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名前も拝借いたしました

カニタンブロック

最近の数カ月で2種類の新しいパチモンが見つかり、1種類を改めてパチモンに分類したことにより、

ピコタンには10種を超える多くの違った系統の顔ありパチモンが存在することが確かめられた。

明治製菓の純正食玩のデザインを丸パクリしたものから、一部分ずつを集めて独自のデザインにしたもの、

さらに、特撮ヒーローを模したと思われるものが複数あるなど、そのバリエーションは多彩である。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

発売期間は1〜2年と思われるが、その間にも多くのパチモンが出現するほどヒットしたピコタンは、動物シリーズやスポーツシリーズが作られた。

先日、某ショップで大量の動物ピコタンを見たが、そのほとんどがパチモンで、それらは人型ピコタン同様に、

駄菓子屋でタグ付き袋入りで売られていたものと考えられる。

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人気のあったピコタンシリーズのあとに作られたのが、カニタンであり、カメタンであった。

当時流行した宇宙モノではなく、動物をモチーフにした食玩で、このような動物モノは、各社から様々なものが作られ、そして、消えていった。

ただくっつけるだけでなく、パーツ数を増やし、何らかのギミックを100円以下のお菓子のオマケに持たせるため、

カニタンもカメタンも非常に工夫されている。

例えば、カメタンは丈夫な甲羅をポリエチ、可動する本体をポリプロピレンと、2パーツをそれぞれ違う素材で作っていた。

カニタンは下パーツに凹みを作ることで、上パーツの目の下部に付けた突起がその凹みを通ることによって、

開閉時に目を上下させるギミックを仕込んである。

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このカニタンには、下部の明治製菓の刻印が、型の段階から削られたと見られるものが発見されている。

左が丸Cマークとメーカー名がないもので右が純正

タコチュウやピコタン、明治合体チョコのパチモンは、吸盤などの意匠上の特徴を真似たり、

ジョイントの規格をあわせて純正と合体できる様に作ったりしているが、元になる型は新しく作られたものであった。

そのためにこれらのパチモンには作ったメーカーの違いによると考えられる多くのバリエーションが存在する。

それに比して、このカニタンの場合は、メーカー名を削ってこそあるものの、純正が作られたのと全く同じ型を流用している。

カラーバリエーションは、純正にない白を含む5色。顔は純正と同じ12種類が発見された。

材質は純正に近いが若干透明度が高く、脆く壊れやすいようである。

出品者の方によると、この刻印なしカニタンは多数が一度にまとまって、

ビニールに入れられてガラクタと一緒に箱に入ってに見つかったということであった。

これが、何らかのパッケージに入っていたのを有り合わせの袋にいれたものかはわからないということであった。

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で、ここからが本題である。

最近、本論までが長いが、学問っちゅうもんは過去の蓄積の上に展開されるものであるので仕方ない。

この件に関しては、概論のページを用意してあるので、御用とお急ぎの方はそちらで要領良く学習するように。

(カニタンに関しては「目で見るカニタン・カメタン図鑑」を参照されたい)

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純正のカニタンと同じ型で作られたパチモンが、どのように売られていたかを知らしめるモノを入手した。

タグ付き袋入りのパチモンカニタンである。

タグには「カニタンブロック」と、そのままの名前が書かれている。

ピコタンのパチモンは「ブロックマン」、「人形ブロック」、「人間ブロック」等の名前が付いている。

先に紹介したピエロ型が「ピンキーブロック」や「ブロックボーイ」というようにブロックというワードが使われている。

ピコタンの2パーツパチモンである「ポーズブロック」や「ロボくんブロック」にもブロックという名前が入っており、

この手の合体ものにはよく使われたキーワードであると考えられる。

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タグには「たのしくつないであそぼう」というコピーと「カニタンブロック」の名前が書かれている。

また、当方で分類したところによるA型、I型、D型が比較的正確に書かれている。

D型の目は左を向いているが、タグの絵も若干左に寄っている。

裏面には、F型とA型、D型・A型・I型が、開いてつないだ状態、閉じてつないだ状態がそれぞれ書かれている。

「穴にさしこむと、カニがつながります」、「上下にのびる!」と簡潔にあそびかたが示されている。

A型 D型 F型

I型

タグの地は黄色で、これは「ロボくんブロック」の小型版である「ポコタン」や、大型顔無しピコタンパチモンである「ジャボタン」も

同様に黄色い。(タグの画像は「ポーズブロック」のページにある)

