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たこちゅうに似た言葉で

たこチュー

「たこちゅう」はロッテが発売したチョコレート菓子のオマケだが、

当時は非常に人気があり、多くのパチモンが生まれた。

簡単な形状と一時的な大流行の結果、現在確認されているだけでも数系統のパチモンがある。

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現在まで、パチモンタコチュウの販売形態がわかった資料は大変少ない。

台紙まで発見されているのは、商品名がないC・H型、

「チュチュ たこちゃん チュ!」という商品名のB・J2型の2種類である。

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C・H型は色は緑、青、黒、赤、黄の5色で、

顔は純正によく似た普通目、ウインク、怒り目、泣き眠り目の4種で彫り込みになっている。

この泣き眠り目は多くのパチモンに共通してみられる目の種類で、

純正の泣き目と眠り目の中間的なデザインである。

前列がC型、後列がH型

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販売形態は大きな台紙に、小台紙付きの袋入りであったことがわかっている。

台紙には商品名がなく、扇子を持った大きなタコと、11個の様々な顔のタコチュウ、海藻と

「泳げ!たいやき君」に似た魚が描かれている。

メーカー名やロゴも商品名も書かれていない。

12袋の小台紙入りのパッケージ(別冊太陽に掲載された写真は9袋)がホチキス留めされている。

小台紙の裏に¥150と書かれたものが見つかっているが、

自分の記憶によると当時のひと袋当たりの販売額は50円程度であったと思われる。

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小台紙には、やはり扇子を持った大きなタコと7個のタコチュウ、そして海藻が描かれている。

両目をつむったリボン付きという純正にはない顔が描かれていたり、

実際のデザインでは、泣き眠り目となって瞳が無くなっているが絵では瞳が描かれている。

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もうひとつは「チュチュ たこちゃん チュ!」

F型(小)とJ2型(大)の二種類がセットになっている。

商品名と大きなタコ、それにタコチュウが12個描かれている。

海藻とひれの大きな魚が散らされ、ところどころに泡があがっている。

この魚は、先のC・H型の台紙に描かれたたいやきくんに影響されたのかも知れない。

タコの目にはまゆげのあるものがあり、少しオリジナルからは距離のあるデザインであると言える。

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台紙に、小台紙付きのブリスターが12個、ホチキス留め去れている。

カラーは赤、黄、緑のクリアの3種で、顔はラフなエンボスで多くの種類がある。

小台紙にはウインクをした大タコと、それにくっついた足無しのタコ、

商品のバックになる白窓があり、下部にはくっついた小タコが6個描かれている。

値段と思われる「50」という数字がかかれているものがあり、

当時のこの手の駄玩具の平均的な価格で売られていたと考えられる。

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で、ここからが、本題なんですけど・・・。

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沢山のC型と、顔無しのB2型・J4型、数個の純正前期のたこちゅうと一緒に、

まったく見たことのない新種のパチモンが発見されたことを以前紹介した。

上段右から3個

この新種は、他のパチモンと違い頭が球形ではなく、歪んだ卵型をしてる。

足の吸盤の形も独特で、他の種類と違って足の柱上の部分がなく、円錐形の吸盤がついている。

この足部には純正と同じように足を示す筋状の突起があり、この点でも他のパチモンと違っている。

顔は普通目の一種類しか見つからず、色は緑と黄色、黒の3種類があった。

黒は純正の後期型に見られるが、パチモンには珍しく、他にはC・H型にしか見つかっていない。

このパチモンをM型と称することにした。

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分類学的にも派生学的にも特異で興味深いM型だが、

台紙付き状態のものを入手した。

商品名は「たこチュー」。

純正そのままではないが、名前を聞けば「ああ、アレだな」ってわかる程度のひねり方である。

鉢巻を巻いたタコと、リボンをつけたタコが描かれ、波が枠になっている。

タグ付きの小台紙入袋が6×5袋の計30袋がホチキス留めされている。

この手の駄玩具が12個(1ダース)単位なので、30袋もついているのは珍しい。

「¥50」とあり、他の2種が5個入に比べて4個入だが、やはりこの手の駄玩具の平均的は値段だったことがわかる。

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タグは2色印刷で、大きなタコとタコチュウが3個描かれている。

描かれたタコチュウは怒り目と、怒り目の傾きを逆にした、泣き目のような表情になっている。

大きなタコの右側に怒り目のタコチュウがついているのは、C・H型の台紙のデザインにも見られる。

中身は赤、黄、緑、黒の4色で、顔は全て普通目であった。

台紙についたすべての袋を調べたが全て普通目で、顔の種類は1種類であることが確認できた。

胴体は楕円形のもの、尖ったもの、平たいもの、四角っぽいもの等、数種類のバリエーションがあるようである。

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小台紙には、ホタテ、珊瑚、サザエ、はまぐり、海藻2種に岩が描かれている。

