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オリジナル!って言っちゃったよ!

たこちゅうセットりんごケース

ロッテから「たこちゅう」というオマケ付のチョコ菓子が発売されたのは、1976年のことであった。

明治製菓の「ピコタン」が1974年、「合体チョコボール」が1975年の発売だったので、後発組と言える。

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1960年代から1970年代の前半にかけては、漫画やアニメのキャラクターを菓子にあしらうことで人気を得ていた。

しかし、著作権意識の高まりから、各製菓会社はキャラクターの使用を自粛し、

代わって、ギミックやコレクション性の高さをウリにした、オリジナルのキャラクターを次々と考え出さなければならなくなった。

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「繋ぐ」ことを重視したオマケは、明治製菓の「ピコタン」を嚆矢とするようである。

昭和58(1983)年に刊行された、「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)

(浅山守一著、自由現代社)という本に以下のように書かれている。

著者の浅山守一はノベルティ(オマケ)の企画開発を手掛けていた人で、プロフィールには以下のように記されている。

浅山守一

1929年福岡県生まれ。
東京美術学校中退。
その後、アドマンとして活躍。独自のノベルティーズ理論を編み出し、注目される。
浅山ノベルティ研究所主幹。
尚、風景画家としても、伊豆を中心に活躍中である。

考案した「おまけ」には、アメリカン・クラッカー(リズムボール)、
ジャンピオン(跳ねる虫)、タコチュー(吸着盤)、
カニタン(連鎖動構造)等多数。

つまり、「たこちゅう」の生みの親だったということである。

この本は、ノベルティの様々なギミックに注目し、それを使ったオマケを紹介している。

明治製菓のカニタンやカメタンも記されており、どちらも作者の考案のように読める。

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たこちゅうについては、「たこの吸付」として、以下の記述がある。

「”タコチュー”(正確には”たこちゅう”)という名称でL社(ロッテ)にて商品化されて大ヒットしたもの」と書かれている。

作者はタコチューの開発に携わったが、それ以降は深く係らなかったようで、

他人事のように「偽物も出まわり」「パート2もだされたが・・・あまりパッとしなかったようである」と距離を持った書き方をしている。

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「あまりパッとしなかった」「パート2」がスッポリタイプと命名した新型たこちゅうである。

小型の頭部、大型の頭頂の突起と脚吸盤でしっかり繋げられるようになったが、

脚吸盤が水平面にくっつきにくいこともあって、ノーマルタイプよりも遊びにくく、

人気の再興には繋がらなかったようである。

特異な形状のスッポリタイプ(A型)

スッポリ型と一緒に、従来型のたこちゅうにも新型が追加された。

顔のデザインの幅が狭く、モールドは浅い。このタイプをたこちゅう純正最晩期型と命名した。

純正最後期型

新型の投入に合わせて、箱も新デザインが作成されたことがわかっている。

赤箱B型 .

青箱A型

緑箱A型

赤い箱はそれまでと同じだが、ロッテのロゴマークに小さな違いがある。

青い箱、緑色の箱は新しく造られ、イラストにはスッポリタイプが描かれている。

スッポリタイプは、顔のデザインテイストや、口吸盤の凹部や脚のモールドの違い、箱のデザイン等が違うA型と非A型の2系統がある。

左からスッポリ小A型、大A型、小B型、大B型

従来からある後期型や太目型も継続して製造されたらしく、非A型のスッポリタイプと一緒に見つかることが多い。

また、非A型スッポリタイプと一緒にみつかる、ラフな造形の「型破損タイプ」と名付けたものもあることがわかった。

純正のたこちゅうに関しては、「タコチュウ分類一覧表」、

純正たこちゅうの分類と紙箱について」を参照されたい。

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ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」で、「偽物も出まわり」とサラッと書かれているが、

確認されているだけでも20数種類のパチモンがみつかっている。

パチモンタコチュウに関しては、

タコチュウ分類一覧表」参照されたい。

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パチモンタコチュウは、様々な商品名で、様々なパッケージで、駄菓子屋をはじめ、観光地のお土産屋や玩具店で販売された。

<パチモンタコチュウの販売形態>

UFO消しゴマ(L・G型)

スペースインベーダー(K・L型)

UFO軍団(G型)

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たこちゅうセット(K・L・G型)

キッスだこ(H・C型)

