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いろんな名前で、でてぇいぃまぁすぅぅ

ポーズブロック

ピコタンは、1970年代中盤に明治製菓から発売され、大流行した。

お菓子屋では品切れが相次ぎ、プラスチック製の板状という簡単な形状からコピーしやすく多くのパチモンが作られ、

純正品の品薄と値段の安さからピコタンの形さえしていれば、パチモンもあまり区別なく集められたようであった。

ピコタンの最大の特長は、頭や手足、胴体などのジョイント部に合体させることができることである。

このことが、ダブっても、規格さえ合えばパチモンでも気にさせず、一層収集熱を加速させたものと思われる。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

1:純正後期

2:純正前期

3:パチモンピコタン各種

4:小型パチモン(顔ありC2型)

5:大型中空

6:ジャボタン

7:ポコタン小型(ポーズブロックマン)

8:おはよう!ポコタン

9:ロボくんブロック

10:ロボくんブロック改

11:ピエロ小型

12:ピンキーブロック

13:ピエロA型

14:ピエロ大型

その他にも、形状は同じだが大きさを変えてしまったものも作られた。

小さなもの(4)は、合体の面白さを低価格の縛りの中で実現するため、20円ガチャガチャにまとまった数を入れたものであると考えられる。

大きなものは(5:ジャボタン)は、大きく扱いやすくしたうえで、まとまった数を高い価格設定で販売することで、

駄菓子屋売りよりも、玩具屋やお土産屋などで大人がお土産用に買うことを目指して作られたものであると考えられる。

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頭や手足を合体させるというアイデアは残したものの、形状を独自の解釈で変えてしまったパチモンも作られた。

その後の研究の結果、ピコタン型人形ブロックの発生に関しては

純正ピコタンから他の型が派生的に進化したのではないことがわかった。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

上図の上段右側の11〜13のピエロ型(ピエロ大型ピンキーブロック)と、

上図の中段右側の7〜10のポコタン型(ポコタン小型お早よう!!ポコタンロボくんブロックロボくんブロック改)の2系統である。

これらは大きなパチモン(5:ジャボタン)同様に、十数個が袋入りされており、タグや台紙に繋げて遊ぶことを書き、

集めることを目的とする純正と同じ規格のパチモンピコタンと違って、その一袋で完結することを前提にしている。

ピエロ大型

ピンキーブロック

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ジャボタン

お早よう!!ポコタン

ロボくんブロック

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この袋入り大型パチモンに新しいサンプルを追加することができた。ポーズブロックである。

サイズはロボくんブロックと全く同じで、同じ型を使って、名前と売り方を変えたものと思われる。

タグ付きの袋入りで、緑・青・黄・赤・白・ピンクの6色、顔は普通目、二重普通目、笑い目、泣き目、びっくりの五種類がある。

タグは左右15センチと大きく、1.5センチ×6センチの把手様の穴がある。

ポーズブロックという名称の他に、「あそびかたを・いろいろかんがえましょう!!」(18ケ入)の文字がある。

ピコタンのパチモンは、「人形ブロック」、「人間ブロック」、「ブロックマン」など、「ブロック」という繋げられることを強調する名前が多い。

このポーズブロックは、2パーツにすることで腰部のボールジョイントで上半身と下半身が可動することが特長であるため、このような名前になったものと思われる。

裏面には、「◎一つでもポーズが楽しめます」「◎二つ以上でつなぎとファッション」とあり、

合体させられることと、2パーツのため上下で色を変えて楽しむことができることを記している。

腰部のボールジョイントがスカートに見えることからの連想か、タグの絵はワンピースを着てリボンを付けて描かれている。

イラストに注目すると、ロボくんブロックの台紙右上にある腰を曲げたイラストは、ポーズブロックのタグの裏面左下のものと、

向きこそ逆だが非常に似ている。2個が縦に連結したものも、3個が横に連結したものもほぼ同様のアングルで描かれている。

スカート部分がポーズブロックではハートマークのアップリケ様の模様が入っているが、

ロボくんブロックの方はこの部分をスカートに見做して柄が入っている。

どちらにもワンピースを着た状態のイラストが見られるが、このようなアレンジは、他の各系統のピコタンには見られない。

これは、大型の2パーツものが18個も入っていて高額であることから、

お土産として女子にも買って与えさせたいという購買層の拡大を狙ったものと思われる。

もっとも、純正ピコタンにも女性のキャラを描いたものもあるので、男女両方を対象としていたとも考えられる。

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タグ裏面下部には、メーカーロゴとPAT.Pの文字がある。

このメーカーロゴは、「マルコー産業」というメーカーのもので、ロボくんブロックや、合体基地別バージョンのタグにも見られる。

また、このポーズブロックの6色のカラーバリエーションは、合体基地別バージョンと同じである。

このことからも、ロボくんブロック合体基地と同じ業者によって作られたものであることがわかる。

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ロボくんブロックの台紙には、以下のようにメーカーロゴとPAT.の文字がある。

ロボくんブロック台紙

この「PAT.」の文字は特許権を示すもので、申請時は「PAT.P」と」標記し、

認可され番号が振られると、「PAT.」の後に番号を標記するものである。

このため、ポーズブロックの方が早く、そのポーズブロックとインベーダー消しゴムを一緒にして、

商品名を変えて再度売りだしたのがロボくんブロックであると考えることが出来る。

特許庁のホームページから特許電子図書館の「意匠文献番号索引照会」で、この番号を検索したところ、「意匠公報」を発見した。

意匠公報471097(クリックで別ウインドウで拡大)

