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令和の新種

吸盤 積み木おもちゃ

ロッテのチョコレート菓子である「たこちゅう」は1976年〜1977年に発売された。、

球体に2個の吸盤が付いただけのシンプルなデザインのオマケが大流行した。

しかし、子供の世界の流行は長くは続かず、大きな吸盤でたこちゅう同士をくっつける新作を投入したが、

人気を回復すること無く、駄玩具の歴史の波の向こうに消えていった。

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版権意識の高まりからキャラクターが使いにくくなった当時、

お菓子のノベルティは、独自のキャラクターやギミックを使うことで、

如何に子供に受け入れられるかが重要になった。

菓子のオマケという、サイズ的にも費用的にも非常に制限された中で、

移り気な子供に向けて、ノベルティを制作するという、過酷な戦いが行われたのである。

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必要とされているところには、参考になる書物が出現する。

ノベルティーの開発においても、また然り。

ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(自由現代社)という書籍が刊行されたのである!

「−みんな誰でも”おまけ”に夢中になった−」と副題にある通り、

昭和58(1983)年の発刊で、明治製菓のピコタンの発売からも10年弱経っており、

前書きにも「従来、『おまけ』の機能的なパターンは出つくした感がありますが、」という通り、

発刊当時のオマケを俯瞰的にまとめたものになっている。

もっとも、刊行当時に知る由もなく、このサイトを始めてからずいぶん経ってから、

たまたま渋谷のデパートで行われた古書市で見つけたのであるが・・・。

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編著者は浅山守一。

奥付の編著者略歴には以下のように記載されている。

浅山守一

1929年福岡県生まれ。
東京美術学校中退。
その後、アドマンとして活躍。独自のノベルティーズ理論を編み出し、注目される。
浅山ノベルティ研究所主幹。
尚、風景画家としても、伊豆を中心に活躍中である。

考案した「おまけ」には、アメリカン・クラッカー(リズムボール)、
ジャンピオン(跳ねる虫)、タコチュー(吸着盤)、
カニタン(連鎖動構造)等多数。

なんと、たこちゅうの考案者が判明してしまったのである。

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この書籍には、安価に抑えなければならない菓子のオマケや駄玩具のギミックが多数紹介されている。

この本には、「重さで動く」、「つなぐ」といった具体的な動きで章立てられており、

「17.くっつく」.の「2.たこの吸付」には、たこちゅうが掲載されている。

「”タコチュー”という名称でL社にて商品化されて大ヒットしたもので、たこの特長である吸付きに重点をおき、

たこの頭と、吸着版のみに省略されたユニークなオマケである。と記されている。

L社はロッテのことであり、商品名そのままでは差し障りがあるのか、「たこちゅう」を「タコチュー」と書いてある。

「”タコチュー”のヒットにともなって偽物も出まわり、けっこう売れたようであった。」とあり、

多種多様な偽物(パチモン)出ていたことは、このサイトにまとめた通りである。

詳しくはタコチュウ分類一覧表タコチュウ派生一覧表を参照されたい。

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写真には後期型と思われるたこちゅうが3個と、大きな脚吸盤が特徴的な「スッポリダコ」の大小が写っている。

「同社ではその後、パート2(写真)もだされたが、初代があまりに強烈だったため、あまりパッとしなかったようである。」とあり、

初代は考案したが、その後のパート2のスッポリダコの企画については、ロッテ社内で行われたのか、

浅山はあまり深く係っていなかったのではないかと思われる。

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「くっつく」の章には他にも「1、吸付動物」という項目がある。