商品名なし(H・C型)

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商品名なし(H・C型)

タコチュー(C2型)

NEW FASHION ACCESSARY(B型)

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たこちゅう(J・B型)

商品名なし(J・P型)

たこちゅう(J3・O型)

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チュチュたこちゃん チュ!(J2・F型)

チュチュたこ(J2・F型)

たこチュー(M型)

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たこチュー(M型)

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これらのパチモンの中で、「たこちゅうセット」という帽子型のケースに入ったものは、純正とほぼ同じ大きさのもの(G型)と、

中型(L型)、大型(K型)の3種類のパチタコが入っていた。

他のパチタコにも、純正よりも大きなタイプがあるが、K・L型はそれよりも小さく、独自の大きさになっている。

他のパチタコは同じ系統のものには、大小2種類の大きさがあるものが多いが、3種類の違ったサイズがあるのは、このK・L・G型のみである。

左からJ2型(一般的なサイズの大型パチモン)、K型、L型、純正

K・L・G型のパチタコは、他にもタグ付き袋入りのUFO消しゴマ(L・G型)、

ブリスターに円盤の駄玩具と合体スリーという3種の宇宙船プラ駄玩具とセットにされたスペースインベーダー(K・L型)、

ブリスターに円盤の駄玩具2個とUFOケシゴマがセットされたUFO軍団(G型)にも入っていることがわかった。

K・L・G型のパチタコは、UFO消しゴマのタグのロゴマークから、マルコー産業製であることがわかった。

某クションで、デッドストック状態でパッケージが残っているサンプルが多くみつかるようになったため、

パッケージにメーカーロゴやSTマークが残ったことで、マルコー産業の製品と推測出来るものが増えた。

以下にパッケージにロゴマークやSTマークのメーカー記号をまとめた。

※マルコー産業のロゴとSTマークの詳細はUFO宇宙セットを参照されたい。

商品名 ネタ元 STマークメーカー記号 登録年 ロゴマーク
合体基地別バージョン 明治合体 K541 - マークロゴ
スポーツ大将 ピコタン2パーツ K5413301 昭和53(1978)年 アルファベットロゴ
ロボ君ブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 マークロゴ
ポーズブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 (株)エンゼルボール
人間ブロック ピコタン P5270005 昭和50(1975)年 ロゴなし
たこちゅうセット たこちゅう P5441200 昭和51(1976)年 ロゴなし
UFO合体基地セット 明治合体 P5440150 昭和50(1975)年 ロゴなし
合体スリー P5444 昭和54(1979)年 マークロゴ
合体スリー K5412224 昭和52(1977)年 アルファベットロゴ
スペースインベーダー たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし
UFO軍団 たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし

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パチモンタコチュウK・L・G型がマルコー産業の製品であることが理解されたと思う。

で、ここからが本題。

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某ショップで、たこちゅうセットの別バージョンを入手した。

