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本当のパチモンを流用

目玉のうごくカニさん ガチャ・ゴムバージョン

「ピコタン」や「明治合体チョコボール」といった合体させるブロック状の玩具は、

コレクション性が高く、非常に流行した。

ピコタンは、動物シリーズと運動会シリーズが追加されたが、

その人気にもさすがにかげりが出てきたのであろう。

明治製菓から新たな動物系オマケが投入された。

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それまでのオマケと違い、2パーツ化し可動ギミックが追加されたのが、カニタンであり、カメタンである。

お菓子は同じようなスティック型だったように思うが、値段は60円位したように思う。

明治製菓のカニタン(左)と、カメタン

しかし、カニタンにしろ、カメタンにしろ、ピコタンや明治合体チョコボールほどの人気も出ず、

比較的短期間に店頭から見掛けなくなった様に記憶している。

そのため、これらのパチモンは少なく、明治製菓の刻印が削られたカニタンが見つかっている。

刻印の削られたカニタン(左)と、明治製菓の文字の入ったカニタン

カニタンブロック」という商品名でタグ付き小袋に5個入りであった。

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他にも2パーツで挟むギミックを持つ蟹状の駄玩具が発見された。

先の刻印削除カニタンは、本物の成形型が流出し、一部改変の上流用されたものだが、

この駄玩具は、同じアイデアをもって型を新規に作成した、言ってみれば、「本物のパチモン」である。

商品名は、「目玉のうごく!カニさん」という。

10袋づつがホチキスでとめられ、5束をタグで挟みブルーのビニール紐でくくってある。

この紐で軒先などに吊るしてあったものと思われる。

タグには一袋10円っと書かれている。

名前も「カニタンブロック」として売られていた、刻印を消したパチモンは、一袋50円で5個入っていたので、

価格的には妥当な値付けであったことがわかる。

クジの要素を追加して、10円で一袋引くと中に紙製のクジが入っていて、当たりが出るともう一回引けるという。

が、もともと50個しかなく、あたりなんか最初から無いのは当時の駄菓子屋ではありがちなパターンである。

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カラーバリエーションは、緑、青、黄色、オレンジの4色が見つかった。

出品者の方の記憶によれば、濃いめの赤もあったそうである。

緑は、パチモンピコタンに見られる、クリア系の色である。顔はにっこりの一種類しかない。

形状的には、純正カニタンの胴体が円形なのに対して、「目玉のうごく!カニさん」はおむすび型をしている。

左側がパチモン、右が純正

目玉のうごく!カニさん」のほうが足の湾曲が少なく、3本ずつ対になった短い足は曲っていて、よりカニっぽい外観になっている。

ハサミは純正のほうは足の突起を挟めるように大きく凹んでいるが、パチモンは作りがラフである。

足を開いたときに目が持ち上がるギミックは、純正同様持っているが、持ち上がり方が少し違っている。

左側がパチモン、右が純正

純正は目の下の突起がながく、ハサミを閉じたときは胴体下部の凹みに突起が収まり、足を開くと持ち上がってくる。

パチモンは突起が短く、ハサミを閉じたときは目が下がっているが、足を開くと胴体下部の突起に沿って目が立つ様になっている。

左側がパチモン、右が純正

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ここまでが、前回までの復習である。

ピコタンの後継種、カニタンには、型の流出したと思われるメーカー名が削除されたパチモンと、

カニタンのデザインを真似て型から起こした「本物のパチモン」が見つかっていることを理解したとして、

話を続けて行く。

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某クションで、古いガチャの中身を入手した。

当時おなじみの20円ガチャのカプセルが40数個。一般的なサイズのスーパーボール7個。

大型のカプセル3種6個がまとめて入手された。

20円ガチャの内容は、飛行機消ゴム、戦車消ゴム、怪獣消ゴムといった消ゴム素材のもの、

金属製のガンダムフィギア(ボール・グラブロ)などであった。

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その中に、先に紹介した「目玉のうごく!カニさん」が見つかった。

カプセルの中に無理矢理入れられていたのは、黒と茶色の「目玉のうごくカニさん」であった。

先の駄菓子屋売りのものは、カニタン同様に硬質なプラスチックだったが、

今回見つかったものは、柔らかい素材で、いわゆる「消ゴム」素材のようである。

カプセルに入れるために脚は多少曲ってしまっている。

柔らかい素材で脚も変型してしまっているために、脚をすぼめようとしても挟み込む動作はほとんどできない。

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大きさは、先の「目玉のうごくカニさん」とほぼ等しかった。

