言える。顔は普通目が1種類である。

このタイプをパチタコM型と命名した。

色は緑、黄色、赤、黒の4種類が一つずつ入っている。

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大台紙が見つかっているパチモンには、小袋ではなく、プラスチックのブリスターパックに入ったものも見つかっている。

チュチュ たこちゃん チュ!

商品名は「チュチュ たこちゃん チュ!」で、素材は、たこちゅうプラケースに近い。

色も、小型の青が1個だけ見つかったが、緑、黄色、赤と、そのバリエーションで、J・B型系に近い。

顔は種類が多く、非常にラフな作りで、オリジナルのたこちゅうとあまり似ていない。

当初はJ型と近い種類かと思われたので、大きなものをJ2型、小さなものをF型と命名した。

後列がJ2型、前列がF型

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商品名の「チュチュ」がどこから来たのか不明だが、オリジナルに近いデザインのH・C型系列の

柔らかい素材のC型(C2型と命名した)が入ったプラケース入りに「タコチュー」という商品があり、

そのシールに「チュ」と書かれている。

小ダコが吸付いている擬音を表すと思われる「CHU!」を、商品名と読み間違えれば、

「CHU!CHU! タコチュー CHU!CHU!」となって、「チュチュ たこちゃん チュ!」に近くなる。

このことから、J2・F型は、より後発のパチモンであると考える。

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先に紹介したいびつなM型の商品名「たこチュー」は、パッケージのデザインや、顔デザインが一つしか無いこと等から、

H・Cより後発のパチモンであると考えることができる。

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たこちゅうという商品名を用いたプラケース入りのパチモンには、顔にWのロゴの入った小台紙が用いられ、J型とB型が入っていた。

同じ『Wに顔』のロゴが入った小台紙には、J型と新たに見つかったP型と命名した小型パチモンが入っているのも確認されている。

このことから、J型とB型、P型は、同じメーカーのパチモンであると考えられる。

左からJ型、B型、P型

顔のデザインはJ型とB型が普通目と泣き眠り目の2種類で、P型が普通目だけである。

同じ商品名のタグ付き袋入りが見つかった。

商品名は「たこちゅう」で、中には大型、小型のパチタコが2個ずつ入っていた。

この種類は当時は見たことが無かったもので、素材はJ・B型に近く、色は緑、黄色、赤の3色であった。

顔の種類はどちらも普通目のみである。吸盤の付け根は短く、長さは口も脚もほぼ等しい。

大きなものをJ3型、小型のものをO型と命名した。

J3型は吸盤も大きく、本体の球体はJ型に比較して精度が甘いようである。

顔のデザインは二重丸でラフな造形である。

左からJ型、J3型

O型は、J・B型系のP型と比較すると、ラフな造形であるが、顔デザインは普通目の外枠の上部がやや広くなり、

瞳が下方に寄っているところが良く似ている。

左からP型、O型

小台紙が見つかり、商品名がJ・B型のプラケース入りと同じ「たこちゅう」という名称であったことがわかった。

色はJ・B・P型、J2・F型系と似て、黄緑、赤、黄色である。

顔のデザインはJ・B型が、普通目と泣き眠り目の2種類、P型が普通目の1種類で、

J3・O型は普通目の1種類しか無い。

小型のO型は、P型に似ている。

以上の事から、J3・O型はJ・B・P型に強く影響を受けたパチモンであると思われる。

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平たく言うと、J3・O型は、パチモンのJ・B・P型のパチモンであると言える。

J・P型の小台紙が、H・C型の小台紙に酷似していたので、パチモンのパチモンであると指摘した。

とすると、J3・O型はパチモン(H・C型)のパチモン(J・P型)のパチモン(J3・O型)であるということができる。

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パチモンタコチュウは、ロッテの純正たこちゅうの顔により近いものがオリジナルに近いと考えることにした。