「吸盤を利用した玩具は多い。」と書かれており、プラスチック素材で一体成形できることから、当時から吸盤玩具は多かったようである。

本文にある写真から、動物をモチーフにした玩具の足等に吸盤が付いているのがわかる。

この写真に写ったのと同じ駄玩具が発見された。

すいつき虫」という商品で、タグ付きのビニール袋に100個(実際は98個)入っている。

硬質なプラスチックで吸着力はあまり強くない。

このように、当時から玩具に吸盤を用いるアイデアは一般的であったことが伺える。

球形の本体に2個の吸盤が付いていることがタコチュウのデザインの基本要件であるが、

オークションを見ていたところ、脚吸盤がなく、球体に吸盤が1個付いたものが見つかった。

壺型のカプセルに、4色各1個、計4個の脚なしが入っている。

本体の大きさは、パチタコK型とほぼ等しいが、吸盤の付け根の長さは短く、吸盤は深い椀型で、

顔のデザインはラフになっており、独特の形態をしている。

ロッテの「たこちゅう」と同時期の、パチモンタコチュウの一種かと思ったが、

出品者の方から聞き取ったところ、意外な証言を得た。

この脚無しパチタコが販売されていたのは、1998年頃の事で、

コスモス等の有名メーカーではない100円ガチャに入っていたそうである。

何かのハズレではなく、この壺状カプセルのみが匡体に詰まっており、あまり売れなかったようだったという。

そのまま1ヶ月くらい機械の中に残っていたが、その後入れ替えられてしまったという。

当時、出品者は「たこちゅう」を知らず、たこちゅうのパチモンという認識はなかったそうである。

この脚無し吸盤駄玩具がどのような経緯で作られたか、「たこちゅう」を意識したものだったかはわからない。

「たこちゅう」の発売から20年弱経ってからの発売なので、

ガチャを回した子供達は少なくともたこちゅうを知らない世代だったと考えられる。

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吸盤付きの玩具、特に「たこちゅう」は、当時を知る人に強い印象を与えたようで、

2008年(平成20年)になって関連商品が相次いで復刻された。

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一つはガチャのプライズとして、ユージンが、「たこちゅう」という商品名で発売した。

100円ガチャで、カプセルの中には説明書と、小台紙袋入りで2個のタコチュウが入っている。

顔は当時モノを意識していると思われるが、ハートの目等新しいデザインになっている。

色は8色あり、クリア系のカラーは、当時のパチモンで見られたもので、パチモンも含んだ当時のタコチュウを想起させられる。

ガチャのため、販売機間は短く、1ヶ月程で見られなくなってしまったのは残念だった。

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しかし、さすが現代の会社は権利関係の手配はしっかりしており、電子特許図書館で確認したところ、

「たこちゅう」という商標はタカラトミーアーツ(旧ユージン)によって押さえられていた。

(111) 【登録番号】 第5183929号
(151) 【登録日】 平成20年(2008)11月28日
(210) 【出願番号】 商願2008−30616
(220) 【出願日】 平成20年(2008)4月18日
    【先願権発生日】 平成20年(2008)4月18日
    【最終処分日】
    【最終処分種別】
    【出願種別】
    【商標(検索用)】 たこちゅう
(541) 【標準文字商標】 たこちゅう
(561) 【称呼】 タコチュウ,タコチュー
(531) 【ウィーン図形分類】
(732) 【権利者】
    【氏名又は名称】 株式会社タカラトミーアーツ
    【類似群】 24A01 24B01 24B02 24C01
    【国際分類版表示】 第9版
(500) 【区分数】 1
(511) (512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
28 おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具

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もう一つ、ゲームセンターのプライズの景品として、たこちゅうのようなものが発売された。

商品名は「チュウペット」で、フリュー株式会社から発売された。

硬質な本体と、非常に柔軟性に富んだ吸盤の2種類の素材を接着して作られており、

本体に吸着させて色々な形に合体させることができる玩具となっている。

サイズバリエーションもあり、たこちゅう発売当時の、「当ると大きいのがもらえる」と言った噂を

体現してみせたラインナップとなっていた。

左から、テニスボールサイズ、ゴルフボールサイズ、ノーマルチュウペット、パチJ型、純正、ユージン版

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この「チュウペット」は、カラーバリエーションや、ヒヨコやクマ、キューブ、ハート等の変形バージョンや、

ドラえもんやハローキティと言った有名キャラクターとのコラボ商品も出され、

「チューペット」をコレクションしている人のブログからは2014年頃にも新商品があったという情報も見られた。

球体に2個の吸盤が付いていることで、たこちゅうの派生商品と思っていたが、

セサミストリートとのコラボでは、吸盤が上下に付けられたバージョンも出た。

左から、アーニーバート、クッキーモンスター、エルモ、オスカー、グローバー、ビッグバード

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現物は入手していないが、吸盤が1個〜4個付いたものも出たらしい。

