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オリジナルなパチモンのパチモン

UFO宇宙セット

明治製菓から「合体チョコボール」というオマケ付のチョコボールが発売された。

「きのこの山」の発売と同じ1975年のことであった。

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「きのこの山」の、発売30周年記念サイトに、「きのこの山の同級生たち」ということで、

当時の新発売当時の画像が掲載されていた(現在はなくなっている)。

※明治製菓様より画像使用許諾。無断転載を禁ず。

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今となっては非常にレトロな感じすら受けるデザインだが、

円盤やロボット、宇宙船などをかたどった、プラスチック製のオマケが封入されていた。

箱の裏側には、マンガ調の宇宙基地が描かれており、

右側中央部に見られるパイプが上下左右(先頭部分は左側のみ)で繋がるように描いてあった。

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その種類の総数は不明であったが、この画像から、

「パッケージ裏面(20種類)及びおまけ(24種類)」があったことがわかった。

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当時は、著作権意識の高まりから、アニメキャラを使ったオマケが控えられ、

商品ごとのオリジナルキャラクターが作られたようである。

これらのオマケには、吸盤(たこちゅう)や、合体(ピコタン、明治合体チョコボール)等のギミックを持たせ

、コレクションすることで大量消費を促す効果を持たせていた。

各社が様々なオマケ付菓子を投入する中で、発売期間は長くなく、1〜2年で販売中止にされていった。

そんな中でも、明治合体チョコボールは人気を保ち続けたようで、いくつかの弾分けが確認されている。

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先に紹介した新発売時の画像にもみられるものは発売当初のものと考えられ、前期・中期型と命名した。

前期と中期のものには、同じ種類でもロボットの顔や飛行機のキャノピー(風防)等の形状が違うものがあり、

デザインテイストが地味目のものを前期、例えばロボットの目が大きく、はっきりしたデザインのものを中期型とした。

この前期・中期の分類は、一部の種類では確定しておらず、

型違いが3種類以上あると思われるものもあり、前期と中期は一まとめにして扱うことにしている。

前期と中期と思われる2つのパターン
操縦席の形状と車体後部の線の間隔の違い
操縦席の形状の違い
後部の角状突起の有無
顔の表情

その後の研究の結果、前・中期には複数の型違いが見つかった。

詳細は「明治合体チョコボールの前・中期の再検討(前半)

を参照されたい。

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前期・中期型にない種類で、より洗練されたデザインのものを後期型とした。

円盤型母船2型(後期)

円盤型母船3型(後期)

宇宙空母(後期)

高速連絡艦(後期)

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また、宇宙人や宇宙服を着た人間のデザインで、足に差し込みの棒状の突起のあるタイプが追加された。

このタイプでは、乗り物に、人間型のオマケを差し込む穴がみられることから、これらを最晩期型と命名した。

このあたりの弾分け、種類数等に関してはまとまった資料がなく、確定的なことは言えない状況である。

艦隊旗艦用戦闘艦B型(最晩期)

新型六輪装甲車(最晩期)

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発売当初は人気があったらしく、画像にある新発売時の前期・中期型のデザインを模したパチモンが多くみられる。

パチモンの中でも、前期・中期のデザインを正確に模したシリーズとして、パチモンA型と命名したシリーズがある。

パチモンA型カラーバリエーション

ほぼ前期・中期型のデザインを模しているが、三角翼戦闘機の主翼前縁や、人面型宇宙船の後部等に突起が追加されているのが特徴的である。

純製 パチモンA型 パチモンB型
風防が半球形で大きい 翼前縁に機銃を持つ 風防が細長く垂直尾翼が簡素化されている
全高が高い 円窓の後に突起がある 船体が薄くなり円窓と突起が低い

ロボットの顔は、目が大きな中期型を模したデザインであり、

中期型を元に、ちょっとした工夫を付け加えたデザインのパチモンであるといえる。

(空挺のみは2種類あり、前期・中期それぞれのデザインを模したものとなっている。)