透明の赤い、りんごの形のプラスチックケースにK・L・G型が入っている。

このりんご型ケースは、パチモンピコタン顔有りC型が入れられた「人間ブロック」と同じものであった。

商品名は「たこちゅうセット」。

帽子型ケースのシールと同じものが貼られていた。

左が帽子型ケース、右がりんご型ケース

ケースは本体と蓋、中間の仕切りの3パーツで、仕切の上に銀の厚紙が入っている。

仕切りより上には、K・L・G型が各4個ずつ入っていた。

K型(大)は、眠り目赤×3、怒り目赤×1、L型(中)は、眠り目青×1、泣き目青×3、

G型(小)は、普通目黄・笑い目黄×各2であった。

仕切りより下には、K・L・G型が各6個ずつ入っていた。

K型(大)は、眠り目赤×1、眠り目黄・怒り目黄×各1、怒り目白×3、

L型(中)は、眠り目赤・眠り目オレンジ×各2、眠り目黄・眠り目青×各1、

G型(小)は、普通目赤×2、笑い目赤×1、普通目・笑い目青×各1、普通目緑×1であった。

K・L・G型は、緑、青、黄色、赤、オレンジ、白の6色が見つかっており、

顔もそれぞれ2種類が確認されているので、色・顔の全てのバリエーションをバランスよく含んでいる。

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仕切りパーツには、飾り紙が巻かれていた。

パチモンピコタンが入っていたりんご型ケースの「人間ブロック」にも、同様な紙が入っていたが、

これにはロゴマークがなかった。

人間ブロックに入っていた飾り紙

今回見つかった「たこちゅうセット」には、「オリジナル TOY」の文字と、マルコー産業のロゴマークが確認出来る。

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ケースにはSTマークのシールも貼られていた。

番号はP52700005であった。

メーカーコードはP257で、登録年は昭和50(1975)年になる。

この番号は、「人間ブロック」と同じであった。

左が「人間ブロック」、右が「たこちゅうセット」

ここで不思議なのは、たこちゅうがロッテから発売されたのは1976年であることがロッテへの電話取材で判明している。

登録審査にどれくらいの時間がかかるかは不明だが、ロッテからの新発売の前に、STマークを取得していることになるのである。

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気になるのは、飾り紙に印刷された、「オリジナル TOY」の文字である。

文字どおり解釈すれば、ロッテのたこちゅうより前に、マルコー産業で作られていたということになる。

ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」の著者で、

同書のプロフィールに、タコチューの考案者であると書かれている浅山守一が考案したとすると、

浅山が、マルコー産業に依頼されたか、持ち込んだかした、タコチューのデザインを、

後になってロッテが採用したということになる。

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ピコタンのデザインが、実はドイツの玩具ショーで、藤田屋商店に見い出されて、

明治製菓の「ピコタン」よりも数年前に先に作られていたことがわかっている。

ピコタンよりも前に人間型のブロックがあったことは、

徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」の記事を発見したとき、

ロッテが新製品の企画を、浅山のノベルティ考案会社に依頼し、

浅山のアイデアを採用して1976年に新発売したと思っていた。

しかし、マルコー産業のロゴも入っている「たこちゅうセット」にオリジナルと書かれていると、

万が一、マルコー産業の方が先の可能性が有るのではないかとも考えられる。

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STマークが同じであるというところに注目すると、

今までにも、同じ番号の駄玩具が見つかっている。

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厚紙の台紙にUFOの駄玩具と、マルコー産業のパチタコが組み合わされた駄玩具が見つかっている。

左が「UFO軍団」、右が「スペースインベーダー」

「スペースインベーダー」に入っているパチタコは、マルコー産業製のK・L型で、

3つの宇宙船は、これもマルコー産業のロゴがパッケージに入っているのが確認されている「合体スリー」という駄玩具である。

合体スリー」の台紙に印刷されているSTマークは「P.5444」となっており、昭和54(1979)年の発売と思われる。

この「合体スリー」には別バージョンの台紙が見つかっている。

この台紙のSTマークの番号は「K5412224で、メーカー番号は「K541」で、先の「P.544」と違っている。

メーカーロゴのマークはないが、アルファベット表記のメーカー名が入っている。

この「K541」のSTマークは、別バージョンの「合体スリー」の他に、

2パーツのパチモンピコタンに、オリジナルのスポーツパーツを組みあわせた、「スポーツ大将」にもあった。

もっとも、オリジナルとは言っても、そのデザインは「ロボダッチ」に強く影響されているのではあるが。

「スポーツ大将」はSTマークから判断して、昭和53(1978)年の発売と考えられる。

スポーツ大将のパッケージにみられるロゴとSTマーク

マルコー産業は、この2パーツのパチモンピコタンを意匠登録し、その際にピコタンの基本的なギミックであるところの嵌合を

説明に含めて積極的な意匠の保護を謀っているように見える。

意匠公報471097(クリックで別ウインドウで拡大)

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「UFO軍団」の方は、円盤の駄玩具と、消ゴム素材の円盤コマとパチモンタコチュウG型が1個入った「UFOけしゴマ」が1袋がセットになっている。

「UFOけしゴマ」はタグ付き袋入りで、タグにはマルコー産業のロゴが入っている。

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「スペースインベーダー」も「UFO軍団」もSTマークは同じ「M2592005」である。

左が「UFO軍団」、右が「スペースインベーダー」

なお、台紙にはロゴマークやメーカー名がなく、UFO駄玩具の製造メーカーがわからないため、

M259は、UFO駄玩具を作った別のメーカーの番号で、

台紙にブリスターで留めたUFO駄玩具がメインで、それに他社(マルコー産業)の駄玩具をセットにしたものとして

STマークの申請をした可能性もある。

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STマークの1桁目のアルファベットは、所属団体の略号を表すことがわかっている。

