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正義の味方ばかりでもねぇ

パチモンピコタン特撮ヒーローシリーズ

明治製菓のチョコ菓子「ピコタン」。

同世代の子供たちに強い印象を与えたことは、某巨大掲示板で懐かしいチープなオマケのスレッドではよく名前が出てくることでもわかる。

しかし、その発売期間は短かった。それなのに、判明しただけで20種類以上のパチモン(偽物)があることがわかっている。

(ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい)

いくら安い駄玩具とはいえ、それだけ多くの偽物が出来たということは人気があったことを伺わせるといえよう。

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今回、新しい顔ありの型が見つかった。

顔は上掲の写真のように、70年代の特撮ヒーローを模したようなデザインで、

純正の大人しいデザインとは一線画している。

色は緑、紫、黄色、赤、白、ピンクの6色である。紫はこの型にしかなく珍しいといえる。

表面は細かい梨地状で、これも他のシリーズには見られない。

(今回発見のこの特撮ヒーローシリーズを「顔ありパチモンJ型と命名する)

腕は細めでパチモン顔無しC型や顔ありE型に似るが、脇の凹部の作りはラフで同じ向きでは繋げにくい。

股の部分も他の型に比べて小さめで、つま先は取って付けたような段差がある。

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顔は特撮ヒーローをモチーフとしたものになっている。

ヒーローものに詳しくないので確かなことはわからないが、

レッドバロン、ウルトラマン、トリプルファイター、電人ザボーガーのように思われる。

それぞれの放映時期をネットで調べてみると次表のようになった。

レッドバロン
1973(昭和48)年7月4日〜1974(昭和49)年3月27日

ウルトラマン
1966(昭和41)年7月17日〜1967(昭和42)年4月9日

トリプルファイター
1972(昭和47)年7月3日〜1972(昭和47)年12月29日

電人ザボーガー
1974(昭和49)年4月6日〜1975(昭和50)年6月29日

ウルトラマンだけが1966年と古いが、「帰ってきたウルトラマン」が、1971(昭和46)年4月2日〜1972(昭和47)年3月31日なので、

こちらを模したものの可能性が高い。

これら4つの番組のうち、最も放送開始が遅いのは電人ザボーガーの1974年になることから、

この特撮ヒーローシリーズの発売は1974(昭和49)年以降になることが考えられる。

秀次郎氏によると、電人ザボーガー、トリプルファイターは、講談社が雑誌への掲載権を持っており、

「テレビマガジン」、「たのしい幼稚園」といった雑誌に掲載されていたので、それ等の本が参考にされた可能性があるとのことであった。

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このような、漫画や特撮といったキャラクターもののゆるーい真似をしたシリーズが他にもある。

パチモン顔ありE型である。

今回発見したパチモンに比べて、一層ラフな顔なので元になったものを推測するのは困難であるが、

上段左はミラーマンとかスペクトルマン等のような巨大ヒーローを思わせる。

上段中央は仮面ライダーアマゾンではないかという説がでた。(似てねぇー、けど)

上段右はウルトラマンタロウっぽい。下段右は仮面ライダーの類の様である。

上段左はゲッターロボではないかという説がでた。

下段中央は、胸のV字からもマジンガーZを想起させるデザインである。

ネット検索で画像を調べたところ、グレートマジンガーにより近いと思われる。

下段右は仮面ライダー系で、仮面ライダーか、V3辺りである可能性が高い。

以上の各番組の放送時期を調べてみた。

ミラーマン
1971(昭和46)年12月5日〜1972(昭和47)年11月26日

スペクトルマン
1971(昭和46)年1月2日〜1972(昭和47)年3月25日
仮面ライダーアマゾン 1974(昭和49)年10月19日〜1975(昭和50)年3月29日

ウルトラマンタロウ
1973(昭和48)年4月6日〜1974(昭和49)年4月5日
ゲッターロボ 1974(昭和49)年4月4日〜1975(昭和50)年5月8日

マジンガーZ
1972(昭和47)年12月3日〜1974(昭和49)年9月1日
グレートマジンガー 1974(昭和49)年9月8日〜1975(昭和50)年9月28日
仮面ライダー 1971(昭和46)年4月3日〜1973(昭和48)年2月10日
仮面ライダーV3 1973(昭和48)年2月17日〜1974(昭和49)年2月9日

