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かわいいあの子は香港製

ピエロ小型

明治製菓のピコタンは、1970年代の中盤に販売された、チョコウエハースのオマケであった。今日で言うところの食玩である。

人間型の他に、その後、動物シリーズやスポーツシリーズなども出た。1パーツでなんの可動部もないオマケだが、

ほんの1年前後の流通期間内に大変流行し、数多くのパチモンが作られ、ガチャガチャや駄菓子屋などで売られた。

(ピコタンのパチモンについては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

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ピコタンのパチモンには、ピコタンの形態的特徴をもったまま大きさの違うものの他に、

腰部のボールジョイントで上半身と下半身が可動な、2パーツ構成のポコタン型系列と、

頭部と脚部や腕部を合体させられるが、形が全く違うピエロ型系列の2種類がある。

その後の研究の結果、ピコタン型人形ブロックの発生に関しては

純正ピコタンから他の型が派生的に進化し他のではないことがわかった。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

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この度、このピエロ型に新たなサイズが確認された。小型ピエロタイプである。

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ピエロ型の系統には、いちばん大きい「セーフティトイ」(ピエロC型)、一回り小さい「ピンキーブロック」(ピエロB型)、

ピンキーブロックと同じ大きさで顔の模様がより細かいピエロA型がある。

左側から純正、小型ピエロタイプ、ピエロA型、ピエロB型、ピエロC型

上の写真を見ても判るように、ピエロ型に共通の特徴はその形状とともに、顔がピエロの様なメークをしており、

体の模様が左右でちがっている。また、首や手首、足首にフリル状の飾りがある。

以下の特徴が最も顕著なのが、下の写真にあるパチモンA型である。

左側が今回発見の小型ピエロタイプ、右側はピエロA型

パチモンの特徴として、模倣するもとになるものに比べて、真似したほうが一層簡略化される傾向がある。

このことを考えると、このピエロA型がもとになり、B型・C型が作られたと考えられる。

上の写真から見ても判るように、A型も今回発見の小型ピエロタイプも口が二重になっている。

これは簡略化したB型・C型には見られない。つまり、A型により近いパチモンである事がわかる。

よく見ると、服の模様がA・B・C型では右側が水玉で左が縦線だが、小型ピエロタイプでは逆になっている。

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ピエロA型は、先輩から最近になって3個が譲られたもので、メーカーや販売形態はわからない。

ピエロB型・C型も販売時の形態はそれぞれ袋入り状態であったことは確認されているが、どこで売られていたかは不明である。

今回の小型ピエロタイプは、純正よりも小さく、脇や首の凹部が拳に比べ小さく、胴体の孔も葦のつま先の突起もなく、

合体させることを前提としていない事が伺われ、ガチャガチャのハズレとしてカプセルに入っていたのではないかと思われる。

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パチモンA型には、模様のある側と反対の褄先のある側には顔がなく、服の模様だけがある。

小型ピエロタイプの裏側には、服の模様はなく、「HONG KONG」の文字がある。

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ホンコン製のパチモンとしては、「当て物」のハズレ用のピコタンもどきがある。

この抱きつき型の玩具も、以前オークションでもっと大きいと思われるものがでているのを見たことがある。

ピエロ型や、この抱きつき型は、ピコタンに触発されて作られたものであると考えられる。

純正ピコタンと同じ形態で同じ大きさのものには「HONG KONG」の文字があるものはない。

小型ピエロタイプは全長も純正ピコタンよりも小さいが、これに生産地の標記があるということは、

ピコタンのパチモンにホンコン製があれば、刻印がある可能性が高いと考えることが出来る。

腕部の形状が似ているポコタンタイプの製造にあたったマルコー産業が、腕部を合体させることの意匠権登録をしているという事実はあるが、

これはオリジナルを作っていた明治製菓に意匠権特許の意識が低く、後発のパチモンメーカーが2パーツ化というデザイン上の工夫と一緒に

ピコタンの基本的デザイン要件も申請してしまった可能性がある。

しかし、もっとも自然に考えるならば、明治製菓のピコタンのデザインが最初にあり、

そこからポコタン型やピエロ型、上記のパチモンもどきの原型が生まれたものと思われる。

さらにその廉価版として、ハズレ用やガチャ用に小型ピエロタイプやピコタンもどきがホンコンで生産されたものと思われる。

その後の研究の結果、ピコタン型人形ブロックの発生に関しては

純正ピコタンから他の型が派生的に進化し他のではないことがわかった。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

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小型のポコタンタイプである「ポーズブロックマン」を発見したとき、ポコタン系列も、ピエロ系列も、

拳の部分の直径に共通点があることを指摘し、ピエロ型にも拳直径が3mmの小さいものがある可能性を指摘したが、

今回発見した小型ピエロタイプはまさに拳の直径が3mmでこの仮説を証明するものであった。

左からポーズブロックマン、ポコタン、ポーズブロック、小型ピエロタイプ、ピエロA型、ピエロC型

ピエロC型とポーズブロックは、ピコタン系列の大型パチモン「ジャボタン」と同様に、拳の直径は5mmである。

ポコタンとピエロA型の拳の直径は4mmで、ポーズブロックマンと小型ピエロタイプの拳の直径は3mmである。

ポーズブロックマンはメーカー名こそないものの、STマークがあることから日本製の可能性が高いが、

ホンコン製の小型ピエロタイプと同じ規格であることから、輸入されたものである可能性も指摘できる。

このような、オリジナルからは形も大きさもちがう、恐らくメーカーも違うパチモンになぜこのような緩い共通規格があるのかは、

未だに判らない。合体させるには拳の直径もさることながら、腕の凹凸がマッチしないといけない。

そう考えるとジャボタンとポーズブロック以外は互換性がない。

ジャボタンとポーズブロックはメーカが違う可能性が高く、ポーズブロックとポコタンはメーカーが同じ可能性が高い。

ピエロA型とピエロB型とは、同じ大きさであるにも係らず顔のデザインが違うためメーカーもちがうと考えられる。

ピエロB型とC型はデザインが同じで同じメーカーであることが考えられるが確定はできない。

純正と互換性のないこれらの各種パチモンは、タグ付きの袋入りで10数個セットで、この1袋で完結した売り方がなされている。

そのような売り方をしていて、形状も違うため合体させることも困難であるにもかかわらず、この拳の直径の共通点は、

他社のパチモンにそれぞれがかなり影響しあいながら、同時多発的に作られていたことが考えられる。

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今回発見された、小型のピエロ型を、ピエロD型と命名することにする。

この小型ピエロタイプの販売形態が判明した。

駄玩具のセットの中に、ホチキス留め去れたビニール袋に入ったピエロD型が見つかった。

緑、青、水色、黄色、赤、ピンクが各2個で計12個入っていた。

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20数年前に短期間流通し、オリジナルを作ったメーカーすらわすれたようなオマケの、さらにパチモン・・・。

文献からのアプローチはほとんど不可能であることから、それぞれのブツを観察し考古学的に分析する他はない。

・・・が、それに意味があるかどうかは、全く別なんですけどね。(^^;)

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