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パチモンのパチモンをお手ごろ価格で

お早よう!!ポコタン Part.2

ピコタンは、1974年に明治製菓から発売されたチョコレート菓子で、人間型のブロックのオマケが大流行した。

菓子屋では売り切れてしまい、駄菓子屋では多くのメーカーがパチモンを販売した。

現在では、純正と同じ大きさのパチモンで、顔の有るもの、ないもの合わせて24種類が確認されている。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

その他、形状は純正と同じだがサイズが違うものや、腰部にジョイントを持つ2パーツ型と命名したもの、

純正の第二弾、第三弾のどうぶつえん編、運動会編のパチモン等、様々なパチモンが存在することがわかっている。

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注目すべきは、2パーツ型と命名した進化系パチモンの存在である。

1970年代後半に、スキーに行った湯沢駅の売店で、ケース入りのものを見た記憶がある。

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後になって、袋入りのデッドストック状態のものを入手した。

ポーズブロック

商品名は「ポーズブロック」。

タグには、マルコー産業というプラスチック玩具メーカーのロゴと、

PAT.P.(「パテント・ペンディング」=「特許出願中」)の文字が有る。

この2パーツ型が、インベーダーゲームの消ゴムと抱合せで販売されていたのを発見した。

商品名は「ロボくんブロック」。

消ゴムが2個、2パーツ型が3個入っていた。

この台紙には、STマークとPAT番号、マルコー産業のロゴマークが見られた。

ロボくんブロックの台紙のSTマーク

ロボくんブロックの台紙のPAT番号

このパテント番号を、特許庁のホームページにある特許電子図書館の「意匠文献番号索引照会」で調べたところ、当時の意匠公報が見つかった。

意匠権者はマルコー産業になっており、出願は昭和50年(1975年)、登録は昭和52年(1977年)となっている。

明治製菓のピコタンの発売が昭和49年(1974年)なので、申請は迅速に行われたもののようである。

このことから、「ポーズブロック」の発売は昭和50年(1975年)〜昭和52年(1977年)、

ロボくんブロック」の発売は昭和52年(1977年)以降と考えられる。

説明には以下のように書かれている。

「本物品は、上半身と下半身に分割され、上半身下部と下半身上部とにおいて連結し、

一定角度の範囲内で前後左右に連結部から屈曲し、単体でポーズを取らせて遊べるようになっていて、

上半身の頭部後面と胸部に設けられる孔と、下半身の上部背面に設けられる孔に、下半身足部の先端を嵌入し、

前後方向に連結でき、また上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、

左右側方にも連結して遊べるようになっている。」

純正ピコタンとの違いは、腰部のボールジョイントでポーズをとれることと、

腰部の穴とつま先で連結出来ることである。

この部分は確かに新しいが、それ以外の嵌入による連結は、ピコタンでも見られるし、デザインはピコタンに強く影響されている。

見方によっては、腰部のジョイントという新味を追加した際に、ピコタンの基本デザインをまとめて登録してしまったようにもとれる。

ピコタンを明治製菓に提案した(株)エースプレミアム代表の太田俊作氏によると、パテントはとっていなかったと言う。

(「ちびっこ広告図案帳70’s」オークラ出版)

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「ポーズブロック」には、他のメーカーから販売されたと思われるサンプルも見つかっている。

透明な円筒形のプラスチックケースにポコタンと、ジョイント用のプラスチック棒が2種類入っている。

ケースの蓋部分には紙のプレートが入っており、エンゼルボール株式会社というメーカー名が入っている。

ケースにはSTマークのシールが貼ってあり、番号はロボくんブロックの台紙のものと同じであった。

ケースに貼ってあったSTマーク

ロボくんブロックの台紙のSTマーク

ピコタンの基本的な連結機構を包含した意匠登録をしたマルコー産業が、

2パーツ型を生産し、他のメーカーに納品した可能性があると考えれる。

STマークの研究の結果、アルファベットは団体の略称、次の3桁がメーカーコード、その次の1桁が昭和の年号の下一桁になることがわかった。

「P」は日本プラスチック玩具工業協同組合を表し、

527がこの当時のマルコー産業のメーカー番号であると思われる。

4桁目の「0」は、時期から考えて昭和50年であると思われる。

最後の3桁は登録(申請?)の順番を表すものと思われる。

昭和50年というのは、ピコタンの発売の翌年であり、ピコタンの流行に迅速に反応し、

腰のジョイントを意匠権登録する際に、純正本体のデザインも一緒に記載したということになる。

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マルコー産業では、ピコタン型の駄玩具を作っていたことは、同社のロゴの入った、