左から「目玉のうごくカニさん」、同ゴムバージョン

顔の種類は「目玉のうごくカニさん」と同じ笑い顔の1種類であった。

甲羅や脚等の形状も相違点は見当たらず、同じ型から作られていると思われる。

左から「目玉のうごくカニさん」、同ゴムバージョン

裏面の目が立ち上がるギミックも同じように作られており、これも同じ型から製造されたと考えて良いようである。

左から「目玉のうごくカニさん」、同ゴムバージョン

甲羅の部分が梨地の凹凸がある。

両者を比べてみるに、「目玉のうごくカニさん」の方が凹凸がはっきりしているように見える。

左から「目玉のうごくカニさん」、同ゴムバージョン

以上の諸点から、この2種類は同じ型で作られた素材違いであると考えられる。

駄菓子屋で売られていた駄玩具が、素材を変えているとは言え、ガチャに転用されていた証拠が見つかったのは興味深い。

目玉のうごくカニさんのガチャバージョンに新色が発見された。

某クションで入手したのはゴムバージョンの青が2個であった。

素材は、カプセルとともに見つかった茶色と黒と同じ軟質なもので、カプセルに入っていたものか、若干歪んでいた。

このガチャ用の軟質素材のものには他の色が存在した可能性が高いと思われる。

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駄玩具等のガチャへの転用は今までにも知られている。

純正最後期型が1980年代中盤のキン消し等と一緒にカプセルに入って見つかったこともある。

このサンプルは複数が埃まみれの状態でデッドストックのカプセルに入っていたために、

商品として出荷された当時からよごれていたことから、余った純正をガチャのハズレに転用したと思われる。

また、当時はガチャガチャで入手したはずのパチモンタコチュウが、

プラスチックパッケージに入って売られていたこともわかった。

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また、同一の型で作られた、異素材の駄玩具も見つかっている。

タグ付き袋入りの、「ミニUFO遭遇消しゴム」というゴム素材の明治合体チョコのパチモン(C−2型)と、

同じ形状のプラ素材で作られたもの(C型)が「合体基地ブロック」と言う商品名でケース入りで売られていたこともわかっている。

左が消しゴム素材の「ミニUFO遭遇消しゴム」、右は合体基地ブロック

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ピコタンから始まり、明治合体チョコボールやカニタン等といった明治製菓の当時のオマケが、

駄玩具業界に多大な影響を与え、パチモンが沢山作られ、さらに、消ゴム素材ブームから、

ゴム素材のパチモンも頻繁に作られていたことの証拠がまた一つ増えたと言える。

作られたパチモンはガチャや、駄玩具での袋入り、また、玩具店、お土産屋でのプラケース入りと、

さまざまな形態で販売されたことがはっきりした。

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参考までに一緒に入手した他のガチャも記録しておく。

内容は消ゴムがメインだが、怪獣消ゴムのバルタン星人やキン消しも混ざっており、

ガンダム関係のフィギアがあったり、高額ガチャのものと思われる大型のカプセルも混在している。

また、指輪やプラ製のゴキブリなど、明らかにハズレと思われるものも入っている。

このため、ある一時期のデッドストックなのか、

長期間に渡ってデッドストックをまとめた物なのかは不明と言わざるを得ない。

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●:怪獣消ゴム

怪獣消ゴムに詳しく無いので詳細は不明。

手前の列のバルタン星人は、パネル(?)付で比較的新しいものではないかと思われる。

検索の結果、後列左の黄色い怪獣は、腹部に「カイジユゴア」書かれており、

背中に丸Cテズカプロの文字がある。検索の結果、マグマ大使の怪獣の可能性があるようである。

後列右は脚に「ザイラス」とあり、円谷プロの丸Cが入っている。

検索の結果、ミラーマンに出てくる火焔怪人ザイラスらしい。

怪獣消ゴム

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●戦車消ゴム

2パーツの戦車消ゴムと、1パーツの戦車2題と、モールドのクリアな別系統と思われる装甲車、

白いオープンカーが見つかった。

後列の2パーツ物は、今野産業のバイキン軍団消ゴムの戦車シリーズに使われていたものと

同じ車体でザインである。複数のメーカーの物が混ざっていると思われる。

戦車消ゴム

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●飛行機消ゴム

アメリカのマークの入っているF−16と、星マーク入りのMig−25と思われる。

飛行機消ゴム

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●アニメ消ゴム

キン消しは、検索によるとパート17のno.241、ミートのようである。

飛行機は良くわからないが、丸CNTV、手塚プロの刻印がある。

アニメ消ゴム

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●オマケのパチモン(?)

