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顔があったり、なかったり

人間ブロック part.4

明治製菓のチョコレートのオマケであったピコタンは、1970年代中盤に大流行した。

1パーツで形状も比較的簡単だったこと、意匠権への規制が今程厳しくなかったことから、

多くの種類のパチモンが作られ、玩具屋や地方のお土産屋、近所の駄菓子屋などで売られていた。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい

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パチモンは顔の有るもの、無いもの合わせて20種類以上が確認されている。

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これらのパチモンは、当時、近所の山本君からまとめてもらったものだったので、

自分で駄菓子屋で買ったもの以外はどのように販売されていたのか、全くわからなかった。

ネットが使えるようになりオークションで当時の品が捜せるようになり、

また、コンビニの普及と後継者難から駄菓子屋・玩具店が閉店し、

その際のデッドストックが入手出来るようになってきた。

その結果、当時のパッケージを残したまま、多くの種類のパチモンを入手出来るようになり、

分類・分析が大変に進んだ。

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平成の世に変わってから、ちょっと形の違う人間型のブロックを先輩からもらった。

手や脚で組み立て、脚と頭を繋げる等、ピコタンと全く同じコンセプトでありながら、

胴体は太く、ピコタンよりも大きい。顔はピエロの絵柄が描かれていた。

これをピエロ型と命名した。

ピエロ型A型、B型

入手当初、このピエロ型は、ピコタンのパチモンの一種ではないかと考えた。

しかし、この形状のブロックについて調べたところ、実はピコタンよりも古いもので、

外国のデザインを用いて昭和44年頃から作られていたことが、当時の玩具業界誌に掲載された広告から確認された。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで(玩具商報から)」を参照されたい。

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玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用 玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

この商品は「ブロックボーイ」や「ピンキーブロック」の名前で売られていた。

ピコタンが流行したことを知っている世代より前の人たちにとっては、

この人間型ブロックのほうが広く知られていた様で、ピコタンをお菓子のオマケであると知らなかった人もあるようだ。

また、大きさも違うが、気にせず一緒にコレクションされていたようで、

某クションでは、各種のピコタンや、そのパチモンと一緒に、まとめて入手されることが多い。

一緒に入手されたピコタンのパチモン各種とピエロ型の例

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このピエロ型に「ブロック」という商品名が使われていた影響からか、

ピコタンのパチモンにも「ブロック」の入った名前が多く見つかる。


人形ブロック

人形ブロック

人形ブロック

人形ブロック

人形ブロック

人形ブロック
顔ありB 顔なしD 顔なしD台紙 顔なしD台紙(色違い) 顔なしB・C 顔なしF・K

人形ブロック

人間ブロック

人間ブロック

人間ブロック

人間ブロック

人間ブロック

顔ありF

顔ありC

顔ありC台紙

顔ありCケース入り

顔なしK
顔なしK台紙

人形ブロック
ピョコピョコ
組立ブロック

ブロックマン

ブロックマン

顔ありK

顔ありK台紙
顔ありE

顔ありE台紙
顔なしG 顔なしG台紙

ブロックマン

ブロックマン

ポーズブロック

ロボくんブロック

マンガ人形ブロック

ポーズブロックマン

顔なしGケース入り

顔なしE

2パーツパチモン

2パーツパチモン
2パーツパチモン平頭 2パーツパチモン小

合体ロボくんブロック


5パーツパチモン

パッケージが残っているものを集めてみると、「人形ブロック」、「人間ブロック」、「ブロックマン」等、

商品名はどれも「人型」と「ブロック」というキーワードの組合せである。

さらに、腰の部分にボールジョイントを組み込んだ、マルコー産業製の2パーツパチモンである、

ポーズブロック」、「ロボくんブロック」にも、そのパチモンと思われる「マンガ人形ブロック」、「ポーズブロックマン

4パーツに進化した「合体ロボくんブロック」にも、ブロックという名前が使われている。

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人形ブロック」、「人間ブロック」といった「人型」と「ブロック」が商品名に入っているパッケージには、