「メリーゴーランド」という歯車駄玩具に入ったパチモンピコタンがあったことでわかった。

台紙の右下にメーカーロゴが入っている。

台紙右下のメーカーロゴ

このセットに入っているパチモンピコタンは、歯車にたてるための突起が脚に付いている。

顔は「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」で、胴体に3本の縦線が入っている。

このタイプは顔有りC型と命名したもので、ケース入りや大台紙にタグ付き袋入りで売られていたのが確認されている。

この顔のデザインは、2パーツ型の大型パチモンにテイストが似ている。

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大台紙にタグ付き袋入りのものは「人間ブロック」と言う商品名で、メーカー名やロゴはない。

顔は先の「メリーゴーランド」にあった「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」の他に、

「帽子」、「真ん中分け」、「七三分け」、「おかっぱ」があり、計8種類があった。

大台紙の商品がホチキス留めされているところは、水色、緑、黄色、赤で色分けされている。

このような台紙は、顔無しD型と名付けたパチモンの大台紙でも見られた。

「人形ブロック」(顔なしD型)

市松柄の台紙は他にもあり、この一点をもって同じメーカーであるとは確定できない。

顔有りC型は頭部に、顔無しD型は腹部中央に、型にプラスチックを流し込んだ湯口があり、

成型方法、製造法方が違っている。

顔有りC型と顔無しD型は同じメーカーかどうかはわからない。

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パチモン顔有りC型が、「人間ブロック」という商品名で売られていたものには、

プラスチックケース入りのものも見つかっている。

このケースには、8種類ある顔有りC型のうち、明治製菓純正のオリジナルデザインに近い

「帽子」、「真ん中分け」、「七三分け」、「おかっぱ」のみが入っていた。

このケースにあったSTマークは「ロボくんブロック」や「ポーズブロック」と非常に近く、下2桁しか違わない。

これは、マルコー産業の昭和50年の登録を表すものでり、

発売年やメーカーが同じで、申請時期がポーズブロックよりも早かったことを示し、

ピコタン型の駄玩具の方が、2パーツ型の駄玩具より早く申請されていたことがわかった。

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さて・・・。

いいですか?

まとめますよ。

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ピコタンの流行の最中、パチモン駄玩具を多く作っているマルコー産業は、

腰部ジョイントという新しいアイデアを追加しながら、ピコタンの基本デザインも含めて意匠登録した。

このことは、「ポーズブロック」や「ロボくんブロック」のパッケージにあるロゴマークとPAT番号等から確かめられた。

マルコー産業は、ピコタンのコピー(パチモン)も作っており、顔有りC型と命名した。

顔有りC型の顔は、2パーツ型の顔とデザイン的に似ているものがある。

また、顔有りC型の台紙は、商品が留められている部分が、4色の市松柄になっているものが見つかっている。

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ここまで理解した上で、さらに興味深い2パーツ型を御紹介しよう。

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2パーツ型のサイズ違いが発見された。

商品名は「お早よう!!ポコタン」。

タグ付きの厚手の丈夫な袋に5色、20個が入っている。

タグには上部中央に小さな穴が打ち抜かれており、店頭のフックに懸けて展示したものと思われる。

見つかったものはデッドストックだったためか、フックに懸けた形跡はなく、棚の篭などに並べられていたのかも知れない。

落札することはできなかったが、

このタグと同じものと思われるタグ付き袋入りが、某クションに出品された。

入数は60個ということで、袋は大きく、

次に紹介するジャボタンの袋入りと同じようなボリュームであった。

レモン色の地色の厚紙で、メーカー名はない。

大きさは前述の2パーツ型よりも小さい。

左からパチモン大型(ジャボタン)、ロボくんブロック、ポコタン、純製後期

顔は目が二重丸になったタイプの1種類のみで、マルコー産業の4種類より減っている。

顔の種類が減らされているということは、マルコー産業の2パーツを模して作られたと考えられる。

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レモン色の地の厚紙は、ピコタンの大型パチモンである「ジャボタン」でも見られた。