「本物品は、上半身と下半身に分割され、上半身下部と下半身上部とにおいて連結し、

一定角度の範囲内で前後左右に連結部から屈曲し、単体でポーズを取らせて遊べるようになっていて、

上半身の頭部後面と胸部に設けられる孔と、下半身の上部背面に設けられる孔に、下半身足部の先端を嵌入し、

前後方向に連結でき、また上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、

左右側方にも連結して遊べるようになっている。」と書かれている。

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この申請内容を読んで気になることは、上半身と下半身の連結でポーズを取るという部分ではなく、

その後に追記されている、「上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、左右側方にも連結して遊べる」というところである。

この点に関しては、1パーツの純正を含むピコタン系列でも、ピエロ型系列でも、多少の形状の違いはあるが、共通する特長となっている。

また、「下半身足部の先端を嵌入し、前後方向に連結でき」ることも、どれにも共通する。

このポーズブロックにおいては、「下半身足部の先端を嵌入」する孔を、「上半身の頭部後面と胸部に設けられる孔と、

下半身の上部背面に設けられる孔」としているが、頭にも孔があり全部で3箇所の孔があるのは、このポコタン系列でしか見られない。

ピコタン系列やピエロ系列のように薄い板状のものでは、頭部に孔をあけてしまうと、

模様のデザインが著しく規制されるが、ポコタン系列の球状の頭部を持つものではこの影響が少なくて済む。

このように、腕部による横連結や、純正にない3孔構成を意匠権の内容としているということ、

さらには出願日が昭和50年(1975)4月8日と比較的早い時期になっていることから、

大胆な仮説ではあるが、このポコタン系列の方が、ピコタン系列よりも早く作られたのではないかとも考えられる。

意匠権や特許に関しては未調査の部分が多いので断定はできないし、パチモン業者が、2パーツで連結するという新味を持たせた商品を申請する時に、

形状の説明の中に巧みに元からあったピコタンの基本的な構造要件を書き込んで申請した可能性もある。

某巨大掲示板だったかに、「ピコタンはおもちゃ業者が作ったものを菓子メーカーがパクった」という趣旨の書き込みがあり、

まさか・・・、と思ったが、この意匠権の記載を見ると、全く可能性がないとも限らないのかもしれない。

ただ、ピコタン系列の意匠登録の番号がわからないので、どちらが先か判断できず、

さらにはメーカー側も、出ては消えるオマケ玩具の意匠に付いて今ほど厳密な考えもなく、申請すらしていなかった可能性はある。

テキスト検索には、番号指定で検索する場合のように古いデータは残っていないらしい。

これはピコタン系列の意匠権ナンバーを調べなくてはわからないが、少なくてもこの電子図書館を使っては調べがたいものと思われる。

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以前、ロボくんブロックを紹介したとき、上半身と下半身にナンバーが入っていたことを指摘したが、

今回18個という潤沢なサンプルを入手して、詳細が把握できた。

上半身、下半身とも1から10までの数字があり、上半身は、顔と番号に対応関係が見られることが分かった。

顔の表情 びっくり 笑い目 泣き目 普通目 二重普通目
番号 1・6 2・3 4・5 7 9・10

このことから、今回見つからなかった8番は普通目であると考えられる。

(※その後、普通目の8番が見つかった)

下半身も1から10まであり、9のみ、なぜか「90」と刻印されている。

一袋に各色3個ずつが入っているが、顔についてはランダムで、なぜこのような番号を入れたのかは不明である。

5種類の顔をそれぞれ2個ずつ、10個を一度に作る型を作って、

もし何らかのエラーが出た場合、同じ顔のどちらの型が壊れたか用意に見分けるために番号を入れたのではないかと考えられる。

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意匠権の問題については古い資料に関してはネットでの調査には限界があるので、時間をみつけて該当官庁へ調査することとしたい。

純正ピコタンが先で、2パーツの連結を新味として登録したと考えるのが一番スムーズであるが、

意匠権に関する意識が低かったことも考え合わせて、様々な可能性を留保しておく。

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お早よう!!ポコタンロボくんブロックの項でも触れたが、当時この大型ポコタン型ブロックが、

今日見掛ける3,000円位の打ち上げ花火セットが入っているようなビニールの円筒形ケースに入って売られていた記憶がある。

今回紹介したポーズブロックとして袋入りで、また、インベーダー消しゴムと抱き合わせでロボくんブロックとして、

さらにビニールケースに入れるなどして、同じ商品をさまざまな形態で販売したことが確認されたことは意義深い。

また、この大型ポコタンタイプは多数をセットで売っていたということから、

駄菓子屋販売ではなく、お土産屋や玩具店などで高額で販売されていたことが考えられ、

大型化することで商品価格を上昇させ、さらに大きく扱いやすくすることで、少児や女子へも販売しようとした事が伺われ、

パチモンがオリジナル以上に、広範囲で流通するよう積極的に利用されたことを示す証左となったといえる。

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今回も入手にあたり、ぜんまい太郎氏に情報提供をいただいた。

毎度のことながら感謝に堪えない。・・・またよろしくお願いしますだ。m(__)m

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