「カニタンブロック」にも、「ポコタン」にも「ジャボタン」にもメーカーを表すロゴは書かれていない。

「ポコタン」と「ロボくんブロック」には形態上の共通点が非常に大きい。

「ジャボタン」の形状もしっかりしていて、その生産技術は高いものと思われる。

「ロボくんブロック」は、明治製菓の明治合体チョコボールのパチモン「合体基地」も作ったマルコー産業の製品であることがわかっている。

そのため、この一連の地が黄色いタグに比較的正確なイラストがかかれたものも、マルコー産業が作ったものである可能性がある。

しかし、「ジャボタン」には顔がなく、顔無しB型と形状が似ており、マルコー産業製のピコタンパチモンには、

「ロボくんブロック」や「ポコタン」、「顔ありC型」や小型の「顔ありC2型」に共通する大きな丸い目の系譜があることから、

にわかに全部を一くくりにするのは難しく、さらに検討の要がある。

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今回のタグ付き袋入りの「カニタンブロック」で注目すべきは、そのカラーバリエーションである。

前回発見されたパチモンカニタンは、白、緑、赤、黄、紺、が発見された。

これは純正から水色とオレンジの2色を除いた組合せで、その色調が若干明るいが、純正に近い材質と思われる。

この材質による色調の変化はまだ十分な研究が為されていない分野であるが、

クリア系の色の材質は安価で、それに薬剤を追加することによって安定した不透明な発色と強度が得られるということであるらしい。

実際にクリア系は強度が高くないようで、未開封のものの中に、既に目が折れて失われているものが見られた。

そのように考えると今回の「カニタンブロック」は、緑はパチモンピコタンでよく見られるクリア系の黄緑色で、

青も、水色と紺の中間で、これもピコタンの顔無しパチモンA型やD型の青に非常に近い。

ピンクは明治製菓の純正には見られないもので、この6色と同じバリエーションはピコタン顔無しA型や、

「合体基地」の別バージョンで見られるもので、同一のメーカーの製造工場で作られた可能性がある。

しかし、どちらも赤が朱色系の明るい色で、緑と黄色の不透明度が高く、

今回発見の「カニタンブロック」と全く同じ組合せは見られない。

クリアー系の緑と黄色に注目すれば、パチモン顔ありD型や、H型、I型に近いが、

朱色系でない赤は顔無しB型や顔ありD型や、I型、最近パチモンと分類することにしたK型などにあるが、

これらには白やピンクなどの色がないことから、カラーバリエーションからメーカーを特定することはできない。

パチモン顔無しA型は山本君から譲られたときからあったもので、どのように売られていたかがわからないが、

残存数から考えて、同様にタグ付き袋入り、もしくは袋入りで売られていた可能性が高い。

顔ありA型のカラーバリエーション

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先に紹介した袋の画像のタグに注目していただきたい。

50と書かれている。これは値段の表記と思われ、当時の合体基地やパチモンピコタンのタグ付き袋入りが50円だった記憶があることから、

この「カニタンブロック」も価格的に同時期に販売されていたものであることが推測できる。

今回入手したタグにはどれも大きなホチキスで留めた跡がある。

これは、大きな台紙に12袋が大きなホチキスで留められて、壁にかけられていた販売形態の名残であると思われる。

タグには丸い穴も空いており、これは、天井等から下げられたフックにかけて陳列することも出来たと考えられる。

50円で5個入り。

十数個が入っていたピコタンや明治合体チョコボールのパチモンに比較すれば高価であったことがわかる。

「カニタンブロック」は、某クション等で大台紙にタグ付き袋入りの完ピンを見かける。

微妙な値段なので、入手には至っていない。

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このカニタンブロックについて記載された資料が見つかった。

