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パチモンのパチモンの改良型

マンガ人形ブロック・ロボットパズル

ピコタンは、1970年代中盤に明治製菓から発売され、大流行した。

正規品の品不足もあったのか、駄菓子屋やガチャガチャ、玩具店などでニセモノ(パチモン)が大量に売られていた。

現在、顔のあるもの・ないものそれぞれに10種類以上のパチモンが確認されている。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

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ピコタンは、体中の凹凸で様々に汲み上げることができるが、所詮、プラスチックの板であり、動きに乏しいことは如何ともしがたかった。

そのため、上下半身を別パーツにして、腰部にボールジョイントを作ることで、動きを表現することができるようにしたパチモンが作られた。

ポーズブロック

この2パーツの可動パチモンの存在は当時から知っていたが、

近年、タグ付き袋入りのデッドストックを入手してその商品名が判明した。

名称は「ポーズブロック」。

人間型のブロックはピコタン以前からあり、「ピンキーブロック」や「ブロックボーイ」等の「ブロック」という言葉が名前に入っていたことからか、

明治製菓がお菓子のオマケとしてピコタンを作り、そのニセモノとしてピコタンの形状に似せた駄玩具にも

人間ブロック」や「ブロックマン」等、「ブロック」という言葉を継承したものが多く見つかっている。

(この辺の事情は、「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい)

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ポーズブロック」のタグには、マルコー産業のメーカーロゴが入っている。

また、PAT.P(「パテント・ペンディング」=「特許出願中」)の文字が印刷されている。

この、2パーツパチモンが、インベーダー消しゴムと抱合せで「ロボくんブロック」という名称で売られていたのも発見されているが、

こちらのパッケージ台紙には、同じマルコー産業のロゴマークと、PAT.471097の文字が見られる。

この特許番号を、特許庁のホームページにある特許電子図書館の「意匠文献番号索引照会」で調べたところ、当時の意匠公報が見つかった。

これによると、意匠権者はマルコー産業になっており、出願は昭和50年(1975年)、登録は昭和52年(1977年)となっている。

明治製菓のピコタンの発売が昭和49年(1974年)なので、申請は迅速に行われたもののようである。

このことから、「ポーズブロック」の発売は昭和50年(1975年)〜昭和52年(1977年)、

ロボくんブロック」の発売は昭和52年(1977年)以降と考えられる。

説明には以下のように書かれている。

「本物品は、上半身と下半身に分割され、上半身下部と下半身上部とにおいて連結し、

一定角度の範囲内で前後左右に連結部から屈曲し、単体でポーズを取らせて遊べるようになっていて、

上半身の頭部後面と胸部に設けられる孔と、下半身の上部背面に設けられる孔に、下半身足部の先端を嵌入し、

前後方向に連結でき、また上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、

左右側方にも連結して遊べるようになっている。」

要するに2パーツで動きが表せると言うことである。

また、この腰のボールジョイントと、同じ形状の頭部の、それぞれ背面には穴があり、

足のつま先を差し込むことができるとなっている。

ピコタンにも胴体に2個の穴がありつま先をはめ込むことができるが、頭部には穴がないので、

この点もこの2パーツパチモンの独自の特徴であると言える。

ここまでは、2パーツパチモンに独特の特徴と言えるが、それ以下の、

両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入」ということは、ピコタンでもその前身の「ピンキーブロック」でもでき、

この部分は意匠の独自性を主張するにはちょっと弱いように思われる。

当時、ピコタンなどのノベルティには意匠権の保護といった意識がなく、意匠権の登録などはあまり行われていなかった。

腰のボールジョイントは新しいアイデアであることは確かであるが、腕と肩・胸部両脇の嵌入、頭部を脚部で挟んでの結合、

胴体の穴につま先をはめるなど、基本デザインはどう見てもピコタンを下敷きにしていると言わざるを得ない。

腰のジョイントという新味の登録の際、ドサクサにまぎれてピコタンの基本デザインの一部も登録したということかもしれない。

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この2パーツパチモンには、両腕部先端(拳)の大きさがほぼ等しい大型ピコタンタイプパチモンの「ジャボタン」と

