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台紙の謎に迫る

ピョコピョコ組立ブロック

1970年代の半ば。

ウルトラマンや仮面ライダーのブームが一段落し、1980年代のビックリマンチョコの大流行の前。

エアポケットのような時期に、製菓会社の各社がオリジナルキャラクターを作った時代があった。

明治製菓の「ピコタン」「合体チョコボール」、ロッテの「たこちゅう」などがそれである。

それらの菓子には、それぞれにコレクション性の強いオマケがつき大流行した。

著作権・意匠権の意識が低かったために、駄菓子屋では、多くの駄玩具メーカーの作ったパチモンが出回った。

たこちゅうのパチモンに関しては「タコチュウ分類一覧表」を、

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を、

合体チョコボールのパチモンに関しては

明治合体チョコボール軍装備識別図説」を、

それぞれ参照されたい。

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あ、今回は、すんなり本題に入ってみました。

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某クションで、そんな時代に作られたと思われる、ピコタンのパチモンを入手した。

名前は「ピョコピョコ組立ブロック」。

台紙に、小台紙にブリスターパック付で12個がホチキス留めされている。

台紙上部には商品名とピエロのイラストが書かれている。

明治製菓がピコタンを発売する5年前、藤田屋商店から「ピンキーブロック」という同工異曲のブロックが発売されていた。

初期のA型と命名したタイプは顔がピエロを模したもので、丸鼻にぐるりと書いた厚い唇が特徴的であった。

左からA型、B型

「ピョコピョコ組立ブロック」の左側のイラストは厚く書いた唇と首と腕のフリルがピエロ型に似ている。

また、右側のイラストは目の赤線と手のひらを見せたポーズが、左側のイラストの水玉模様が、

ピンキーブロック」のパッケージに書かれたイラストと似ている。

このピンキーブロックはピコタンの発売前にすでに知られていたものらしく、

他のピコタンのパチモンでも、パッケージイラスト等に胴体の太いピエロ型の形状や、

「人間ブロック」「人形ブロック」と、ブロックが名称に入って入るといった影響を与えている。

「ピョコピョコ組立ブロック」にも、ピコタンのパチモンではあるが、そのパッケージは「ピンキーブロック」の強い影響が見られる。

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黄色ベタに黒の線画が印刷された小台紙に、ブリスターパックがホチキス留めされている。

中に入っているのはパチモン顔ありE型と命名したタイプであった。

色は緑・水色・白・黄色・赤の5色であった。

緑×5、青×2、白×2、赤4、黄色×4〜5個の17個〜18個入っている。

顔は6種類で、仮面ライダーやマジンガーZ、ウルトラマンタロウ、といったようなテレビのヒーローの顔を模している。

今回、多くのサンプルを調べた結果、同じ顔でも多くのバリエーションが存在することがわかった。

上段:スペクトルマン(?)、下段マジンガ−Z

上段は額のラインの数と方向や鼻の形や下半身の模様、下段は目の部分等に細かい差異が見られる。

わざと違いを作ったわけではなく、型をコピーする時の加工精度が低いためのばらつきといったレベルの違いである。

このようなばらつきは、たこちゅうのパチモンである、「チュチュたこちゃん チュ!」でも見られた。

F型バツ目、囲み目の型違い

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小台紙は、黄色のベタに黒の線画で合体したところが描かれている。

