.

影響しあう元祖と本家

ピエロ型運動会編とピエロ型スマイル顔

明治製菓のピコタンは、1974年に大流行したチョコレートのおまけである。

(『まだある。大百科−お菓子編−』初見健一著 2008 大空出版 p253参照)

それを扱ったホームページを作って以来、ページを見た人から、

「覚えている」とか「持っていた」という情報をいただくことが増えてきた。

.

大学の先輩から、「こんなの要るか?」といただいたのは、

ピコタンよりも一回り大きく、胴体が太くなった特異な形状をしたものであった。

左から純正後期型、ピエロA型

顔は唇を強調して丸い鼻をつけたピエロで、胴体は左側がストライプ、右側が水玉模様になっている。

首と手足には、フリルを表現したと思われる曲線がある。

これらのことから、ピエロの扮装であることがわかった。

もらった当初は、これはピコタンのパチモンの一種であると考え、

ピエロA型と命名した。

.

暫くして、偶然このピエロ型に別の種類を発見した。

ピンキーブロックという商品名と、田の字をカタカナのフが囲んだロゴが印刷された台紙とともに

6色各2個の12個が一緒に入手された。

このピエロ型は、先に見つけた物に比べて顔がラフで、表情が4種類あった。

胴体部分の半身がストライプと水玉模様のデザインは多少簡略化され、フリルは省略されている。

このタイプをピエロB型と呼ぶことにした。

.

このピエロ型には、さらに大型のものと、小型のものが発見された。

小型のものには、「MADE IN HONGKONG」の文字があり、リアルなピエロ顔のA型を模したものであった。

大型の方は顔はB型に似て立てるための台座が同梱されていた。

左側から純正、小型ピエロタイプ、ピエロA型、ピエロB型、ピエロC型

.

この太い胴体のピエロの顔が描かれたものは、当初は明治製菓のピコタンのパチモンであると考えていた。

しかし、古い業界紙の広告から、このピエロ型のほうがピコタンよりも先に販売されていたことが判明した。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで(玩具商報から)」を参照されたい。

.

『玩具商報』という業界紙に以下のような記事が出ているのが確認された。

.
玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用 玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

この記事は1969年のもので、ピコタンの発売された1974年から、さらに5年も遡るものであることがわかった。

販売元の藤田屋商店に電話取材したところ、当時のことを知る方からお話を伺えた。

それによると、海外の玩具見本市でこの人間型のブロックを発見して、

国内の意匠権所有者にロイヤリティを払って製造販売していたということであった。

その後、国内の意匠権所有者と連絡がつかなくなった後に、明治製菓のおまけを作っている業者(?)から

人間型ブロックの製造許可を求められたため、意匠権者は別に有ったが連絡が取れなくなったことを伝えたらしい。

暫くしてピコタンが発売されたということであった。

.

つまり、このピエロ型のほうが、明治製菓の「ピコタン」よりも前に存在していたことがわかった。

.

このピエロ型には2種類あり、左半身が縦線、右半身が水玉と共通だが、

唇が二重の線になり手足にフリルがある、よりリアルなピエロ型(ピエロA型)と、

口や目などはラフな造型になっている簡易タイプ(ピエロB型)が見つかっている。

左側からピエロA型、ピエロB型

左側からピエロA型、ピエロB型

藤田屋商店から発売されたピエロ型ブロックは、先の記事からわかるように、ブロックボーイとピンキーブロックの2種類の名前で売られていた。

このうち実際に発見された当時のデッドストックを確認したところ、

昭和44年1月1日号で紹介されているブロックボーイは紙箱に入っていてピエロA型が、

昭和44年8月15日号で紹介されているピンキーブロックはプラケースや袋入り等で売られており、

ピエロA型が入ったもの、ピエロB型が入ったものの両方が見つかっている。

このことから、よりデザイン的にもしっかりピエロの特徴を持ったピエロA型が先にあり、

後に簡略化されたピエロB型が作られたと考えられる。

.