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ロッテの「たこちゅう」の発売が1976年であったので、2008年といえば30年以上経っており、

なんで今になって復刻を作ったのかを知るために、フリューに問い合わせてみた。

担当の方にお話を伺うことが出来、以下の事がわかった。

チュウペットはタコチュウのデザインを敷衍して開発したものである。

当時のたこちゅうを知っている担当者が企画したもので、ユージンとも協力しあい製作した。

ロッテには事前に確認を取り、許可を受けて進行した企画である。

ユージンが「たこちゅう」という名称でガチャガチャで、フリューは「チュウペット」という商品名で住み分けをはかることになっている。

硬質で滑らかな表面の球体に、フラットな印刷で顔を入れることで、たこちゅう同士の吸着が強くできるようになり、遊びの幅が広がることを意図して設計した。

やっぱ、そういうことか・・・。

当時を知るオッサンが、ある程度の決定権を持つ世代になって、「こんなのあったんだよ」って言って作ったってことね。

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と、ここまでが平成のタコチュウでザインに関する復習である。

覚えておいて損はない。が、得する場面もあまり思い浮かばない。

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で、ここからが本題。

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某クションで、古い駄玩具をチェックしていたところ、

吸盤玩具を見かけた。

プラスチックのケースに、吸盤玩具が多数入ったセットで、新品のようであった。

ケースの中には、小さめな球体の本体に、吸盤が6個(1種類)、4個(1種類)、3個(3種類)、2個(3種類)、1個(1種類)が付いたパーツが入っていた。

吸盤は直径が2.4cmあり、大型で吸着力が大変強い。吸盤同士をくっつけることも容易で、剥がす時には大きな音がする。

本体部分は吸盤に比較して小さく、エンボスのアラインがあることからくっつけられない。

純正たこちゅうと比較しても、その吸盤の大きさが際立っている。

右がたこちゅう純正後期型

他にも、吸盤が6〜3個付いた異形の生物が9種類入っている。

吸盤の大きさは1cm〜1.5cm程で、吸着力は大きい。地面に脚吸盤を吸着すれば自立することができる。

目は手彩色で白い塗料のまん中に黒い塗料で瞳を入れている。

これらの生物の胴体表面は滑らかであり、生物の吸盤なら吸着させることができるが、

ブロックの大型な吸盤ではほとんど付けられない。

純正たこちゅうよりも大きく、安定性が良い。

右がたこちゅう純正後期型

パーティングラインは各吸盤を分割しており、非常に高度な成形がなされているのがわかる。

4脚の以下の例では、顔面部と触覚状吸盤の下部、上面後部、下面前部、中央部、後部の5つに分割されている様に見える。

これを触覚状吸盤と、4つの脚吸盤を滑らかにする別の型で押えて成形しているようである。

これらの生物の他にも、バンデル星人のようなキノコ人間みたいな形態のものも入っていた。

頭部の吸盤の直径は3.6cmもあり、非常に強力に吸着する。

風呂場のガラス等に水分を付けて吸着させると、剥がしにくいと思われる程でである。