マルコー産業がK(団体不明。日本文化用品安全試験所か?)では541、

M(東京玩具工業協同組合)では259であったということかもしれない。

また、P(日本プラスチック玩具工業協同組合)では、マルコー産業のロゴの入った商品で527と544の2つの番号が確認された。

現在の一般社団法人 日本玩具協会のホームページに有る、玩具安全マーク制度要綱には以下の注記が見られる。

※STマーク使用許諾契約者の間で合併等の事由により、

一の使用許諾契約者が複数の契約記号を有することになる場合は、

協会が別に指示するところによる。

マルコー産業の例でも、他の駄玩具業者との合併等、なんらかの理由があったと思われるが、詳細はわからない。

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先に紹介した、マルコー産業のパチモン駄玩具に見られたSTマークをまとめた表を再検討したい。

商品名 ネタ元 STマークメーカー記号 登録年 ロゴマーク
合体基地別バージョン 明治合体 K541 - マークロゴ
スポーツ大将 ピコタン2パーツ K5413301 昭和53(1978)年 アルファベットロゴ

合体スリー
K5412224

昭和52(1977)年

アルファベットロゴ
ロボ君ブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 マークロゴ
ポーズブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 (株)エンゼルボール
人間ブロック ピコタン P5270005 昭和50(1975)年 ロゴなし

たこちゅうセットリンゴケース

たこちゅう
P5270005

昭和50(1975)年

メーカー名
たこちゅうセット帽子ケース たこちゅう P5441200 昭和51(1976)年 ロゴなし
UFO合体基地セット 明治合体 P5440150 昭和50(1975)年 ロゴなし
合体スリー P5444 昭和54(1979)年 マークロゴ
スペースインベーダー たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし
UFO軍団 たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし

ウチのサイトの収集ブツにあったマークであるので、元ネタは全てたこちゅう・ピコタン・合体チョコのパチモンである。

メーカー番号は、K541、P527、P544、M259の4種類が確認されている。

3桁目の年号は昭和50(1975)年〜昭和54(1979)年までが確認されている。

P527は4点全てが昭和50(1975)年であるが、

昭和52(1977)年はK541とM259の2種類の番号で見つかっている。

P544の書かれたSTマークは昭和50(1975)年、昭和51(1976)年、昭和54(1979)年と

全体の期間から見つかっており、4種類のメーカー番号が時系列的に変化したものではないようである。

昭和50(1975)年にはP527とP544が、

昭和52(1977)年にはK541とM259が印刷されたものが見つかっており、

同じ年に複数のメーカー番号が併存していることがわかる。

ロゴマークは、M259以外の3種類の番号のある商品には、マークかアルファベットのメーカーロゴが印刷されている。

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これらのことから、昭和50(1975)年〜昭和54(1979)年の期間の、

マルコー産業のメーカー番号は、K541、P527、P544、M259の4種類が併存していたことがわかる。

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「P5270012」という同じ番号で、同じ2パーツのピコタンパチモンに印刷されたパッケージのメーカー名が違っている例がある。

商品名は「ロボくんブロック」で、2パーツパチピコとインベーダーゲーム消ゴムのセットである。

パッケージにはSTマークとメーカーロゴ、PAT.471097と意匠権番号が記されている。

この2パーツは「スポーツ大将」でも使われていたが、「ポーズブロック」という名称で発売されていた。

パッケージには、「ロボくんブロック」と同じP5270012の番号のSTマークが貼られ、

パッケージの中の厚紙には(株)エンゼルボールというメーカー名が書かれていた。

製造とSTマークの申請はマルコー産業で、別の会社が販売を担当したと考えられる。

「ポーズブロック」という名称で、マルコー産業のロゴが入ったものも見つかっている。

タグには、マルコー産業のメーカーロゴと「PAT.P」の文字が有り、

STマークと意匠権登録の前に、マルコー産業が作りはじめた最も初期の販売形態であると思われる。

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これらの2パーツパチタコの一連の商品では、STマークは2パーツの人間型ブロックそのものに対して、

安全を確認した結果、STマークを付与したものと思われる。

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しかし、今回の、「たこちゅうセット」の場合、同じケースにピコタンが入った「人間ブロック」があったことがわかっている。

