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いろんなとこかぁら、でてぇいぃまぁすぅぅ

ポーズブロック Part.2

明治製菓のピコタンは1974年9月に発売された。

発売されると大流行し、様々なパチモンが出現した。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

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様々なパチモンが作られたが、その中でも出色の出来は、腰部にジョイントを入れた2パーツのパチモンであった。

ピコタンの特徴である頭と足での合体も、腕と脇や首の凹部との合体も残しつつ、

腰部のボールジョイントでポーズが付けられるのみならず、

立体化した頭部や腰部ジョイントに穴をあけ、つま先と合体する機能を追加した。

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この2パーツパチモンは、「ポーズブロック」や「ロボくんブロック」等の商品名で売られていたことがわかった。

それらの商品のパッケージからマルコー産業というメーカーが作り、意匠登録されていることも判明した。

左からポーズブロック、ロボくんブロック

ポーズブロックのタグにはメーカーロゴと、「PAT.P.」の文字がある。

これは意匠権登録を申請したことを意味する。

ポーズブロックのタグ

ロボくんブロックのパッケージには、メーカーロゴと、「PAT.471097」の文字がある。

ロボくんブロックの台紙

この番号から、意匠公報を検索したところ、2パーツパチモンのデザインに関する権利を

マルコー産業が申請したことがわかった。

「本物品は、上半身と下半身に分割され、上半身下部と下半身上部とにおいて連結し、

一定角度の範囲内で前後左右に連結部から屈曲し、単体でポーズを取らせて遊べるようになっていて、

上半身の頭部後面と胸部に設けられる孔と、下半身の上部背面に設けられる孔に、下半身足部の先端を嵌入し、

前後方向に連結でき、また上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、

左右側方にも連結して遊べるようになっている。」

出願は昭和50年(1975年)4月、登録は昭和52年(1977年)10月とある。

つまり、昭和49年(1974年)9月に明治製菓から「ピコタン」が発売され、

その半年後には腰部ジョイントを足したとはいえ、ピコタンや、先行するピンキーブロック等の特徴である合体機能を含めて

包括的な意匠権登録をパチモンを作った業者が行っていることがわかった。

このことから、「PAT.P.」の文字のある「ポーズブロック」は昭和50年(1975年)頃に発売され、

「PAT.471097」の文字のある「ロボくんブロック」は、インベーダーゲームの出現が昭和53年(1978年)であることとあわせて、

登録の昭和52年(1977年)からさらに一年弱が経った頃に発売されたことがわかった。

「ロボくんブロック」は明治製菓のロボクンの名称から付けられた名前であることが考えられる。

ロボクンと関係ないスペースインベーダーゲームの消ゴムが同梱されていることから、在庫処分の感じがないではない。

これらのことから、昭和49年(1974年)のピコタンの発売から、4年程度が過ぎてもまだ売られていたことがわかった。

明治製菓のロボクンは、ピコタンの後継のカニタンやカメタン等よりも後に発売されたものであるから、

オリジナルのピコタンが製造中止になった後も、パチモンである2パーツパチモンは売られ続けていたことがわかる。

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で、マルコー産業製の2パーツパチモンについて、

深い理解が得られたところで、

ここからが、本題。

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ポーズブロックの別バージョンが発見された。

透明な円筒形のプラスチックケースに、2パーツパチモンが16個と、凹部と直径が同じ棒を長短各2本の4本がセットされている。

ケースにはピンク色の持ち手ヒモがついていて、いかにもお土産屋の店頭に他の駄玩具と一緒に並んでいそうな風情である。

価格は少し高めの500円で、これも駄菓子屋というよりは玩具屋やお土産屋に向けた価格設定であると言える。

色は緑・青・白・ピンク・黄色・赤の6色で、これはいままで発見されたものと同じであった。

白と青が各2個、緑・黄色・ピンク・赤が各4個で、計16個の構成であった。

顔は今まで見つかっているものと同じで、普通目、二重普通目、笑い目、泣き目、びっくりの五種類があった。

棒は今回新しく見つかったものであった。

凹部に貫入することができ、腰部ジョイントでバランスを取ることができることと相まって、

かなりアクロバティックなポージングができる。

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先述のように、2パーツパチモンはマルコー産業が意匠登録をし、パッケージにはロゴマークが入っていた。

