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あのロボットのともダッチ

合体ダッチ

「あのさぁ、昔、プラモで、なんか丸っこいロボットの・・・」

「あぁ、あったねぇ。ロボダッチとかいわなかった?」

「あー、それ、それ!ちゃんとした模型屋じゃなくて、駄菓子屋なんかにさぁ」

「そうそう。島とかでっかいジオラマになっててさぁ」

「うん、むちゃくちゃ高かったよねぇ。バラ売りのはずいぶん種類があったんじゃない?」

「そうだったかも。買わなかったけどね。オレ、ウォーターラインシリーズ用の1/700の艦載機をさぁ・・・」

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明治製菓のピコタンは、1970年代半ばに大流行した。

当時、高価で品薄の明治製菓の純正品以外にも多くのパチモンが売りだされていたことは、このサイトでもたびたび紹介した。

この人間型ブロックの起源は以外に古く、外国の玩具のコピーであったことが判明した。

(人間型ブロックの起源については、徹底解明!ピコタンのできるまで part.1を参照されたい)

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ピコタンの元祖とも言うべき外国に起源を持つ人間型ブロックは胴体が太く、後のピコタンのくびれた胴体を見慣れていると、

大きな違和感を感じさせられる。(このタイプをピエロ型と称する)

左側から純正、小型ピエロタイプ、ピエロA型、ピエロB型、ピエロC型

このタイプの駄玩具を作っていたメーカーの担当者の方に聞いたところ、当初、このデザインをドイツの見本市で見つけて、

製作販売しようとしたところ、この意匠について権利を先に取得した会社があり、その会社にロイヤリティを払って製造していたということである。

その後、この権利を持つ会社が破産したため、ロイヤリティの支払先がなくなってしまった。

明治製菓(か、明治製菓の代理人)が、この玩具のアイデアを使用したいと連絡してきたが、

日本における意匠権者が不在らしいという話をしたところ、しばらくしてピコタンが作られたということであった。

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このことは、70年代に多くのヒットプレミアムを手掛けた、エースプレミアムという会社の社長のインタビュー記事

(「ちびっこ広告図案帳70's(おおこしたかのぶ編 オークラ出版オークラ出版 2003年)」)からも伺い知ることができる。

この記事の中で、プレミアムを提案しても、その意匠権的な部分を保護するという意識が乏しく、

ほとんどの場合、エースプレミアムによって意匠権登録等の権利保全の対策は行われていなかったようである。

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意匠に関する保護がなく、1パーツで簡単に作れるために、じつに多くの駄玩具メーカーによってコピー品(パチモン)が作られた。

これらのパチモンの多くは純正同様に腰の括れたデザインで、拳やつま先の大きさはほぼ純正に等しく、互換性が保たれていた。

しかし、そのうち、大きいものや小さいものも作られ、食玩のパチモンというよりも、

玩具屋やお土産屋で販売される駄玩具として独り歩きしはじめたようである。

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ここで、ピコタン型人形に画期的な機構が追加された。

腰の部分にボールジョイントを組み込み、2パーツにすることで動きをつけることが出来るようにされたのである。

ポーズブロックロボくんブロックの名前で売られているものと、それの小型版のお早う!ポコタンという名称のものである。

左からポコタン、ロボくんブロック、ポーズブロック

お早う!ポコタンにはメーカー名がないが、大型の2パーツ物にはパッケージにメーカーロゴが入っている。

上からポーズブロック、ロボくんブロックのパッケージ(部分)

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このロゴは、明治合体チョコボールのオマケのパチモン(パチモンA型)にも見られ、マルコー産業の物であることがわかった。

ロボくんブロックのパッケージのPAT番号から検索した結果、2パーツパチモンの意匠公報が見つかった。

これによると、腰の部分の連結という新しいアイデアのほかに、

「上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、左右側方にも連結して遊べる」

という、ピコタン型人間ブロックの最も基本的な意匠についても申請がなされている。

2パーツという新しいアイデアと一緒に、どさくさに紛れて基本的なコンセプトも申請しちゃったのか、

この人間型ブロックの意匠を、明治製菓のピコタンが作られた時期と係りなくマルコー産業が持っていたのかは、今のところわかっていない。

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この大型2パーツのパチモンに、パーツを追加したセットが発見されたことを先日報告した。

スポーツマンロボ「スポーツ大将」である。

スポーツ大将

箱には独自のイラストが描かれ、2パーツ大型ピコタンに追加のパーツを付けることで、

野球、アメフト、ボクシングの選手の格好をしているものである。

左からベースボール、フットボールク、ボクシング

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で、ここからが本題なんであるが。まぁ、いままでは聞いてるだけでもいいけど、こっからはノートとりなさいよ。

試験にでるから。(・・・なんの?!)