ブロックと生物、キノコ人間は大きさが違っており、寄せ集めの感がないでもないが、

どれも素材は柔軟で吸着力が大きく、サイズも大きく成形も丁寧で、玩具屋で買うような上等なである印象を受ける。

左下はたこちゅう純正後期型

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ケースに入っていた説明書を検討してみる。

商品名は「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」とある。

「Funk Doggie」は、メーカー名なのか、シリーズ名なのか、この商品単体の商品名かは不明である。

二つ折りにしたときの表4(裏側)は「超値セット」と書かれており、どうも日本語があやしい感じである。

吸盤同士をくっつけて塔状の造形をしたイメージ写真があり、使い方が何となくわかる。

「超豪華の101セット、吸盤積み木、知育おもちゃ」に至っては、首をかしげざるを得ない。

ブロック類が90個、異形生物が9個、キノコ人間が2個の、計101個入りである。

下には、やはり!の「MADE IN CHINA」とある。

その下には「0〜6歳以下には適合しない」という意味かと思われるマークと「CE」マーク、リサイクルマークが描かれている。

対象年令を示すマークの説明である「警告:6歳未満の子供に使用できません」という文言も記されている。

CEマークは、日本で言うところの「STマーク」のようなもので、規準に適合していることを自己申請するものらしい。

中面は遊び方の説明で、

「滑らかな平面であれば、テーブルや鏡、浴槽でも吸盤や積み木を楽しむことができる。」とある。

うーん、最近の翻訳ソフトでももうちょっと上手く伝えるんじゃないかと思うけど、まぁ、そういうことでしょうねぇ、という感じである。

吸盤同士を繋げて様々に遊ぶことが提案させれており、白人の子供が遊んでいる写真が使われている。

CEマークと、写真の外人から、玩具のデザインはヨーロッパの発祥かもしれないが、詳細はわからない。

明治製菓のピコタンの前身が、ヨーロッパのデザインであった例もある。

どこかに意匠権等の登録番号でもあればヒントになるかも知れないが、それもないようである。

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そこで、もう一度見直してみたところ、ケースの側面にシールが貼ってあるのを発見した。

「新感覚知育ブロック 101個DIY スクイグズ 知育玩具」とある。

スクイグズで検索すると、アマゾンでヒットするが、様々なブランドで同じものを発売していることがわかった。

スクイグズがメーカー名なのか、シリーズの名前なのかが今一つはっきりしないが、

「Funk Doggie」「Tebrcon」「WTOR」「mengmiandaxia」等のブランドが同じものと思われる知育玩具を販売している。

日本人の子供モデルが起用されている「Pita-Rico」、「ぴったんぱずる」という商品もある。

色もビビッドカラーの他に、パステルカラーのものもある。

セット数も48個から100個超まで数種類があり、バケツ型や円筒形といった様々なケースが見られた。

比較的新しい商品のようであるが、どの商品にも満遍なく好評価が付いている。

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某クションでも似た商品が出品されていたので、もう一つ落札してみた。