このピエロ型は、当時は知らなかったが、

最近の某クションでは様々な販売形態のデッドストックや、各種のピコタンのパチモンと一緒に見つかっている。

明治製菓のピコタンが発売され、その人気に便乗したパチモンが出た時期になっても、

ピコタンのパチモンの一種という位置付けで駄菓子屋等で販売されていたと考えられる。

つまり、もとはピエロ型の方が先にあったが、ピコタンの流行によって後発のピコタンの影に隠れてしまったということができる。

.

んでもって、ここからが本題なのであるが・・・。

(えっ?!ここまでが長いって?しょうがないじゃん。込み入った話なんだから)

.

某クションで、ピコタンのパチモンとピエロ型のセットを入手した。

目を引くのは大量の大型パチモン「ジャボタン」で、これはタグつき袋入りで、7色各2個がセットになって売られていたものなので、

51個という数は3袋分強になり、一回の出現数としてはかなり多いといえる。

左上のピエロ型は簡易型のB型で、5色10個というのは中途半端な数で、小台紙入り袋入りの6色6個に近いが

どういう販売形態であったのかは不明である。

左側のピコタン型のものは、上から純正後期1個。これは2個セットのものなので、遊んでいるうちに一個を紛失したものと思われる。

その下の緑色の2個はパチモン顔無しF型と分類した背の低いパチモンで、タグつき袋入りで人形ブロックの名前で

パチモン顔無しK型と名付けた頭部の小さいパチモンと混合で20個、50円で売られていたのがわかっている。

2個ということは、ガチャガチャでも売られていた可能性が出てきた。

その左のピンクと黄色は、パチモン顔ありJ型と名付けたタイプで、1970年代前半のヒーローものをモチーフとした顔を持つパチモンで

黄色小台紙にブリスターパックされた20個入りのデッドストックが見つかっている。

このタイプも2個しかなかったので、ガチャガチャで入手したものではないかと思われる。

その下の4色20個はパチモン顔無しD型と分類したもので、人形ブロックという名称の台紙つき、

タグつき袋入りで4色各色5個20個入で売られていたのが確認されている。これは駄菓子屋で1袋を買ったものと想像される。

.

このように様々な種類の人形型ブロックが一度に見つかったということは、

明治製菓のピコタンの人気による品薄と、安く数を集めたいという需要から多様なパチモンが作られ、

コレクションされたことを示すと言える。

.

この中に、非常に珍しいピエロ型の人形ブロックの新種を発見した。

ピエロ型スポーツ。左からキャッチャー、ヤキュウ

ピエロ型スポーツ。左からキャッチャー、ヤキュウ

ピエロB型と一緒に見つかった、胴太タイプが、今まで見つかったピエロA型でも、ピエロB型でもない新種であることがわかった。

表面にはSPORTSの文字と、キャッチャーとヤキュウの文字が書かれている。

裏面には、キャッチャーと野球選手が描かれている。

左からピエロA型、ピエロB型、ピエロ型スポーツ

大きさは、藤田屋商店のピエロ型よりも若干小さい。

拳やつま先の大きさはピエロ型とほとんど同じである。

ピコタンのパチモンも、形状にバリエーションはあっても、この拳の大きさはほぼ等しい。

加工精度の善し悪しで実際は組めないことも多いパチモンだが、この部分の大きさは標準化されていたと思われる。

左からピエロA型、ピエロB型、ピエロ型スポーツ

厚さはピエロA・B型の、ほぼ半分しかない。

腰部にボールジョイントのある2パーツパチモンのポーズブロックと、メーカーは違うが同工異曲のマンガ人形ブロックでも、

マンガ人形ブロックのほうが本体の厚さが半分になっている。

マンガ人形ブロックは胴体部分も肉抜きがされており、厚さの減少も材料の節約のための方策であると思われる。

左からポーズブロック、ロボットパズル、マンガ人形ブロック

.