一回り小さいサイズの2パーツパチモン「お早よう!!ポコタン」という2種類の関連が深いと思われる駄玩具がある。

左からジャボタン、お早よう!!ポコタン

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どちらもタグ付き袋入りだが、メーカー名はない。台紙のバックがクリーム色でデザイン的にも似たテイストが感じられる。

左からジャボタン、ポーズブロック、ポコタン、純製後期

ポーズブロックとポコタンは、顔の表情が全く同じでデザインも酷似している。

ポーズブロックとジャボタンは、両腕部先端(拳)の大きさがほぼ等しく、腕同士で合体できる。

この3種類のパチモンは、造型力の高さやパッケージのデザイン等などから、似たテイストがあることから、

ポコタンもジャボタンも、ポーズブロックのメーカーであるマルコー産業の製品である可能性が高いと考えられる。

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ポーズブロックには、さらにそれを真似たと思われるパチモンが発見されている。

左から純正、ポーズブロックマン、ポコタン、ポーズブロック、ロボくんブロック”改”

左から2番目のポーズブロックマンがそれである。

ピコタンのパチモンにも、ブロックマンというものがあり、ポーズブロックとブロックマンを足したようなネーミングが使われている。

ロボくんブロック”改”とは、違う流れのパチモンであると考えられる。

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で、ここからが本題になるのであるが・・・。

この2パーツピコタンのパチモンが発見されたことは、「ロボくんブロック”改”」として以前取り上げた。

腰のジョイントがあることは一緒だが、頭部が扁平であること、胴体が肉抜きされていること、

脚部の突起が前後に出ていること、腰のジョイントの形状が広がっていないこと等から、別物であると思われていた。

頭部にはアニメキャラクターのシールが貼られていて、インターネットで放送期間を調べたところ、

ほとんどのアニメ番組は1974〜1975年に放送されているようで、

つまり、「ポーズブロック」の発売された昭和50年(1975年)に同時期の発売されたものと思われる。

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この2パーツのパチモンのパチモンは、名称やメーカーなどが不明であったが、

この度、デッドストック状態のサンプルを発見することができた。

商品名は「マンガ人形ブロック」。

打ち上げ花火のセットなんかが入っていそうなビニールケースに、ブロックが30個と、商品名の印刷された紙が入っている。

当時の「ポーズブロック」もこのようなケースに入れられていたように記憶している。

カラーバリエーションは緑、青、白、ピンク、黄色、赤で、「ポーズブロック」と同じであった。

メーカーは「おもちゃのツヤマ」と書かれている。

検索したところ、日本玩具協会の会員に(株)ツヤマという会社があるが、ホームページがないため、それ以上の情報は得られなかった。

合格番号のアルファベットは、「玩具安全マーク制度要綱」によると、

「ST基準適合検査を実施する指定検査機関」を表し、Bは(財)日本文化用品安全試験所 大阪事業所を表すものである。

番号に関しては、現在の制度によると年号(西暦)を表す2桁と4桁の受付番号で表すことになっているので、

今回の7桁の意味を読解することはできない。

これは、番号付与の規定が変更されたことがあるためではないかと思われる。

検査機関の所在地とツヤマという名称から、津山市に関係のある関西のメーカーではないかと考えられる。

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STマークについては玩具協会に問い合わせて以下のことがわかった。

<STマークについて>

玩具協会にSTマークの表記方法についてお伺いした。

STマークが始まったのは昭和46年(1971年)であった。平成以降は付番方法が変わった。

番号はアルファベット1文字と、数字7桁で構成される。最初のアルファベットは業界ごとの組合を表す。

数字は3桁がメーカーを表す。次の4桁目が和暦の下一桁を表す。

例えば4桁目が「1」であれば、昭和51年か61年だが、キャラクター商品等であれば、判断がついた。

残りの3桁は、認証に受かった時の合格番号を表すとのことであった。

平成以降は西暦表記を取り入れた、新しい付番方法が取られたとのことである。

STマークは数字の4桁目が昭和の年号の下一桁になるので、

「2」は貼られているシールに描かれたアニメキャラクターの放映時期から判断して、

昭和52年(1977年)と思われる。

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アニメキャラクターのシールは、今までは9種類が確認されていたが、今回のサンプルから、

