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本当のパチモン
目玉のうごくカニさん
「ピコタン」や「明治合体チョコボール」といった合体させるブロック状の玩具は、
コレクション性が高く、非常に流行した。
それにともない、駄菓子屋では、多くの種類の偽物(パチモン)が売られていた。
明治製菓製の純正とジョイント部分を似せて合体できるようにしたパチモンが、
非常に多くの駄玩具メーカーの手によって作られたことは、現存する多くの種類のパチモンを見てもわかる。
ピコタンにはその後、動物シリーズと運動会シリーズが出たが、
この時期、他社も含めて動物モノのオマケが数多く発売されている。
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合体できる動物モノで、さらに2パーツ化することで、可動ギミックが追加されたのが、
明治製菓のカニタンであり、カメタンである。
お菓子は同じようなスティック型だったように思うが、値段は60円位したように思う。
明治製菓のカニタン(左)と、カメタン
しかし、発売された当時は、アニメの台頭と共にお菓子のオマケも宇宙モノ、メカ物に重点が移ったこともあってか、
ピコタンや明治合体チョコボールほどの人気も出ず、比較的短期間に店頭から見掛けなくなった様に記憶している。
そのため、これらのパチモンもほとんどなく、明治製菓の刻印がないカニタンが発見されただけで、
これも、明らかにメーカー純正の型が業者に流れ、メーカー名のみを後から削除したもので、
明治製菓が販売を終了して後に発売されたものと考えられる。
刻印の削られたカニタン(左)と、明治製菓の文字の入ったカニタン
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だが!
事実は小説よりいきなり・・・。
カニタンにも、純正の型の流用ではない、型を独自に新造したパチモンが発見された。
この、言ってみればホントのパチモンは、駄玩具の問屋のデッドストックとして、今に残ったものである。
商品名は「目玉のうごく!カニさん」である。10袋づつがホチキスでとめられ、
5束をタグで挟みブルーのビニール紐でくくってある。この紐で軒先などに吊るしてあったものと思われる。
タグには一袋10円っと書かれている。
名前も「
カニタンブロック
」として売られていた、刻印を消したパチモンは、一袋50円で5個入っていたので、
価格的には妥当な値付けであったことがわかる。
クジの要素を追加して、10円で一袋引くと中に紙製のクジが入っていて、当たりが出るともう一回引けるという。
50+5と書いてあるので、1/11の確率で当たることになる。
が、しかし!
前述の通り、10個×5束ってことは・・・。
もともと50個しかないのである!!
確かにぶら下がってるのの数を数える奴もいないし、もし数えて「50個しかないじゃん!」と文句言っても、
もう5袋売れちゃったんだといわれたら、突っ込みようがないのである。
大人って・・・、ズルイ!!
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それはさておき。
とりあえずカラーバリエーションは、緑、青、黄色、オレンジの4色が見つかった。
出品者の方のお話では、濃いめの赤もあったそうである。
緑は、パチモンピコタンに見られる、クリア系の色である。
顔はにっこりの一種類しかなかった。
形状的には、純正カニタンの胴体が円形なのに対して、今回のパチモンはおむすび型をしている。
左側がパチモン、右が純正
パチモンのほうが足の湾曲が少なく、3本ずつ対になった短い足は曲っていて、よりカニっぽい外観になっている。
ハサミは純正のほうは足の突起を挟めるように大きく凹んでいるが、パチモンは作りがラフである。
足を開いたときに目が持ち上がるギミックは、純正同様持っているが、持ち上がり方が少し違っている。
左側がパチモン、右が純正
純正は目の下の突起がながく、ハサミを閉じたときは胴体下部の凹みに突起が収まり、足を開くと持ち上がってくる。
パチモンは突起が短く、ハサミを閉じたときは目が下がっているが、足を開くと胴体下部の突起に沿って目が立つ様になっている。
左側がパチモン、右が純正
型の成形の難しさから言えば、正確な凹部と長い目の下の突起を作らなければならない純正の方が、より高度な技術が必要であると思われる。
純正は向って右の目の突起の下部が斜めに殺がれており、個の部分が胴体下部の凹部に沿って持ち上がってくる。
そのため、力を入れると目が折れてしまう事がある。
それに比べて、今回見つかったパチモンは、目の突起が短いこともあって、
ラフに開け閉じしても比較的丈夫なようである。
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目玉を動かすギミックを実現するための形状が、より簡素化されていることや、
ハサミや足などのデザインが、実物のカニを強く意識した、カニタンに比べて「泥臭い」造形であることから、
この「目玉のうごくカニさん」は、カニタンのパチモンであると考えられる。
また、カニタンには顔の種類が12種類もあるのに、この「目玉のうごくカニさん」には一種類しかないことも
パチモンであることの間接的な証拠であるといえるのではないだろうか。
もっとも、40種類(前期・後期各20種)もの顔がある明治製菓のピコタンよりも、
実は顔の種類が一種類しかない駄玩具メーカーの作った
ピンキーブロックのほうが前に存在した
という実例もあることなので、
どちらが先かという問題に早計に結論を出すことは差し控えないといけない。
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カニタンの様に、本体を中心に開いたり閉じたりさせられる合体モノは、他にも発見されている。
