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迫力の大型パチモン

ジャボタン

「なあ、お前知ってる?ピコタンってあんじゃん。おまけの」

「ウン、おれも持ってる。」

「あれのさぁ、大きいのってあるらしいぜ」

「えっ?ピコタンの大きいの?」

「そうなんだって。なんか、当たりがあって、送ると貰えるらしいぜ」

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「幻の」ソフビ、「幻の」プラモ。

情報の少ない子供の間で希望半分、通振りたいの半分で語られる夢の商品。

そんな中に「大型のピコタン」の話があった。

ピコタン熱の冷めた山本君がごっそりくれたピコタンの中に、

既に3個(内、中空タイプ2個)があったので、その実在は知っていたが、

それがどのように流通していたのかは、全くわかっていなかった。

インターネット上の書込みなどに「当たり」説が多くあり、その可能性も捨てきれなかったが、

1、明治製菓の様な大企業が「当たり」を送らせて、返送するような手間をかけることのメリットがわからないこと。

2、手元にあった大型には顔がなく、中空でないタイプはプロポーションがパチモン顔無しB型に酷似している。

この2点から、パチモンであろうことは推測していた。

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今回、いつも御協力いただいているぜんまい太郎さんからの情報で、

いくつかの駄菓子屋玩具と一緒にこの大型ピコタンの袋入りの状態のものを入手した。

名前はジャボタン

タグつき袋入りで、緑、青、黄、赤、アイボリー、ピンク、オレンジの7色、が各2個ずつ入っている。.

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「ジャボタン」のタグには「ポコタン」の時の様な吊り下げるための穴がないことから、

店頭では平台やカゴの中に袋ごと置かれて陳列されていたものと思われる。

タグを含めての袋の全長が20センチにもなることから、これも駄菓子屋売りよりも、

御土産屋での販売が考えられる。

タグには「ジャボタン」と言うタイトルのほかに「人形ブロック」の文字が入っている。

ピコタンのパチモンは、「人形ブロック」、「人間ブロック」、「ブロックマン」等のタイトルで

駄菓子屋売りされていたことが確認されている。(「4-4-1、ピコタンの使用」参照)

「人形ブロック」のタイトルのパチモンは、ネットオークションで東北地方の駄菓子屋さんのデッドストックで

発見された、パチモン顔ありB型のタグに書かれていたが、

後述するように「ジャボタン」はパチモン顔無しB型に体型が酷似しているので、

このパチモン顔無しB型も駄菓子屋で売られていたときには「人形ブロック」というタイトルだった可能性がある。

(「ピコタン図鑑(パチモン顔なし)」参照)

パチモン顔ありB型 顔ありB型(左)と顔無しB型

顔無しB型とジャボタン

「ジャボタン」とパチモン顔無しB型を並べてみると、若干「ジャボタン」が寸胴に見えるが

脇の受け部分や、腕の太さや胴の長さのプロポーションが非常に似ていることがわかる。

また、パチモン顔無しB型にある4色のみであるが、両者を比較すると色合いが非常に似ている。

例えばこのうちの1色が似ているものは他にもあるが、この組み合わせで4色とも一緒なのは

パチモン顔無しB型と腕の細いパチモン顔無しC型のみである。

パチモン顔無しB型にはもう1種類、肌色に近いピンクがあるが、

「ジャボタン」のクリア系なピンクと、不透明系のアイボリーの素材の混色の可能性が考えられる。

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先日、「ロボくんブロック」を入手したが、提供者のtoys.st氏から、

大型ピコタンの駄菓子屋販売時の記憶を御伺いすることが出来た。

それによると、粗末な紙質の厚紙でできた灰色の、おおよそ300×100×10mmくらいの大きめの箱に

ピコタンがズラッと並んで入って売っていたそうで、価格は1個20円〜30円と高価だったそうである。

この箱はもしかすると、他のものが入っていた箱を転用した可能性がある。

色は青、赤、(緑、黄色?)があり、駄玩具怪獣などに見られる茶色等はなかったそうである。

今回の入手品は、デッドストックのために袋入りの状態で発見されたが、

価格的には数百円程度に設定されたであろう内容であるため、

駄菓子屋でもっと簡単、安価に単品売りがなされていたということがわかった。

このことから、大型ピコタンはメーカーの景品ではなく、駄菓子屋やお土産屋等で、

単品、もしくは袋入りで売られていたモノだったことがわかる。

もっとも、店のローカルルールで、このちょっと高額な大型ピコタンをなにかの景品としていた可能性は

無きにしもあらずではあるが、いまのところは可能性が存在するという程度しか言えないと考えられる。

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その後、某クションで、再度「ジャボタン」を入手したが、出品者の方の話によると、