この表によると、グレートマジンガーだとした場合、いちばん新しいのはの1974(昭和49)年になる。

そうすると、先に紹介したヒーローシリーズよりも、こちらの方が若干新しいことがわかる。

この頃は、純正の販売時期にダブるか、その直後であり、ピコタン人気と沢山作られた特撮ヒーローものが融合し、

偽物であっても子供にとっては魅力的はものであったのではないかと思われる。

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このパチモン顔ありE型の表面は突起と腹部に三本の縦線がある。

これは、パチモン顔ありB型と分類したものの表面の突起と、パチモン顔ありC型の裏面の腹部三本線の特徴を併せ持っている。

左から顔ありE型、B型、C型

パチモン顔ありB型は、かなりラフであるが純正の顔を模したものである。

パチモン顔ありC型は、マルコー産業で作られたもので、8種類あり、スマイルなど比較的オーソドックスな4種類と、

純正の顔と共通するニュアンスを持つ帽子を被ったおじさんやおかっぱ頭の女の子といった「普通の人」をデザインした4種がある。

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純正の「普通の人」キャラクターでないものには、さらにパチモン顔ありH型がある。

これは悪役覆面プロレスラーかダダ星人(ショッカーの戦闘員という説もでた)、片目の海賊、一つ目の3種類で、いかにも悪役然とした顔である。

胴体の模様はパチモン顔ありE型や、今回発見の特撮ヒーローシリーズと似た直線を使った模様になっている。

このH型の表面は、ベルト状のウエストの模様や肋骨状の線が入ったりしており、

表面の模様がそれぞれ違っているのは、この顔ありH型のみの特徴である。

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先日「同一形状で顔の有無のあるパチピコについて」と題して紹介した、顔ありパチモンI型のトピックスで述べた通り、

ピコタンのパチモンには、純正の影響の強いグループとそうでないグループに大別される。

純正ピコタンの特徴は、前期・後期各20種類の、「普通の人」の顔を持っていて、表面は左上から右下への斜線である。

この純正の特徴とそれぞれの顔ありパチモンの特徴との相違を以下に表にまとめてみた。

:純正、:純正の影響が濃いパチモン、:純正の影響が少ないパチモン、:両方の特徴を持つパチモン

種類/特徴 前面

後面

純正(前期・後期)
左上から右下への斜線(前期12本・後期13本) 「普通の人」
パチモン顔ありA型 右上から左下への斜線 純正と非常に似ている3種類
パチモン顔ありB型 一面に小突起 純正を元に非常にラフな作画で7種
パチモン顔ありC型 三本の縦線 シンプル4種と純正に似た普通の人系の4種で計8種
パチモン顔ありD型 模様なし 純正後期に非常に似ている7種
パチモン顔ありE型 縦三本線と小突起 テレビヒーロー系6種
パチモン顔ありF型 左上から右下への斜線 ラフだが純正の影響が強い
パチモン顔ありG型 腹部にジャンケン 模様なし
パチモン顔ありH型 ラフな模様がそれぞれちがう 一つ目などの悪役キャラが3種
パチモン顔ありI型 右上から左下への斜線 純正の各パーツを混ぜたような模様で4種

パチモン顔ありJ型
細かな梨地 特撮ヒーロー系4種

パチモン顔ありK型
左上から右下への斜線 純正にそっくりで、2種類が確認されている

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上の表でパチモン顔ありK型としたものは、以前純正中間型と紹介したもので、