これもメーカー名等の情報は書かれていない。

しっかりした造形であるが、裏面に顔はない。

身長は純正の3倍弱。持ち重りする程しっかりした材質で、非常にがっちりと組める。

タグのデザインのみでは確言できないが、タグのデザインと、ブツの出来の良さから、同じメーカー製ではないかと思う。

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この「お早よう!!ポコタン」のサイズであるが、

様々な人間型ブロックと比較したところ、

明治製菓のピコタンが発売される前に既に販売されていたピエロ型の拳とが、約4mmでほぼ同サイズであることがわかった。

左からピエロ型、ピエロF型、ポコタン

ピエロ型にはピエロF型と命名した、パチモン顔有りC型の顔に似たスマイル顔を持つタイプが見つかっている。

左側からピエロF型、パチモン顔有りC型スマイル

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拳の大きさに着目すると、興味深いことに気が付く。

先に紹介したポーズブロックと、ピコタンの大型パチモンであるジャボタン、

ピエロ型の大型のパチモンである「セーフティトイ(ピエロC型と命名)」の拳が、どれも約5mmと等しい事がわかった。

左からピエロ大型、ポーズブロック、ジャボタン

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発売時期は、ピエロ型が一番早く、昭和44年(1963年)にフジタヤから発売されたことが、当時の業界紙からわかった

これはピコタンの発売より5年も前である。

.玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用

.玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

この時発売されたのは「ブロックボーイ」、「モーレツ・ピンキーブロック」で、

ピエロA型・B型と命名したものであり、拳のサイズは「ポコタン」と同じであった。

この玩具はそこそこ流行っていたらしく、ピコタンのパチモンのパッケージにも、

このピエロ型のデザインを取り入れたと見られるものがある。

先に紹介した顔有りC型のプラケース入りの中に入っていた商品名を記した紙にも

胴の太いピエロ型に似たイラストが描かれていた。

人間ブロック(パチモン顔有りC型)プラケースに入っている紙

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ピエロ型が、フジタヤによって正規のロイヤリティを支払って作っていたことは、

フジタヤの当時のご担当者への取材からあきらかになった。

明治製菓のピコタンは、エースプレミアムが海外の見本市で見つけたものを明治製菓に提案し採用された。

フジタヤにも連絡があったが、この頃にはロイヤリティの支払先が不明になり、

(どのような処理がなされたのかは不明であるが)ピエロ型と全く別に、

明治製菓のプレミアムとして大流行したと言うことらしい。

このため、ピコタンの流行に合わせて作られたパチモンピコタンのパッケージには、

駄玩具業者に知られていた、先行するピエロ型のデザインが流用されたと考えられる。

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明治製菓からピコタンが発売されたのは1974年であったことは、明治製菓の社史からわかった。

「明治製菓の歩み 買う気で作って60年」より引用

ピコタンは大変流行し、そのデザインの簡略性から、沢山のパチモンが駄玩具メーカーで作られた。

パチモンピコタンを作った多くのメーカーの中で、マルコー産業の対応は非常に素早く、的確であった。

マルコー産業は、後にたこちゅうや明治合体チョコボールのパチモンも手掛けたことがわかっている。

先に紹介した様に、「ポーズブロック」や「ロボくんブロック」と名付けられた2パーツパチモンを意匠登録し、

新しいアイデアとして「上半身と下半身に分割され、上半身下部と下半身上部とにおいて連結し、

一定角度の範囲内で前後左右に連結部から屈曲」できることを追加したが、

その際に「また上半身の両肩部と胸部両側に設けられる凹溝に上半身の両腕部先端を嵌入し、

左右側方にも連結して遊べるようになっている。」という、

ピエロ型や純正ピコタンのもっとも基本的な意匠をもまとめて登録してしまった。

これによって、ピエロ型からピコタンに続く、「左右側方にも連結」という意匠は、

マルコー産業が優先的に意匠権を主張出来るようになったと思われる。

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近頃、ぜんまい太郎さんがフリマから発掘した「たこちゅう」のパチモンから、

拳径が5mmのジャボタンと同じ大きさのパチピコが見つかっている。

大型中空パチモン

帽子型をしたプラスチックのケースに、K・L・G型と命名したパチモンタコチュウが入っていた。

パチタコG型とL型は、マルコー産業のロゴの付いた「UFO消しゴマ」に入っていたことから、

これらのパチタコはマルコー産業製であると考える。

ケースにはパチタコと、中空大型パチピコが2個入っていた。

ケースに貼ってあったSTマークのシールから、マルコー産業の昭和51年(1976年)商品であることがわかった。

中空大型パチピコの顔は3種類が確認された。

このデザインはポーズブロックに酷似しており、ポーズブロックの方が5種類と多く、

STマークから読み取れる登録時期が昭和51年であることからも、ポーズブロックの方が少し早く製造されたと思われる。

(マルコー産業のメーカー番号は、P257→M259→P544→K541と変化があったようである。

詳細は「たこちゅうセット帽子ケース」のページを参照の事)

