なんのひねりもなくまんまかよ?!

たこちゅうプラケース

「たこちゅう」とは、1976年〜1977年に発売されたロッテ製菓のチョコレート菓子のおまけである。

発売期間は1年程だったが大流行し、当時の子供たちはクッキーやのりの缶にザラザラ集めていた。

純正品の品薄もあり、多くのパチモンが作られ、ガチャガチャや玩具屋、お土産店等で様々な形で販売された。

当時、S村君からたこちゅうをごっそり譲り受けたが、その中には多くの種類のパチモンが混在していた。

実を言うと、タコチュウのパチモンに関してはガチャガチャで入手した数個しか自分では買えていなかった。

遠足のおやつの予算の中で買い占めようと、近所のパン屋やお菓子屋を廻ったけれど、

全く見つけることができずに、残念な思いをした記憶がある。

ピコタンや明治合体チョコボールのパチモンは、近所の駄菓子屋等で買った記憶があるので、

パチモンも含めて、たこちゅうの流通期間が短かったのではないかと思われる。

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S村君と、高校でW辺君にもらった中にも多くの種類のパチモンがあった。

しかし、サンプル数が少なく、また入手方法も聞けなかったため、どれとどれが同じ系列なのかが、ずっと判明せずにいた。

当時確認されていたパチモンは以下の通りである。

当時確認されていたパチモンタコチュウ

A型 強力吸盤。青:泣き眠り目。1個のみ
B型 足長。緑;普通目、黄色:泣き眠り目・普通目
C型 H型と同じプロポーション。黒、緑、青、黄色、赤。普通目、泣き眠り目、怒り目、ウインク(彫り込み)。複数
D型 クリア素材。青・黄色:泣き眠り目。各1個
E型 顔無し、クリア素材。青。1個のみ
F型 ラフな顔、素材はJ2型に似ている。赤:ビックリ(?)。1個のみ
G型 水に浮く素材。赤:笑い目。1個のみ
H型 大型。H型と同じプロポーション。黒、緑、青、黄色、赤。普通目、泣き眠り目、怒り目、ウインク(彫り込み)。複数
I型 大型。クリア素材。赤:ウインク。1個のみ
J型 大型。強力吸盤。緑、赤;泣き眠り目。