空挺1型(純製前・中期)
落下傘バンドが太く、胴体後部にも続いている

空挺2型(純製前・中期)
胴体に落下傘バンドの様な線がある

空挺3型(パチモンA型)
純製1型のコピーで、若干小さい

空挺4型(パチモンA型)
純製2型のコピーで、若干小さい

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余談だが、この一部に突起を加えたデザインを模したと思われるパチモンも存在している。

パチモンB型と命名したもので、種類はA型と重なっており、一部が省略されている。

A型の爆撃機にあった増槽の小翼はなくされているが、三角翼や人面型宇宙船の突起は残っている。

当時、駄菓子屋で同時に販売されている記憶がある。

商品名は不明だが、大台紙に、タグ付き袋入りで50円で売られていた。

パチモンB型カラーバリエーション

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このパチモンA型と命名したタイプが、デッドストック状態で某クションに出品されることが増えてきた。

大台紙に、タグ付き袋入りで、商品名は「合体基地」。

12袋がホチキス止めされていて、価格は一袋50円だったと記憶している。

12袋のうち、4袋は14〜15個入りだが、8袋はA型オリジナルの大型が1個とA型が3個入っていた。

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この大型は、パチモン独自のデザインで、2種類あり、合体用の突起や凹部が多数あり、

宇宙基地として使うことができる。大型には独自規格の凹凸が上下にあり、

母船自体が縦に合体できるようになっている。

パチモンA型大のカラーバリエーション

これら大型のデザインは、実はロボットアニメに影響を受けたものであることに気が付いた。

画像検索等で調べてみたところ、双胴の母艦は、アニメの「鋼鉄ジーグ」のビッグシューターに、

大型円盤は「UFOロボ グレンダイザー」のスぺーザーに酷似していることが判明した。

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この合体基地には、ブリスターパック入りの別バージョンも見つかっている。

上部を欠損した大台紙に6個の小台紙付ブリスターがホチキス止めされている。

大台紙に、「(上部欠)ーカー」「回転すると画面がかわる?」・「7面にスライドするナンバーセブン」という

コピーが印刷されており、車にルーレットが付いたような玩具のものを流用したようである。

この大台紙には「マルコー産業K・K」の文字とロゴが印刷されている。

ブリスターには、上部に丸い穴があり、店頭にかけたフックに下げて販売することもあったと思われる。

本来は、玩具店や観光地の土産物屋の店頭にフックにかけて展示販売するように作られたものを、

他の駄玩具の大台紙にホチキス留めして、狭い駄菓子屋の店頭で見やすくしたものと思われる。

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小台紙には商品名の他に、マルコー産業のメーカーロゴとSTマークが印刷されている。

イラストはロボットアニメのプラモのボックスアートっぽいイラストで、

A型大型の双胴の母船と大型円盤が描かれている。

左下部の航空機は、純正前期・中期に見られる高速偵察機に似ているが、

このタイプはパチモンA型にはないので、イラスト作成時には、純正のオマケを参考にしたと思われる。

高速偵察機1型(前・中期)
大型のエンジンを積んだ高速の戦術偵察機

高速偵察機2型(前・中期)
純製1型に似るが風防の後部にラインがある

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STマークは「K541」であった。

STマークは、調査の結果、最初のアルファベットは「一般財団法人 日本文化用品安全試験所」の管轄であることを示し、

その後の3桁はメーカーに付与された番号であることがわかった。

結果、マルコー産業はK541が付番されていたことがわかる。

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K541は、ピコタンの2パーツパチモンにオリジナルのスポーツのパーツを付け加えた、「スポーツ大将」にも見られる。

STマークは、先述の通り、最初のアルファベットは団体を表し、その後の3桁がメーカーコードである。

その次の1桁は昭和の年号の下一桁を表し、それ以降の3桁がその商品の固有番号になる。

スポーツ大将は昭和53(1978)年の登録であることがわかる。

明治製菓のピコタンが発売されたのは1974年なので、

ピコタンの人気も廃れ、4年も経ってからの在庫品にパーツを追加して販売し直したものと考えられる。

スポーツ大将のパッケージにみられるロゴとSTマーク

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ピコタンの腰部にジョイントをプラスした駄玩具は、マルコー産業から意匠権登録がなされていることがわかっている。