UFOロボ グレンダイザーと思われるもの見つかり、10種類が存在することがわかった。

これらのキャラクターの登場する番組の放送期間をネットで検索してみた。

キャラクター名 放送時期
アルプスの少女ハイジ 1974(昭和49年)01.06〜1974(昭和49年)12.29
がんばれ!ロボコン 1974(昭和49年)10.04〜1977(昭和52年)03.25
ウルトラマンレオ 1974(昭和49年)04.12〜1975(昭和50年)03.28
仮面ライダー ストロンガー 1975(昭和50年)04.05〜1975(昭和50年)12.27
秘密戦隊 ゴレンジャー 1975(昭和50年)04.05〜1977(昭和52年)03.26
アクマイザー3 1975(昭和50年)10.07〜1976(昭和51年)06.29
UFOロボ グレンダイザー 1975(昭和50年)10.05〜1977(昭和52年)02.27
巨人の星(?) 1968(昭和43年)03.30〜1971(昭和46年)09.18(再放送多数)
タイガーマスク(?) 1969(昭和44年)〜1971(昭和46年)(再放送多数)
怪人(?) 不明

このように見ると、このシールがアニメからパクった絵柄であるとすると、少なくとも1975年10月以降に、

この「マンガ人形ブロック」がつくられたと考えられる。

※当時は、アニメと平行して少年誌でもマンガが連載されていたので、公開時期に多少の前後がある可能性がある。

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先に紹介した「ポーズブロック」は、マルコー産業製であることが分かっているが、

今回、この「マンガ人形ブロック」のメーカーがツヤマであることが確認された。

基本形状は明治製菓のピコタンである人間型ブロックであり、さらに腰部のジョイントはマルコー産業が意匠登録を申請しているのに、

このようなパチモンのさらにパチモンが、別のメーカーで作られたことがはっきりした。

意匠登録の申請から、登録までの間隙を縫って作られたものとも考えられるが、両腕部先端(拳)の形状が酷似していて、

拳の直径が5mmに統一されていることから、大形パチモンのサイズのでファクトスタンダードが複数のメーカーによって作られていたことがわかった。

左からマンガ人形ブロック、ポーズブロック

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ところで、パッケージにあった遊び方のイラストを詳細に検討すると、奇妙なことに気が付く。

左の「とんぼがえり」は、「マンガ人形ブロック」でもできる。

しかし、頭部に丸いシールを貼るために、首の部分の凹部が省略されているため、「なかよし」のように腕を組ませることはできない。

「かたぐるま」では、頭部を脚部で囲むように合体させているが、やはり首の凹部がないため、このような密着はできない。

この脚部先端を首の凹部に密着させるイラストは、他のパチモンピコタンにも見られる間違いである。

先の「ポーズブロック」のタグの左側のイラストでも、この密着が図示されている。

右端の「ピラミッド」のイラストは、腕を組んだ2体の上に1体が乗っている。

これは、頭部にある穴に脚部の先端を差し込まなければできないことで、実際に「ポーズブロック」ではこのような組み方をすることができた。

このように見て行くと、「マンガ人形ブロック」のパッケージを作るにあたって、

ポーズブロック」のように頭部に穴を持つ2パーツパチモンを元にイラストをおこした可能性が出てくる。

しかし、「ポーズブロック」は他社製品であるので、

マンガ人形ブロック」の前に、ツヤマでも頭部に穴のあるパチモンを作っていたのではないか!、と考えることができる。

つまり、「ポーズブロック」と「マンガ人形ブロック」の間に、もう一種、未知のパチモンが存在するのではないか?!

ポーズブロック
(マルコー産業)

???????
(ツヤマ)

マンガ人形ブロック
(ツヤマ)

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で、見つかる時は見つかるもので・・・。

違った出品者から、この間を埋める未知のパチモンと思われるものを落札した。

タイトルは「ロボットパズル」。

ブロックの名称は入っていないが、ロボットの「ロボ」という名称は、マルコー産業の2パーツパチモンでも「ロボくんブロック」として使われた。

(「ロボくんブロック」は「ポーズブロック」と同じ2パーツパチモンの名称違いの商品である)