顔の種類数が、純正の5種類に近いものをオリジナルに近いと考える。

純正のパッケージの詳細がわかっていないので断定はできないが、

泣き目と、両目を瞑ったリボン付きのタコがキスしているモチーフや、

扇子を持ったり、ハチマキをしたりした大ダコのデザインから、

パチモンタコチュウのパッケージのデザインは、共通点と言うか、連続性を見い出すことができる。

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泣き目と、両目を瞑ったリボン付きのタコがキスしているモチーフを例に取ると、

純正最後期のスッポリA型系の箱に線画で描かれた瞑った目のコダコと、泣き眠り目コダコが見られる。

純正最後期のスッポリ型が追加された際、同じタイミングで、

今まであった後期型、後期太目型にもスッポリダコが追加された。

最後期スッポリA型系列(青箱A型) 最後期スッポリA型系列(緑箱A型)
最後期スッポリA型系列以外(青箱B型) 最後期スッポリA型系列以外(緑箱B型)

その際の箱絵には、泣き眠り目の横線が省略されており、パチモンA2型の顔に同様なものが見られる。

純正最後期スッポリA型系の箱

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純正最後期スッポリB型系の箱

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K・L・G型シール

K・L・G型りんごケース内台紙

H・C型小台紙

H・C型大台紙

C2型タコチューシール

J・P型

J・B型

J2・F型

J3・O型

M型

純正最後期スッポリA型系の箱のイラストに見られる目を瞑った小ダコは、左目が瞑っている。

純正のウインクは右目が瞑っているので、イラストの小ダコは両目を瞑っていることになる。

パチモンのK・L・G型やH・C型、J・B・P型、F・J2型でも両方瞑っている。

J3・O型は純正最後期スッポリA型系の箱と同じ向きだが、目が普通目になっている。

この点に注目すると、作りがラフで、影響がもっとも少ないと思われるM型以外は、

純正の箱デザインに影響を受けていることが見て取れる。

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小台紙に見られる「大ダコに付く小ダコ」や「3連小ダコの正面を向いた怒り目」に注目すると、

H・C型→J・P型→J・B型→J3・O型→M型と、段々と変化が見られることがわかる。

このような順序でデザインを流用したと断言できないが、純正の顔デザインを模したものから、

段々と独自解釈が付加されて、オリジナルから遠くなっていった経過がわかるようである。

大ダコに付く小ダコ 3連小ダコ
H・C型
J・P型
J・B型
J3・O型
M型

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で、ここからが本題なのであるが・・・。

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パチモン(H・C型)のパチモン(J・P型)のパチモン(J3・O型)と紹介した、J3・O型の

大台紙付き完ピンが発見された。

商品名は「たこちゅう」。

「どこでもすいつく たのしくすいつく」のコピーが書かれている。

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ハチマキをした大ダコの他に、額にしわのある中ダコが2匹描かれている。

海藻が描かれているが、これはH・C型の大小の台紙や、H・C型のデザインを踏襲したJ・P型の小台紙、J・B型のケース内小台紙、

H・C型の台紙デザインを意識したと思われるJ2・F型の大台紙、かなりラフだが他のパチモンのデザインを取り入れたと思われるM型と、

マルコー産業製のK・L・G型以外のパチタコのパッケージに共通に見られるモチーフである。

しかし、葉脈は細かく、独自の解釈を追加しているのがわかる。

大台紙の商品名部分

たこちゅうの行列は、H・C型やJ2・F型の大台紙でも見られる。

普通目や、両方瞑るか笑うかしている小ダコにはまつげがある。

開いている丸い目にまつげを付けているのは、この大台紙にしか見られない特徴で、

ここでもタコチュウの顔デザインの独自解釈が見られる。

メーカー名やロゴマークは見られない。

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驚くべきは、この大台紙の商品名部分が、ペラ紙を普通サイズのホチキスで留めてあることである。

このタイプの大台紙は、某クションで短期間に4枚が出品され、そのうち、12袋付きの完ピンと6袋付きのものを落札できた。

他の2枚は12袋付きだったが、下の台紙がどんなものかはわからなかったが、

タイトル部分がホチキス留めされているように見えた。

大台紙の商品名部分

袋入りの小台紙は折り曲げられビニール袋の上部を挟むように普通サイズのホチキスで横に留められている。(緑色の矢印)