...........................特許電子図書館より引用

この意匠公報の番号「PAT.471097」は、2パーツパチモンとインベーダー消ゴムがセットされた、

ロボくんブロック」という商品に書かれていた。

「合体基地」の別バージョン同様に、台紙にブリスターパックされた形態で、上部に店頭販売用の穴がある。

この台紙の下部にメーカーロゴとPAT番号、STマークが印刷されている。

「P5270012」は、先のマークの読み方から日本プラスチック玩具工業協同組合((財)化学研究評価機構高分子試験・評価センター?)の、

メーカー番号が527、登録は昭和50年を表すものと思われる。

ピコタンの発売から1年後で、まだピコタンの人気がある内に意匠登録をして、他の駄玩具メーカーに先んじたものと思われる。

先の「スポーツ大将」は昭和53年。 その間に合併等のなんらかの事情で複数の番号を持ったものと思われる。

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P527のメーカー番号のあるSTマークは、ピコタンのパチモンでも見つかっている。

パチピコ顔ありC型と命名した、胴体に3本の線があるパチモンが72個が、リンゴ型のぷらしちっくケースに入っている、

人間ブロック」である。

番号は「P5270005」なので発売は昭和50(1975)年だったことがわかる。

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マルコー産業のロゴが確認できた駄玩具では、

たこちゅうのパチモンが一個とUFOの消しゴム製のコマが、タグ付き袋入りになった「UFO消しゴマ」がある。

UFO消しゴマに入っていたパチモンのタコチュウは、G型と命名したもので、パチモンには珍しく水に浮く素材で作られている。

このパチモンは、純正たこちゅうとほぼ同じ大きさのG型のほかに、大型のK型、中型のL型が見つかっている。

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前列からG型、L型、K型

K型は、ほかの大型のパチモンタコチュウよりも若干小さい。

左からJ2型、K型、L型、純正

H型系やJ型系、I型などの他のパチモンはほぼ同じ大きさなので、

このK型のサイズの独自さは特徴的で、ほかのパチモンと進化上の隔たりを感じられる。

UFO消しゴマには、中型のL型が入っているものも見つかっている。

パチタコL型が入った例

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また、パチタコK型、L型、G型が一緒に入った、帽子型ケースに入った「たこちゅうセット」が、ぜんまい太郎氏より提供された。

このケースにはSTマークのシールが貼られており、番号は「P.5441200」であった。

4ケタ目の「1」から、昭和51(1976)年を表すが、ロッテ「たこちゅう」が発売された年にあたる。

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メーカーナンバーが「P.544」の例は、明治合体チョコボールのパチモンA型が、

プラスチックケースに入った「UFO合体基地セット」にも見られた。

番号は「P.5440150」で、昭和50(1975)年は明治合体チョコボールの発売された年である。

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メーカーコードが「P544」であるほかの駄玩具としては、「合体スリー」という3種類の宇宙船のセットがある。

「合体基地」と同様の台紙にブリスターパックで、3個のプラスチック製宇宙船が入っている。

前後に棒状ジョイントがあり、つなげることができる。

この台紙に印刷されているSTマークは「P.5444」となっており、昭和54(1979)年の発売と思われる。

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合体スリーには別バージョンの台紙のものもあり、こちらはSTマークは「K5412224」で、

ロゴマークはなかったが、アルファベットで「MARUKO」と印刷されていた。

合体333(スリー)別バージョンとそのSTマーク、メーカーロゴ

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「UFO消しゴマ」に入っていたパチモンタコチュウと、合体スリーを組み合わせて、

ブリキのUFOを追加したお土産用と思われるセットが見つかっている。

スペースインベーダー」である。

数百円の値段をつけたと思われる贅沢なセットで、玩具店や観光地のお土産屋の店頭に掲示するための穴があけてある。

中型の台紙に、ブリキのUFOとパチタコK・L型が各2個、合体スリーが3種類一個ずつ、ブリスターパックされている。

STマークは「M2592005」であった。数字の4ケタ目は2で、昭和52(1977)年を表す。

タコチュウの販売は1976〜77年であるので、たこちゅうの人気に陰りが出て、在庫処分的にほかの玩具と組み合わせたものと思われる。

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STマークが同じ番号で、類似の駄玩具セットが見つかっている。