マルコー産業に関係があると思われるSTマークについては、

サンプル数の増加に伴い、時系列順の変化があったとは言えないことがわかった。

詳細は「たこちゅうセットりんごケース」のページを参照されたい。

左から普通目、笑い目、つぶり目

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ピエロ型→ピコタン→2パーツ型というデザインの変遷と拳の直径というサイズ上の共通性に注目すると、

一連のピコタンの進化の過程に寄り添い、「ジャボタン」と「お早よう!!ポコタン」を作ったであろう派生の系統の存在が浮かんでくる。

その他の様々なサイズのパチモンを集めて検討すると、デザインとサイズの組み合わせのバリエーションの中で、

様々なメーカーが、周囲を右顧左眄しつつ、少しでも他のと組み合わせられ、

また、逆に少しでも他と差を付けて売れようと、アイデアを尽くしたことが察せられる。

上図の様に、中心に、海外のデザインを輸入したピエロ型、明治製菓のプレミアムとして採用されたピコタン、

そして、独自の2パーツ合体アイデアを追加しピコタンの基本デザインを包含したポーズブロックの流れを置いてみる。

それぞれのデザイン的な特徴を併せ持つパチモンを置いてみると、中心の上から下への進化の流れの他に、

それぞれから拳の直径と顔のデザインについて、左右に枝別れし、左右の下部で

「ジャボタン」と「お早よう!!ポコタン」に行き着くのがわかる。

この2種のパッケージは、先にも紹介した、レモン色の地の厚紙のタグに厚めのビニール入りである。

メーカーロゴがないために確証はないが、この2種が同じメーカーであるとすると、

ピエロ型からポーズブロックへの流れからの分岐の終点であり、

世紀の手続きでロイヤリティを処理していたフジタヤから、

一流菓子メーカーのプレミアムとして正式採用されたピコタン、

ドサクサでも正式に意匠権登録をしたマルコー産業の商品を

良いとこ取りで真似し、拳の直径を共通化することで、「左右側方にも連結」することを目指した、

さらに一歩進んだパチモン作りをしていたということができる。

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はい、いいですかぁ?

人間型ブロックが、どれもこれも、共通する要素を持ち合い、

お互いに影響されていることがわかりましたね?

この、影響されまくりの先にある「ジャボタン」と「お早よう!!ポコタン」。

メーカー名は不明ですけど、これが同じメーカーの製品とした場合、

人間型ブロックの構成要素を理解し、非常に優秀なパチモンのパチモン作りであることがわかりましたね?

あまりに壮大で、なんですが。

ここまでが、導入部分なんですよ。

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はい!では、ここからが今回の本題。

この、パチモンのパチモン史上で、結構、重要な位置を占めそうな「お早よう!!ポコタン」に、

別パッケージが見つかった。

商品名は「お早よう!!ポコタン」。大台紙に12袋がホチキス留めされている。

大台紙のタイトル部分には、メーカー名や価格等の情報はない。

商品名と「ブロックと指人形で遊ぼう!!」の文字がある。

イラストは9個のポコタンを円形に組み合わせた図と、子供が指にはめている図柄が描かれている。

人間型ブロックとして組み合わせて遊ぶ他に、指人形として使用することを推奨している。

イラストに描かれたポコタンは、円形に組んだものは全部が二重丸目だが、

指人形にした方は、普通目のスマイルと笑い目、右向き二重丸目になっている。

笑い目は、ポーズブロックに同様のデザインが見られる。右向き二重丸目は、普通目のデザインに通じるものがる。

また、二重丸目はポーズブロックに全く同じデザインが見られる。

目の種類がポコタンでは減っていると言うことは、一般的に見て

ポーズブロックの多彩な顔のうち、一部分を流用したと考えられ、ポコタンの方が後発のモデルであることを想定させる。

ポーズブロックの顔バリエーション

笑い目は、中空大型パチモンにも見られ、また、先に紹介した帽子型ケース入りのパチタコG型にも確認されており、

マルコー産業の系列の代表的なデザインであると言える。

左から中空大型、パチタコG型の笑い目

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今回のイラストで指人形としての使用を推奨されたポコタンは、マルコー産業の「ポーズブロック」よりも小型で、

脚の間隔は最狭部で5mmと、子供の指であれば挟んで固定できそうである。

円形に組み合わせてみると、イラストでは9個が描かれているが、

実際には8個で綺麗に円陣を組むことができた。純正は9個で円形になるので、これを参考に作図したのかもしれない。

左側からポコタン、純正ピコタンを円形に組んだもの

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タグ付きの袋には、緑、青、黄色、赤、ピンクの5色が各1個ずつ入っている。