ケースは透明で、中身が見える。シールには「新感覚知育ブロック」と書かれている。

106個のセットで、生物やキノコ人間は入っていない。

箱に貼られたシールには、「新感覚知育ブロック」と書かれている。

右上の「PRACTBEAUTY (R)」はブランド名であろうか。

「創造力と想像力への限りない可能性」というわかったようなわからないコピーが書かれ、

「106PCS」、「安全・安心」、「収納簡単 持ち運び便利」、「知育・玩具」と、ちょっと怪しい感じのアイコンが配されている。

左下には注意事項が記載されている。

!注意

保護者の方へ 必ずお読みください

・口に入れないでください。窒息の危険があります。

・誤飲の危険性がありますので、3歳未満のお子様には絶対与えないでください。

>この商品には、強い衝撃や踏みつけなどの乱暴な取扱いにより破損する可能性のおある収納ボックスが付属しています。動作に注意してください。

>おもちゃの汚れを水で洗い、高温の水やシンナーなどを使用しないでください。不適切な洗浄はおもちゃの形を破壊します。

なんとも微妙な言い回しでイマイチ頭に入って来ないが、言いたいことはわからないではない。

「おもちゃの汚れは」じゃねぇの?とか、動作じゃなくて取り扱いって言う方がわかるんじゃね?とか。

まぁ、いいけど。

製品素材は本体がTPR、収納本体はPPと記載されている。

TPRは、熱可塑性エラストマーのことと思われ、プラスチックとゴムの中間的な素材の事のようである。

軟質で吸着力に大変優れているのは、この素材に由来するものと考えられる。

ケースのPPはポリプロピレンであろう。

外箱に紙が使われていたようであるが、今回の落札品には付属していなかった。

シールフィルムのPOFはポリエチレン製であることがわかる。

素材の右側には英文で誤飲防止のため3歳以下に与えてはいけない旨の注意喚起が記されている。

隣にはCEマークと、「色を識別する」というマークがある。

対象年令は「6+に適用する」とある。

ケースの中には「はじめてガイド」と書かれた取り説が入っており、女の子のイラストと立体的に組んだ知育玩具が見られる。

中央下部には「PRACTBEAUTY (R)」と書かれており、これがブランド名と思われる。

中央には山折りにするための折り目が入っている。

サイズは先に紹介した「Funk Doggie」のものよりも小さい。

裏面は対象年令による遊び方が描かれている。

とりあえずくっつけたり剥がしたりしてみて、平面的な形を作って、最後には立体的に組んでみて楽しむことを想定している。

対象年令が6歳以上と箱に書かれて、誤飲防止のため3歳以下には渡してはいけないと言っておきながら、

左ページで、「年令に合わせて色んな遊びができます」とあり、2〜3歳から遊べると書かれている。

このあたりの脇の甘さが日本製ではないことを伺わせる。

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入札時の写真ではサイズ感が良くわからなかったため、中型のビー玉を付けて、要塞の外壁に使えるかと思ったが、

吸盤が思いのほか大きかったため、ちょっと持て余し気味ではあるが、

吸盤同士をくっつけて要塞内部の通路や、ドッグ設備等に見立てて使うこととしたい。

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・・・で、ちょっと追加。

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ちょっと大きいなぁ、と思ったんですよ。

この知育玩具の一般的なパーツ(異生物ではないもの)の吸盤の直径は約2.3cmある。

そのため、吸着させるには、約2.5cm程度の直径を持つ平滑面が必要になる。

吸盤同士をくっ付けたり、風呂場の壁面に貼るには十分なサイズだが、大きめなものでもビー玉に着けることはできない。

たこちゅうをはじめとするノベルティや駄玩具は、単価を高くしにくいため、おのずとサイズは小さくならざるを得ない。

それに比べて、玩具店や百貨店のおもちゃ売り場で売られるような、いわゆるちゃんとした玩具は、

単価を上げることができるため大きく作られることが多い。

対象年令が低い子供向けのため、大振りで扱いやすいものであることも大事である。

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ピコタンよりもさらに前に、「前にならえ」タイプと命名した駄玩具が販売されていたことがわかっている。

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最初に発見されたのは、ピコタンとほぼ同じ大きさのものであり、番号が書かれた箱から、

当てモンとか引き籤とか言われる、札を引いて書いてある番号の商品がもらえる籤の商品のハズレであったと思われる。

タックルボーイの小型パチモンが入っていた箱

このピコタンサイズの駄玩具には、下面に「HONG KONG」の文字がエンボスされている。

「HONG KONG」の文字は、ピコタンの前に販売されたピエロ型の小型のものにも刻印されているのが確認されている。

左から純正後期型、メイドイン香港のタックルボーイ型パチモン、ピエロ小型

日本で玩具製造が興隆する前、駄玩具の主な生産地は香港であったため、

これらの比較的古いタイプの人間型ブロックに香港の刻印が見られることは容易にうなずけることである。

これらの小型のものは、カプセルトイとして製造されたものと思われ、少し大きいものも駄玩具として作られたものであると考えられる。

実際に同じデザインだが違った素材で作られたカプセル入りものもの見つかっている。

これにも本体下部とカプセルに「HONG KONG」の刻印が見られた。

また、ドーナツ型のプラケースに入った別タイプのものも見つかっている。

これには、顔が刻印されており、純正ピコタンの顔デザインに似ていることから、ピコタンが発売されてからも、

この「前へならえ」型の駄玩具が作られ続けていた可能性を示唆する。

ケースに貼られていたSTマークの数字から、登録されたのが、昭和50(1975)年と昭和60(1985)年だったことがわかる。

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前へならえタイプの駄玩具には、もう少し大きいものも見つかっている。

「ミニヤングボーイ」という商品名で、全長が6cm程であった。

ピエロ型の人間型ブロックを製造した藤田屋商店の引き籤の中位のアタリ商品として、他の商品と一緒に箱詰めになっていた。

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さらにこのデザインは、大手玩具メーカーのTOMYからも出されていることがわかった。