両方のケースに貼られたSTマークの番号は全く同じであった。

左が「人間ブロック」、右が「たこちゅうセット」

「人間ブロック」に入っていたパチモンピコタンは顔有りC型と命名したもので、他にSTマークが付けられた例は見つかっていない。

「たこちゅうセット」に入ったパチモンタコチュウは、K・L・G型と命名したものであった。

先述のように台紙にブリスターパックのUFO玩具とセットされた、「UFO軍団」、「スペースインベーダー」にも入っていた。

これらのSTマークはM2592005で、昭和52(1977)年の申請であることがわかっている。

他にも、同じ「たこちゅうセット」のシールが貼られた、帽子型のプラスチックケースに入ったものも見つかっている。

これはSTマークの番号がP5441200で、昭和51(1976)年の申請であったことが4桁目の数字からわかる。

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パチモンタコチュウK・L・G型が、同じようなプラスチックケースに入っていて、STマークが違っているが、

メーカー番号が違い、申請年度も違っている。

ここで注目すべきは、ロッテの「たこちゅう」が販売されたのは1976年〜1977年であったことである。

りんご型のケースに入った「たこちゅうセット」のSTマークは昭和50(1975)年の申請を表している。

飾り紙の「オリジナル TOY」の文字から、

ロッテからたこちゅうが発売される前に、マルコー産業からオリジナルデザインとして発売されていた可能性があるということである。

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他のパチモンが泣き眠り目という、純正にない顔デザインになっているのに対し、

パチモンタコチュウK・L・G型は、泣き目と眠り目が別々に作られている。

左から純正後期眠り目、泣き目、前期太目眠り目、泣き目、純正最晩期泣き目

左からパチタコK型眠り目、L型眠り目、泣き目

泣き眠り目のバリエーション。左からパチタコH型、C型、J型、B型、D型

また、大きなサイズのもの(K型、L型)が、他のパチモンたこちゅうの大きなものとは違っており、

素材も、純正前期と同様な水に浮くものが使われ、他のパチモンが水に沈む素材を使っているのと異なっている。

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確かに他のパチモンタコチュウと違う点が多いパチモンタコチュウK・L・G型であるが、

STマークの4桁目の数字と「オリジナル TOY」の文字から、このタイプがロッテの純正たこちゅうの祖先であるという説は、

あまりに突飛すぎて、俄に信じがたい。

しかし、「たこちゅうセット」のキスしているタコチュウと同じモチーフが他のパチモンにも沢山使われているが、

他のパッケージには見られないベレー帽を被ったものがあり、H・C型のパッケージにしかないリボンが描かれていることから、

パチモンタコチュウK・L・G型がパチモンの派生史的には、かなり上位にある種類である可能性があることを指摘した。

左上からG・K・L型、H・C型、左下からJ・B型台紙、J2・F型台紙

パチモンタコチュウ派生関係図

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デッドストック状態のサンプルが多く見つかるようになって、

パッケージのイラストにも注目し、モチーフの扱いにより、その前後関係を推測してきた。

具体的には、パッケージに書かれたタコの扇子や鉢巻、連結した小ダコのイラストなどに注目してきた。

りんご型ケースにも、興味深いイラストが見つかった。

ケースの中に二つ折りされた小台紙が封入されていたのである。

りんごケースに入っていた小台紙

大きな鉢巻をしたタコに泣き目の小ダコが吸付いている。

手前には普通目、怒り目、ウインクが連結している。

最前列右側にはベレー帽とリボンの小ダコがキスしている。

左下には、サンゴと思われる緑色の枝らしきものが描かれている。

今後、袋入りでこの小台紙が入ったK・L・G型が見つかる可能性が出てきた。

この小台紙とK・L・G型のパチタコが某クションで発見された。

青い怒り目のK型が2個、黄色の眠り目と泣き目のL型が1個ヅつ、赤の普通目のG型が2個の計6個であった。

小台紙の上部には、大小のホチキスの穴が確認できる。小さいものは袋の口を留めるためのもので、

大きなものは小台紙入りの袋を大台紙の厚紙に固定するための業務用の大型のホチキスによる痕跡であると思われる。

赤い矢印の先の穴が普通サイズのホチキス、

青い矢印の先の大きめの穴が大台紙に固定するための業務用ホチキスの跡である。

このことから、G型・K型・L型でも、他のパチモンと同じ様に、

ぶら下げられた大台紙にホチキスで留められたものをもぎ取って買う方式が行われたことがわかる。

もとの袋が失われており、6個が1袋の中身の全てであるかは、不明である。

しかし、他のパチモンの入り数から考えてこの6個が同じ袋に入って50円位で売られていたと思われる。

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この小台紙のイラストに似たものとしては、円筒形のプラスチックケースに、