また、「ロボくんブロック」を真似たものか、手足が動く5パーツパチモンも、「合体ロボくんブロック」と名付けられている。

赤いバックにタイトルとシルエットのイラストが描かれている。

タグには丸い穴があけられており、この部分にひもを通し店先に釣り下げられて売られていたものと思われる。

素材はクリアがかったもので、緑、紺、ピンク、オレンジ、黄色、赤の6色が一個ずつ入っている。

ポーズブロック」と、今回発見された「ロボットパズル」と、「マンガ人形ブロック」を比較してみた。

左からポーズブロック、ロボットパズル、マンガ人形ブロック

頭部の大きさはポーズブロックロボットパズルでは、ほぼ等しい。

ポーズブロックは後頭部に穴があるが、ロボットパズルでは、この穴が貫通している。

首の凹分が、ロボットパズルでは整形が甘く腕部を差し込むことが難しい。

胴体はポーズブロックでは板状だが、他の2種では、胴体まん中の穴を支持する梁を残して肉抜きされている。

腰部のジョイント部分が、ポーズブロックロボットパズルではスカート状に下部に向かって広がっているが、

マンガ人形ブロックでは広がっていない。

ポーズブロックロボットパズルの2種は、胴体のの高さはほぼ等しいが、脚部のボールジョイントがポーズブロックの方が高い分、

ポーズブロックのほうが若干背が高くなっている。

左からポーズブロック、ロボットパズル、マンガ人形ブロック

横から見ると、ポーズブロックロボットパズルの2種類は厚味があるが、マンガ人形ブロックは半分強の厚さしかない。

脚部の突起の長さはロボットパズルが一番長く、ポーズブロックの脚部前面が前後に付いた形状になっている。

マンガ人形ブロックは、前後に脚部の突起があるが、長さは短く、全体でポーズブロックに等しい程度しかない。

マンガ人形ブロックは脚部の突起が短いため、合体させるのが難しい。

ロボットパズルは、ポーズブロックの上半身後半と下半身前半を2個ずつくっつけたような形状をしている。

ロボットパズルは胴体が肉抜きされているし、接合部の処理も甘いので、ポーズブロックのデザインを元に型を新造したものであることがわかる。

左からポーズブロック、ロボットパズル、マンガ人形ブロック

ジョイントをはずしてみると、ロボットパズルマンガ人形ブロックは、脚部ボールジョイントの穴が貫通しているのがわかる。

つま先は、ポーズブロックは穴がないが、他の2種は穴がある。

以上の観察から、意匠登録をしたマルコー産業のポーズブロックを先とすると、それを元に前後の区別をなくし肉抜きをしたロボットパズルが作られ、

さらにロボットパズルをもとに、アニメのキャラクターシールを貼るため頭部を板状に直し、そのため首部の凹部を潰し、

つま先を短く、合体要素よりもキャラクター性に重点を置いたマンガ人形ブロックが作られたものと推測できる。

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残念ながらロボットパズルのメーカー名は、その販売形態からは判明しなかった。

マンガ人形ブロックのパッケージに、頭部に穴があることが前提になる合体をしたイラストがあることから、

後頭部に穴を持つロボットパズルのメーカーはツヤマの可能性が高いと思われるが、

両者の特徴をあわせ持つものであること、素材がどちらともちがうクリア系のチープなものであること、

メーカーが違うのに基本でザインに共通性のあるポーズブロックマンガ人形ブロックというパチモンが存在すると言うこと自体が

ロボットパズルもメーカーもさらに新たな第三のメーカーの存在の可能性を否定しないとも言える。

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マルコー産業のポーズブロックとツヤマのマンガ人形ブロックと、メーカ−不詳のロボットパズルというパチモンを並べてみることで、

パチモンのパチモンが作られ、それらがお互いに影響しあい、純正ピコタンの不足を埋め、

さらに新しい工夫が追加されて、駄玩具と言うニッチな需要に巧みに応えていたことを、今に伝えるものであるということがわかった。

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まあ、オマケのパチモンのさらにパチモンですよ。

これほどどうでもいいコンテンツなんか、他を探したってなかなかないですよ。

だからなんだ?!って言われると困るんですがね。

いいんじゃないんですか。こんだけネットが発達した世の中で、

絶対他にはないコンテンツって、胸はって言えるのってすばらしいじゃないですか!

・・・え、どうでもいい?

そりゃ、まぁ、そうですけど・・・。

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