脇の部分の凹部は純正前期、顔の模様は後期に似ているもので、表面の斜線も左上から右下で12本と前期に等しいため、

純正の特殊なバージョンの可能性があるのではないかと考えていたが、

純正のサンプルがかなり集まり、その中に同様のものがみられなかったことと、

最近になってパチモン顔ありC2型(全長が6割程度の小さいパチモン)といっしょに一個が見つかったことから

純正に大変よく似せたパチモンであると考え、新しいパチモン顔ありの型としてK型と命名した。

左からパチモン顔ありK型、純正後期、純正前期

左からパチモン顔ありK型、純正後期

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以上のことをまとめて、相関図を作ってみた。

純正の各20種類の「普通の人々」の顔を持ち、純正の表面の特徴である左上から右下の斜線と同じ模様を持つのが、K型、F型。

表面が右下から左下の斜線を持つのがA型とI型。

表面に斜線がないが、顔が純正の影響を強く持つのが、D型、B型とC型の一部。

純正の「普通の人々」と全く違う、特撮ヒーローや悪役の顔を持つのがE型、H型、J型になり、

それ以外、ニコニコや怒り顔などの非常にシンプルな表情を持つC型がある。

それから、顔がなく、メンコやカードなどに無作為な数字といっしょに印刷されたようなジャンケンマークが腹部にあるG型がある。

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以上のパチモンのうち、C型のみが、明治合体チョコボールのパチモンである「合体基地」や、

2パーツのピコタン型人形オブロックであるロボくんブロックを作ったマルコー産業が作っていたことが推測されるが、

他の型についてはメーカーや販売形態はほとんどわからない。

同一形状の顔無しパチモンがある型もあることを紹介したが、同一形状の顔ありと顔なしは同じ業者が作った可能性が高いが、

顔のモールドのタッチや形状がそれぞれ違うことから、顔あり同士で同じメーカーが作ったものは無いと思われる。

今回紹介した顔ありJ型も、顔ありE型も、モチーフにした子供番組は1970年代前半に集中しており、

作成時期は近かった可能性が高い。

明治製菓のピコタンの正確な発売時期は不明だが、その後、動物ピコタンや運動ピコタンなどのシリーズが続き、

ピコタンが販売された時期は短かったと考えられる。

しかし、その短い発売期間に十指に余るパチモンが作られたということは、

ピコタンの人気の高さと、沢山のプラスチック製のパチモンを作る業者の存在、

ピコタンの意匠についても、キャラクターの著作権についても規制が大変甘かった当時の状況を伺い知ることができる。

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ピコタンにしても、タコチュウにしても、発売期間は短期間であったと考えられるが、

その間にどちらも10種以上の偽物が作られた。

タコチュウにしろピコタンにしろ、食玩や駄玩具を扱った記事等でほとんど取り上げられたことのない、

忘れられたオマケであるが、丁寧に集めてみるとこのように多様なバリエーションが見られる。

カニタンはメーカー名を削った本物の型を使ってパチモンを作った事が知られているが、

タコチュウもピコタンも、それぞれ型を新造してパチモンが作られている。

こういう型は非常に高価で、特にタコチュウは吸盤が2個あるため複雑な成型が必要だったはずである。

それなのに、タコチュウやピコタンには多くのパチモンバリエーションが確認された。

このことから、以下の疑問が導きだされる。

同時期に作られた各社のプラ製オマケについても、同様にパチモンが作られたのか。

ぜんまい太郎氏のサイトにタコチュウやピコタンよりも古いプラ製怪獣や恐竜については多くのバリエーションがあることが書かれているし、

それより時代の下ったガチャガチャ向け商品のバイキン軍団にも偽物らしいものがあることはハマール氏のサイトに書かれている。

しかし、ほとんどのオマケや駄玩具についてパチモンがあるという研究はみられない。

これは、パチモンが認識されていないからなのか、タコチュウやピコタンが特別にパチモンが多いのか、

もし、タコチュウやピコタンが特別であるなら、なぜ多くのパチモンが同時多発的に作られたのか・・・。

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知れば知るほど30年の時間を越えて、疑問が増えていく。

これが駄玩具研究の難しさであり醍醐味であるということができる。

ヒーローの同定にあたり、かとう氏、秀次郎氏、ぜんまい太郎氏に御協力をいただいた。

だって、テレビとか見なかったし、雑誌買ってもらうこともなかったんだもん・・・。(^^;)

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