パチタコC2型が11個入った「タコチュー」がある。

パチタコC2型とは、軟質でクリアな素材で作られたC型の名称である。

これには、蓋の状面にシールが貼られているが、

そこには同じように頭が楕円形で鉢巻をした大ダコが描かれている。

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C2型とH2型(軟質でクリア素材のH型)と一緒に見つかった小台紙は、りんご型ケースに入った小台紙と似ている。

パチモンC2型、H2型と小台紙

この大ダコは鉢巻ではなく扇子を持っている。

連結している小ダコは4つで、りんご型ケースに入った小台紙よりも多い。

手前のキスしている左側のタコはベレー帽を被っていない。

サンゴの代わりに、緑色の海藻が描かれている。

この小台紙は、H・C型でも同じものが使われていることが確認された。

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別の種類のパチタコが入った、この小台紙と酷似したデザインのサンプルも見つかっている。

左からC・H型、P・J型小台紙

C・H型の小台紙をトレースしたのか、細部にわたって良く似ているが、影の入れ方や線の硬さが異なり、

Wに顔のロゴが追加されていて、P・J型小台紙の方が後から作られたと考えられる。

左からJ型、P型

Wロゴの台紙に入っていた大型パチタコのJ型は、プラスチックケース入りも見つかっている。

中身はJ型と、脚の長い小型のB型が入っていた。

このケースの中には折り畳まれた台紙が入っていた。

この台紙には、C・H型、P・J型小台紙と同様に扇子を持った大ダコ、大タコに付いた小ダコ、

手前に連結した小ダコ、キスしているタコ、海藻が描かれている。

タコの本体は円形だし、手前の連結したタコの描き方はP・J型小台紙を簡略化したものと思われる。

連結した小ダコは左から青い怒り目・黄色いウインク(両目を瞑っている)で、C・H型、P・J型小台紙に似る。

キスした小ダコからはリボンが省略されている。

しかし、大ダコに付いた小ダコが眠り目で、黄色い鉢巻をしているところは、

今回みつかったりんごケースに入っていた小台紙に似る。

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ロッテの「たこちゅう」のパッケージ画像は、スッポリタコが追加された最後期のものはネット上に見られるが、

前期のものは見つけられていない。

最後期の画像を見ると、鉢巻をしている大タコが確認出来る。

パチモンのパッケージに多く見られるキスしている赤と黄色の小ダコのモチーフは

ほぼすべての種類で見られることから、ロッテの「たこちゅう」の前期のパッケージからあったものと思われる。

その中でリボンの描かれたものは有るが、ベレー帽はパチタコG・K・L型系のケースからしか見つからないことから、

パチタコG・K・L型がパチモンの派生史的に、上流にある(早期に作られた)ものであると考える。

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最終的に結論が出せないのが、りんごケースに貼られたSTマークの4桁目、

申請が昭和50(1975)年であることである。

明治製菓のピコタンの発売が1974年であることは、明治製菓の社史からわかっている。

「明治製菓の歩み 買う気で作って60年」より引用

りんごケースに入ったパチモンピコタンを「人間ブロック」として製造したのは、昭和50(1975)年であり、

その年に2パーツピコタンの意匠登録もしている。

マルコー産業が積極的に大手製菓メーカーのオマケをパチモンにして、

アイデアを追加したり純正と互換性のある緻密な加工によって、独自の商材として重視していたことがわかる。

しかし、オマケの商品寿命は短いこともあって、いろいろな組み合わせで、少しでも長く、多様な売り方を試みたことがSTマークの検討からもわかる。

「UFO軍団」、「スペースインベーダー」は、どちらも台紙にブリスターパックで、UFO駄玩具と、パチモンタコチュウやプラ玩具を組み合わせたもので、

STマークは全く同じ「M2592005」で、昭和52(1977)年とわかる。

UFOの駄玩具も違うものであり、それに組み合わせた駄玩具も違うし、商品名すら違うのに、同じ申請で付番されるということは、

同じ形式のパッケージで、同じコンセプトのものでも、個々の駄玩具が大きさや誤飲性などのおもちゃとしての安全性を持っていれば、

同一の商品群としてSTマークの付番がなされたと考えられる。

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STマークの有効期限は4年(現在は2年)だったようで、流通している間は更新する必要があったようである。