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同じ追加パーツ付きの2パーツピコタンの別パッケージのものを発見した。

タイトルは「スポーツロボの合体ダッチ」であった。

台紙

合体ダッチの文字には、ネジを示す丸がいくつも書かれている。

「みんなそろえて合体するダッチ!!」のコピーの横にはマルコー産業のロゴマークが確認できた。

一緒に入手した2パーツ追加パーツ付きは、先に紹介した「スポーツ大将」と同じものであった。

今回、同時に3体の追加パーツ付きを入手したが、スポーツ大将と同じく、ベースボール、フットボールク、ボクシングの3種であった。

だが、台紙を確認すると、この他に重量挙げの「バーベルともダッチ」があると書かれている。

左からベースボール、ボクシング
下段左からフットボール、バーベル

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イラストは先に紹介したスポーツ大将に比べて、漫画チックである。と、いうか、なんかどっかで見たことある感じが・・・。

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ダッチ」と言って思い出すのは、駄菓子屋に売られていた「ロボダッチ」のプラモデルではないだろうか。

ちゃんとした模型屋や、デパートの玩具売り場や玩具店でも売られていたと思うが、

いちばん印象に残っているのは、駄菓子屋のレジ横の一画につまれた駄プラモの中に突っ込まれたロボダッチの箱である。

100円で2機入った戦闘機シリーズや1/1000(?)の軍艦と一緒に、2体組だったか、

100円前後で入手できるお手軽駄プラモであったように記憶している。

プラモの棚の上の方には、馬鹿デカイ箱に入ったジオラマベースと数体の「なんとかダッチ」のセットがあった。

タコチュウとかピコタンとはスケール感がちがったので、全然買ったことはなかったが、

そういえば、宇宙戦艦ヤマトのプラモなんかと一緒にいつの間にか見なくなった。

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で、早速ネット検索でロボダッチとはなんだったのかを検索してみた。

もう30年近く前の(十数年前に復刻されたこともあるようだが)玩具を、未だ忘れずにホームページにまとめている奇特な人がいるもんで、

(まったく人のことはいえない・・・)

こんなページを発見した↓

これこそ!ロボダッチだ!!

http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Vega/1971/robodat1/index.html

このページのロボット紹介の中に、衝撃的な記事を発見した!(画像の引用許可を得ていませんので、リンクしておきます)

野球ロボ
フットボールロボ
バーベルロボ

・・・まんま、パクリじゃん。(^^;)