しかし、今回見つかったものには、違うメーカー名が入っていた。

プラスチックのフタの内側に紙製の台紙が入っていた。

商品名は「ポーズブロック」となっているが、メーカー名がエンゼルボール株式会社となっている。

エンゼルボール株式会社で検索したが、跳躍台の特許を公開している会社がヒットしたが、それ以上の細かい情報はわからなかった。

ケースの下の方に、かなり損傷したSTマークのシールが見つかった。

(社)日本玩具協会の文字の上に「P5270012」という番号が記載されている。

この番号は、ロボくんブロックの台紙の左下にあったSTマークの番号と同じであった。

ロボくんブロックの台紙のSTマーク

番号が同じと言うことは、同一申請者によって審査されたと推測することができる。

駄玩具のパッケージに印刷されたメーカー名については、

製造メーカー名の場合の他、製造メーカーと販売したメーカーが違う場合の販売メーカーの名称が印される場合もあるようである。

この場合も、製造はマルコー産業で、マルコー産業から仕入れて販売したエンゼルボール株式会社の名前がパッケージに印されたものと思われる。

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マルコー産業の「ポーズブロック」はタグ付き袋入りで入数は18個であった。

今回見つかったエンゼルボール版は、プラスチックケース入りで入数は16個+棒4本であった。

販売形態も、入数も違い、さらに棒が追加されているのに同じ合格番号で登録されていると言うことは、

申請者とメインの駄玩具が同じであれば同じ番号が使われていると考えられる。

ドカベンマンガ人形ブロック」は小さい袋と、大きい袋で番号が1番だけ違っていた。

大きい袋に付けられた番号は、同じ入数の「マンが人形ブロック」と一緒だった。

このことから、入数(販売形態)によって違った番号が付番されるという仮説を立てたが、これは今回の発見とは矛盾する。

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ポーズブロックの2パーツパチモンに、様々なスポーツの追加パーツをつけたものを

合体ダッチ」や「スポーツ大将」の名称で発売していたこともわかってきた。

「合体ダッチ」はイマイのロボダッチの影響を強く受けており(ロボダッチの名称が使われたパッケージもあったらしい)、

「スポーツ大将」では、名称を変更し、イラストを似ていないものに変えている。

「合体ダッチ」は駄玩具として小台紙ブリスターパックで販売されたためか、パッケージにはSTマークがなかった。

「スポーツ大将」は、パッケージのロゴマークが変更されていることからも、時期的に後に発売されたと考えられる。

STマークの合格番号はK5413301となっている。

スポーツ大将のパッケージにみられるロゴとSTマーク

合体ダッチ」や「スポーツ大将」では、細かい部品を複数追加しているため、改めて申請したことが考えられる。

このあたり、STマークの申請と合格の用件について、一層の調査が必要であると考えている。

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マルコー産業は、ピコタンや明治合体チョコボール等のオリジナルに近い高精度なパチモンを作っていたが、

だんだんとわざとデザイン的に似ていないものを作るようになったようにも見受けられる。

また、マルコー産業のロゴのある駄玩具と共通点の多いものに、メーカーロゴが入っていないものも多く見つかっている。

1980年代に向い、著作権の保護が一般的になって、意図的に製造メーカーをぼかしてきていた可能性があるように思われる。

この点に関しては、さらに多くの駄玩具のパッケージを総合的に分析してまとめて行きたいと考えている。

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まぁ、駄玩具ですよ。

30年以上前の話ですよ。

当時は、特に駄玩具なんて、意匠とかロイヤリティとか、ゆるゆるだったんじゃないかと思いますよ。

今の常識で良い悪いと言ったってそんなのは野暮ってもんですって。

ここは一つ。

新しいアイデアを追加して、オリジナルよりも長生きした傑作駄玩具があった、ってことで。

素直に楽しもうじゃ有りませんか。

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