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みんな同じ名前で困っちゃう

人形ブロック Part.2

明治製菓のチョコウエハース「ピコタン」が発売されたのは昭和49年(1974年)。

発売と同時に大流行したようで、ピコタンのパチモンは20種類以上見つかっている。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい

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明治製菓に「ピコタン」型の人間型ブロックが採用される以前に、

藤田屋商店から「ピンキーブロック」という名称で同じようなブロックが発売されていたことが、

当時の業界紙の広告からわかった。

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玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用 玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

広告は1969年に打たれており、ピコタンの発売から遡ること5年前になる。

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当時は、山本君からごっそりまとめてもらった上、新しく買ってもパッケージは捨てていたため、

商品名や販売形態に関する知識はほとんどか無かった。

最近になって某クションや一部のショップでデッドストックを入手することができるようになって、

パチモンピコタンに非常に多くの種類があり、それらの名称もわかるようになってきた。

パチモンピコタンのパッケージは「パチモンピコタンパッケージ一覧」を参照されたい

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ピコタンのパチモンは、以下のような名称で売られていたことがわかってきた。

人間ブロック パチモン顔ありC型 プラスチックケース(写真1)
パチモン顔ありC型 台紙、タグ付き袋入り(写真2)
パチモン顔なしK型 台紙、タグ付き袋入り(写真3)
人形ブロック パチモン顔ありA型 タグ付き袋入り(写真4)
パチモン顔なしD型 台紙、タグ付き袋入り(写真5)
ブロック人形 パチモン顔ありK型 台紙、タグ付き袋入り(写真6)
ブロックマン パチモン顔なしE型 小台紙袋入り(写真7)
パチモン顔なしG型 プラスチックケース(写真8)

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(写真1)人間ブロック

顔ありC型

(写真2)人間ブロック

顔ありC型

(写真3)人間ブロック

顔なしK型

(写真4)人形ブロック

顔ありA型

(写真5)人形ブロック

顔なしD型

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(写真6)ブロック人形

顔ありK型

(写真7)ブロックマン

顔なしE型

(写真8)ブロックマン

顔なしG型

以上のように商品名のわかっているピコタンのパチモンは、

人間型(人間・人形・マン)とブロックという単語の組み合わせで商品名ができていることがわかる。

人間ブロック 顔ありC型 人間ブロック 顔なしK型 ブロック人形 顔ありK型

このブロックという語は、ピコタンに先行して発売されていた「ピンキーブロック」の影響ではないかと考えられる。

その証拠に、パッケージのイラストに胴体の太いピエロ型の影響を受けたと思われるものが見られる。

人間ブロック 顔ありC型 

人形ブロック 顔ありA型

人形ブロック 顔なしD型

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で、ここからが本題なんであるが・・・。

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某クション方面での弛みなき捜索によって、デッドストックを入手する機会が増えた。

そのなかでも今回は、「人形ブロック」という名称が判明したパチモンをまとめて紹介するものとする。

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以前、「人形ブロック」というタグが付いた、パチモン顔なしD型の台紙を発見した。

タグ付き袋入りで、顔無しD型が緑、青、黄、赤が各5個ずつ入っている。

バックには赤・青・黄色・緑の4色の枠が刷られており、

これはマルコー産業製と思われる「合体基地」や「合体基地ブロック」、「人間ブロック」(顔ありC型)でも見られた。

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この人形ブロックの台紙の完品を発見した。

大きな台紙にタグ付き袋入りで12袋がホチキス留めされている。

1袋には顔無しD型が緑、青、黄、赤が各5個ずつ入っている。

台紙上部のイラストは、赤をバックに「人形ブロック」の文字と8個のピコタンが描かれている。

中央の青いイラストは純正の星バッチの後期の顔に似ている。

黄色の左側のイラストは純正の潜水服に似ている。

左から純正「星バッチ」、「潜水服」

部分的ではあるが、純正のデザインに強い影響を受けていることがわかる。

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以前見つかったものは、上部のイラストのバックが水色で、黄色い丸い部分が見えている。