J2型
大型。ラフな顔、素材はJ2型に似ている。赤、緑:ラフ顔。各2個

数が多く、顔が掘り込みで、大小の側面プロポーションが酷似しているH型とC型は一つの系列と思われた。

後に大台紙に小台紙付き袋入りの完ピンが発見された。

左からH型正面・側面、C型正面・側面

顔の造形がラフで、椀型の吸盤が似ているJ2型とF型も同じ系列と思われた。

後に「チュチュ たこチャン チュ!」という商品名で台紙付き完ピンが発見された。

左からJ2型正面・側面、F型正面・側面

H・C型よりもクリアな素材で、口と足の付け根の長さが等しく、顔のないE型は一つしかないが、これで一つ種類と判断出来る。

E型正面・側面

純正の顔にはない笑い顔が発見されたG型は水に浮く素材でこれも独自の型であると考えた。

後に大きさが3種(K型・L型・G型)あることがわかり、「たこちゅうセット」という帽子型ケースに入っているのが見つかった。

G型正面・側面

このように消去法で消して行くと、大型のI型、J型。小型のA型、B型、D型の5種類が系列を確定できなかった。

後列左からI型、J型3個、前列左からD型2個、A型、B型3個

I型はクリアタイプで吸盤が扁平のためJ型とは明らかにちがう系統と思われる。

クリア素材ということで言えばD型青も同じような素材感を持っている。黄色は若干不透明だが側面のプロポーションは青に等しい。

I型もD型の両方とも顔はエンボスで線が細い。H型程ではないが、どちらも純正の顔の特長を良くとらえている。

しかし、口と足の付け根の長さが、I型はほぼ等しいがD型は口の付け根のほうが若干長い。

左からI型正面・側面、D型正面・側面

同じ時にガチャガチャで入手した記憶もあるので同じ系列ではないかと考えていたが、

同一系列でプロポーションが違う事があっていいのかという思いがあり、確信は持てなかった。

しかし、某クションでパチモンのサンプルが入手されるにしたがって、

I型もD型も、顔は1種類しかなく、カラーはクリアの赤、青、若干透明度の低い黄色の3色なので、

ほぼ確実に同一の系列であると考えられるようになった。

I型、D型のカラーバリエーション

残ったのは、大型のJ型、A型、B型の3種類であった。たまたま同じ泣き眠り目であったので、詳細に比較した。

左からJ型、B型、A型、D型

拡大してみると、J型の泣き眠り目は長円の半分より下を直線で区切っている。

それぞれの直線は鈍角を作り、しかし目と目の間に空間を持っている。

D型は下部を横切るのが一繋がりの曲線で目と目の間も繋がっている。このためD型はJ型と同系列でないと思われる。

A型もB型も目と目の間は若干離れている様に見える。

目を横切るのは直線で、A型は線の交わる角度がJ型よりも鋭角になっている。

それに比べてB型は線は長円の下方にあり角度はJ型に近い。目の特長からすれば、B型のほうがJ型に近いと言える。

ただ、形状的に見れば、大きく深い吸盤を持ち、口と足の付け根の長さがほぼ等しいA型のほうがJ型に似ていると言える。

左からB型正面・側面、J型正面・側面、A型正面・側面

以上の事からJ型とB型が同系列と言えるが、A型にも共通する形状的な共通点があると考えた。

その後、某クション等でサンプルを多く入手して行く過程で、やはり当初の仮説通り、B型とJ型が同系列であることがわかった。

まず、大きなJ型の方にも普通目が見つかり、顔の種類がB型と同じになった。

左からB型、J型

また、顔がないパチモンタコチュウが発見されたが、この形状がJ・B型と同じであった。

これらの顔のないパチモンをJ4型、B2型と命名した。

左からJ型、J4型

左からB型2色、B2型2色

また、非常に珍しい色のパチモンがJ型・B型で見つかった。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

さらに、B型にも赤の普通目、泣き眠り目が見つかって、J型・B型が同系列である事がほぼ間違いないと確信するに至った。

左から赤のB型2種、J型2種

これに対して、A型はほとんど発見例がなかった。

泣き眠り目はA型にそっくりだが、吸盤が扁平なパチモンが見つかり、これをA2型と名付けた。

A2型には普通目も見つかったが、簡単な長円で、B型のような二重丸にはなっていない。

左からA型、A2型

某ショップの閉店セールでA型が3個見つかった。

左から当時持っていたA型、入手した3個のA型

泣き眠り目の他に普通目とウインクと思われるものが新たに見つかった。

目の造形は、今まであったA型よりもさらにラフで、しっかりしたB型の造形のほうがJ型とのデザインテイストの共通点が多い。

このため今までは、A型系列はJ・B型からの派生と考えていたが、このウインクの発見から、

A型系列はH・C型からの派生の可能性が高いとした。

A型とA2型は近い系統であると思われていたが、A型にも赤の白目タイプが見つかった。

このためA2型で見られた顔のタイプは両方ともA型で確認されたため、

A2型はA型の吸盤の形が違う型違いであることがわかった。

左から3個目と5個目がA2型

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で、ここからが本題なのであるが・・・。

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J・B型が同系列であることは、ほぼ確実と思われたが、決定的な物的証拠はなかった。