「’80東京小物玩具見本市 出品商品リスト(附・協栄会会員名簿)」である。

協栄会とは、東京玩具人形問屋協同組合協栄会ということらしい。

内容は、協栄会の見本市のようなイベントで出品された駄玩具のカタログで、

売価、商品名、包装方法(台紙付・箱入・その他)、1カートン入数、備考の順で文字で記載されている。

分野ごとの一覧表になっており、扱っているメーカーの記載の無いのは残念である。

「プラスチック製玩具」の項目の中に、カニタンブロックの記載があった。

この表によると、カニタンブロックは、売価50円であったようである、

ピコタンやたこちゅう、明治合体チョコボールの駄玩具がタグ付き袋入りで、だいたい50円だった記憶があるので、

相応の価格であると思われる。1袋5個入りだが2パーツなので、そんなに高価な印象はない。

台紙付き30打となっているが、他の商品は1〜2打か、数個までの個数が入っているので、誤植と思われる。

某クションで散見する大台紙付きは12袋(1打)が付いているのを確認している。

1カートン、つまり段ボール箱には、この1ダースつきの大台紙が30枚梱包されていたと読める。

50円×1打(12袋)×30枚=18,000円・・・。

当時、子供で駄玩具に2万円近くも使えるやつは居なかっただろうから、

この箱をひとり占めできた奴は居なかったろうけど。

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気になるのは、カニタンは、1985年にもスナック菓子のオマケとして販売されていたことが、

パッケージをデザインしたデザイナー氏のブログを通じて教えていただけたことである。

1980年にカニタンブロックが販売されていると言うことは、1980年までに成形型が流出し、

明治の刻印を型から削除していることになる。

1985年のスナック菓子のオマケのカニタンはクリスタル素材だったらしいが、これは未見である。

このスナック菓子のために型を新造したものか、刻印を削られた型の他に、複数の型が明治製菓にも残っていたのかは不明である。

このあたりは、パッケージと一緒にクリアカニタンが見つかり、カニタンブロックと比較しないと結論が出せない。

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ちなみに、プラスチック製宇宙船合体「合体スリー」の記載があった。

100円で箱入りで、1箱20打(240セット)入りだったことがわかっている。

現在確認されているのは、3種各1機入りのブリスターパックである。

下部中央に「MARUKO」の記載があり、ピコタンやたこちゅうの駄玩具を作っているマルコー産業製と思われる。

STマークから、左側が昭和52(1977)年、右が昭和54(1979)年の発売であることがわかる。

後述の協会員一覧にマルコー産業(墨田区吾妻橋)は入っていなかった。

しかし、明治合体チョコボールのパチモン「宇宙のなぞ?合体ブロック」や、

大台紙付きブリスター入りの「合体スリーウオーズ」、

ブリスター入りでマルコー製パチタコとセットになった「スペースインベーダー」を作った「三重丸にイ」の字のロゴを見かける、

「マルイ」(仮称)というメーカーがあるが、

これと思われる「マルイ玩具」(杉並区東駒形)というメーカーが巻末の名簿に記載されているのを見つけた。

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マルコー産業と「三重丸にイ」ロゴのメーカーは、合体スリーの駄玩具をそれぞれの商品で流用しあっていることがわかっている。

合体スリーとマルコー産業のパチタコのセットである「スペースインベーダー」や、

マルコー産業のパチタコとブリキのUFOのセットである「UFO軍団」のSTマークのメーカー記号は「M259」だが、

この番号がマルイ玩具を表すのではないかと思われる。

左が「UFO軍団、右が「スペースインベーダー」

左が「UFO軍団、右が「スペースインベーダー」

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この資料は、商品名とメーカー名が直接ヒモ付けできないのが残念だが、巻末の名簿には参加メーカーの一覧が記載されている。

住所に注目すると、台東区がほとんどで55社、その中でも蔵前2・3丁目が17社、4丁目に1社と、計18社が集中している。

他は墨田区が8社、荒川区が4社と、東京23区の東側上部に集中している。

もちろん、東京都下の協会で入会していない会社もあるかと思うが、

駄玩具メーカーの多くがこの方面に集中していたことが良くわかる。

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1980年の駄玩具見本市に、たこちゅうやピコタン、明治合体チョコボール等のパチモンが見られないことは、