商品名は「タックルボーイ」で全長は12cmもある。

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箱に書かれた文字から、発売は1968年(昭和43年)であったことがわかった。

また、ライセンサーはイギリスの会社で、意匠の創作者はフランス人であることがわかった。

.......................特許電子図書館より引用

この例から、外国で創作された玩具のアイデアが、各国に移植されて様々なメーカーから、様々な形で商品化されることがあることがわかった。

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で、なんの話しか忘れてしまわれた方も居るかと思うが、吸盤の付いた知育玩具に戻る。

今回、たまたま某クションで見つけた吸盤玩具であるが、パッケージには対象年令は6歳以上と記されていた。

別のメーカーが販売したものでは対象を6歳以上で、誤飲防止のため3歳以下には与えない様にと言っている。

取り説の写真は、小さめな子供の写真を使っている。

確かにこのくらいの子供が扱いやすいためには、大きめの方が望ましいのであろうと思う。

この玩具は繋げて遊ぶものであるので、ピース数が多いことが重要になり、パーツが大きくなると値段も上がる。

そこで、値段を抑制しつつピース数を減らさないためには・・・、という観点からも、

もうちょっと小さいのもあってもいいんじゃね?と思い、「吸盤玩具 おすすめ」等で検索してみた。

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そうしたら、見つけたのである!

「ヒッツキッス 吸盤ミニタイプ 94ピース」というもので、わざわざミニサイズと明記してあり、

大人のものと思われる手の平に乗せられたカタログ画像がショップの商品ページに見られた。

ショップサイトから引用

早速通販サイトから入手してみた。

一部がクリアプラスチックフィルムの紙箱に、壺を逆さにしたようなプラスチックケースが入れられている。

商品名は「知育玩具 ヒッツキッス」。メーカーは「TOP ACE」である。

「自由な発想で遊んで学べる!!」、「ひっつけたりのばしたり!」というコピーが書かれている。

「対象年令3才以上」となっており、先にあげたものよりも対象年令が下がっている。

箱の背面には、「自由なアイデアでなかまをふやしてね!」、「お風呂でも遊べるよ ぬれても大丈夫!!」というコピーがある。

年令の低めな子供モデルを使った実写写真があり、ミニサイズの小ささを表している。

いくつもの組み合わせ例を写真で示し、「こんな仲間もできちゃうよ!」と書かれている。

右側では「なかま」、こちらは「仲間」と表記が違っているところが妙に気になる。

商品名の下には、入り数が書かれている。

回転する丸い台座×4、1吸盤×10、2吸盤(短)×25、2吸盤(長)×25、タコチュウ型×12、

3吸盤(直角)×5、3吸盤(120°)×5、4吸盤×4、6吸盤×4の計94個が入っている。

箱の中のケースは吸盤1個のものに似て、丸底の壺を逆さにしたような形をしていて、下部に蓋が付いている。

前後に平たい部分があり、シールが貼られている。

表面のシールには「知育玩具 ヒッツキッス」の文字と「TOP ACE」のロゴがあり、商品をかたどったイラストが描かれている。

裏面のシールには、簡単な説明と入り数が書かれている。

「シリコン素材で洗えて清潔に保つことが出来ます。」とあり、素材がウリであることが説明されている。

また、誤飲・窒息の危険性の警告があり、

「小さなパーツですので、3歳未満のお子様には注意が必要です。」と書かれている。

他の商品にも似たような記載があるが、

「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」では、「警告:6歳未満の子供に使用できません」と、

「PRACTBEAUTY (R)」の「新感覚知育ブロック」では、「・誤飲の危険性がありますので、3歳未満のお子様には絶対与えないでください。」とあり、

他のものの方が警告の言葉遣いが強くなっている。

小さいサイズでもあるので、「3歳未満のお子様には注意が必要です。」では弱い気がするが、同じ警告でもメーカーにより文章が違うものらしい。

外側の紙箱を良く見ると注意事項には、「保護者の方へ(必ずお読みください)」とあり、

「●小さなパーツですので、誤飲・窒息の危険があります。口の中に絶対に入れないでください。

●3歳未満のお子様には絶対に与えないでください。

●保管の際は3歳未満のお子様の手の届かない安全なところで保管してください。

●保護者の目の届くところで遊ばせてください。」と書かれている。

ここでは、前の商品同様に厳しい言葉が使われている。

子供の玩具で外箱が残ることは少ないので、本体を直接入れるケースの方がより強い言葉にする必要があるのではないかと思われる。

箱の裏側には、「食品検査合格品」「素材:TPR」等の情報が書かれ、中国製であることが記されている。

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ネットで検索したところ、この商品には、ミニサイズとビッグサイズがあり、ビッグサイズは、他の商品と同じような大きさのようである。