白い矢印の先に黄色い模様が見える

それに比べて、今回見つかったものは、イラストのバックが赤で、イラストの拳の部分は黒なのがわかった。

今回の台紙のほぼ同じ部分

タグ付き袋をホチキス留めする枠の色もちがっていることがわかった。

左が前回の台紙、右が今回の台紙

タグはどちらも同じものが使われていた。

左が前回の台紙に付いていたタグ、右が今回の台紙に付いていたタグ

同じ商品名で同じタグ、同じタイプのパチモンの台紙に、少なくとも2種類のバージョンがあったことになる。

前回見つかった台紙の損傷が激しく、イラストの詳細がわからないのが残念だが、

黄色い丸い部分の位置から、同じようなイラストが描かれていた可能性が高いと考えられる。

今と違って色違いの印刷物を作るのは簡単では無いので、それだけこの駄玩具に注力していたことを伺わせる証拠かもしれない。

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同じ「人形ブロック」と言う名称のパチモンが見つかった。

タグ付き袋入りの状態で62袋がまとめて発見された。

一般的に台紙には12袋がホチキス留めされるので、台紙5枚分以上の量になる。

名称は「人形ブロック」で、顔無しB型・C型が、あわせて20個入っていた。

色は5色だが、顔無しB型は緑とピンクのみ、顔無しC型は青・黄色・赤だけが入っていた。

袋によって色の構成はまちまちで、ランダムに数をあわせて袋詰めしたと考えられる。

左から2個が顔無しB型、それ以外は顔無しC型

当時から残っているパチモンB型とC型でも同じ出現傾向があったことを記憶している。

B型、C型とも、緑・青・ピンク・黄色・赤の5色が見つかっており、

他のロットでは、それぞれの型の残りの色が入ったセットもあったもののようである。

当時、D型では黄色、B型では緑とピンク、C型では青が多くあったように覚えている。

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タグは先に紹介した顔無しD型のものと少し違っている。

小さいホチキスで袋を閉じている他に、台紙に留めたと思われる大きなホチキスの穴が残っている。

左が前回の台紙に付いていたタグ、右が今回の台紙に付いていたタグ

表面は人形のルビが今回のもののほうが大きく細い字でままれている。

人形の「形」の字の囲まれた部分が今回のもののほうが太い。

裏面のイラストは、今回見つかったもののほうが線が細い。

また今回見つかったものの拳と首の部分のくびれ方や足の描き方にめりはりが無い。

胴体の穴の描写も雑で、以前見つかった顔無しD型のタグイラストを、顔無しB・C型を作るにあたってトレースしたのではないかと思われる。

幼稚園の坂を上がった交差点の蕎麦屋の裏の駄菓子屋で、顔無しD型の台紙と、顔無しB・C型の台紙が同時期にあったことを覚えている。

それぞれの台紙やタグなどは思い出せないが、腕の細いB型よりは形のしっかりした顔無しD型の入った袋を選んだ覚えがある。

顔無しD型を製造・袋詰めしている工場と、顔無しB・C型を製造・袋詰めしている工場から仕入れたタグ付き袋入りの状態のパチモンを

一つのメーカーがまとめ、同じ駄菓子問屋に卸していたのではないかと思われる。

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同じ商品名の非常によく似たタグで違った種類のパチモンが発見されたことは、

同時期に販売されていた似た系統のパチモンが同じ商品名だった可能性を示唆する。

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明治製菓の「合体チョコボール」のパチモンで、A型と分類した駄玩具は、

台紙にタグ付き袋入りで売られていたことが、デッドストックの発見からわかっている。

明治合体チョコボールのパチモンには、このA型と似たデザインで、

同じ純正をもとにして作ったB型というシリーズがある。

純製 パチモンA型 パチモンB型
風防が半球形で大きい 翼前縁に機銃を持つ 風防が細長く垂直尾翼が簡素化されている
全高が高い 円窓の後に突起がある 船体が薄くなり円窓と突起が低い

例の駄菓子屋で、パチモンA型を買った記憶がある。

大きいのが入った袋には普通サイズが3個しか無く、普通サイズが10数個入った袋は、1ダースのうち1/3しかなかったので、

この普通サイズだけが入った袋を買いに行ったが売り切れていて、仕方なくパチモンB型の袋を買った覚えがある。

確かではないが、パチモンB型の台紙も、4色のモザイクだった様に覚えている。

パチモンB型のデッドストックを確かめてみないとわからないが、

ピコタンのパチモンの顔無しB・C型と顔無しD型のように、

合体チョコパチモンA型とB型も同様に、非常に近い種類だったのではないかと思われる。

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他にも「人形ブロック」という商品名のパチモンを入手した。