明治製菓の「ピコタン」は、最初の人間型のおまけが流行した後、

「どうぶつ」編、「うんどうかい」編が発売された。

「明治製菓の歩み 買う気でつくって60年」より

「ピコタンうんどうかい」のパッケージが明治製菓の社史に掲載されているのを発見した。

パッケージの形状はオリジナルのピコタンも同じだったと記憶している。

パッケージに見られるイチゴ味のチョコスナックが2個、茶色の厚紙の台紙に乗って、このビニール袋に入っていた。

その上に紙箱入りでおまけが入っていた。

バックに散らしてあるのは、なぜか「うんどうかい」ではなく、「どうぶつ」シリーズのほうである。

「明治製菓の歩み 創業から70年」より

70周年誌にも「うんどうかい」の広告が載っている。

新規格と言うのはオリジナルのピコタンに対して、新しいシリーズであることをしめすと思われる。

動物編も運動会編も、頭部や拳、つま先等の大きさの規格はは同じで、きれいにはめることができる。

このピエロ型スポーツも、明治製菓「ピコタン」の「うんどうかい」編のパチモンとして作られたと考えられる。

2パーツパチモンのポーズブロックにも、スポーツ大将合体ダッチといった、追加パーツでスポーツものに進化した例がある。

この2パーツパチモンのさらにパチモンと思われるマンガ人形ブロックには、

マンガ「ドカベン」のキャラクターシールをはったものも発見されている。

マンガ人形ブロック ドカベンバージョン

.

元祖ピエロ型ブロックを元に、本家「ピコタン」ができ、

本家の新型「うんどうかい」編の影響を受けて、元祖ピエロ型にスポーツ型が生まれる。

また、本家ピコタンのデザインを基本に腰部ジョイントを足して意匠権登録したポーズブロックにも

追加パーツのスポーツバージョンが生まれ、

さらに、そのパチモンと思われるマンが人形ブロックにも、スポーツに特化したドカベンバージョンができる。

ピエロ型とピコタン、その派生型を含め、スポーツというアイデアを追加された途端、

それぞれが影響しあい多くのバリエーションが増加したことがわかり、大変興味深い現象であるといえる。

.

このピエロ型スポーツの発見と相前後して、さらに一山の人間型ブロック各種を入手することができた。

左下は先にも紹介した大型パチモン「ジャボタン」である。各色2個ずつの14個はタグつき袋入りで売られていたものと思われる。

右列のピエロ型はピンキーブロックのピエロB型で、緑・赤・黄は8個、ピンク・白・青が7個の45個あった。

ピンキーブロックは、小台紙つき袋入りや、プラスチックケース、ひも付きビニール袋など、様々な販売形態が見つかっているが、

ひとつで45個も入っているセットは見つかっていない。

3色ずつ、7個・8個とキリが良いので未発見の大箱入りのセットがあった可能性もある。

左上のパチモンピコタンは顔有りC型と命名した種類で、「人間ブロック」という商品名で売られていた。

人間ブロック販売形態

林檎型ケース入りは72個入り、タグつき袋入りは20個入りなので、この一袋分と考えられる。

その下の青いパチモンは、顔無しB型の青が2個、顔無しC型の青が1個である。

この顔無しB型とC型は、「人形ブロック」という名称で、タグつき袋入りで混在して売られていたものである。

人形ブロック(顔無しB・C型)

この袋入りも入数は20個なので、3つしかないのは説明がつかないが、

20円ガチャに転用されていたか、友人同士の交換で入手したのかもしれない。

その青の顔無しB・C型3個の左に有る、赤いピエロ型は、先に紹介したピエロ型スポーツだった。

色は赤で、キャッチャータイプであった。

.

で、問題は、このまん中にごっそりあるピエロ型なのである。

出てくる時は出てくるもんで・・・。

これも、なんと新種だったのである!

ピエロ型スマイル

左半身は縦線、右半身は水玉模様で、これはピエロA型・B型と同じだった。

模様のモールドの品質はA型には劣るが、B型よりはきれいな仕上がりになっている。

ピエロA型にある、首や手足のフリル状の模様は省略されている。

色は緑、黄色、白、ピンクの4色が見つかった。

大きさはピエロA型・B型よりも小さく、先に紹介したピエロ型スポーツよりもさらに若干小さい。

拳の大きさは、ピエロA型・B型にほぼ等しく、実質的な規格化がされている。

左からピエロA型、B型、ピエロ型スマイル、ピエロ型スポーツ

厚さはピエロA型・B型よりもわずかに薄い。

左からピエロA型、B型、ピエロ型スマイル、ピエロ型スポーツ

.