本体にスマイルマークが刻印されているようなので、同じアイデアで、似たような大きさの商品が各社から製造されているようである。

また、サイズはわからないが、8種類のパーツがそれぞれ1個ずつ入っている袋入りもあるようである。

商品紹介には、「新感覚知育ブロック「ヒッツキッス」(ミニタイプ)が新登場!

ヒッツキッスとは?…壁や床などツルツルした面にくっつく吸盤のブロックです。

ブロック同士を繋げて色々な形にすることもでき、お子様の自由な発想力を引き出します!

水濡れOK!お風呂でも楽しく使用できます。」とあるのが確認された。

スペックには、「パッケージサイズ 箱サイズ:H210?W150?D150mm

本体サイズ ピース(最小):約H25?φ17mm?(最大):約H53?φ17mm」とある。

紹介ページの備考には「JAN:4570001494147」と記載されている。

いくつかのサイトを見てみると、ヒッツキッスに関しては2020年の11月の新作らしい。

まさしく令和の「タコチュウ」であることがわかった。

ショップサイトの資料画像によると、素材はTPR製(TPE:サーモプラスチックラバー)であり、「おしゃぶり」と同じ素材という。

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プラスチックケースの中には、遊び方ガイドブックが入っている。

吸盤をくっ付けてみて、少数のパーツを繋げ、数を増やして立体的な作品を作ってみることを推奨している。

他の商品にないパーツとして、青い円盤状の台座が紹介されている。

これは回転する機構が組み込まれており、レーダーの様に回転させたり、車輪のように使ったりするものらしい。

他のページの作例を見て気が付いたことがある。

作例が他の商品の取り説にも見られたのである。

新感覚知育ブロック「ヒッツキッス」

新感覚知育ブロック「ヒッツキッス」

PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック

PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック

Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ

Aの犬のような四本足の動物は「ヒッツキッス」と「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」で見られた。

Bのタワー状の立体作品はCを上から見たもののようであるが、「ヒッツキッス」と「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」では同じだが、

「吸盤 積み木おもちゃ」は同じ様に見えるが、緑色の直線のパーツが地面に付けられていないため違う写真のようである。

Cのタワーは、「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」と「吸盤 積み木おもちゃ」は同じだが、

「ヒッツキッス」は、青い4吸盤の向きが違う。

Dの「ヒッツキッス」の人間型は、腕を上に組んでいるが、「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」では下に向いている。

Hの十字は、「ヒッツキッス」と「吸盤 積み木おもちゃ」にある。

N・Oの人間と船は「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」と「吸盤 積み木おもちゃ」にある。

F・G・I・J・K・Lは、3つの全てにある。

Mの「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」の数字の8は、他の数字の作例で、タコチュウ型は紫が使われているが、

「ヒッツキッス」では上部は黄色が使われている。ヒッツキッスのタコチュウ型も紫であり、黄色は3吸盤のパーツが使われている。

良く見ると、Lの数字の3も、上下は黄色のパーツが使われている。

このように、非常に共通する点が多いことから、同じ作例集の様なものを参考にしたことが推測できる。

「吸盤 積み木おもちゃ」と「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」は、本体に同じエンボスがあるが、

ネットにある「ヒッツキッス」のBIGサイズは、パッケージにあるイラストのような顔のエンボスがあるようで、

元になるなんらかの見本を元に、一部の写真は使い、そうでないものは独自に撮影した可能性がある。

Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ

PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック

「ヒッツキッス」BIG(ショップサイトから引用)

