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魅惑の強化パーツ

スポーツ大将

ピコタンの歴史は思いのほか長く、ピコタン出現の前史を解明してきたが、

ピコタンの進化形、2パーツのポーズブロックもさらに改良されていたことがわかった。

タイトルはスポーツ大将。

中には3体のポーズブロックに、強化パーツが装着されている。

それぞれ3パーツが追加されており、それぞれが野球、アメフト、ボクシングの選手になっている。

パッケージのイメージイラストと並べてみた。

基本になるポーズブロックに、以下のパーツが追加されている。

ベースボール:頭の穴に装着する帽子。胴体の穴に装着するミットとボール、両手に装着するバット

フットボール:胴体の穴に装着するプロテクター、両手にそれぞれ装着するボール

ボクシング:胴体に装着するサンドバックとパンチボール、両手にそれぞれ装着するミット

ベースボールの帽子やフットボールのプロテクターなど、かなりいい感じのパーツもあるが、

ミットやバットなど、手に装着するパーツには可動部がなく、そのためポーズの変化に乏しいのが残念である。

手に装着するパーツが可動し、ボクシングのミットが前に出たり、バットが振れたりすれば

格段にイメージ喚起力が向上すると思われる。

金額は書かれていないが、数百円程度であるとすれば、これ以上の追加パーツの工夫は難しいのかもしれない。

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パッケージは紙製で、この玩具のためにデザインされたものである。

タイトルはスポーツ大将。スポーツマンロボのサブタイトルがついている。

元になる2パーツピコタンを、ロボくんブロックの名称で販売していたことがわかっている。

この腰のジョイントで動きを出したものをロボットにみたてて、

それまでの人間のブロックからイメージチェンジを計ったものと思われる。

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箱の上部には穴があり、この部分に紐を通すか、什器の棒に通して陳列したものと考えられる。

これは、お土産屋等でよくみられる展示形式で、この点からもスポーツ大将は比較的高価な価格設定で、

お土産などとして、親などに買い与えられることを考えてつくられたと思われる。

「おもしろ軍団」のキャッチコピーの「軍団」という言い方も、

明治合体チョコボールなどの当時の食玩で多用されたように思う。

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箱の裏面には遊び方がかかれている。

強化パーツを入れ換えたり、2パーツピコタンの特徴を活かしてさまざまに組み合わせることを推奨している。

「君もいろんな変身、合体を考えてみましょう!」とあるが、

これはポーズブロックの「あそびかたをいろいろかんがえましよう!」(ママ)のコピーに通じる。

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製造メーカーは、2パーツピコタンの意匠権を持つマルコー産業であることがわかる。

ロボくんブロックや合体基地の台紙にみられた丸の組合せと「産」の文字のロゴではなくなっている。

スポーツ大将のパッケージにみられるロゴとSTマーク

ロボくんブロックのパッケージに見られるロゴ

STマークには「K5413301」と書かれている。

K以下の最初の2桁は昭和の年度を表すと考えられる。ということは、ロボくんブロックの昭和52年より新しく、

2パーツの人間型ブロックにパーツを追加することで、延命を計ったと思われる。

また、昭和52年から昭和54年の間にマルコー産業ではロゴの変更が行われたようである。

調査の結果、アルファベットは団体名、次の3桁がメーカーコード、次の1桁が昭和の年号の下一桁を表すことがわかった。

そのため、ロボくんブロックは昭和50年、スポーツ大将は昭和53年の登録となる。

ロボくんブロックのパッケージに見られるSTマーク

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2パーツピコタンタイプに強化パーツを追加するアイデアは非常に面白いが、

発売が昭和54年(注:昭和53年の誤り)とすれば超合金などの玩具も多く出回り、

また、強化パーツが可動部が少なくあまりポーズに変化を持たせられないことから、

このスポーツ大将が大ヒットしたとは考えにくい。

トミーのタックルボーイから始ったと思われる人間型ブロックの進化の流れの中で、

単純なジョイントで楽しませる人間型ブロックにパーツを追加してしまうという

人間型ブロックの基本的な楽しみ方を否定してしまうような製品がでたということは、

ある意味、進化の頂点をしめすものであり、同時に人間型ブロックの限界を象徴するのではないだろうか。

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でも、これさぁ、折角ここまでやるんなら、

スポーツじゃなくて、武器セットとか持たせたらカッコよかったのに。

もともとスカート付きのドムみたいなカッコウなんだから、

肩にはめ込むバズーカとか、手に付けられるサーベルとか銃とか、様々な形の頭部や胴体のアーマーなんか作れば、

超合金の敵役として、ガンプラの代りとして、結構イイ線行ったんじゃないかと思うんですがねぇ。

スポーツじゃぁ、広がらないじゃん。スポーツじゃぁ。

中途半端に高かったんだろうから、数も集めらんないし。

折角良いアイデアなのに・・・。惜しいなぁ・・・。

この辺が、駄玩具メーカーのオリジナルアイデアの限界なんでしょうけど。

まあ、今更どうでもいいことなんですけどね。

(参考資料:「2パーツピコタンの意匠広報特許電子図書館の「意匠文献番号索引照会」より

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