先に紹介したピエロ型の特長を見せるイラストが書かれている。

上から顔ありB型、顔なしD型顔ありC型のイラスト

このイラストからも、ピコタンの流行前にピエロ型のブロックがかなり広く流通していたことが伺われる。

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で、ピエロ型の影響の強いパッケージを持つのが、顔ありC型の「人間ブロック」である。

商品名とピエロ型を思わせる胴太なイラストが描かれている。

タグ付き袋入りが12袋ホチキス留めされている。

下部の袋が留められている部分は、赤・緑・黄色・水色になっている。

このデザインは、タグ付き袋入りの駄玩具を留めた台紙のデザインとしては複数の例が見られ、

パチモン顔なしD型の「人形ブロック」の台紙にも見られる。

この「人形ブロック」については、色違いと思われる断片も見つかっており、

同じデザインのタグが付いているが、上部のイラストと、下部の色の並びが違っている。

この格子デザインは他の明治合体チョコボールやたこちゅうのパチモンにも広く見られ、

このデザインの点のみから全てを同一メーカーの商品であるとは考えにくく、

当時の壁釣り駄玩具の一般的なデザインだったのではないかと思われる。

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で、ここまでが復習。

だんだん復習が長くなってくるが、

新しく見つかったものが、今までのものと、どこがどのように違い、それが何を意味するかを理解するには

必要なプロセスであるので、がんばってついてくるように。

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人間ブロックの台紙付き完品を入手した。

台紙は依然入手したものと同じであった。

人間ブロック」という商品名と「12ケ付」、

「あそびかたをいろいろかんがえましょう!!」という例の「遊び方は子供に丸投げ」的コピーが記されている。

タグ付き袋入りで、台紙に大きなホチキスで留められている。

小さなホチキスで袋の口をタグで留めてあるのは一般的な包装形態と言える。

タグは青地に白抜き。赤で文字とイラストが描かれている。

今回発見されたタグ

12枚のタグには多少のずれはあるが、前回のタグと同じ版で作られたものと思われる。

前回発見されたタグ

中身は緑、青、黄色、赤、ピンクの5色が合計20個入っている。

各色の入り数はまちまちである。

顔は無く、大きさは顔ありC型と等しい。

左から顔無しB型、顔ありC型、顔無しA型、今回発見された顔無し

今回見つかった顔無しパチモンは、顔無しB型に比較して明らかに大きく顔無しA型よりも若干身長が短い。

顔ありC型の、顔のないタイプは見つかっていなかったので、新種と考えられる。

頭部か頚部と、両足の付け根部分に円形の湯抜き穴(?)があり、

頭部にある場合の脚の丸は、頚部にある場合よりも大きい。

今回発見された顔無しの湯抜き位置

このようなゆ抜き穴のバリエーションは顔ありC型でも見られる。

今回見つかったものでも、顔ありC型でも、湯抜き穴の位置が違っても身長に違いは見られないが、

今まで顔無しA型としていたものの中に、湯抜きが頚部にあるものがあるが、

大きさが若干小さく、今回見つかった顔無しタイプの、湯抜きが頚部にあるタイプである可能性がある。

このあたりのサイズの差は非常に小さく、本体が反ってしまっている場合には、ほとんど区別ができない。

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顔ありC型とほぼ同じ大きさで、表面にジャンケンのマークがあるタイプを顔ありG型としたが、

今回見つかった顔無しタイプは、この型とも似ている。

ただ、湯抜きの形状は頭部と脚の付け根の小さなサイズであり、C型とは違った印象がある。

左から顔ありG型、C型、顔無しA型、顔無しA型頚部湯抜きタイプ、今回発見された顔無し

上の画像を見てもわかるが、どれも非常によく似ており、腰部の違い等は手触りの印象で比べるしかないくらい差は微妙である。

今までA型としていたものとは大きさが違うので別種とし、

顔ありC型の顔のないタイプであるとすることとした。

台紙やタグも同じものを使っているので、顔ありC型との関連を非常に濃いと判断しても良いのでは無いかと考える。

この顔の無いタイプを、新しく、顔無しL型とする。

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なぜ、多くのパチモンで、顔のあるバージョンと無いバージョンがあるのかは、不明である。