その上で大台紙に大型のホチキスで縦に留められている。(黒の矢印)

小台紙のホチキス留めの例

大台紙の裏面を確認したが、小台紙が留められた大型のホチキスの穴しか見られない。

つまり、商品が売り切れた台紙を再利用したのでは無く、未使用の他の商品の大台紙に、

タイトル部分のペラ紙をホチキス留めして、大型のホチキスでわざわざ「たこちゅう」の小台紙を固定したことがわかる。 

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大台紙に後付けされた、商品名が書かれた紙を取り除いてみた。

下からは「安全ブーメラン」という商品名が現われた。

左上には、「丸に満」のメーカーロゴが見つかった。

このロゴは、タコチュウやピコタン、明治合体チョコボールのパチモンには見られない。

右下には、STマークが入っていた。

合格番号の「B」は大阪玩具事業協同組合の所属を表すと思われる。

「312」はメーカーに付番された番号で、どの会社を示すものかは不明である。

4桁目の「0」は、昭和の下一桁を表わす。

この番号制が始まったのは、昭和46(1971)年で、昭和63(1988)年まで継続されたので、

「0」付くのは、昭和50(1975)年と、昭和60(1985)年の2回になる。

たこちゅうの販売が昭和51(1976)年なので、その前に印刷されてあった大台紙を流用したと思われるので、

このSTマークの「0」が表すのは、昭和50(1975)年を表すと思われる。

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もう一枚の大台紙には、「スコアゲーム」の台紙が流用されていた。

裏面を見ると、やはり大きなホチキスの跡は12個しか無く、無傷の台紙にタコチュウの小台紙を留めたことがわかる。

大台紙の裏面には「100」と記された値札シールが貼ってあった。

これはスコアゲームが複数パーツの機械的な機構を持つ、多少高価な駄玩具であった可能性がある。

小台紙やタグ付き袋利の場合、多くのパチ駄玩具は50円なので、

小台紙に大小2個のたこちゅうしか入っていないで、100円は高すぎる。

右上には「丸に満」のロゴマークがあった。

違った駄玩具の大台紙を流用したものだが、両方とも「丸に満」のロゴマークが見られたと言うことは、

J3・O型は、この「丸に満」のロゴのメーカーの製品である可能性が高いと思われる。

ただ、「たこちゅう」のペラ紙に「丸に満」のメーカーロゴが見当たらないのは不思議である。

駄玩具は製造メーカーと販売メーカーが違う場合があるそうなので、断定的なことは言えないが、

J3・O型の「たこちゅう」は、他の駄玩具メーカーのパチモンを参考にしつつ、

大台紙までは作らずに早急に安価に製品化したものではないかとも考えられる。

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J3・O型の「たこちゅう」のメーカーについて、興味深いサンプルが発見された。

