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まるパクリじゃん!

刻印なしカニタン

駄玩具の正しい楽しみ方は、

著作権・意匠権無視のおおらかさ、商魂たくましく「売らん哉」精神を愛でることにある。

ロッテの「たこちゅう」のさまざまなパチモンタコチュウ。

明治製菓の「ピコタン」と互換性を保ちつつ、いくつもの系統が見られるパチモンピコタン。

ピコタンの合体という基本コンセプトからドンドン勝手に進化して

.ついには2パーツ化してしまった、究極のパチモン「ポコタン」。

明治製菓の「明治合体チョコボール」と合体させることができる「合体基地」や「ドッキングステーション」。

このサイトで紹介するのは、タコチュウ遊びのために集めた駄玩具ばかりだが、

これらの前後に作られた食玩についても偽物があった可能性がある。

有名なところではロッテの「ビックリマン」シールには各種のパチモンがあったといわれている。

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なぜ、このようなパチモンが存在したか?

それは純正品の値段の高さに原因の一端を求めることが出来ると思われる。

ピコタンの場合、純正品はチョコ菓子と、そのオマケとしてたった2個しか入っていない。

それに対してパチモンはほぼ同じ値段で10数個が袋入りで売られていた。

基本的に単品の初期のグリコのオマケ等とちがって、合体させることが出来るオマケは

数多く集めることによって遊び方が飛躍的に広がる。

少額な子供の小遣いで買うには、純正品は高すぎ、買ってもらうもの、特別なときに買うものであった。

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さらに注目すべきは、真似られるオマケの多くが、ロッテや明治製菓というメジャーなメーカーのものであることである。

駄菓子屋の商品単価は低く、これらのちゃんとしたメーカーの(子供にとって)高額な商品は一般的でなかった。

駄菓子屋のお菓子といえば、コビトやシスコといったメーカーや、聞いたことのないような製造メーカーの製品であった。

駄菓子屋にはロッテや明治といった有名メーカーのお菓子は見られず、

メジャーメーカーのお菓子は、商店街のなかのお菓子屋やパン屋、スーパーマーケットのお菓子売り場で買うものであった。

駄菓子屋とお菓子屋では、扱う商品も客種もはっきりと違っており、

駄菓子屋で扱われるようなメーカーから見れば、一流メーカーは目標であり別格であったのだと思われる。

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で、今回の発掘品は、パチモンカニタンである。

動かすと目が立ち上がるギミックもちゃんと機能している。

見たところ全く相違がないように見えるのに、なぜパチモンとわかるか。

それは、なんと、明治製菓の刻印が削り取られているのである。

下の写真からわかるように顔はほとんど全くといっていいほど同じである。

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右が純正、左が刻印なしパチモン

しかし、裏面をみると「C 明治製菓」の刻印が削られているのがわかる。湯抜き穴の場所も等しく、

同じ型か、純正品をもとにコピーしたことが考えられる。

上部パーツ(顔のあるほう)に若干の引けが見られるが、純正にも引けがあるものがあるので、

製造上の誤差であると思われる。

右が純正、左が刻印なしパチモン

今回発見された刻印なしパチモンには白があるが、これは純正カニタンには見られないものである。

赤と緑は純正にもあるが、若干パチモンのほうが色が薄い。しかし、下の写真の下段の様に、

純正ピコタンにも、保存状態やロットに由来すると思われる色の濃淡が見られるので、

この色の差がパチモンと純正を区別する基準になりうるかは研究の余地がある。

上段左側はパチモン白。右が純正、左が刻印なしパチモン。下段は全て純正ピコタン

パチモンピコタンの一部(顔ありH型顔なしE・H型等)や、明治合体チョコのパチモン(パチモンB型)のように

クリアな硬質素材を使っているものがあるが、これらに比べて純正に使われる不透明素材は

一工程余計にかかり、価格も高価であるそうで、刻印なしカニタンは素材面からもちゃんと作っていることがわかる。

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さらに差異を分析するために、刻印部分の拡大撮影を試みた。