考えられるのは、顔が純正の影響を強く受けていれば入る程、

ピコタン人気の続いている最中に、明治製菓がなんらかのアクションを起こしたため(例えば意匠権侵害の裁判)、

自衛策として顔のデザインを無くしたということは考えられる。

以前、以下のような表をまとめたことがあるが、改めて見直すと、顔のないタイプが見つかっているのは、

顔ありタイプが純正の顔デザインから強い影響を受けているタイプが多いことがわかる。

顔ありの分類 同じ形状の顔無し 特記事項
パチモン顔ありA - 形状は後期に似る。顔は後期をもとにしたしっかりした造形。表面は逆向きの斜め線。
パチモン顔ありB - 非常につたないが純正の顔を真似ている。表面は点々。
パチモン顔ありC 顔無しL型 半分はポコタン系の単純な顔。残りは純正に似ていなくもない。胴に三本線がある。

パチモン顔ありC2

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顔は顔ありC型と同じで、サイズが小さい。
パチモン顔ありD パチモン顔無しD 後期をもとにした7種の顔が見つかっている。

パチモン顔ありE
- 怪人や正義の味方っぽい、全く独自の顔が6種類ある。表は、胴体に三本線、全体に点々。

パチモン顔ありF
パチモン顔無しI 顔は一種類で、胴体の部分にバリエーションが3種ある。表面は純正と同じの斜め線。

パチモン顔ありG
パチモン顔無しB 表面の胴体部分にじゃんけんの手がある。2種類確認されているが3種あると考えられる。

パチモン顔ありH
パチモン顔無しI 悪者系の3種の純正に似ていない顔を持つ。表面もそれぞれに独自の模様を持つ。

パチモン顔ありI
パチモン顔無しE 純正の影響が強く、特徴をミックスした顔をもつ。表面は純正と同じ向きの斜め線。

ただ、ピコタンはその後、動物シリーズが出されているが、その動物シリーズでもパチモンが作られ、

そのパチモンには顔が真似られているのが確認されている。

動物シリーズは、形状が複雑で模様が無いと何をかたどったかがわからないため、入れたのかも知れない。

今見つかっている動物シリーズのパチモンは造形がラフで、

意匠権侵害を訴えられることを恐れるような細やかさを持ち合わせていないメーカーが作ったのかも知れない。

左から動物シリーズ純正、同パチモン

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この同型での顔無しタイプの出来た経緯については、今後も継続して調査して行きたい。

今回の発見で顔無しパチモンは11種類が見つかったことになる。

顔無しパチモンの一覧

前身とも言うべきピンキーブロック(ピエロ型)が長期間にわたって販売されていたとはいえ、

ピコタン自体の販売期間は長く無かったはずなのに、その間に多くの駄玩具製造業者から、

顔の有無のあるパチモンが短期間に集中的に販売されたことがわかる。

当時、駄菓子屋で顔無しD型の袋入りと、顔なしB・C型の袋入りが並んで売られていた記憶がある。

某クション等でも、多くの種類のパチモンがまとまって出てくることが多い。

駄玩具業者の集中生産とともに、当時の子供達のピコタンに対する熱狂が察せられる。

その当時の子供と駄玩具業者の熱い思いが、この平成も20年以上経った現在になって、

ネット某クションと言う最新の手段で垣間見ることができると言うのも、

なんとも興味深い話である。

ただ、某クションがあっても、廃業にともなってデッドストックが出てくる可能性が高いのは、

今後、数年足らずの間だけなのではないだろうか。

1970年代中盤に作られたパチモンについて、調べられる最後のタイミングなのではないかと思われる。

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今だからわかること、今しかわからないことを、今後もちまちま調べ、

まとめて行こうと思うのである。

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まぁ、まとめてどうなるとか、どうするとかいう視点は全く欠如してるんだけどねぇ。

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