パチモン駄玩具の寿命というか、入れ代わりが非常に激しいことを間接的に教えてくれる資料であると言える。

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タグ付き袋入りのカニタンを入手した。

4袋は黄緑、青、白、ピンク、黄色が各1個、1袋は黄緑、白、ピンク、黄色、赤の各1個の5個入りである。

タグには袋をとめる小さなホチキスが2ケ所、台紙に貼付けるための大きなホチキスが1個見られた。

これは、多くの駄玩具でも見られたように、大台紙にタグ付き袋入りのカニタンブロックが複数ホチキス留めされており、

買う時は子供が自分で毟って会計をする方式で販売されていたことがわかる。

赤が入っている一袋は、タグの印刷がずれている。

色の組み合わせは、ロットの違いである可能性が高い。

タグには丸い型抜きがなされており、大台紙に付けないでホックにかけて売られることもあったようである。

純正との違いは裏面の「丸C 明治製菓」の刻印が削り潰されていることであるが、

刻印の潰し方にもバリエーションがあることが確認された。

純正カニタンには、裏面前部に明治製菓の刻印がある。

今まで見つかっているのは、以下の写真の様にメーカー名の部分が凹んでいた。

今回の入手品の中には、刻印が薄く削られ、丸Cの部分の丸の曲線が残り、文字の位置も判るものが見つかった。

また、より刻印が判りにくいように、もじの部分が盛り上がって入るものもあった。

当初、明治製菓の純製品として作られたカニタンだが、その成形型がパチモン製造会社に流出して、

刻印を雑に削ったものが作られたと思われる。(青の例)

その後、さらに深く削って、もじを読みにくく、再度修正したのではないだろうか。(ピンクの例)

しかし、それでも文字の位置が判別できたため、文字の上に金属を盛り上げる形で、

完全に「丸C 明治製菓」の文字を消し去ったのではないかと考えられる。

製品が凹んでいると言うことは型を盛り上げたということである。

型を削る修正によって文字を判読不能にしようとしたが、なかなか消すことができなかったので、

逆に文字の部分を盛り上げて塗りつぶすことで、文字を完全に消し去ったのだと思われる。

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今まで入手したカニタンブロックは、どれも明治製菓の文字の部分が凹んでいるタイプであった。

しかし、今回の入手品では、ひとつの袋に文字の消し方の違うものが入っていた。

下部のパーツも多数が同時に成形されたと思われるので、

初期には色々な処置をしたものがあったが、より完全に文字を消した形に落ち着き、量産されたと考えられる。

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メーカーもわからなかったが、純正と同じ名前をつけて、純正と同じ型を流用したパチモンが堂々と売られていたことがわかった。

メーカーの規制や抗議があったかは今となっては調べる術もないが、

意匠権の分野で今では考えられないようなラフさがあったことが一層はっきりしたことは大変興味深いといえる。

ピコタンやたこちゅうのパチモンは、その原型を自作したので多くのバリエーションができたが、

それよりも時期が後になるカニタンの場合、純正用の型が流出したためか、パチモンのバリエーションは見つかっていない。

手間をかけても、パチの原型を自作したタコチュウ等に比べて、

型の流用という手っ取り早い手法でパチモンが作られたことは、

型の自作にかかるコストをかけるほどの熱意が、カニタンパチモン製造にあたっては失われていた可能性が指摘できると思う。

このことは、ピコタンやタコチュウの人気が大きかったことを逆説的に証明することになると思われる。

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プラスチックヒステリー」のHUNTER氏からの情報によると、

怪獣消しゴムにもメーカー名を削ったパチモンがあることがわかっているとのこと。

駄菓子屋プラモには、あきらかに同じ型から作成されたものが、複数の社名で販売されていることも珍しくないそうで、

そうすると、やはり複雑な形状のものは、原型を工夫して模造するよりも、

型を入手しないと同じものが出来ない、あるいは作りづらいという、製造上の理由があって、型の流用が行われた可能性がある。

また、製造メーカーが、税金対策や経営上の都合で、型を他社に売却したことも考えられる。

あるいは、製造メーカーと製菓会社の関係が薄くなり、製造メーカーが無許可でパチモンを製造販売することを規制しえなくなり、

黙認、あるいは製菓メーカーの知らないところで駄菓子屋等用に流れた可能性も考えられるとぜんまい太郎氏から指摘があった。

ぶっと氏からの情報によると、当時メーカー製食玩のパチが売られていたそうで森永のチョコのおまけジャンピオンがあったそうである。

「テトラブロック」という駄玩具があったが、先日オークションで売られていたパッケージから、

明治製菓のカプセルダーのパチであることが確認された。

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そんなにコストをかけて原型を作らねばならないタコチュウやピコタン、明治合体チョコのパチモンが多く作られたのか、

さらに、ほんの少しの時期の遅れで、カニタンではパチモンが一種類しかできなかったのか。

この辺りのことは、シールの流行や、食玩の多パーツ食玩の流行と併せて、

統合的に検討する必要があると思われる。

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