駄菓子屋の閉店にあたって片付けをした友人から譲られたもので、

5個ずつが袋入りになっていたということである。

値段は不明で、値札等はなかったということであった。

前述の様にばら売りされていたという証言もあるが、一個30円として14個入りなので380円。

普通サイズのパチモンが10数個入って50円だったことを考えると、やはり「ジャボタン」14個入りの袋は高価で、

駄菓子屋で売るためには、子供の購買力で賄える金額に小分けして売られていたものと考えられる。

それでも5個入りの袋で100円〜150円。

高価なものであったことがわかる。そのため、閉店までデッドストックとして残ったのであろう。

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最近になって、掲示板に新しい情報を寄せていただくことができた。(ポコ山様 2005/9/22投稿)

それによると、ピコタンが販売されていた時期(1975年前後か?)に、

10円か20円のガチャガチャの「アタリ」として、

引換券と引き換えに5個のジャボタンが貰えたということである。

「ジャボタン」にはプラ素材の硬化の時の変質か、胸の辺に白濁斑がある。

このことを指摘なさったことからも、当時からかなり「ジャボタン」に思い入れをお持ちの方と推測される。

単品売りが一個20円〜30円だったという情報もあったが、5個で100円相当のものが貰えるといえば、

まさに「アタリ」であったろう。

アタリ券をメーカーに送って返送されるのではなく、

駄菓子屋の店頭で交換してくれるということから、ネット上のウワサも一部正しかったことになる。

ガチャガチャのインストカード(ベンダー機前面の紹介の紙)には、ジャボタンの姿が印刷されていたという。

パソコンでカラー出力が手軽にできることもなく、カラーコピーも高価だった当時を考えると、

このことから、複数のガチャ機で「ジャボタン」がアタリとして交換されていたことがわかる。

アタリの「ジャボタン」は、5色セットで、輪ゴムで厳重にくくってあったということであった。

前述のタグ付き袋入りでない状態で「ジャボタン」を入手したとき、出品者の方に聞いた

「駄菓子屋の閉店にあたって片付けをした友人から譲られたもので、5個ずつが袋入りになっていた」

という証言と考え合わせると、このジャボタンもガチャのアタリとして用意されたものである可能性がある。

「ジャボタン」がアタリだったガチャ機も中身が売りきれたか、新しい流行に沿ったアタリに変更されたかしたために

アタリとして5個組にしてあったジャボタンは交換されることなく忘れられ、

閉店までデッドストックとして残ったものであると考えられる。

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タコチュウも、K型・L型・G型が、ポーズブロック合体基地を作ったマルコー産業の製品であり、

UFOケシゴマに入っていたり、スペースインベーダーというブリスター入りのアソートになっていたり、

ガチャガチャで入手された可能性があるというように、さまざまな販売形態がとられたことが判明したのと同様に、

メーカーはわからないが、この「ジャボタン」も、ガチャのアタリとして、袋入りのお土産として、

さらには、ばら売りでと、販売される場所や価格設定によって、さまざまに売られていたことがわかった。

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前述の様にこの大型ピコタンには、「ジャボタン」と中空タイプの2種類がある。

中空タイプの方が若干大きいがプロポーションはかなり近い。

中空タイプは右下の写真を見てわかるようにプラスチックの薄いパーツを上下で接着してある。

「ジャボタン」がこの中空タイプの元型になった可能性も検討してみたが、

中空のほうが全長が大きく、その可能性はないものと思われる。

Z301号室のZep氏によると、スーパーのオモチャ屋で縦長の袋に4〜5個(1列に連結されて)入って売られていたそうだ。

今は食玩商品が一般化してきているが、それ以前はスーパーのレジ前や玩具売り場に

多少高めな値段設定の、メーカー不明の玩具が売られていたので、その1つだったのであろう。

中空タイプも拳と足先の突出部の直径は約5mmで、「ジャボタン」や、「ロボくんブロック」と共通している。

「ジャボタン」と中空タイプはメーカーが同じかどうかはわからないが、

製造方法も違い同じ型を使っているというわけでないのに、拳の5mmは、「ロボくんブロック」とも等しい。

ロボくんブロック」の項でも提議したが、違う型を起こして作った、多分違うメーカーのモノと思われる

複数のパチモンが、「ブロック」という名前にも見られる通り「繋げられる」ことを重要視し、

自然発生的に共通規格が出来てきたものと思われる。

これは、明治製菓の「ピコタン」を元に、様々なデザインのパチモンが生まれ、

結合部分のサイズの共通化によって、それらが相互に意識しあい互換性を持たされたことを示し、

オリジナルからパチモンへの派生と、さらにパチモンが相互に複雑に影響しあいながら多く作られたことを示す、

明確な証拠といえる。

その後の研究の結果、ピコタン型人形ブロックの発生に関しては

純正ピコタンから他の型が派生的に進化したのではないことがわかった。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

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