このJ3・O型の大台紙をまた一つ入手した。

先に紹介したものと同様、「ブーメラン」の大台紙に、

コピーした「たこちゅう」と書かれたペラ紙をホチキス留めしてある。

大台紙にはJ3・O型が各2個ずつ入った小台紙がホチキス留め去れている。

12袋のうち9袋が残り、右側にはホチキスの跡が見られる。

小台紙には、「チャームリング」とかかれて、他商品のものを流用したらしいことがわかる。

上部には「丸に満」のロゴが見られる。

大きさは「たこちゅう」の小台紙とほぼ同じで、

2ケ所を折って蓋にしてホチキス留めしているところも同様である。

チャームリングとは、当事見かけたことがあるが、透明なプラスチック製で、

中央の丸い部分に2本ずつの脚が付いており、これを嵌めあわせて長く繋ぎ、

ネックレスやブレスレットにする女児用の駄玩具であった。

プラケース入りで観光地のお土産屋などに置いてあるのを見た記憶がある。

「たこちゅう」の大台紙に貼ったペラ紙や小台紙に「丸に満」のロゴが無かったため、

駄菓子屋等で売りきった大台紙を流用した可能性もあったが、

今回、ロゴの入った小台紙が使われており、そのサイズが「たこちゅう」と同じであったことから、

J3・O型が「丸に満」のメーカーの商品でったことが、一層確かになったと思われる。

そして、チャームリングとたこちゅうが同じメーカーの製品である決定的な証拠が見つかった。

チャームリングの台紙にタコチュウが入っていたものが見つかったが、

逆に、たこちゅうの小台紙にチャームリングが入っているサンプルを発見した。

フリマサイトでたまたまヒットし、入手した。

たこちゅうの小台紙にホチキス留めされたビニール袋に、チャームリングが

緑5個、青1個、黄色3個、赤1個、白4個、ピンク9個、オレンジ4個の合計27個が入っている。

チャームリングは球体に足が4本生えているのはイラストとも、当時見たものとデザインが似ている。

しかし、当時見たものはクリア素材で本体の表面には細かなカット面が掘られていたが、

今回見つかったものはクリア素材ではなく、球体の本体には模様・刻印が見られない。

チャームリングのデザインが、大手メーカーからの流出かどうかは不明である。

少なくとも、駄玩具メーカーから出ていたクリア版のパチモンの様に見える。

J3・O型・O2型とチャームリングは、どちらもマルに満のロゴを持つ会社の商品であったことがわかった。

この大台紙の相次ぐ発見でO型のサンプルがまとまった。

詳細に検討した結果、先に述べた脚吸盤の付け根がほとんどないタイプが、少数ながら見つかった。

左からO型、脚吸盤の付け根が短いタイプ

脚吸盤がほとんない分、全長が低くなっている。顔は普通目であるが、O型は目の枠の中央から若干上部に瞳があるが、

脚吸盤の短いタイプは、目の枠の下部に寄っている。

脚吸盤が極端に短いところ、瞳が下部にあるところは、J型・B型・P型系のP型に特によく似ている。

左から脚吸盤の付け根が短いO型、P型

側面形状を比べると、口吸盤の付け根がP型よりも長いことが確認できる。

左から脚吸盤の付け根が短いO型、P型

この形状の特長からも、脚吸盤の付け根が短いO型は、J型・B型・P型系の影響を受けている事が伺われる。

この脚吸盤の付け根が短いO型をO2型と命名し、別種とすることとした。

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ロッテの「たこちゅう」は昭和51(1976)年から昭和52(1977)年まで販売されたことがわかっている。

この短期間に、純正もスッポリ型を追加する等、慌ただしい変化があったわけだが、

それにも増して、パチモン駄玩具メーカーは、同業他社の動向に目を配り、

デザインを取り入れながら、人気のあるウチに売り抜こうと工夫をこらしたことが、今回の大台紙流用のパチモンからもわかった。

パチモンのパッケージから見た派生の経路は、

たこちゅう小台紙を参照されたい。

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ロッテの「たこちゅう」の販売終了からも40年以上が経った現在、

そのパチモンのメーカーがどうのこうのと、七面倒なことを言っても、誰もわからないに違い無い。

しかし、そのパッケージや顔デザインを詳細に見てみると、

「たこちゅう」の人気にあやかって、少しでも多くの駄玩具を販売しようと、

不器用なうちにもオリジナルを模し、独自の解釈を加えてパチモンを売ろうと努力した、

駄玩具メーカーのおっさんたちの真剣な眼差しが、未だに想像できるのである。

今ではちょっと似ててもネットで叩かれ、謝罪を強要されるようになった。

それはそれで権利を護るために必要なことではあるが、

日本でも緩い時代もあったんだと、懐かしい気がしないでもない。

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何やってンでしょうねぇ。

ラジオ深夜便も終わっちゃいましたよ。

パチモンなんかどうでもいいじゃないか、っておもうでしょ?

その通り。

どうでもいいから面白いんですよ。

わっかるかなぁ、わっかんねぇだろうなぁ。
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