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事実は小説よりいきなり

徹底解明!ピコタンのできるまで part.2

前項で、明治製菓のピコタンが最初にあり、そこから様々なパチモンが生まれたとする、

当サイトのピコタン史観に重大な変更を迫られる記事を発見したことをお知らせした。

それでは、「ピコタン型の人間型ブロックのルーツは何か?!」を遡っていきたい。

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情報提供者は、これもこのサイトではお馴染みのソフビ怪獣の研究者である、秀次郎氏で、

自身のソフビ怪獣の歴史調査のため、文献資料を渉猟していたところ、古い業界紙に人形型ブロックの広告記事を発見してくださった。

.玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用

.玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

これは、玩具商報という業界紙で、秀次郎氏は先日、この雑誌の記事から『ソフトビニール人形・研究室』というコンテンツを立ち上げ、

個人の記憶が通説になっていたソフトビニールに関する「常識」を覆す、画期的な研究成果をまとめられた。

この雑誌は、玩具店に対して新製品情報や業界の動向、流行商品の紹介をするもので、読者は玩具店主が主になっているようである。

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では、それぞれの記事を詳細に検討していきたい。

玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用

上掲の記事は「玩具商報」の昭和44年の新年号に掲載されたものである。

広告主は「藤田屋商店」。店名や住所で検索してもヒットしなかった。

しかし、日本玩具境界の会員一覧に「(株)藤田屋」という会社があるので、この会社かもしれないが、ホームページが無いので確証は得られなかった。

この記事からわかるのは、

1、昭和44年(1969)年初頭に発売された新製品である。

2、テレビCMを打ったか、テレビ番組等でなんらかの紹介をされたらしい。

3、藤田屋商店は「フジタヤ」というカタカナ表記をすることもある。(ネット検索にはヒットせず)

4、「意匠並に新案提出中外数件」とあり、意匠権に多くの配慮をしている。

5、組見本には人形14個・台座1個、人形8個・台座1個の、計人形20個・台座2個が写っている。

6、個数はわからないが、写真から少なくとも人形10個・台紙2個が平たい箱に入っていたと思われる。

7、価格は100円であった。箱は紙製であるように見える。

8、色は5色あった。

この玩具の形は、当サイトでピエロ型と紹介したものであることがわかる。

参考画像:ピエロA型(左は純正後期)

これは2歳くらい年上の先輩から譲ってもらったもので、どのようにして手に入れたかは覚えていないということだったが、

箱入りの玩具屋売りの玩具として与えられたものではないかと想像される。

ピコタン同様に脚部につま先状の突起があり自立することは可能だが、記事の写真のように沢山組み上げるときには、

台座がないと立てておくことができない。この台座は純正ピコタンにはみられなかったが、

多くをつないで遊ぶときにはあったほうが面白いパーツなので、チョコウエハーのオマケという性格上、

サイズや個数の制限が強いので、明治製菓の景品とするにあたって省略されたのではないかと思われる。

入り数は箱写真からはわからないが、価格から考えて人形15個〜20個・台座2個位であったのではないかと思われる。

昭和44年の100円は、駄菓子屋で気軽に買えるほど安くはないが、玩具店にあれば普通の価格帯であったのではないかと思われる。

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玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

上掲のブロックボーイから8カ月。同じ藤田屋商店から発売されたのが「モーレツ・ピンキーブロック」である。

この記事からわかるのは、

1、昭和44年(1969)年8月に発売された新製品である。

2、教育玩具として発売された。玩具店や児童館などの教育施設ヘの販売を視野に入れていたと考えられる。

3、改良型と明記されている。

4、タイトルには「モーレツ」の文字は略され、丸いメーカーロゴと思われるものが書かれている。

5、組見本には人形6〜8個・台座1〜2個の組み合わせで5種類の組方が書かれている。

6、個数はわからないが、写真から少なくとも人形20個・台紙2個が平たい箱に入っていたと思われる。

7、価格は100円であった。プラスチック容器に入っていた。

8、色は6色になった。

昭和44年といえば、丸善石油の「オー!モーレツ」というコマーシャルが流行し、モーレツ社員などという言葉が流行った年である。

この「モーレツ・ピンキーブロック」にもそういった時代の息吹を感じることができる。

「改良型」とあるが、何を改良したのかはわからない。もし、ブロックボーイがピエロA型であるとすれば、

ピエロA型とB型は大きさの面ではほとんど変らない。

顔がA型はリアルなピエロになっているが、B型は簡略化されている。

ピエロA型の顔はちょっと恐いので、顔を親しみやすいものに「改良」したのかもしれない。

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ピンキーブロックについては、以前、このサイトでもピエロB型として紹介している。

