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ハズレたらこれ持ってって

引き籤のハズレへの流用に関して Part.2

「たこちゅう」とは、ロッテ製菓から1976年〜1977年に発売されたチョコレート菓子で、

当時は大流行し、入手困難な純製品に代わって、多くのパチモンが流通した。

オリジナルに近いデザインから、非常にラフなものまで、

中小の駄玩具製造業者が、純製品を、さらには他社のパチモンを真似て、多くの種類のパチモンが作られた。

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そんなパチモンの中で、J型と名付けた大型のパチモンは、強力な吸着力を持ち、

非常に大切にしたことを覚えている。

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当時、パチモンの中で最も多く持っていたのが、後にC型・H型と命名したタイプであった。

このタイプは、純正と同様に顔が彫込みで表現されていて、

そのデザインも純正に非常に近いものであり、オリジナルの影響を強く受けたものであると思われた。

、前列がC型、後列がH型(後列右端が泣き眠り目)

このタイプの特徴は、純正の泣き目と眠り目の中間的なデザインになっていることである。

このデザインを「泣き眠り目」と命名した。

左からH型、C型、J型、B型、D型、A型の泣き眠り目

泣き眠り目はJ型、B型、D型、A型といった他の系統のパチモンにも見られ、

このことから、それらのパチモンはC・H型を元に作られたものであると考えた。

純正やC・H型は顔のラインが彫り込まれているのに比して、他のパチモンはエンボス(浮き出)している。

型を作る時は凹凸が逆になるので、エンボスになるものは型を削れば良いが、

純正やC・H型の顔は型に盛り上がりを作らねば成らず、より技術的に難度が高いと思われる。

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純正は、小型の一種類しかない(スッポリダコ系を除く)が、C・H型系にはH型という大型のものが作られた。

これは、最近見つかった、引き籤の当りとして使われた際、より付加価値をつけるために追加されたのではないかと思われる。

大型のパチタコは、このH型と同じサイズのものが多く見られる。

左からH型、J型、I型、K型、L型

H型、J型、I型(ウインクしかないが、小さいサイズのD型に泣き眠り目がある)はほぼ同じ大きさで、

大型でも違う大きさのK型、L型が見つかっている。このK型、L型(小型のG型がある)系は、

泣き目と眠り目が区別された顔のデザインを持っていることからも、C・H型系とは別の起源のパチモンであると思われる。

左からK型眠り目、L型泣き目

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エンボスの泣き眠り目を持つ、大型のJ型については、それと対になる小型のパチモンがどれなのか、

長いこと確信を持てなかった。

目のデザインから見れば、前掲の写真のB型、D型、A型が考えられた。

左からJ型、B型、A型、D型

D型は、大型のI型と同じ紺、クリア赤、黄色の3色が見つかり、どちらも顔が一種類であることから、同じ系統であると考えられた。

(後にクリア黄色が見つかったが、同じ材質でも原材料の配合の違いで色が変わることがあるらしいので、この結論は揺るがないと考える)

後列D型、前列I型

A型については、深い吸盤を持ち吸着力が強く、脚と口の吸盤の付け根が同じ長さで、形態的にJ型に似ており、

目のデザインもJ型に似ているように見えたが、発見数が非常に少なく、確証が得られなかった。

左からA2型2個、A型4個

しかし、泣き眠り目の横棒の傾きが急であってB型のほうがJ型に近いことがわかり、

後に普通目の他にウインクが見つかったことから、別の系統であると考えることにした。

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当初、J型は赤と黄緑色の2色が見つかっており泣き眠り目が見つかっていた。

B型は黄色と緑の2色が見つかっており顔は泣き眠り目と普通目の2種類が見つかっていた。

形態的には、J型は脚と口の付け根の長さがほぼ等しく、吸盤は深い。

B型は、口に比べて脚の吸盤の付け根が長く、口吸盤は薄いという違った特徴を持っている。

この形態の違いもあり、2種を同じ系列と確信するに躊躇があった。

左からB型正面・側面、J型正面・側面

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後に、某クションで赤い泣き眠り目のB型が見つかり、J型にも普通目が見つかった。