たこちゅうの発売が1976年〜1977年であったことは、ロッテに確認したので間違いないと思われる。

今回見つかった「たこちゅうセット」りんごケースがのSTマークの申請が昭和50(1975)年であったことは、

パチタコG・K・L型がロッテの「たこちゅう」よりも先に作られたことになってしまう。

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昭和58(1983)年に刊行された、「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(浅山守一著、自由現代社)に、

「”タコチュー”(正確には”たこちゅう”)という名称でL社(ロッテ)にて商品化されて大ヒットしたもの」と書かれているのを

そのまま読めば、「L社(ロッテ)にて商品化され」たとあるので、最初はロッテのために作られたと思われる。

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この矛盾を無理矢理解釈しようとすれば、STマークの有効期限に注目するべきと思われる。

「UFO軍団」、「スペースインベーダー」のように

「同じ形式のパッケージで、同じコンセプトのもの」に対して付番されることがあることがわかった。

「人間ブロック」と「たこちゅうセット」の「P5270005」という番号は、

リンゴ型のプラスチックケースに、小さい駄玩具を入れたものに対して、付番したのではないかと考える。

昭和50(1975)年、つまり明治製菓のピコタンの発売の次の年に、

プラスチックケースに入れる駄玩具をパチモンピコタンにしたセットを申請した。

その番号が生きている間に、中に入れる駄玩具をパチモンタコチュウに変えたものを、同じ番号を付して発売したのではないかと考えるのである。

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りんごケースには、蓋を止めるためにヒモが付いている。

その先には、人間ブロックに入っていたパチモンピコタン顔ありC型が結び付けられていた。

このことも、りんごケースがメインで、その中に入れられた小さな駄玩具はフレキシブルに見られていたことの証左と考えられる。

りんごケースのヒモには、ビニール製の葉っぱが付いていた。

この些細な点からも、ケースの形状に対する関心の強さを感じられると思われる。

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最後に、今回見つかったりんごケースには、前のオーナーのものと見られる書き込みがあった。

底面にマジックで「52,7,29 ¥400」と書かれている。

昭和52(1977)年ということは、たこちゅうの人気が終焉を迎えたころにあたる。

玩具店なのか、地方の観光地の土産物屋か、

「あー、流行ってたなぁ、これ。最近見ないけど、買っておくか」と思われたものか、

「うわ!たこちゅうがこんなにたくさん!400円かぁ。高いなぁ。おばあちゃん、これ買って!」だったのか。

字が大人っぽいので、親なのか祖父母なのかが書いたのであろうが、値段まで書いておくあたりが、大人の手の存在を感じる。

シールが切られていないが、シールが新しいうちに開封したように見える。

7月の終りってことは、夏休みの真っ最中。金曜日だったらしい。

海辺の街の商店街。海水浴の帰りに一日太陽を浴びてぐったりしてるおばあちゃんに、

うんざりされながら買ってもらった、当時の宝物だったのではないかと思われる。

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しかし、あんまり遊んだ形跡がないほど保存状態が良いので、

当時のおっさんが買って、大切に保存していた可能性もある。

でも、今ならフィギュア集めのオタクのおじさんなんか珍しくないけど、

当時、イイ大人がこんな駄玩具買って、後生大事にしまいこみ、

夜な夜なニヤニヤしながら眺めていたものだとすると、それはそれでおっかない気もする。

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STマークの示す、販売時期によっては、たこちゅうの生い立ちの定説を覆す大発見の可能性はある。

このあたりは、マルコー産業に資料が残っていなく、生みの親の浅山守一氏も見つけられなかった今となっては、

解明することは非常に困難である。

だが、たこちゅう探しを続けていけば、何かヒントに行き当たるのではないかと楽観的に考えていきたいと思う。

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今回も、ぜんまい太郎氏の情報により貴重なサンプルを入手することができた。

毎度毎度ありがとうございます。

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