特徴的なのは、その顔で、ニコちゃんマーク(スマイルマーク)になっている。

左側からピエロ型スマイル、パチモン顔有りC型スマイル

このスマイル顔といえば、今回の発掘品にも含まれていた、パチモン顔有りC型にも同様な顔がある。

このパチモン顔有りC型は、「人間ブロック」という商品名で売られていたことがデッドストックからわかっている。

人間ブロック

パチモン顔有りC型は胴体に3本の縦線があるが、同じデザインで同じ顔を持つものに、

メリーゴーランド」という回転するベースと、それに差し込める突起が足についているパチモンピコタンのセットにも使われていた。

この商品にマルコー産業のロゴがついていたことから、このパチモン顔有りC型は、マルコー産業に関係が深いものと思われる。.

メリーゴーランド(右下にマルコー産業のロゴ)

.

この顔有りパチモンC型のパッケージ台紙に描かれたイラストは、胴体が太くピエロ型のデザインに似ている。

人間ブロック台紙イラスト

マルコー産業は高いプラスチック加工技術を持っていたようで、明治合体チョコボールのパチモンの「合体基地」でも

オリジナルとほとんど同じ形状を再現している。

しかし、突起を追加してみたり一部形状をわざと変えているのがわかる。

純製 パチモンA型
風防が半球形で大きい 翼前縁に機銃を持つ
全高が高い 円窓の後に突起がある

ピコタンのパチモンの製作にあたっても、あえてスマイル顔や怒り顔の他、

純正ピコタンのキャラクターを意識しつつもかなり独自のデザインにしているように見える。

「人間ブロック」(顔ありC型)下段4種は純正のデザインの影響が強い

.

今回見つかった、スマイル顔のピエロ型は商品単体で見つかったため、パッケージや商品名、販売形態はわからなかった。

だが、ピコタン以前からあったピエロ型ブロックが、ピコタンのパチモンのデザインに強い影響を受けているように見える。

外国のアイデアを輸入したピエロA型は「ブロックボーイ」として発売され、「ピンキーブロック」と名称を変えた。

同じ「ピンキーブロック」の名称でデザインを簡略化したピエロB型が発売され、

人間型ブロックというアイデアが明治製菓のピコタンとして転用されヒットしたあとも、並行して売られていたと考えらる。

それは、今回発見された、ピコタンの新バージョンのパチモンであるピエロ型スポーツからも、

ピコタンのパチモンの顔のデザインに似せたピエロ型スマイルの存在からもわかる。

ピエロ型スポーツもピエロ型スマイルも、大きさや厚さなどの形状が違うことから、

藤田屋商店のピエロA型、B型とは違う系統、つまり違う業者の製造品と考えられる。

ピコタン同様、いくつかの業者が似せたものを作っていたことが伺える。

.

今回発見されたピエロ型の新型は、別々の出品者から、多くのピコタンのパチモンや藤田屋商店のピエロ型と一緒に見つかった。

当時これらをコレクションしたこども達が、さまざまな販売形態の、様々な種類の人間型ブロックを買い集めていたことがわかる。

このことは、多くのパチモンを生んだピコタンの人気を表すだけでなく、

大きさや形状がちがっても、当時の子供には「人間型ブロック」として広くゆるく認識され、

広範に収集されていたことも示している。

業者もパチモンを今程意匠権等を気にすることなく製作し、

子供達もパチモンであることを認識しつつも、寛容に大切にしていたことがわかって興味深い。

作る方も買う方も、ともに緩かった昭和の駄玩具の世界を表しているように思われる。

.

最後に、今回発見されたピエロ型スポーツを、ピエロE型

ピエロ型スマイルを、ピエロF型と命名することにする。

.

毎度言いますが、新発見と言っても、当時作られたから今見つけられるんであって。

まあ、どうでもいいっちゃぁどうでもいいことで・・・。

「それがどうした?!」って言われると「いえ、別に・・・」って。

.

一切の内容の無断転載、流用を禁止する。

戻る