赤と黄緑と同じ色があり、どちらも非常によく似た泣き眠り目と、普通目という2首の顔を持つことから、

J型とB型が同じ系統である可能性が高まった。

さらに、他のパチモンに見られない蛍光ピンクで、J型・B型のそれぞれに泣き眠り目と普通目が見つかったことで、

この2種類が同じ系列であることが確信されるに至った。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

また、別の出品者から入手したパチモンの中に、顔の無いものが見つかった。

大小の2種があったが、これが形態的にJ型とB型に酷似しており、

ロッテの純正への配慮か、パチモン製造会社同士の軋轢か、なんらかの理由で顔のデザインを埋めて消した可能性がある思われる。

こののっぺらぼうのパチモンの存在からも、J型とB型が同じ系列であると考えた。

右がのっぺらぼうタイプ。左側がJ型(上)・B型(下)

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この件に最終的な回答をもたらす物証を得ることができた。

この2種類が同じケースに入ったサンプルを入手することができたのである。

プラスチックケースに台紙が入れられており、

J型4個、B型10個が入っている。色はJ型が緑と蛍光ピンク、B型が赤と黄色である。

商品名は「たこちゅう」で、Wに顔のロゴがある。

イラストは鉢巻をして扇子を持った大ダコと、いくつかの小ダコが描かれているが、

その子ダコのデザインはC・H型の小台紙に似ている。

C・H型の小台紙

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以上の検証から、J・B型は同じ系列であり、Wに顔のロゴマークのメーカーの製品であることがわかった。

このWに顔のロゴマークが描かれた小台紙が見つかった。

落札したパチモンタコチュウ

ビニール袋に小台紙とJ型と、新種の小ダコが入っていた。

J型は赤と緑で、緑色は今まで見つかったものよりも若干色が淡い。

一緒に入っていた小ダコは、脚の付け根がほとんど無く、色は緑と赤と白、蛍光ピンクの4色が見つかった。

蛍光ピンクは他の系統のパチモンにはなく、このWに顔のメーカーの特徴と言える。

この新種の小ダコをP型と命名した。

パチモンP型

J型・B型・P型の系列は、Wに顔のロゴのメーカーの製品であることがわかった。

このメーカーは、C・H型の泣き眠り目もコピーし、

小台紙のイラストも似せており、C・H型パチモンのコピーである可能性が高いことがわかった。

左側がJ・P型の小台紙、右側がC・H型系列の小台紙

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わかりましたかぁ?

J型・B型・P型の系列は、Wに顔のロゴのメーカーの製品なんですよぉ。

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で。

ここからが本題である。

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このWに顔のロゴがついた、引き籤を入手した。

枠に番号が振られており、左上から1から30までの番号が刻印されている。

当りはミニチュアの工具等、スヌーピーのバイバイハンド、将棋のコマやマージャン牌、鈴のキーホルダー、

スペクトルマン等のキーホルダーである。

一番下にパチモンタコチュウのB型と、クマの根付がゴッチャリと入っている。

右下には数字合わせとかかれた紙製の引き籤が入っている。

この全てがビニールのシートで被われている。

横枠には両面テープが細く貼られており、番号の枠のビニールを破いて商品を取り出すもののようである。

最下段の拡大

入っているタコチュウのB型は、緑、黄色、赤、蛍光ピンクの4色であった。

数は正確にはわからないが30個くらい入っている。

他にはクマと、ひょうたん(?)の根付が入っている。

写真でみてもわかるが、造形的にもゆるく、いかにもハズレなブツである。

パチモンとはいえ、たこちゅうが、こんなハズレと同じ扱いをされているのである!