黄色に黒の線画が印刷された小台紙は、明治合体チョコボールのパチモンである、「ミニUFO 遭遇消しゴム」や、「ミニ合体ブロック」、

たこちゅうのパチモンである、「チュチュたこちゃん チュ!」(黄色小台紙にカラーイラスト)、

オリジナルプラ玩具の「スリーウオーズ」でも見られた。

小台紙のデザインに共通性が見られるこれらの駄玩具は、同じメーカーのものである可能性が高いと考えられる。

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台紙に話を戻してさらに検討してみたい。

「いっぱいあつめてたのしくあそぼう」のコピーの下に、メーカーロゴが入っている。

三重丸にイのロゴは、

明治合体チョコボールのパチモンである、「ミニUFO 遭遇消しゴム」の台紙に見られたものである。

数量を表す「1打付」(1ダース)の文字も両方に見られる。

ミニUFO消ゴムは、合体チョコボールのパチモンのC型と名付けた種類の、ゴム素材で出来たものが入っていた。

このゴム素材のC型を、C-2型と命名した。

プラスチック素材でできたC型は、プラスチックの円形ケースに入っタものが見つかっている。

そのケースの裏面には三重丸にイのロゴが入っているのが確認されている。

つまりプラスチック素材のC型と、ゴム素材のC-2型は、パッケージからどちらも「三重丸にイ」のメーカーのものであることが確認された。

合体チョコボールのパチモンC型は、台紙付で小台紙ブリスターパックでも売られていたことがわかっている。

台紙自体にメーカーロゴはないが、同じタイプのパチモンが入っていることから、

この、「ミニ合体ブロック」も三重丸にイのメーカー製であると考えられる。

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「ピョコピョコ組立ブロック」の台紙の裏面を見てみると、

切り込みが入っているのがわかる。

この切れ込みは4列×3段の12個がホチキス留めされている商品を下段から売って行き、

一段なくなるごとに台紙の切れ目のところから不要部分を切除したものと思われる。

台紙上部に穴があり、フックにかけたり、ヒモをつけて壁に下げたりして販売したものと考えられるが、

狭い駄菓子屋の中で販売に使用できる壁面は狭く、少しでも有効に活用しようとした工夫であると考えられる。

この台紙の切れ込みは、「チュチュたこちゃん チュ!」には無いが、「ミニ合体ブロック」にも見られる。

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「ピョコピョコ組立ブロック」の台紙の表面、商品を留めてある部分を見てみると、

タイトルイラストの下は、青・赤・黄色のストライブになっている。

このイラストの下部が3色のストライプは、

チュチュたこちゃん チュ!」にも、「ミニ合体ブロック」にも見られる。

左が「チュチュたこちゃん チュ!」、「ミニ合体ブロック」

以上の特徴を検討したところ、「ピョコピョコ組立ブロック」と「チュチュたこちゃん チュ!」、「ミニ合体ブロック」の3つは

台紙やパッケージの形状等に共通点が多く、どれも同じ「三重丸にイ」のロゴマークのメーカー製であると考えられる。

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先に紹介した、

明治合体チョコボールのパチモン「合体基地」(パチモンA型)、

明治製菓のピコタンのパチモン「人間ブロック」(パチモン顔ありC型)「人形ブロック」(パチモン顔なしD型)、

ロッテのたこちゅうのパチモン「UFOケシゴマ」等の一連のシリーズ(パチタコG型、L型、K型)が

どれも同じマルコー産業の製品であるという説を提唱したが、

多分、ほぼ同時期に、三重丸にイというメーカーから同じようなパチモンが発売されたと考えてよいと思う。

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これらの例から、明治製菓やロッテのオリジナルキャラクターに対して、

いくつもの駄玩具メーカーが競うようにパチモンを作り、駄菓子屋で販売されたことがわかった。

1980年代に向けて、製菓メーカーが権利意識へ注意を向けはじめ、

独自キャラクターモノのオマケが多パーツ化して真似しにくくなったりしたためか、

ピコタンの後継のカニタンではパチモンの数が激減している。

その後は一連のロボットアニメや、少年誌に原作を持つアニメ等が流行し、

1980年台にはシールやカードの大流行が訪れたため、オリジナルのキャラクター菓子は下火になって行った。

この1970年代の後半が、オリジナルキャラクター菓子とそのパチモンの

もっとも充実したよい時代だったと言える。

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カニタンの直接のパチモンでは無いが、以前ハサミもの駄玩具と言うことで紹介した

「モンキーミニハンド」の台紙も水色・赤・黄色のストライプであった。

メーカーロゴは無いが、これも三重丸にイのメーカー製である可能性がある。

小台紙は水色一色に白フチ付き赤文字の「モンキーハンド」の文字がある。

小台紙の色が黄色でないこと、文字は黒で無いことから、

小台紙だけを見ると、断定はできない。

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「三重丸にイ」の特徴は、タイトル下の3色ストライプであり、