しかし、苦節三十有余年、物的証拠が確認された。

ケース入りたこちゅう

商品名は「たこちゅう」。

そのまんまである。

プラケースの中に、折り曲げられた紙の台紙があり、J型とB型が入れられている。

J型の緑と、ピンクとオレンジの中間のような色が2個ずつ、

B型の赤と黄色が5個ずつの計14個が入っている。シール等は貼られていないので、当時の販売価格は不明である。

今回入手したものはすべて同じ色構成で、顔は予想通り、泣き眠り目と普通目の2種類しかなかった。

カラーバリエーションは緑、赤、黄色、ピンクオレンジの4色であることも確認できた。

黄色のJ型が見つかっていないが、存在している可能性がある。

J型の黄色も見つかり、両方の型に主要なカラーのサンプルがあることが確認できた。

純正たこちゅう3箱と一緒に、色の組み合わせの違うサンプルも発見された。

今回見つかった、たこちゅうプラケース

ケースと中の台紙は同じものが使われていた。

J型、B2型

中身の入数は、J型2色×2個、B2型2色×5個の14個で同じであった。

J型は赤とクリアオレンジ、B2型は緑と黄色で、先に見つかったセットと違っている。

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J型に関しては、以前白いものを入手している。

J型・B型と同じプロポーションで顔のないパチモンをJ4型・B2型と命名したが、

このシリーズには青のJ4型、ピンクのB2型が見つかっている。

このことから、B型の白や、青やピンクのものも見つかる可能性が考えられる。

左からJ型の白、J4型の青、B2型のピンク

ケースの中には薄いボール紙の台紙が入っている。タイトル部分をコの字型に折り曲げて、タイトルが印刷されてある。

商品名は、まさかの「たこちゅう」。そのまんまであるが、大丈夫なのだろうかと心配になる。

価格やSTマークはない。

台紙には商品名の他に「W(ダブリュー)」に顔のようなものが書かれたロゴが印刷されている。

イラストは鉢巻をして扇子を持った赤い大ダコと、様々なタコチュウが描かれている。

注目すべきはH・C型の小台紙との類似が見られることである。

H・C型の小台紙

左上に黄色に赤の日の丸の扇子を持った大タコ。大タコに怒り目のタコチュウが吸い付く。

その下の行列したタコチュウの先頭は青の怒り目、次は黄色の瞑り目になっている。

その後ろの眠り目は、J型・B型の台紙では、本体にくっついている。

H・C型の小台紙の瞑り目の下に逆立ちした普通目は、J型・B型では最後尾に下向きにくっついている。

下方には、葉脈が書かれた2本のワカメと、

色こそ違え、左が泣き目、右側が瞑り目の2個がキスしている。

これだけの共通点があれば、どちらかがもう一方を参考に描いたと考えられる。

H・C型のほうが、テカリを表すハイライトの表現が、タコチュウにも書き込まれ、

J型・B型の大ダコが、丸に足を生やしたよおうな簡単な描写なのに比して、

H・C型はタコらしい形になっており、足の吸盤も丁寧に描き込まれている。

タコチュウの吸盤も立体感があり、全体的に見て、イラストの完成度からはH・C型のほうがオリジナルであると思われる。

J型・B型の大ダコには鉢巻が見られるが、これはロッテのオリジナルのパッケージイラストを参考に追加したと思われる。

今回発見されたJ型・B型は、パッケージイラストから考えると、

オリジナルを参考にしつつ、先行のH型・C型のパッケージを元にイラストを描き起こしたと考えられる。

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純正「たこちゅう」には、片目を瞑ったウインクはあるが、両目を瞑った顔はない。