左の四角いコンテナ車のようなものには、車輪が付くと思われる。

触手(?)を持つパンダは、何か、大手メーカーのオマケに同じデザインがあったように思う。

オマケのパチモン(?)

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●ガンダムメタルフィギア

ガンプラの流行と同時期に、こんなのがガチャにあったなぁ、とは思うが詳細は不明。

ボール、グラブロ

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●UFOコマ

以前、パチモンタコチュウと一緒に、タグ付き袋入りで同様な形状のコマを紹介したことがあるが、

以前のものとちがい、こちらはプラスチック製の軸と消ゴム素材の円盤の2パーツで構成される。

UFOコマ

●20円カプセルのハズレアイテム

これらが出たら、20円でガムを買った方が良かったと後悔すること間違いなしのアイテム集。

アフリカの原住民が持ってそうなお面とバレリーナはペンダントやキーホルダーに付けるのかも知れない。

白いのはウサギの木馬。中列の腕時計とプロペラは指輪として使うサイズ。

腕時計は見る角度で違う絵が見られるシールが貼られている。

蛇と蟹と虫は柔らかい素材で出来ている。

ハズレアイテムの数々

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●ザクのプラモデル

少し大きいサイズ(50円?)のカプセルに入ったプラモデル。

拳に穴は無いが、ザクマシンガンが付属している。

ザクのプラモデル

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●たこ焼きスタンプ消ゴム

ライナーで繋がった球体の消ゴム。顔が書かれており、裏面はスタンプになっている。

たこ焼きスタンプ消ゴム

裏面には「丸に金」、「ペチャ」、「ビヨーン」、「ブチッ」、「ドカッ」と、擬音が入っている。

自作マンガでも描く時に利用させようとでもいうのだろうか。これ、嬉しいのか?!って感じの代物。

裏面

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●組立て式十手

100円サイズの大きめなカプセルに持ち手と刀身が別れた十手が入っている。

組立て式十手

同封されたパンフレットには2003の文字と、組立て式100円と書かれていて、

最近のものであることがわかった。

このようなものが混じっているとすれば、少なくとも大きなカプセルは最近のものが混入していると思われる。

パンフ

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●ベビーロック(手榴弾2種)

キャップ火薬を鳴らす手榴弾形のキーホルダーが1カプセルに1個入っていた。

同封されていたパンフレットのデザインは、先の2003年の十手に近いテイストを感じさせる。

ベビーロック

裏面には対象年令や、マーク等、やはりかなり新しいデザインであるように思われる。

パンフ裏面

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●GOLDバクダン ゴージャスバージョン

さらに大きなカプセルに入っている、キャップ火薬を鳴らす玩具が入っている。

200円クラスの大きなカプセルであり、吸盤やいくつものパーツを使った凝った作りで、

やはり新しいものであると思われる。

地雷

以上、一緒に入手したものを再検討してみたが、少なくとも大きなカプセルは、新しいものであり、

20円サイズの小さなカプセルも全て同時期の物であるとは言い切れないようである。

今回見つかった、カニタンのパチモンは、

キン消しや怪獣消ゴムの流行った頃、同じ時期のオマケがパチモン化され、カプセルに入れるという事情もあり、

ゴム素材で作られていたということは確かなようである。

大手メーカーのオマケがパクられて、ガチャという子供相手のさらにささやかな販売形態にあうように、

流行の素材に変えてしまう・・・。

著作権・意匠権には緩くとも、子供の好み、子供に買える販売形態、子供の流行に敏感に対応していた

当時の駄玩具製造者の熱意と工夫が見られて、非常に興味深いサンプルであったと言える。

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「で?」

で?、というと?

「だからぁ、それがどうしたって?」

どうしたもこうしたも、そういうことがあったってことですよ。

「だからぁ、それがなんなの?」

なんなの?っていわれても・・・。

そういうことなの!!

と押し切ってしまいましょう。

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