右が純正、左が刻印なしパチモン。

完全に「C 明治製菓」の文字が消されているのがわかる。

刻印を消すには2つの方法が考えられる。

1、製造用の金型の、文字の部分に金属を盛ることによって埋める。

2、純正から型取りするときに、純正の文字の部分を削って置いてから型を取る。

パチモンの刻印部分の削られかたを見ると、2の方法で作られているように思われるが、

このあたりの成型に関する知識が少ないため、断言することはできない。

右が純正、左が刻印なしパチモン。

次に「C 明治製菓」の文字の下にある「ポリエチ」の文字に注目した。

純正の方がはっきりしているのがわかる。特に「ポ」の字の縦線が純正は強く見える。

パチモン緑の方はモールドが弱く、「ポ」の字の左の払いが短く、○が「リ」の左にかかっている。

しかし、パチモンを仔細に見てみると、残りの赤と白は純正と大変近いことがわかった。

純正を全て点検すると、パチモン緑と同じように「ポ」○が「リ」にかかっているものが見つかった。

また、「エ」の字の上の棒の角度や長さが違う等のバリエーションがあり、

何パターンがあったかは不明だが、純正にも下部パーツにいくつかのバリエーションがあったことがわかった。

刻印を消したパチモンの「ポリエチ」の文字にも複数のバリエーションがあったことから、

元の型を修正したか複数の純正をもとにコピーしたことが一層はっきりした。

これらの色玩はランナーにいくつもが繋がった状態で作られるのが普通であるので、

この点からは、型に直接修正を加えた可能性が高くなった。

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球に2個の吸盤があるという基本デザインを使ったが、顔は新しく自作したパチモンタコチュウや、

前面の斜線を反対にしたり、オリジナルに似せた顔があるパチモンピコタンとちがって、

この刻印なしカニタンは、元の型を流用したことが明らかで、その点が他のパチモンと違う。

明治製菓にカニタンを納入していた業者が倒産などして型が流失し駄玩具業者が転用したとか、

明治製菓がカニタンの生産販売を終了し、用済みになった型の刻印を消した上で、業者が駄玩具用に再生産したとか、

様々な可能性が考えられる。

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刻印を消したとはいえ、他企業のデザインを丸パクりしてしまうという強引さ。

有名メーカーの人気にあやかり、単価の安い駄玩具を少しでも多く売ろうという駄菓子問屋の形振り構わない姿勢が

この刻印なしカニタンには見られる。

この刻印なしカニタンの販売形態が判明した。

タグ付き袋入りでタグには「カニタンブロック」と、そのままの名前が書かれている。

刻印は削られ、素材はクリアがかった色で純正とはちがっている。

青、黄色、赤、白、ピンクの5色が各1個ずつ入っている。

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同じような挟み系玩具を発見したので参考のためにあげておく。

「モンキーミニハンド」という駄玩具で2パーツだがカニタンのように左右でジョイント部が上下食い違いになっていず、

非常に素直なドッキングの仕方をする。

色は5色で各一個が入っている。カニタンの方が素材を多く使っており、製造技術も高くないとできないようなので、

同じ値段、販売形態であれば3〜4個入りだったのではないかと思われる。

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最近になって、パチモンカニタンを多数入手することができた。

色数は5種、顔はH型を除く11種が確認された。

H型がなかったのは、たまたま入って居なかっただけの可能性が高く、パチモン独特の顔も発見できなかったことから、

やはり純正カニタンの型を流用し、裏面の刻印のみを削った可能性が高まった。

パチモンのカラーバリエーション

赤の色が薄く、オレンジと赤の中間的な色調のものも見受けられる。

たこちゅうにしてもピコタンにしても、純正はかなり色の統一性を保っていることからも、

このようなばらつきは2次的な生産施設で作られたことを示唆するものであると考えられる。

左から純正赤、オレンジ。パチモンの薄い赤2種

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.なお、このページを作るきっかけとなったパチモンカニタンは、ぜんまい太郎氏から御提供を受けた。

氏のホームページには刻印なし駄玩具についての考察があり参考にさせていただいた。

また、ピコタン・タコチュウ以前の食玩や駄玩具についての貴重なお話をうかがうことが出来、

今回の考察に大変役立った。

いつもすまないねぇ、ごほごほ・・・。

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