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ヒッツキッスのプラケースの蓋を見たところ、「SIBELLY」とエンボス去れているのを発見した。

「ヒッツキッス」プラケースの蓋

検索したところ、同じような吸盤玩具が外国でも売られているのを確認した。

何語かわからないが、ドメインが「.ua」「.ru」「.pl」等のサイトで見られた。

「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」に入っていた異生物とミニサイズのものらしい吸盤パーツとが同梱されているような画像もあり、

これらの一連の玩具がヨーロッパでは比較的流行っているもののようである。

「ヒッツキッス」の壺型プラケースに大型の吸盤パーツが入っている画像もあり、シールは「SIBELLY」と書かれていた。

これらのネット上の情報から、先に紹介した前へならえ型の人間型ブロックと同様、

意匠は外国で創作され、各国がライセンシーとして製造していることを伺わせる。

この項目の最初で紹介した「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」の編著者である浅山守一が、

タコチュー(吸着盤)を創作したとあったが、意匠権登録もしなかったようであるし、

もし登録をしたとしても継続しなければ有効期限をとうに過ぎているはずである。

ユージン(現タカラトミーアーツ)の2008年の登録がどうなっているのかわからないが、

諸外国に対して意匠権登録をしたとも思われないので、問題ないのであろう。

タコチュウは2吸盤で直角に配されているが、1〜6個の吸盤を使い、吸盤同士を繋げる玩具ということも違いと言える。

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パッケージ等でここまで楽しんだが、いよいよ中身に目を移したい。

吸盤が1〜6個の8種類がある。

非常に柔らかい素材で出来ており、平滑面に置いただけで自重で吸盤が吸着してしまう程である。

パチモンタコチュウA型よりも柔らかいようである。

6吸盤と3吸盤(直角)の2種類以外は、非常に深い肉抜き穴がある。この穴は本体球体の半分よりも深い。

6吸盤のパーツに見られる様に湯口は大きく目立つ。

BIGでは、取り説のイラストのような顔がエンボスされているようだが、ミニ版には顔がない。

「ヒッツキッス」ミニ

「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」は9種類だが、

「ヒッツキッス」は、ミニ版もBIGも、T字型の3吸盤のタイプが省略され、8種類になった。

左から「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」2種、「ヒッツキッス」ミニ版

「ヒッツキッス」ミニ版は「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」や「PRACTBEAUTYの新感覚知育ブロック」に比較して一回り小さい。

吸盤直径は1.8cm程度で、他の商品の吸盤直径が約2.4cmの3/4程になる。

高さはパチモンタコチュウの大型サイズのものとほぼ等しい。

本体は大型パチタコよりも小さく、純正サイズの方に近い。

左から「Funk Doggie 吸盤 積み木おもちゃ」、「ヒッツキッス」、パチタコH型、純正後期型

「ヒッツキッス」のミニ版は吸盤のサイズが小さくなっているが、このちょっとした大きさの差で、

大きなビー玉にくっつけることが出来る。

これにより、タコチュウ遊びの際、要塞の外壁や通路を補強するのに使えることになり、非常に活用範囲が増えると言える。

吸盤で平滑な壁面にくっ付けたり、ピタピタを音をさせて剥がしたりするのは、子供にとって非常に楽しいことのようで、

吸盤を使った玩具は昭和の「たこちゅう」から、平成の「チュウペット」へ、連綿と現れ続けていることが確認され、

この度、令和の世でもその楽しさを生かした吸盤玩具のデザインが続いていることを確認できたことは大変興味深いことと言わざるを得ない。

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また、今回発見した吸盤玩具は幼児用ということもあり、吸盤が大きかったためタコチュウ遊びには使いにくいものであった。

逆に、ロッテのたこちゅうとパチンコ玉とピップエレキバンの磁石の大きさのバランスが絶妙であったことが再認識される。

この絶妙な組み合わせこそ、”正しい”タコチュウの遊び方であったと、改めて主張して本稿を擱筆することとしたい。

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今回の吸盤玩具の入手にあたり、T女史の手を煩わせた。

毎度の事ながら、感謝に堪えない。

またよろしくお願いいたします。

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