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回る、回るよ、パチモン回る

メリーゴーランド

お菓子のオマケは、「オマケ」であることからそれ自体が高価であることは許されず、

戦前の紙製、アンチモニー製、木製から、戦後のブリキ、昭和40年代のプラスチックと、その時代に最も得やすい材料で作られた。

特に40年代に出現したプラスチックは、カラフルな色と高い成形加工性で、他の素材を駆逐してしまった。

オマケといえば、様々な素材で長期間作られ続けたグリコのキャラメルのオマケが有名だが、

最近ではオマケ付き菓子は作っていない明治製菓も、以前は多くのオマケ付き菓子を手を変え品を変え売っていた。

「明治合体チョコボール」や「ピコタン」、「カニタン」等もこうした明治製菓製のチョコレートのオマケであった。

たこちゅうはロッテ製だが、初期はゴム、後にはプラスチックで作られていた。

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インターネットの普及でネットオークションが盛んになり、駄菓子屋や文房具屋のデッドストックが日本中から出品され、

それを丁寧に見ていることによって、当時の大手製菓メーカーのオマケのパチモンが、袋入りのままで入手できるようになった。

大手製菓メーカーのオマケ付き菓子は、よっぽどのヒット商品でないかぎり、販売期間はそんなに長くなかったようで、

人気がある時期は売りきれが多かったり、子供が沢山買うには高価だったりしたため、

多くのパチモン(ニセモノ)が駄玩具メーカーで製造販売された。

多くのパチモンが作られたが、メーカーの純正品が販売終了してしまうと急速にブームはさめ、駄菓子屋などに残ってしまったらしい。

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そうして残ってしまったデッドストック品を見ていると、同じメーカーのロゴのあるものが多く発見された。

マルコー産業である。

最初、明治合体チョコボールのパチモンである「合体基地」のブリスター入りがホチキス留めされていた台紙にそのメーカー名は印刷されていた。

その後、ピコタンの2パーツ化パチモンとインベーダーゲーム消しゴムをまとめた「ロボくんブロック」、

2パーツ化パチモンのみで売られた「ポーズブロック」、さらに、たこちゅうのパチモンがUFOの消しゴムと一緒にはいった「UFO消しゴマ」にも

タグにマルコー産業の文字が入っていた。

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今回、あらたに同じロゴの入った駄玩具を入手した。

互いにかみ合った歯車が9個、ベースに付けられていて、これにピコタンを立てて回転させると、

メリーゴーラウンド(っつうかティーカップの乗物)のように回転するという趣向である。

「全部の穴に人形を立てゝ廻してみよう」と書かれている。「立てゝ」・「廻して」という文字遣いが大人向けである。

「人形の立て方でおもしろくなります?」の「?」がよく判らないが、「!」だと断定的すぎるが、

ここで「?」というのは、誰が誰に問い掛けているのか意味不明である。そこはかとない自信のなさが、やはり大人向けの説明といえよう。

「ベースは四方につなげます」と書かれている通り四隅につなげるための凹凸がある。

歯車はプラスチック素材できっちり作ってあるので、このベースを4つくらいつなげても、

一個所を動かすことで全てを回転させられると思われるくらい、動作は軽やかである。

「中のボッチは取りはづしができます すきなところに自由にかえて下さい」、

「人形がぶつかる場合は動かしてください」とあるが、穴の位置を動かすことで整然と動かせたりばらばらに動かせたりできる。

取り外しを「取りはづし」と表記し、地味に誤字があるところも非常に味わい深い。

「いろいろ遊び方を工夫しましょう」といわれても、回す他にこれといってやることも無いと思うが・・・。

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台紙右下のメーカーロゴ

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ブリスターの中には緑・青・赤・白・ピンクのピコタンが2個ずつ入っていた。

9個の歯車に一個ずつと一個の予備ということであろう。

腹に3本の縦線がある顔ありパチモンC型で、「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」の4種があった。

顔ありパチモンC型は8種類の顔がある。前記の4種のほかに、「帽子」、「真ん中分け」、「七三分け」、「おかっぱ」があるが、

これは純正ピコタンの初期型の顔の影響が強く、前掲の4種とは趣が異なる。

パチモン顔ありC型は、「人間ブロック」という名称で、「帽子」等の4種のみが入ったカプセルが見つかったが、

これらのことから、パチモン顔ありC型は8種のうち、4種ずつの2シリーズがあったと考えられる。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

後に別のセットから黄色が見つかった。顔は上記の4種と同じものであった。

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顔ありパチモンC型の「二重スマイル」は、以前から2パーツパチモンであるポコタン系の

ポコタン」や「ロボくんブロック」と顔のデザインの共通性があると考えていたが、

今回このメリーゴーランドが発見されたことにより、やはり同一メーカーの製品であったことが確かめられた。

顔ありパチモンC型には、同じ様に腹部に3本線がある小型な顔ありパチモンC2型があるが、これもマルコー産業製の可能性が高くなった。

また、合体基地の台紙付き袋入りとブリスター入り、「人間ブロック」と今回のメリーゴーランド

ポーズブロック」と「ロボくんブロック」というように、同じものが違った名前で、違ったパッケージで、

ロゴもあったりなかったり様々な形で売られていたことが確実になってきた。

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メリーゴーランドに入っていたピコタンをよく見ると、足の部分に歯車の穴に刺すための突起が追加されている。

このために型を新造したか、以前の金型に突起部分を追加したのかは判らないが、

どちらにしてもこのメリーゴーランドのために特に準備したことがわかる。

ベースに付いた歯車を回転させ、ベースをつなげられるオマケか、玩具があったような気がするが、

そのアイデアを真似てピコタンパチモンの型を流用したのではないかと思われる。

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台紙には上部中央に穴があり、フックにかけたり、この部分に紐を通したりしてディスプレイできるようになっている。

この穴の下に大型のホチキスで留めた跡があるので、「合体基地」のブリスター入りの様に大型台紙に留められて売られていたと思われる。

台紙の右上に値段シールをはがしたような傷があるが、売り方から見ても値段シールがあることから見ても、

駄菓子屋よりは、お土産屋や玩具店等でお土産用として比較的高価に販売されていた可能性が高い。

ピコタンは基本デザインがシンプルでありながら想像力をかき立てるのか、オリジナルのオマケを知らなくても十分楽しめるものだったためか、

マルコー産業はこのピコタンをもとに、多数をカプセルに入れた「人間ブロック」、

2パーツ化したポコタンタイプやメリーゴーラウンド等、様々な形態で販売していたことがわかる。

販売形態も駄菓子屋でのタグ付き袋入り、お土産屋や玩具店でのブリスターパック入りや大型ケース入り、

ガチャガチャのハズレ用など、多くの可能性が考えられる。

大手製菓メーカーが、当時は自社製品の意匠権の申請もせずに短期間だけ作っては新しいものに移行して居たのに対し、

そのパチモンをさまざまに組み合わせ、改良し、工夫して、純正の販売終了後も売り続けていたであろう事は、

その熱意というか、真剣さが伺えて大変興味深い。

当時は遊ぶために破り捨ててしまったパッケージの片隅のロゴから、今になってはじめてわかる、

メーカー自身にも残っていないかも知れないこのような元気のいいパチモンたちの軌跡を追えることが駄玩具研究の醍醐味と言えよう。

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今回のメリーゴーランドの発見にあたっては、ぜんまい太郎氏の情報に負うところが大きかった。

検索ワードに全く引っ掛かってこないような出品にまで目を向け、労を惜しまず知らせていただいたことに感謝するものである。

いつもすいませんねぇ。今後とも宜しくお願いいたします。m(__)m

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