参考画像:ピエロB型(左下は純正後期)

確かに色が6色あり各色2個の計12個、台が一個一緒に見つかった。ビニール袋入りで以下のような台紙が入っていた。

「あそび方」のイラストは前掲の「モーレツ・ピンキーブロック」の左上・中央・右下の図と全く同じである。

円形のロゴも「モーレツ・ピンキーブロック」のものと同じであると思われる。

「玩具商報」昭和44年8月15日号の記事から「モーレツ・ピンキーブロック」が100円であったことから、

このセットは50円位で販売された簡易版である可能性が高い。

逆に、「ピンキーブロック」が12個入り(+台座1個)であったことから、

モーレツ・ピンキーブロック」(箱入り)は6色が4個ずつの24個入り(+台座2個)であったのではないかと推測される。

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この「ピンキーブロック」には、サイズの大きいものも確認されている。

それが以前紹介した、ピエロC型である。

左から純正後期、ピエロA型、ピエロB型、ピエロC型

これは「ピンキーブロック」(ピエロB型)と同じ簡略化された顔を持っている。

メーカー名等はわからないがタグ付き袋入りの状態で、玩具屋でフックにかけられたり平置きされたりして売られていたと思われる。

色は5色各4個の20個入りで、台も2個入っていた。

前掲の「玩具商報」昭和44年8月15日号の記事の右上にある、「袋入りママゴト遊び」を見ると

名前を明記せず「TOY」と書かれることもあるようなので、このピエロC型も藤田屋商店の商品である可能性が高いと思われる。

藤田屋商店:袋入りママゴトあそび

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リアルな顔のピエロA型には、同じような顔で小型のピエロD型が発見された。

左からピエロD型、ピエロA型

このピエロD型は、「HONGKONG」の刻印がある。

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このピエロ型とピコタン型へのつながりに目を向けてみたい。

駄菓子屋で売られていたピコタンのパチモンのデッドストックが、某クションなどで入手できるようになって気になったのは、

そのタグに書かれていた名前とイラストにひとつの傾向がみられたことである。.

ピコタンパチモンのうち、タグなどから名前がわかるのは上掲の3種である。

左から人形ブロック(パチモン顔ありB型)・人間ブロック(パチモン顔ありC型)・ブロックマン(パチモン顔無しE)である。

このうち、ブロックマンは顔無しであるが、人形ブロック(パチモン顔ありB型)も人間ブロック(パチモン顔ありC型)も

人間の顔が書かれており、人形ブロック(パチモン顔ありB型)は明らかに純正の顔を簡略化したパチモンである。

、人間ブロック(パチモン顔ありC型)は、パチモン顔ありC型8種類のうちで比較的純正に似る4種のみが入っていた。

人形ブロックのタグには、胴体の部分がピエロ型に近い、寸胴なイラストが描かれている。

100円という価格設定で玩具店売りを目標に作られた「ピンキーブロック」が駄菓子屋売りの廉価版を作ったのは、

1962年以降、どんどんラインナップを増やし流行したダイヤブロックや、今でもファンの多いレゴブロックなどが普及し、

人間の形をしているため、かえって作れるものが制限される「人間型ブロック」が流行らなくなったためである可能性が考えられる。

しかし、全くなくなったわけではなく、前述のマルコー産業が意匠権を持つ2パーツ化された、ポーズブロックロボくんブロック

さらにフランダースの犬(1975年1月5日〜12月28日放送)がタグに書かれたポーズブロックマン

「ブロック」の名前を持つ人間型ブロックは、作り継がれていたことがわかった。

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以上のようにみてくると、以下のシナリオを想定することができる。

明治製菓からピコタンが発売された1974〜1975年より遡ること5年。昭和44年(1969)には既に人間型ブロックのブロックボーイが発売されている。同年中に同じ形でピンキーブロックが出ている。これらは販売価格は100円と高目で、玩具店の業界紙に紹介されていることからも、玩具店で販売されたものであった。

ピンキーブロックは、ビニール袋入りの廉価版があった。これは、ピエロ型ブロックが駄菓子屋でも売られるようになったことを示す。その後、ブロックマン・人形ブロック等の「ブロック」の名を冠した玩具が駄菓子屋で売られ、2パーツ化されたピコタン型のポーズブロックの系列のものは長く作られた可能性が高い。

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それでは、ブロックボーイが、人間型ブロックの嚆矢としてよいのだろうか?

ここで、さらに遡る資料が、秀次郎氏からもたらされた。

次回は、「人間型ブロックの源流をたどる」ピコタンの原点を、

資料と実物を示して明らかにしていきたいと思う。

徹底解明!ピコタンのできるまで part.3

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