3段の断裁線であり、黄色に黒の線画の小台紙であり、ブリスターパックである。

このすべての特徴を持った駄玩具を発見した。

商品名は「走れ!!謎の宇宙戦団」とある。

メーカーロゴは見られなかった。

タイトルイラストのすぐ下に断裁の型抜きが見える。

「おもしろく早く走る!!なぞのローラー入り!!」という説明コピーが書かれている。

小台紙にホチキス留め去れたブリスターパックがホチキス留めされており、

緑・青・黄色・赤の4個の駄玩具が入っている。

小台紙は黄色一色に黒で上面図の線画が書かれている。

    種類は2ケ所の凹部を持つ円盤、凸部凹部各1個の円盤、戦車・装甲車のようなデザイン、宇宙船のようなデザインの

大きく分けて4種類あり、様々なデザインで少なくとも24種類が確認された。

プラスチックの上部に鉄球(パチンコ玉の流用も見られる)が入っており、プラスチックのフタが嵌まっている。

このパチンコ玉を覆って転がすアイデアは、当時のガチャガチャにもあったのを覚えている。

どこかの製菓会社のオマケにもありそうなギミックだが、今の所は何をもとにしたのか、駄玩具オリジナルかは不明である。

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他にも、ピコタンのパチモンが入った、黄色に黒で線画が描かれた小台紙を発見した。

あいにく小台紙のみで見つかったので、商品名やメーカーロゴは見当たらない。

黒の線画で合体しているところが描かれているが一番下のピコタンには、胴体の穴が描き忘れられている。

中に入っていたのはパチモン顔ありJ型と命名したタイプで、

この型は最近になって某クションで落札、発見された。

色は緑・紫・白・ピンク・黄色・赤が各3個ずつ計18個が入っている。

当時の価格は50円程度だったと思われる。

以前、このタイプを某クションで48個をまとめて落札した。

このブリスターパックで言えば3個分。150円分ということになる。

顔は、レッドバロン、ウルトラマン、トリプルファイター、電人ザボーガー等の当時の特撮ヒーローの顔を模しているようである。

特撮モノの知識が無いのでネット検索の結果では、どれも1970年代前半の番組であるようである。

黄色小台紙に黒線画、ブリスターパックという特徴だけで、このパチモン顔ありJ型が、三重丸にイのメーカーのモノかはわからない。

ピコタン発売の1974年よりも前の特撮ヒーローの顔を使っているので、比較的早い段階でのパチモンと考えられる。

三重丸にイのメーカーには、上に紹介したように加工精度が低く特撮ヒーローを模したパチモン顔ありH型があった。

このパチモン顔ありJ型がまずあって、

キャラクターの権利的な部分で似過ぎているということから、よりラフなH型を作ったとも考えられるが、

顔ありJ型と顔ありH型では加工精度があまりに違っているため、全く別の製造工場の製作と考えたほうが妥当と思う。

ただ、マルコー産業系のパチモンピコタンでも顔ありC型と、顔無しD型が似た台紙で売られていたこともあるので、

複数のプラスチック駄玩具工場からの納品物を三重丸にイのメーカーが集めて、台紙等つけて売った可能性もあり、

このパチモンのメーカーに関しては継続調査の必要がある。

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黄色に黒の線画の小台紙には、先に紹介した「スリーウオーズ」にも見られる。

この「スリーウオーズ」は、台紙を見ると三重丸にイの台紙では見られた「一打付」ではなく、「12ヶ付」と書かれている。

コピーの「1号、2号、3号、をあつめて、いろいろ合体してみよう!!」の「いろいろ」は、

マルコー産業系の駄玩具によく見られる。

このプラスチック製の宇宙船が、「合体333(スリー)」という名称で、

マルコー産業から販売されていたことがわかった。

右下には、例のマルコー産業のロゴマークもある。

裏の合体図には「いろいろな」というコピーが入っている。

また、この3種類は、スペースインベーダーという名称で

ブリキのUFOとマルコー産業のロゴが入っている「UFO消しゴマ」と同系列のパチタコと一緒にセットされていた。

つまり、この3種類のプラスチック製宇宙船は、マルコー産業から発売されたことがわかっているが、

小台紙の特徴からだけでいえば、三重丸にイのメーカーからも出されていたと考えられる。

「マルコー産業」と「三重丸にイ」のメーカーはそれぞれに明治製菓の「合体チョコボール」や「ピコタン」、

ロッテの「たこちゅう」のパチモンを出してきた。

しかし、このオリジナルプラ製宇宙船は両方の特徴を持っている。

このオリジナル駄玩具が出たころに、「マルコー産業」と「三重丸にイ」のメーカーどうしの距離が接近したのではないかと思われる。

この黄色の小台紙にブリスターパックでセットするまでは「三重丸にイ」が作り、

それを「マルコー産業」に納品して「マルコー産業」から発売されたのではないかと思われる。

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この説を補強するものとして、合体チョコボールのパチモンのC型とD型の類似がある。