商品名は「UFO軍団」で、「スペースインベーダー」とほぼ同じ大きさの台紙に、ブリキのUFOが2個、

タグ付き袋入りの「UFO消しゴマ」が1袋、ブリスターでセットされている。

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STマークの番号は「スペースインベーダー」と全く同じで、商品名もセット内容も違うのに、同じ付番されているのは、

ST番号の申請が比較的寛容に運用されていたと考えられる。

これらの台紙にマルコー産業の記載はないので、マルコー産業のプラ駄玩具を仕入れてブリキ玩具と組み合わせた他のメーカーが、

自社製品としてSTマークの申請をした可能性もある。

左が「UFO軍団」、右が「スペースインベーダー」

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これらのことから、マルコー産業を表すSTマークの記号は、K541、P544、P527、M259の4種類があることが分かった。

STマークの記号と発売年、ロゴをまとめると以下のようになる。

商品名 ネタ元 STマークメーカー記号 登録年 ロゴマーク
合体基地別バージョン 明治合体 K541 - マークロゴ
スポーツ大将 ピコタン2パーツ K5413301 昭和53(1978)年 アルファベットロゴ
ロボ君ブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 マークロゴ
人間ブロック ピコタン P5270005 昭和50(1975)年 ロゴなし
たこちゅうセット たこちゅう P5441200 昭和51(1976)年 ロゴなし
UFO合体基地セット 明治合体 P5440150 昭和50(1975)年 ロゴなし
合体スリー P5444 昭和54(1979)年 マークロゴ
合体スリー K5412224 昭和52(1977)年 アルファベットロゴ
スペースインベーダー たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし
UFO軍団 たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし

3種類の記号に時系列的な関係はみられず、販売地域や販売業種(玩具店か土産屋等か)、

玩具の種類による取扱い団体の違い等が考えられるが、詳細は不明である。

これらの最初についているアルファベットには意味があったと考えられる。

※現在の「一般社団法人 日本玩具協会」のホームページによると、メーカーが所属する団体の略称になっていることがわかっている。

現在ではアルファベット1桁と4ケタの番号で受付番号を構成すると書かれている。

名     称

所   在   地
東京玩具製問協同組合 〒130-8611 
東京都墨田区東駒形4-22-4
東京玩具工業協同組合 〒130-0005 
東京都墨田区東駒形4-16-3
日本プラスチック玩具工業協同組合 〒111-0052 
東京都台東区柳橋2-22-13
日本空気入ビニール製品工業組合 〒111-0052 
東京都台東区柳橋2-22-13
日本プラモデル工業協同組合 〒111-0051 
東京都台東区蔵前4-20-12
大阪玩具事業協同組合
(社)日本玩具協会大阪支部
〒542-0066 
大阪府大阪市中央区瓦屋町2-4-1
玩具人形会館内
東京玩具人形問屋協同組合 〒111-0053 
東京都台東区浅草橋2-28-14
中部玩具人形工業会 〒451-0043 
愛知県名古屋市西区新道2-15-17
日本バルーン協会 〒166-0014
東京都杉並区松の木3-12-11

<サイトより引用>STマーク使用許諾契約の契約番号中のアルファベットに対応して下表のとおりとする。

なお、STマーク使用許諾契約者の間で合併等の事由により、

一の使用許諾契約者が複数の契約記号を有することになる場合は、協会が別に指示するところによる。

契約番号中の
アルファベット
名     称 連   絡   先
A・E・M
D・K・T
一般財団法人 日本文化用品安全試験所 〒130-8611
東京都墨田区東駒形4-22-4
一般財団法人 日本文化用品安全試験所  大阪事業所 〒578-0921
大阪府東大阪市水走3-6-14
C・P・V
(財)化学研究評価機構
高分子試験・評価センター
〒135-0062
東京都江東区東雲2-11-17
一般財団法人 化学物質評価研究機構
東京事業所
〒345-0043
埼玉県北葛飾郡杉戸町下高野1600番