人形ブロックという商品名と、50円と値段が書かれている。

小台紙の一部に切れ込みがあり、その部分をホチキス留めして袋の口を抑えている。

フックにかけて釣り下げるための穴が上部に開いているものもあった。

小台紙はイラストが描かれているが、頭の大きなF型を模していると思われる。

中身は身長が一番小さいパチモン顔無しF型の青とピンク、頭の小さいパチモン顔無しK型の緑と黄色の4種類が入っていた。

左からパチモン顔無しK型2個、パチモン顔無しF型

中身は各色5個の20個が最大で、多少足りないものもあり16個しか入っていないものもあった。

(20個入り×9袋、19個入り×20袋、18個入り×3袋、17個入り×1袋、16個入り×2袋)

その他に、1色が7個入っているものが19個入りで1袋、18個入りで2袋見つかった。

入数の管理はかなりアバウトであることがわかる。

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このパチモン顔無しK型は最近になって発見されたもので、

背は小さく頭部の左右の突出部も小さく、胴体が深くくびれている特徴的な外観をしている。

顔なしK型

台紙には「人間ブロック」と書かれている。

同じ顔無しK型が、「人形ブロック」と「人間ブロック」という違った名前で売られていたことがわかった。

同じ製造メーカーが違う販売会社に卸したものか、

F型を作っていたメーカーが「人形ブロック」を販売した会社に型を売ったものか、当時の事情はこれだけではわからない。

この顔無しK型のタグは、マルコー産業製と思われる顔ありC型のタグをもとに作られていると思われる。

顔ありC型のタグはつま先や拳などが丸で表現されており、腕も上下に突起が見られるが、

顔無しK型のタグは足が外側に向いていて、まん中のイラストの左側のブロックが右側の首の凹部に嵌まっていない等、

合体の仕組みを今一つわからないまま、絵柄を似せていることがわかる。

左から顔なしK型、顔ありC型

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顔ありC型の台紙は、バックが12枠のモザイク模様になっている。

パチモン顔ありC型台紙「人間ブロック」

このデザインは、最初に紹介した顔無しD型の台紙のデザインと大変似ている。

パチモン顔なしD型台紙「人形ブロック」

両種ともメーカーロゴはないが、同じメーカーでは無いかと思われる。

「人形ブロック」の顔無しD型には、同じ形で顔のある顔ありD型と命名したパチモンが見つかっている。

顔無しD型も顔ありD型も他のパチモンと違って、胴体中央部から材を注入して整形しているようで胴体中央部に細かいしわがある。

特殊な製造法方法なので、同一の工場の製品と思われる。

パチモン顔ありD型

この顔ありD型はオリジナルの顔を非常によく似せており、小さなビニール袋に入れて売られていた。

大きめなガチャカプセルにハズレとして入れられていた可能性もある。

「人間ブロック」として売られていたパチモン顔ありC型の方は、純正の影響の濃い絵柄が4種、

ニコちゃんマークっぽい簡略化された顔が4種の計8種類が見つかっている。

パチモン顔ありC型

顔ありD型と顔ありC型が同じ台紙で同じメーカーの商品と仮定して、

顔ありD型と顔無しD型が同じ製造方法の同じメーカーの商品とすると、

顔ありC型と顔ありD型、顔無しD型の3種は同じメーカーの製品である可能性が高い。

顔ありD型から顔無しD型に改修することは、顔の面を削ればよいのでそんなに手間はかからないと思うが、

顔ありC型はプロポーションも全く違い、型を新造しないといけない。

今に比べて、プラスチック成形ようの型が高価だったと思われる当時に、ニセモノ(パチモン)を、わざわざいくつもの型で作った理由がわからない。

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この疑問を解くヒントとなりそうなのが、パチモン顔ありC型と似た顔を持つ、2パーツパチモンの意匠登録である。