タグには「お早よう ポコタン」と書かれている。

台紙にあった「お早よう!!」の「!!」が省略されている。

「ポコタン」の書体デザインは前回見つかったものに酷似している。

以前に発見された20個入りのポコタン

この手の大台紙にホチキス留めされたタグ付き袋入りの駄玩具は、当時50円で売られることが多かった。

今回の大台紙に付いたポコタンも50円だったとすると、前に見つかったものは、入り数で4倍の20個が入っていたので、

少なくとも200円位の価格で販売されていたと思われる。

当時の子供のお小遣いで、200円はそれなりに大金であったと思われ、前回見つかった20個入りの方は、

タグの上方中央のパンチ穴から見ても、駄菓子屋売りではなく、お土産屋や玩具店でフックに下げて売られていたものと思われる。

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「お早よう!!ポコタン」の、大台紙の商品をホチキス留めする部分は、緑、青、黄色、赤で色分けされている。

台紙の色分け

このような台紙は、先に紹介したパチモンピコタンにも見られる。

左から「人間ブロック」(顔ありC型・顔無しL型、「人形ブロック」(顔なしD型)

「人間ブロック」の顔ありC型は、同じデザインのものがマルコー産業製の「メリーゴーラウンド」にあり、

同じ大台紙にタグ付き袋入りで顔のない顔無しL型も含めて、マルコー産業製と考えられる。

「人形ブロック」の顔なしD型は、湯口の位置から顔ありC型とは違う技術で作られている。

大台紙のイラストも、「人間ブロック」のピエロ型に似たイラストの影響を強く受けつつも、よりピコタンのデザインに近くなっている。

顔ありC型も、顔無しD型と同形状で顔のある顔ありD型も、純正を元にしたデザインがあるが、

元にした純正の種類が異なっている事がわかっている。

このパチモン顔なしD型のメーカーは不明であるが、2種類は違うメーカーの商品と思われる。

「人形ブロック」(顔なしD型)の大台紙には色違いが見つかっている。

状態が悪く残念であるが、タイトルイラストの地色も違うようで、市松模様の部分の配色は明らかに異なっているのがわかる。

左が「人形ブロック」の大台紙、右が別配色の大台紙

このことから、同じ商品の大台紙にもカラーバリエーションがある可能性が高いことがわかる。

大台紙の色からメーカー名は確定できないが、「お早よう!!ポコタン」は、マルコー産業製ではない可能性があると考えられる。

マルコー産業製のパチモンのデザインに強く影響された、別のメーカーの製品である可能性が高いものと考えたい。

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以上のことから、フジタヤのピエロ型→明治製菓のピコタン→マルコー産業が意匠登録をしたポーズブロックの流れがあり、

その周りに多くのパチモンメーカーがあったことがわかる。

さらに、本流のデザイン要素を取り入れて、ちょっと違ったパチモンを作っていたメーカーの存在がほのかに浮かんできているように思う。

そのメーカーは、「ジャボタン」や「お早よう!!ポコタン」、「人形ブロック」を作っていたのではないかと思われる。

今回見つかった、「お早よう!!ポコタン」の大台紙の発見により、そのメーカーの存在の可能性がより高まったした様に思う。

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しかし、いくらデッドストック状態のサンプルが増えたとは言え、多くのパチモンのメーカーは不明である。

意匠権の登録が重視されはじめた当時、わざとメーカー名を入れなかったり、

純正に似た部分を減らしてきた可能性も考えられる。

先に紹介した、フジタヤのピエロ型→明治製菓のピコタン→マルコー産業のポーズブロックの流れからの派生に関する図は

あくまでも仮説の域を出ていないことを明記しておきたい。

以前、ピエロ型の出自に関してピコタンのパチモンであるという間違った分析をしたことがある。

その後の調査から、ピエロ型がピコタンの間接的な先祖だったことが判明している。

また、それぞれのパチモンの正確な販売時期も不明なので、どちらがどちらを参考にしたかも、

確かなことはわからないことのほうが圧倒的に多い。

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ピエロ型の発売から40数年。

ほとんどまとまった資料もない中で、玩具店や駄菓子屋のデッドストックを、

某クション等の限られた手段の中で探していくのであるから、完全を期すことは非常に難しい。

しかし、サンプルの観察から明らかに言えること、分析によって明らかになったこと、

サンプルの検討から導きだされた仮説を明確に区別し、正確な記載をしていくことにしたいと考えている。

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いやぁ、長くなっちゃいました。

まぁ、でも、これを読んで理解すれば、「日本における人間型ブロックの普及と派生」に関して、語れますよ!!

・・・どこで語るんだって?

うーん。

どこでも語らない方がイイと思いますよ。

絶対、理解されない自信がありますもん。

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