※当時の番号については、直接「日本玩具協会」に電話で直接聞き取り調査した結果に基づいている。

この表に、KやMはないが、ST基準適合検査を実施する指定検査機関の表の中にはあり、

その略号ではないかと思われるが、ホームページには当時の契約番号についての記載はなく、具体的な情報は得られなかった。

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マルコー産業は、明治製菓やロッテが新発売したオマケ付き菓子のオマケを独自の型を起こして、広く製造していたことがわかった。

オリジナルのオマケを基に忠実に再現しつつ、デザインをちょっといじって模倣感を薄め、

ピコタンの2パーツ駄玩具に至っては、腰部の球ジョイントを追加し、

ついでに合体部分の基本要素も意匠登録してしまうほど、パチモンの製造に熱心だったことがわかる。

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駄玩具の難しいところは、製造元と販売元が違うことがあるということを、同好の先輩から教えていただたいたことがある。

他社の駄玩具を仕入れて、組み合わせたりパッケージを作ったりして、自社ブランドとして販売することがあったようである。

たとえば、マルコー産業が意匠登録をしたピコタンの2パーツパチモンがある。

マルコー産業はこれを「ポーズブロック」という名称で発売した。

タグには商品名とイラストが描かれており、3個が肩を並べているのは、

先の「ロボくんブロック」の台紙のイラストに似ている。

裏面には、メーカーロゴと、「PAT.P.」の文字がある。これは、「意匠登録出願中」を意味する。

つまり、ロボくんブロックの台紙に印刷された「PAT.471097」の前、申請中のタイミングで、

「ポーズブロック」が先行して発売されたことを表すと思われる。

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某クションで、この「ポーズブロック」の別バージョンが見つかった。

透明の薄いプラスチック製のケースに、2パーツパチモンが16個と、こぶしの直径と同じ太さの棒が4本入っている。

この棒を使ってよりダイナミックな組み方ができるようになっている。

厚紙製のふたがあり、「ポーズブロック」という商品名と一緒に、「エンゼルボール株式会社」の文字がある。

「エンゼルボール」と「マルコー産業」の関係はわからない。

しかし、ケースに貼られたSTマークには、「ロボくんブロック」の台紙に印刷されていたのと同じ、

P5270012の番号が確認できた。

最初のアルファベットと数字3ケタはメーカーを表すので、このST番号をとったのはマルコー産業であると思われる。

商品名とSTマークの番号が同じで、メーカー名がちがっている2種類の「ポーズブロック」があるということは、

マルコー産業が開発し、STマークを取って製品化した駄玩具を、

エンゼルボールが仕入れて、自社の独自のパッケージで売ったと考えられる。

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ここまでが、復習。

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マルコー産業という駄玩具メーカーが、1970年代に流行ったオマケのパチモンを作り、

様々に展開して販売していたことがわかった。

同時に他のメーカーにも卸して、さまざまな駄玩具セットが多くの会社から発売されていた、

ということが、多くの資料から確認された。

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で、ここからが本題。

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マルコー産業が明治製菓の合体チョコボールを模倣して作った「合体基地」には、

マルコー産業が独自にデザインした(?)の大型のものが作られた。

大型宇宙空母A型(パチモンA型)
円盤型艦艇の母艦として遠隔地で行動できる

大型宇宙空母B型(パチモンA型)
戦闘艦隊の母艦として強力な砲撃力を持つ

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某クションで、この大型のパチモンが入れられた射撃遊びのセットを発見した。

名前は「UFO宇宙セット」。

プラスチック製の円盤が1個と、バネが内蔵されたロケット弾が2本、このロケット用の専用の銃が1丁入っていて、

なぜか、この大型パチモンが追加されている。

合体基地のブリスター台紙とよりも古臭い絵柄の宇宙飛行士が描かれている。

合体基地の大型パチモンが上下に合体した状態や、ミサイル、なぜかエックス翼の戦闘機等がレトロなテイストで描かれている。

台紙の右下には大型パチモンの組み合わせ方が図解されて描かれている。

このセットにおいてはセパレート宇宙船と名付けられていることがわかる。

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興味深いのは、台紙の左上に描かれたロゴマークで、漢字の田を丸くしたものを中心にカタカナのフの字が四方に書かれている。