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今回はデッドストック状態のものを入手したので、蓋も併せて観察することが出来た。

蓋には、「NEW FASHION ACCESSARY」と書かれている。

右下にはWに顔のロゴと、「全玩規協 大535」と書かれている。

蓋の短辺の側面にも商品名やメーカーロゴ、「全玩規協 大535」の文字が見られた。

「No.200-80」とあるが、当りが30枠でハズレが50個、計80本ということのようである。

蓋側面のロゴ

この全玩規協は「全国景品付玩具、菓子規制協議会」のことで、昭和44年に結成された業界団体である。

東京、名古屋、大阪に支部があり、それぞれに登録したもののようで、「大阪支部の535番」という意味のようである。

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以前、「引き籤のハズレへの流用に関して」として、同様の引き籤を紹介したことが有る。

パチモンタコチュウの入った引き籤

この時は状態が悪く、ハズレの中には様々な駄玩具が混入していたが、

それでもパチモンタコチュウのB型が14個見つかった。色は今回と同じで、緑、黄色、赤、蛍光ピンクの4色であった。

その際は、蓋に「全玩規協 大512」の文字と恵比寿の顔が描かれていた。

このことから、パチタコB型の製造メーカーであるWに顔のロゴの会社の他に、

恵比須のロゴの他の会社にもパチタコがハズレとして供給されていたことが考えられる。

どちらも、大阪支部に加入したメーカーの引き籤に入っており、

製造メーカーであるWに顔のロゴを持つ会社も関西の会社であることがわかり、

パチタコJ・B・P型が、関西由来であることが判明した。

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最近、「キッスだこ」という箱入りのC・H型のセットを入手した。

出品者の情報によると、これも引き籤で、大きめな箱に入っていて、

他にも駄玩具がセットされていたそうである。

箱には、「赤玉(当り)おすきな「タコ」2個とって下さい」とある。

つまり、このC・H型は当りとして入れられていたのである。

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ロッテから「たこちゅう」が発売されたのは、1976年〜1977年であった。

当初は非常に人気が出て、店頭から無くなる程の人気を博したが、あまり長続きせず、

半年程で新型のスッポリダコを投入したが、「パッとしなかった」そうである。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」より

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顔のデザインが純正に似ているC・H型や、それを真似たと思われるJ・B型、

また、C・H型系とは違うがオリジナルの影響の濃いK・L・G型には、プラスチックケースに入ったセットが見つかっている。

C型が入った「タコチュー」プラケース入り

J・B型が入った「たこちゅう」プラケース入り

K・L・G型が入った「たこちゅうセット」帽子ケース入り

また、「キッスだこ」が当りとして引き籤に入れられていた。

これらのオリジナルに近いと思われるパチモンは、「たこちゅう」の初期の流行期に接して発売されたため、

比較的多数のセットが、高い販売価格で売られていたことを示していると思われる。

並行して、台紙に小台紙袋入りといった販売形態も見られ、ケース入りよりは安価に主に駄菓子屋で売られていた。

C・H型の台紙

J2型・F型の台紙「チュチュ たこちゃん チュ!」

M型の台紙「たこちゅー」

多分、これらの販売形態の後、たこちゅう人気が衰えて、

引き籤や他の玩具との抱合せによって在庫整理に入ったと思われる。

K・L型が流用された「スペースインベーダー」

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このように見ていくと、短期間だった「たこちゅう」の流行に引きずられて、

さまざまなパチモンタコチュウが生まれ、その瞬間瞬間の「たこちゅう」人気に合わせて

様々な販売形態をとっていたことが見えてくるように思う。

手に入りにくかった純正たこちゅうの代りに、なるべく多くのパチモンを手に入れたい子供と、

子供の購買力ではたかが知れているので、ケース入りにして大人に買い与えてもらおうとする業者。

子供達がタコチュウに飽きてくると、ガチャガチャや小台紙袋入りでちまちまと売り捌き、

人気が無くなると、引き籤のハズレとして在庫一掃をはかる・・・。

こんな、駄玩具を通して、昭和の一時期、子供と、子供を取り巻く大人たちの

様々な思惑が透けて見えて、大変興味深い。

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・・・と言っても、たこちゅうですよ。

気が付いたら、2015年が終わりますよ。

1976年発売だから、来年で40周年ですよ。

40年も前のおまけの、それもパチモン!

・・・何やってるんですかねぇ?

何時まで続けるんでしょうねぇ?

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