これは、駄菓子屋売りだったと思われる駄玩具で、「モンキーミニハンド」と台紙に書かれている。
色は5色が一袋に入っている。顔は9種類が確認された。
カニタンとちがって、前脚は両方とも凹部、後ろ足は両方とも凸部で、台紙イラストのように直線的にしか合体させられない。
それに比してカニタンは、左前・右後が凸部、右前・左後は凹部になっているので、横にも繋げられる。
もっとも、側面に出ている短い三本ずつの足が干渉して完全に閉じることは出来ないが。
台紙のイラストはかなり古そうだが、メーカー名も時代を特定できるヒントは見つからない。
カニタンの互い違いのジョイント部を、この形式の玩具からの進化とみるか、
カニタンの挟めるというギミックを真似たこの駄玩具を作るにあたって、ジョイントを簡略化したのか、
これは早計に判断出来ない。
可能性は低いが、この駄玩具が先にあって、明治製菓が合体モノのオマケの企画として挟むギミックを参考にしたとも考えられる。
この結論は、ピコタンとピンキーブロックの関係性が判明したときのように、
どちらも知っていた当時の関係者からの証言でも出てこないかぎり、正解はわからないものであると思われる。
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この挟みモノにはサイズバリエーションが発見された。
左から純正後期、今回発見された小型挟みモノ、モンキーミニハンド
色は5色で、サイズは純正ピコタンに近い。前腕に凹部、足に突起があるのはモンキーミニハンドと同じである。
足を閉じたときに頭がモンキーミニハンドと反対に左側に来るのが特徴的である。
顔は髑髏と恐ろしげなゴリラの顔になっている。
ピコタンでも見られたことだが純正の穏やかなキャラに比べてパチは、怪物や悪者に使えるような顔がみられる傾向がある。
モンキーミニハンドが漫画チックなサルの顔が9種類もあるのに比べて、この小さい挟みモノは、髑髏とゴリラの2種類しかないことから、
ミニモンキーハンドをもとに作られたものではないかと考えられる。
ミニモンキーハンドが何時頃作られたかがわからないので推測にすぎないが、
台紙の絵が古くさいこと、サイズバリエーションが発見されたことから、
ピコタンの元にピンキーブロックがあったように、明治製菓のカニタンの元に、これらの挟みモノがあった可能性が指摘できる。
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本来なら一ページを新たに作らなければならないのであるが、
あまりに情報がないため、参考程度に、最近見つけた挟みモノを紹介することにする。
怪物くんのシールの貼られた挟みモノである。
消しゴムやグリコのオマケと一緒にまとめて入手したもので、比較的新しいもののようである。
裏面には「ロッテ」のロゴがあることからなんらかの菓子のオマケである可能性が高い。
「藤子・小学館・テレビ朝日」の文字が見える。
ネット検索をしたところ、「怪物くん」は1965年に連載開始されたらしいが、
1980年〜1982年にリバイバルしてヒットし、同時期にテレビ朝日系でカラーアニメが公開されている。
最初のアニメは白黒で、TBS系列で放映されたようなので、裏面の刻印からこのオマケは
、カラーアニメが作られた1980年代初期のものと考えられる。
カニタンの発売時期は明確ではないが、1970年代の後半だったと思われ、このオマケはカニタンよりも後だった可能性が高い。
一緒に見つかったものには、「とんでも戦士ムテキング」(1980.9.7〜1981.9.27)、「宇宙戦艦ヤマト3」(1980.10.11〜1981.4.4)、
「ドクタースランプあられちゃん」(1980〜1984連載)等の消しゴムやプレートがあった。
これらの作品が1980年初頭のものであることから、先にあげた怪物くんのオマケも80年代に入ってからのものであることはほぼ間違いない事と思う。
明治製菓のカニタンが出てから数年後、同じようなオマケがロッテから出ていることは興味深い。
挟みモノという、ギミック部分よりも使われているキャラクターのほうが重要視され、
形状的に似ていることはあまり問題にされなかったのではないかと思われる。
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今回見つかった三個の怪物くん挟みモノのうち、2個は「モンキーハンド」のように凸部が上部にきているが、
一個は「カニタン」のように凸部と凹部が互い違いになっている。
足を開いた時の刻印の方向から、凸部が揃って上に来るのが正しいと思われるが、
そのことから駄玩具の影響を濃く受けていると即断するべきではないが、可能性は高いと考えられる。
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1970年代の終わりから1980年代に入ると、マンガやアニメのキャラクターをオマケなどに使うことが一般化して、
オマケ独自のキャラクターは少なくなったように思われる。
ピコタンの特許を玩具業者が持ち、明治製菓がノベルティとして採用したように、
挟みモノも特許を玩具業者が持っていて、それをメジャーな製菓業者が入れ替わり立ち替わり、
キャラクターなんかと絡めつつ、安価でコレクション性を持ったこのての玩具を作ったのではないかと思われる。
どこも考えることは同じで、値段的な縛りのなかで、オマケとして提供できるものは限られていたのかもしれない。
「目玉のうごくカニさん」は、挟みの形状から鉄球を付けた磁石を持たせることが困難なようなので、
戦闘機として採用し、今後の防空任務の主力的役割を与えることにする。
怪物くんの挟みモンは・・・。連絡機かな。
まあ、ありがたく使わせていただくことにする。
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