このロゴは、人形型ブロックの日本における元祖ともいうべき、「ブロックボーイ」、「ピンキーブロック」を作っていた

藤田屋商店のものであることが分かっている。

これは、ピンキーブロックの小台紙流用された「コンテナカー」の台紙

アテもんに使われたプラスチックケース入りの「ピンキーブロック」の襷紙や取説、

ビニールの袋型ケースに入った「ピンキーブロック」「ブロックボーイ」の紙箱等、

ピエロ型人間ブロックを中心として、プラスチック駄玩具で数多く見つかっている。

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玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用 玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

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藤田屋商店は、数年前にピンキーブロックを調べていたときに電話取材をしたところ、

プラスチック玩具の製造販売をしていた会社で、ドイツの玩具ショーで見かけたピエロ型のブロックを、

海外のメーカーにロイヤリティを支払って自社製品として販売していたことがわかった。

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「ピコタンの前身、ピエロ型についての詳細は、

徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

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今回、検索してみたところ、藤田屋のホームページができていた。

現在は藤田屋といい、ロゴマークは健在のようである。

いまでも当て物は主力商品で、ゲームやキャラクターもの、水鉄砲などの当て物が売られているようである。

当て物のページには、

「当てもの商品は、随時入れ替わります。在庫につきましては、是非一度お問合せ下さい。」

と書かれており、仕入れられた他社製品を組み合わせて当て物商品を作っていることがわかる。

トップページには、「子供たちに人気のある小物玩具を国内および中国から大量に仕入れています。」と書かれている。

この文面からすると、少なくとも現在は製造に関する機能は持っていないのかもしれない。

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どちらにしても、マルコー産業の明治合体チョコボールのパチモンを仕入れて、

射撃遊びのセットに追加して販売したと考えた。

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この台紙にはSTマークが印刷されており、「B1383506」であった。

これによると藤田屋商店のコードは「B138」で、この射撃セットが発売されたのは昭和53(1978)年であったことがわかる。

明治合体チョコボールの発売は昭和50(1975)年なので、駄玩具としては随分遅くに売り出したモノであることがわかる。

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以前入手した藤田屋商店の射的セットにもSTマークがあり、番号は「B1386」であった。

射的セットに印刷されたSTマーク

台紙の古さや封入された怪獣玩具の古風なデザインから4桁目の6は、昭和46(1971)年を表す可能性がある。

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東京の駄玩具メーカーであるマルコー産業の作った合体チョコボールのパチモンが、

大阪の当て物販売メーカーで、ピコタンの前身であるピエロ型を作った藤田屋商店の射撃セットに使われたと考えられ、

東西の駄玩具メーカーの奇跡のコラボ!・・・と、

話をまとめようと思った。

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・・・・・・が!

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実際にUFO宇宙セットに入った「セパレート宇宙船」を詳細に見たところ、