「三重丸にイ」のロゴのあるゴム製駄玩具「ミニUFO 遭遇消しゴム」には、

C型と分類したパチモンのゴム製バージョン(C-2型)が入っていた。

プラ製のC型の「ミニ合体ブロック」の台紙は3色ストライプで、小台紙は黄色に黒の線画で、「三重丸にイ」製と思われる特徴を持っていた。

また、同名のプラケース入「宇宙のなぞ?合体ブロック」には、ケース裏面に「三重丸にイ」のロゴが入っていたので、

C型系列は「三重丸にイ」であることにほぼ間違い無いと言える。

左がプラ製の「ミニ合体ブロック」、右はケース入りの宇宙のなぞ?合体ブロック

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このC型に形状が近い、D型と命名したパチモンがある。

純正を模して作ったC型を、さらに一ひねりしたデザインになっているのがD型である。

純正

C型

D型

各型の特徴

高速偵察機
C型機首先端付近にあった操縦席を機体中央部に後退させ、機首にも偵察員席と思われる膨らみがあるが、D型は操縦席を拡大し、機首の突起は小さくなっている。

艦上戦闘機
C型は風防が小さく省略されたが、D型は機首先端に移動させて前方視界を良くした形状になった。

制空戦闘機
純正よりも風防位置が前進し涙滴型に変更されている。純正は機首に2本線がある。C型には直線で2本、D型は1本のモールドがある。

重爆撃機
純正は水平尾翼の下面にも垂直尾翼が貫通しているが、パチモンにはない。C型には下面にも膨らみと鋲状突起があるが、D型はフラットになっている。

このD型は「合体基地ブロック」という名称であることがわかった。

このパッケージを分析すると、マルコー産業のロゴマークの入った「合体基地」(パチモンA型)のものと非常によく似ている。

台紙の下部は4色のモザイクで、タグの裏面イラストは「合体基地」のものと同じであった。

左がA型が入った「合体基地」、右がD型の「合体基地ブロック」

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合体基地」(パチモンA型)も「合体基地ブロック」(パチモンD型)もマルコー産業製と思われる。

しかし、この「合体基地」と「合体基地ブロック」はもとにした純正が違っており、

合体基地ブロック」(パチモンD型)は、「三重丸にイ」製の「ミニ合体ブロック」(パチモンC型)と同じ純正を模している。

先にあげたようにデザイン的にはパチモンC型が先にあったことが明白であるので、

「三重丸にイ」製の駄玩具を、マルコー産業が模したと考えられる。

マルコー産業の「合体基地」(パチモンA型)は、パチモンの中でも最も純正に似ており、非常に出来がいいものである。

それを、わざわざ他社のより似ていない駄玩具にあわせて作り直したということになる。

これは、似過ぎた「合体基地」がまずいということになって、その時期比較的近い関係にあった他社の駄玩具を模して作ったと思われる。

あるいは、マルコー産業が三重丸にイのメーカーを吸収するような事態があったとも考えれる。

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当時は合体チョコのパチモン、ピコタンのパチモン、たこちゅうのパチモンだった駄玩具が、

30年を経ての研究でその成り立ちを伺い知ることができ、そこにはそれらの駄玩具を手広く製作していた2つの企業の存在が浮き出してきた。

実際の所、この2つのメーカーがどう言う関係だったのかはよくわからない。

また、そんなに大きいメーカーではなさそうなので、社史といった文献資料にも残っていないと思われる。

駄菓子屋の代替わり、ゲーム機以外の玩具の衰退と、時を同じくしてのネットの発達。

この手の駄玩具を収集・分析できる最後のチャンスでは無いかと思われる。

今、これだけの分析が可能になった幸運に喜びを感ずる次第である。

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まあ、その情報がなんの役にたつか?!と言われると・・・。

もともと役に経つことしようと思ってやってることじゃないんでねぇ。

無駄ですよ、ただの。

自分で言うのもナンだけど。(^^;)

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