足は2パーツピコタンに書き直されているが、野球ロボの腰から出た腕や、フットボールのボールを持った右腕の付け根の感じ、

意味不明の時計が追加されているが、踏ん張り方がそっくりのバーベル。

これはもう、「ヒントを得た」とか、「参考にした」とか、「インスパイアされた」っていうレベルじゃないのではなかろうか。

このロボダッチシリーズには、スポーツに材をとったものがいくつもあり、テニスゴルフなど、この腰の部分から腕が出ているデザインが多用されている。

ボクシングのロボットがこのページからは見つからなかったが、ロボダッチは長期間に渡り多くのバリエーションがあったようなので、

このボクシングロボ(?)もあったのではないかと考えられる。

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・・・で、

見つかるときには続くものである。

違う出品者から、この「合体ダッチ」が台紙付きで出されたのを入手した。

2枚の台紙に付いていた合体ダッチを集めて12個にしたもので、ボクシングが6個、フットボールが2個、バーベルが4個ついていた。

先の小台紙に4種類が紹介されていたことから、本来であれば野球ロボも含めて4種が3個ずつで構成されていたものと思われる。

先の小台紙が発見されたときは、台紙と追加パーツ付き2パーツピコタンのみであったが、

今回発見されたものには、一個ずつを包装するブリスターパックが見つかった。

しかし、大変薄いものでつぶれて破損しているものも多く、なかなか残りづらかったものと思われる。

台紙タイトルは「スポーツロボの合体ダッチ」で、小台紙に描かれたのと同じイラストが大きく書かれている。

小台紙には「みんなそろえて合体するダッチ!!」と書かれていたが、台紙には「4種類」となっている。

このタイプの台紙付き玩具は1ダース、12個セットが一般的で、台紙にも「12ケ付」と明示されている。

4種類が12個ということは、一種類3個が、横並びに貼られていた可能性が高い。

台紙のタイトル部の下には、黒罫で囲まれ赤・青・黄・緑に色分けされている。

中央下段の水色の部分には、黒でマルコー産業のロゴが入っている。

このような台紙の色分けは、「合体基地」や、「合体基地ブロック」、「人形ブロック(顔無しD型)」でも見られ、

合体基地はマルコー産業のものであるとわかっており、合体基地と合体基地ブロックのタグに同じイラストが描かれていたことから、

合体基地ブロックもマルコー産業のものである可能性が高いことがわかった

ここで「人形ブロック(顔無しD型)」のタグにも注目してみたい。

左が「合体基地」、右が顔なしD型の「人形ブロック」

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どちらも地色に白抜きで、赤い文字でタイトルが入れられている。

裏面は白窓になっていて、その中に赤で組合せイメージが描かれている。

これらの特徴から、両者は非常に似たコンセプトでデザインされているということができる。

マルコー産業は、2パーツピコタンを「ロボくんブロック」や「ポーズブロック」を販売していたことは、パッケージのロゴマークからわかっているが、

パチモンピコタンに関しては、2パーツピコタンと顔のデザインが似ている、顔ありC型を作っていたと考えられていたが、

この台紙の研究所見から、顔なしD型もマルコー産業製である可能性が高まった。

パチモン顔なしD型とはプロポーションが同じ顔ありD型が存在しており、これも併せてマルコー産業製である可能性が出てきた。

この顔ありD型は純正の顔に似ているが、顔ありC型は単純化されている。

合体基地のA型は純正のデザインに酷似しているが、合体基地ブロックのD型は、他社のデザインを真似ている。

マルコー産業は、何らかの理由で(っていうか、著作権絡みだと思われるが)、純正に近いデザインのものと、

そうでないものの2系統を作っていた可能性が出てきた。

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まあ、それはそれとして・・・。あ、ここは余談だから、聞くだけでいい。いずれ、どこかでまとめるから。

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今回、台紙と共に重要な発見といえるのが、小台紙に4種類と書かれていたが見つかっていなかったバーベルともダッチである。

2パーツピコタンに、手から持上げたバーベル、頭に時計、背中に四角い板の3つの追加パーツが付属している。

重量挙げのルールを検索してみたが、審査員が合図するまで下ろしてはいけないらしいので、その時間を計るためのものなのかもしれない。

背中のプレートは、何のためにあるのか不明である。

持上げる腕とバーベルでデザイン的には説明し尽くせてしまうために、とりあえず3パーツ構成にするために追加されたものかもしれない。

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外国に起源を持つ人間型ブロックを、明治製菓がチョコレートのオマケとしてピコタンという名称で採用してから、