同じ絵が台紙の、袋が貼られている部分のバックに描かれていることがわかった。

この珊瑚の絵は、「およげ!たいやきくん」の

「♪桃色珊瑚が手を振って、僕の泳ぎを眺めていたよ♪」という部分で出てくる珊瑚に似ている。

同様に、海藻も「およげ!たいやきくん」に出てくる物に似ていなくもない。

ただ、貝はあまり関係ないので、多少の影響はあるかもしれないが、

基本的にはオリジナルと言うか、適当に描かれたものではないかと思う。

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C・H型の台紙タイトルイラストと、「チュチュ たこちゃん チュ!」のタイトルイラストは、

大きなタコに小さなタコチュウを散らしたデザインと、海藻や魚等の脇役が描かれているところに共通点が見られる。

上段がC・H型、下段が「チュチュ たこちゃん チュ!」

それに比して、今回発見された「たこチュー」は左右に大きなタコがいて、構図が違っている。

タコには左が鉢巻をしている。ロッテ「たこちゅう」のパッケージには鉢巻をしたたこが描かれており、

オリジナルの影響が認められる。

足は下方に垂れているのが、他の2種とは違っている。

右はリボンをしているが、リボンをしているのはC・H型のイラストにも見られる。

これは、この駄玩具が女児も対象としていることを示す物である。

「たこチュー」のタグのイラストは大きなタコと小さなタコチュウが描かれ、

タコの右側に怒り目のタコチュウがくっついているところはC・H型の台紙イラストに似ている。

扇子こそ持っていないが、タコが足をあげているところは他の2種の台紙イラストと似ているとも言える。

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これだけのことから、どれが先に出た物かを判断するのは難しいが、

顔の出来の良さと、普通目、怒り目、ウインク、泣き眠り目の4種があることから、C・H型が一番オリジナルに近いと言える。

台紙デザインにC・H型と共通点があり、顔がオリジナルと似ていないことから、

「チュチュ たこちゃん チュ!」はパチタコC・H型の影響を受けていると考えられる。

今回発見された「たこチュー」は、台紙イラストは独特であるが、

顔が普通目の一種類しかないこと、タグは他の2種の台紙イラストに似ること、

さらには右上のタコチュウが怒り目であることから、C・H型パチモンの影響を見て取れる。

しかし、「たこチュー」のパチモンM型は楕円形の胴体と、足を示す突起がある円錐形の脚部という

独特の特徴を持っていて、台紙イラストにオリジナルのパッケージにある鉢巻をしてることから、

単純にC・H型パチモンの模倣と言い切れず、この両種の関係性は今後のさらなる検討が必要であると言える。

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たこちゅうのパチモンのイラストには、鉢巻や扇子があるが、

鉢巻の存在はネット上の画像('77ロッテ製品標準小売価格表 20年前のチョコレートのメニュー)から、

スッポリダコが描かれた最晩期にあたると思われる時期のパッケージには鉢巻が描かれていたことがわかっている。

扇子については不明だが、ことによると前期の「たこちゅう」のパッケージには扇子が描かれていたのかもしれない。

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この、タコと扇子と鉢巻が揃ったデザインの消ゴムを発見した。

某クションの出品者の方に聞いてみたが、詳細は不明であった。

向って左側に日の丸の扇子があるところも、C・H型パチモンの台紙イラストに似ている。

向って右側に片寄って鉢巻の結び目があるところは「たこチュー」の台紙イラストに近い。

目は鳥山明の絵に出てくるような笑った目である。

マンガの知識がないのでわからないが、鳥山氏の作品中のキャラクターである可能性もあるが詳細はわからない。

下部に鉛筆に刺すためと思われる穴が開いてる。

このような消ゴムは1970年代に良く見られ、「おもちゃじゃないですぅ!消ゴムですぅ!」って言い訳して

学校に持って行くためにこのような形態になったものが多かった。

以前紹介したタコチュウ消しゴム(仮名)にも同様の穴が見られた。

このような「非実用的な消ゴムの鉛筆キャップ型駄玩具」についても、

資料が集まれば改めて紹介したい。

最近になって、タコチュウ消しゴム(仮名)が、サンリオから

1993年に発売された、「チューチューターコ」という商品であることがわかった。

1976年から十数年経った1993年の発売と言うことで、

たこちゅうとたこっちゅのちょうど中間に位置するものであることがわかった。

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当時は見たことがなかったパチモンタコチュウM型が「たこチュー」という商品名だったことがわかったことは貴重である。

パッケージに多少の類似はあるとしても、独特な形態からパチタコC・H型からの直接的な影響は確定できない。

そのため、派生学的には、パチタコC・H型と同列の、オリジナルと比較的近いものという位置付けを変える必要はないと考える。

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って、いっても、社史にすら無視されたお菓子の、それもパチモンですよ。

どうでもいいっちゃあ、これ以上どうでもいいこともないんですがね。

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