違う型で作られたものであることがわかった。

左からマルコー産業製、セパレート宇宙船

大きさは若干、セパレート宇宙船の方が小さい。

セパレート宇宙船は船体中央の窓のモールドと、水兵尾翼の突起が省略されている。

船体後部上方のドッキングジョイントがマルコー製よりも前になっている。

船首部分の造形が直線的で、前翼がテーパーになっていない。

船体上部の各3個のドッキングジョイントの内、中央と後部のジョイントは前後の長さが大きすぎて、

合体チョコボールのオマケの下部ジョイントには入らない(組むこと、合体させることができない)。

左からマルコー産業製、セパレート宇宙船

下方から見ると、双胴の船体の肉抜きの前部は楕円形で、マルコー産業製のように船体の形に合わせられていない。

中央部の下部はそがれたようになっており、マルコー産業製のように下部の膨らみが省略されている。

下部の棒ジョイントの受け部は小さく、上部のジョイントと組むことができない。

左からセパレート宇宙船、マルコー産業製

斜後方から見ると、上記の相違点が良くわかる。

2番目のジョイントが低く大きいことがわかる。

後部のジョイントも大きくなっており、マルコー製の方は垂直尾翼になっているのは大きくつがっている。

船体中央部の下方は、マルコー産業製は膨らみがあるが、セパレート宇宙船にはない。

その部分で支えることができないためかセパレート宇宙船は水平尾翼を含めた船体後部が上方に反っている。

船体後部の断面を見るとセパレート宇宙船の方が下方に細くなっており、下部パーツは貧弱であることがわかる。

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大型円盤の方も違った型で作られている。

左からマルコー産業製、セパレート宇宙船

大きさはあまり変わらないが、セパレート宇宙船は船体前部の3つのジョイントの付け根が長くなっている。

翼はセパレート宇宙船の方が幅が狭くなっている。

翼端の小円盤の付け根が水平になっており、厚さも薄くなっている。

上部ジョイントの付け根が、マルコー産業製は前部が狭まった船型だが、セパレート宇宙船は前後の形がほぼ等しい。

尾翼(?)の形がマルコー産業製よりも小さく、形状も簡略化されている。

船体中央部の形状はマルコー産業製の方はエッジが滑らかに処理されている。

内側の型から剥離させるための可動部を受けた円形の跡が、

マルコー産業製は四角、セパレート宇宙船は菱形についている。

左からマルコー産業製、セパレート宇宙船

セパレート宇宙船は下部のパーツが薄く、前部の3つのジョイントの付け根はない。

マルコー産業製では前部ジョイントが上下のパーツから作られており、厚みが厚く中央部に接続面がある。

セパレート宇宙船は上部パーツからジョイントがでているため、下部パーツの前面は円形で、ジョイントは薄くなっている。

左からセパレート宇宙船、マルコー産業製

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双胴と円盤の両方のタイプとも、マルコー産業製をよくコピーしているが、パーツの作りが薄く、

ジョイント部分は、オリジナルサイズの合体チョコボールのオマケや、

そのパチモンと合体させるための機能性を重視していないように見える。

素材は硬めのプラスチックでバリが多く、ジョイントも小さ目になっており、これらの点でも合体に向かない。

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東京の駄玩具メーカーであるマルコー産業が、

合体チョコボールのパチモンを作った際に新造した大型パチモンのコピー品を、

大阪の当て物販売メーカーである藤田屋商店が真似て作ったのか、どこからか藤田屋商店が仕入れたのか、

自社のロゴ入りの射撃セットに組み入れたことがわかる。

この白い「セパレート宇宙船」を作ったのが何所のメーカーかはわからないが、

マルコー産業のパチモンを意識して真似た、パチモンのパチモンであると考えられる。

「UFO宇宙セット」の台紙に印刷された「セパレート宇宙船」の組み方は、

本家のマルコー産業のパッケージには見られないものであった。

パチモンである大型の母艦を、その機能を理解しつつコピーし、

でも、一部に独自のデザインが混ざりつつ、大事に、便利に使ったことがわかる。

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大手製菓会社のオリジナルオマケが流行したのは1970年代半ばのことであった。

ピコタンやたこちゅう、明治合体チョコボールのような1パーツのものは偽物も作り易く、

多くの駄玩具メーカーがパチモンを製造し、駄菓子屋や玩具店において様々な形態で販売した。

多くの大手メーカーの菓子は「きのこの山」の様に定番商品になるものの他は、

ライフサイクルが短く1〜2年で販売終了になるものも多い。

そのため、パチモンの寿命も長くなかったと思われるが、

高価な金型の償却の為に作り続けなければ成らない事情もあり、

そう簡単に生産を中止し型を廃棄することもできなかったと思われる。

そのような死にかけのパチモンは、他の玩具と組み合わされ、

様々なセット玩具の構成要素として再利用されたものと考えられる。

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たこちゅう・ピコタン・明治合体チョコボールに限って集中して集めていても、

こんな大人の事情に出会うこともあるってことなんだなぁ、これが。

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一切の内容の無断転載、流用を禁止する。

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