パチモンタコチュウにも両目を瞑った顔のものは見つかっていない。

両目瞑りは、パチモンタコチュウのパッケージのみに存在するデザインであり、

その架空のデザインがパッケージが確認されているパチタコのすべての系列に見られるということは、

最初に両目瞑りを描いたパッケージが作られ、他の会社がそのパッケージを参考に作ったということではないだろうか。

左上からG・K・L型、H・C型、左下からJ・B型台紙、J2・F型台紙

現時点での、パチモンタコチュウの派生関係は以下のように推定されている。

パチモンタコチュウ派生関係図

泣き目・眠り目の違いがあり、ベレー帽をかぶったG・K・L型がイラストの出来からも、最初にあるのではないかと思われる。

今まではG・K・L型とH・C型を同格の派生系と考えていた。

しかし、双方のパッケージイラストが明らかになると、眠り目と両目瞑りのキスの絵柄と言う、

偶然とは考えられない類似が見つかってしまったため、どちらかからもう一方が派生したと考えざるを得なくなった。

純正には眠り目と泣き目があったが、これを再現したG・K・L型を祖とし、

純正の目のデザインに酷似させたH・C型は、パッケージに名前を入れずに、敢てボカシたのではないかと思われる。

今回発見されたJ・B型とJ2・F型はH・C型のパッケージでザインを参考にしたと思われ、

派生関係としては、より新しい種類であると考えられる。

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ただ、ここで一点。気になるところがでてきた。

いびつな造形が特長のM型と命名したタイプがある。

これが「たこチュー」という商品名であったことは、台紙付きの状態で見つかったことから確かめられた。

この大台紙のイラストの鉢巻タコが、ロッテのパッケージから取ったものなのか、

今回発見されたJ型・B型からの影響なのかで、派生図を変更しなくてはならない。

右側のタコのリボンが、他のパチモンでも共通してみられた、泣き目と瞑り目のキスのモチーフの影響とも考えられる。

また小台紙のタコのイラストに小さなタコチュウを配したデザインは、

特に鉢巻がない大きなタコの右側に怒り目を配したところは、H・C型の影響を伺わせる。

このいびつなパチモンは、足に線状のモールドを持つが、これは純正にしかない特長である。

このパチタコ本体の形態上の特長に注目すれば、オリジナルに近い独特な系列であると思われていたが、

顔が普通目しかないこととパッケージの詳細な検討の結果、H型・C型→J型・B型の流れに連なるものであると考えた。

パチモンタコチュウ派生関係図

パッケージに描かれたイラストを元に、パチモンの派生関係を上図の様に変更することとした。

これで、主要なパチタコのパッケージと商品名が判明してきたわけだが、

発見数が少ないため、まだ詳細がわからない種類が残っている。

E型しかり、D・I型しかり。どちらもガチャガチャで入手したような覚えがあるが、良くわからない。

最近になって、これらのパチタコに新色が見つかったので、ついでに記録しておく。

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I・D型系列は、前述のように、大きなI型はウインクのみ、D型は泣き眠り目のみで、

色はクリアブルー、クリアレッド、透明度の低い黄色の3種類であることがわかっていた。

この黄色は他の2色に比べてクリア度が低く、ブルーやレッドと同程度のクリアな黄色があるのではないかと思われていた。

某ショップについでで寄ったところ、D型に、このクリアバージョンを発見した。

前列右端がクリアイエロー

数的には透明度の低い黄色のほうが数が多いが、今後、クリアイエローのI型が見つかる可能性もある。

なぜ黄色だけに2色あるのかは、良くわからない。

..

クリアイエローと言えば、今までクリアブルー1個しかなかったE型でも新色が見つかった。

右がクリアイエロー

E型もこの30年以上、見つからなかった。

このタイプもガチャガチャで入手したように思うので、ガチャガチャのハズレとして作られたものと思われる。

たこちゅうの流行期間は短く、最盛期にはガチャガチャでも目玉商品だった時期もあったはずだが、

流行を外れたあとは、純正すらがガチャガチャの数合わせに使われたと思われるサンプルが見つかっている。

これらのガチャ由来と思われるパチモンは、ガチャガチャを何度もできるようなお子様も多くなかったことから、

まとまった数が一度に出てくる可能性は低いと思われる。

しかし、お土産屋用、玩具屋用に、ケースに十数個が入ったサンプルが今後でてこないとも限らない。

流行から30数年。

ネットという強力な武器を活用した探索を継続して、調査を継続して行きたいと思う。

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某クション等でパチモンを含むタコチュウの団体を入手する機会が増えた。

そこから見えることは、パチモンの種類の多さと、組み合わせの多彩さである。

入手したたこちゅうの団体の例

出品者は必ずしも自分で当時から保管してるわけではないが、

落札して送られてくるタコチュウたちはいくつかの系列のものが混ざっていることが多い。

純正が多い組み合わせ。手当りしだいに手に入れたのか、いろんな種類のパチモンが混ざっているもの。

それらを見ていると、当時の子供が駄菓子屋や玩具屋、ガチャなど、考えうるあらゆる手段を使って、

可能な限り集めたという情熱と真剣さを伺い知ることができる。

30年以上を経て、それらの情熱の残り火を集めて、その出自を明らかにしていくことにも、

供養と言うか、多少の意味を持たせることができるのではないかと考える。

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まあ、オマケですよ。

それも、本にもほとんど載らない、社史にも掲載されないマイナーな奴です。

グリコやケロッグのオマケといった有名所じゃないわけですよ。

さらにはそれのパチモン。

随分増えましたけど、所詮駄玩具ですよ。

どうします?こんなに集めて。

中途半端に数がまとまってて、ショップにも売れないですよ。

売るつもりもないけど。

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どっか、博物館でも作りましょうかねぇ。

見ても些細な違いの系列分析なんて、誰もわかんないでしょうけどねぇ。

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