たくさんのニセモノ(パチモン)が作られた。

明治合体チョコボールのオマケをコピーした「合体基地」という駄玩具を出していたマルコー産業は、

他の駄玩具メーカーを真似た「合体基地ブロック」も作っていたことがわかった。

ピコタンに関しても、顔なしD型がマルコー産業製である可能性が高いことがわかった。

この顔なしD型には、同じ原型で作られたと思われる、プロポーションがそっくりで純正に近いデザインの顔を持つ顔ありD型がある。

マルコー産業は、2パーツのピコタン型ブロックの意匠登録をして、ポーズブロックロボくんブロックという商品名で販売していたことがわかっている。

この2パーツピコタンに近いデザインの顔ありC型というパチモンも、このマルコー産業の製品である可能性が高いことが指摘されている。

このように、マルコー産業は、明治合体チョコボールにしろ、ピコタンにしろ、純正と非常に近いコピーを作る技術を持ちながら、

そこから多少デザイン的に崩したシリーズも同時に出していたことがわかった。

今回、2パーツピコタンに追加パーツを付属させた「スポーツ大将」の、別パッケージとして「合体ダッチ」が見つかった訳だが、

合体ダッチのイラストは、漫画家 小沢さとる氏のイラストに非常に似ていたことがわかった。

これらのことから、以下のような事情が推測される。

プラスチック加工に非常に優れた技術を持つマルコー産業は、ピコタンや明治合体チョコボールといった流行食玩のパチモンを

迅速かつ高品質に製造し駄玩具として販売していた。

しかし、なんらかの事情(著作権・意匠権保護の意識の普及?)で、似すぎたパチモンを作り続けることができなくなると、

わざとちょっと外したデザインのパチモンに切り替えて生産していたのではないかと思われる。

このため、明治合体チョコボールのA型やパチモンピコタン顔ありD型は、明治合体のパチD型、パチピコ顔ありC型よりも前からあったと考えられる。

そんな中で、マルコー産業はピコタン型ブロック自体を、高度な金型技術で2パーツ化し、意匠登録するという積極性も見せている。

この2パーツ化ピコタンを改良する過程で、パーツの追加というアイデアが生まれたが、

当時流行っていたと思われる「ロボダッチ」を参考にすることを考え付き、スポーツロボシリーズができたのではないかと思われる。

ネーミングも当初は「合体ダッチ」という、「ダッチ」がかぶった分かりやすいものだったが、

これも、意匠権的にやばくなったのか、イラストを換えて商品名を「ロボット大将」に変更した可能性が指摘できる。

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30年もたって、バラバラに入手される駄玩具を、ためつすがめつ眺めてみると、

聞いたこともないような駄玩具業者が、意匠権と子供たちの人気の狭間でアイデアを絞っていた様子が浮かんでくる。

勿論、これは仮説であり、明治合体チョコボールのジョイントやピコタン型ブロックの基本的な意匠をマルコー産業が握っていた可能性もあるが、

オリジナルの食玩や漫画に酷似したものと、そうでないものが併存していることからしても、考えづらいのではないかと思われる。

30年も前のことであるから、これをもってニセモノを作ったことを罪悪視するものではない。

知恵と工夫で子供に喜ばれるパチモンを提供できた、のどかないい時代があったことの証拠として、

これらの駄玩具を楽しんでいきたいと思う。

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まあ、30年も前の駄玩具の、さらにニセモノですよ。

そんなもんのどれが先でどれが後かなんて・・・。当の駄玩具業者もすでにわからなければ、正解を確かめようもないことで・・・。

そんなこたぁ、別にどうでもいいんですけどね。((((((((((^^;)

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ロボダッチ(本物)プラモとの比較

・・・・・・で。

ピコタンの2パーツパチモンに、追加パーツをつけたものが、イマイの「ロボダッチ」を元ネタにしている可能性を指摘した。

・・・・・・が。

パッケージのイラストが、本家の小沢さとる氏のイラストに似ているだけでなく、もっとヤバいことになっていたことがわかった。

ネットで調査したところ、この合体ダッチが、そのものズバリ「スポーツロボのロボダッチ」という商品名で売られていたことがわかった。

掲載された写真を見たところ、中身に関しては同じもので、野球ロボ1組とバーベルのパーツのみがブリスターパックに入っている。

(『おもちゃ箱をひっくり返せ 』「ピコタンのロボダッチが出た」 「ロボットなのに、ともダッチ 」参照)

これは、合体ダッチ→スポーツ大将の流れをさらに遡るものであると考えられる。

ここで、完全にプラモデルのロボダッチと2パーツにスポーツの追加パーツをつけたパチモンがつながったが、

今回、ロボダッチのプラモデルを入手したので、両者を比較検討してみた。

パッケージのイラスト同様、商品自体も大変良く似ていることが確かめられた。

左が「合体ダッチ」、右がロボダッチプラモデル

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野球ロボには「合体ダッチ」のほうが帽子が追加されているが、バットを持つポーズも胴体からのびる腕の形もプラモにそっくりである。

フットボールロボは持っているボールの筋彫りが省略されているが、胴体の番号も「18」と同じで、腕のポーズも似せているのがわかる。

バーベルロボは、頭の時計が追加されているのが独自のデザインではあるが、手の握りもバーベルの形状もそっくりである。、

背中の用途不明の四角い板は、プラモデルの四角いシルエットを象徴するものなのかも知れない。

右がロボダッチ、左が合体ダッチ

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野球ロボ

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フットボールロボ

バーベルロボ

パッケージのイラストと、「ダッチ」という名称のパクりだけでも驚きなのに、

商品のデザインまでもがここまで似ているのがわかり、非常な驚愕を覚えた。

名称やイラストが元祖の「ロボダッチ」から段々変化したのは、

意匠権の管理が緩かった当時においても、さすがにマズいと思われたのではないかと考えられる。

※今回入手したプラモデルは組んだ状態で入手したので、発売時期は不明である。

ロボダッチも何度も復刻再版されているようなので、これが当時のデザインのものであるかはわからない。

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