ピコタンの前身である、藤田屋商店の「ピンキーブロック」はドイツのデザインで、

藤田屋商店はピンキーブロックの販売にあたってロイヤリティを東京の代理店(?)に払っていたそうである。

その代理店が破産(?)したためロイヤリティの払い先がわからなくなったところで、

ピンキーブロックに範を得た(?)制作会社がピコタンを製作し明治製菓に売り込んだものらしい。

藤田屋商店は明治製菓の関係者から問い合わせを受け、ロイヤリティの支払先がなくなった件を伝えたそうである。

明治製菓の「ピコタン」は大流行し、多くの駄玩具業者がパチモンを作った。

当時は特許等に関する意識が高くなく、次々に発売するオリジナルキャラクターのオマケに付いていちいち登録していなかったようで、

明治製菓自体もピコタン型のブロックの意匠を登録していない可能性が高い。

しかし、アニメキャラクターを使った玩具がビジネスとして成熟するにつれて、

駄玩具と言えども権利関係に注目せざるを得なくなったのではないかと考えられる。

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その結果、純正にそっくりなパチモンを作る技術がありオリジナルに近いものは、

出来がよいためにかえって権利侵害を訴えられる可能性が出てきたのではないかと思われる。

そのため、オリジナルに近い「合体基地」やパチモンピコタン顔ありD型といった商品を製造し続けるのが困難になり、

顔を消したり、新しい型を作ってオリジナルの影響の少ないデザインに作り直したのではないかと考えられる。

このことはオリジナルによく似た「合体基地」と他の駄玩具業者(丸イ)の「合体ブロック」の影響を受けたと考えられる

合体基地ブロック」がつくられていることからも伺われる。

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さらに、腰部にジョイントを追加した、進化した人間型ブロックを考案し、

その意匠権を登録する際に、オリジナルのピンキーブロックやピコタンの特徴である合体機能を自社の意匠権の中に一緒に申請して、

人間型ブロックを優位に製造して行こうとしたものと思われる。

登録が成った後の時期にも、追加パーツとセットにした新商品を発売したことからも、この説は確からしいのではないかと考える。

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オリジナルに似せない配慮という点でも追ってページを改めて紹介するつもりであるが、

もう一つ「人形ブロック」という名称の駄玩具が見つかった。

台紙にブリスターパックが接着してあり、フックにかけるための穴が上部中央に開いている。

少女マンガ風の女の子とウサギ、鳥の回りに花が咲き乱れ、興味無さそうなタッチの人形ブロックが点在している。

中に入っていたのはパチモン顔ありF型と命名したタイプで、

顔は4つボタン・一つポケット・二つポケットの3種類で、

緑×8・青×10・白×5・ピンク×7・黄色×8・赤×8の計46個が入っていた。

ブリスターパックがはがれていたので50個程度あったものが減ってしまってこの中途半端な数になったと思われる。

左から4つボタン・一つポケット・二つポケット

オリジナルの学生服の顔をまねたのかと思っていたが、

頭はまん中分けで一つポケットの他に後から4つボタンと、ポケットが2個あるものも見つかり

オリジナルをもとにしたというより、何となく適当に作った感が強い造型であることがわかった。

このタイプは、素材の色調管理が緩く、非常に多くのカラーバリエーションがあることも特徴である。

台紙の右側下部にメーカー名と思われる文字があるのを発見した。

S.D.S.TOYと書かれている。

顔ありF型のメーカーは不明だったが、先日このタイプが入ったビニールケース入りのサンプルを発見した。

袋には「おもちゃのシマデン」という名前と兜のロゴが入っていた。

シマデンはプラスチック駄玩具の製造メーカーで恐竜のプラ玩具などを作っていた。

メーカーホームページはなくなってしまったようだが、大阪府大阪市東住吉区の「島伝」のことではないかと思われる。

「人形ブロック」のS.D.S.TOYは「シマ・デン・セイフティ(?)・トイ」のことではないかと思われる。

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「人形ブロック」という名称のピコタンのパチモンが複数あり、

それらをていねいに見て行くと意匠権を意識し出した駄玩具業界の思惑が透けて見える。

この推測があたってるかどうかなんて事は、全くわからないし、

30年、いや40年前のこと。

わかってどうなるもんでもないのである。

休日にどこにいくでもなく、日がな一日こんなことしてられることの幸せを噛み締めたい。

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えっ?金がなくてどこにも行けないだけだろって?

夢がないなぁ。

そんなこというなよ。

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