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パチモンタコチュウの分類に関する一考察 part.2

「たこちゅう」とは、1976年〜1977年に発売されたロッテ製菓のチョコレート菓子のおまけである。

本体の球体に吸盤2個というシンプルなデザインだが、当時は大人気であり、多くのパチモンも作られた。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(昭和58(1983)年、自由現代社)という本に、

その辺の経緯を書いた文章を見つけることが出来た。

作者は浅山守一というノベルティデザイナーで、アメリカン・クラッカー(リズムボール)等も作ったということであった。

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上の記載にもある通り、ロッテの純正「たこちゅう」は大ヒットしたが、

2個の吸盤を成形するための型は複雑で、量産はなかなか困難だったようで、

いくつかの型違いが見つかっている。

純正前期型純正後期型純正太目前期型純正太目後期型、純正最後期型、型破損タイプの6系統が見つかっている。

(他に上載の記事の「パート2」と書かれているスッポリダコと命名したタイプが2系統存在する。)

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最も一般的なのが純正タイプで、素材によって前期(水に浮く)・後期(水に沈む)の2種類がある。

顔は、普通目、ウインク、怒り目、眠り目、泣き目の5種類であった。

純正前期型

純正後期型

純正タイプと同じタイミングで、別の工場で生産されたと思われるものに、顔のデザインが大きな、

太目と命名した型違いが見つかっている。

このタイプにも素材によって、素材によって前期(水に浮く)・後期(水に沈む)の2種類がある。

純正太目前期型

純正太目後期型

この太目タイプには、同じデザインを元に作ったと思われるが、線が雑な印象の型違いが見つかった。

某クションで入手したものであったが、出品者によると、

「駄菓子屋が近所にない程の田舎住まいだったので、純正として手にいれた」という証言をいただいた。

近年になり、箱入りデッドストックである程度まとまった数が見つかり、純正の1タイプと判明したが、

その作りはパチモンかと思わせられる程、ラフなものであった。

純正太目型破損

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パート2のスッポリダコが発売された時に、純正も新しい型で作られたらしい。

デッドストックでまとまって見つかる、スッポリA型と一緒に見つかるのがこのタイプで、

最後期型と命名した。

最後期型では、眠り目タイプが省略され、顔の種類は4種になった。

純正最後期型

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最後期以外の純正たこちゅうには、泣き目と眠り目の2種類が見つかっており、最後期のみは泣き目しかない。

左から純正、太目、型破損タイプのそれぞれの泣き目と眠り目。右は最後期の泣き目

上掲の「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」には、以下の記載がある。

「”タコチュー”のヒットにともなって偽物も出まわり、けっこう売れたようである。」

この「偽物(パチモン)」は、品薄の純正品の不足を補い、安価に沢山集められることもあって、

様々な駄玩具業者が競うように数多くのパチモンを作り、ガチャガチャ、駄菓子屋、お土産屋、玩具店等で売られたようである。

パチモンタコチュウの種類については、

タコチュウ分類一覧表」、

タコチュウ派生一覧表」を参照されたい。

顔のないパチモンもあるが、ほとんどは純正の影響が見られる顔が描かれている。

顔のデザインで特徴的なのが泣き目と眠り目を合わせたようなデザインの、泣き眠り目の存在である。

当時、持っていた中でも6種のパチモンで泣き眠り目が確認されていた。

この頃はパチモンタコチュウの数も少なく、デッドストック状態でのサンプルもなかったため、

どれがどれと同じ系統か、良くわかっていなかった。

左からH型、C型、J型、B型、D型、A型の泣き眠り目

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パチモンの中にも泣き目と眠り目が区別されている種類も見られる。

K型と命名したものに眠り目が、L型と命名したものに眠り目と泣き目が見つかった。

左からK型怒り目、眠り目、L型眠り目、泣き目

このK・L型は、純正よりも大きいが、他のパチモンよりも小さい。

左からH型、K型、L型、純正

この系統には、純正や他のパチモンと同じ大きさのG型も含まれることがわかった。

左からパチタコK型、L型、G型

帽子型りんご型のケース入りが見つかり、りんご型ケースに入っていた紙から、

駄玩具メーカーのマルコー産業の製品であると考えられる。

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比較的数が多かったパチモンH型・C型は、顔のデザインが大小のそれぞれで良く似ていたこともあり、同じ系統とわかっていた。

顔の種類は、普通目・ウインク・怒り目・泣き眠り目の4種類であった。

他のパチモンとちがって、純正と同じように顔は彫り込みになっている。

パチモンH・C型

他のパチモンでは顔がエンボス(線が盛り上がっている)だが、

成形型の形状を考えると、目の部分を盛り上げなければならない彫込みの方が技術的に難しいと思われる。

純正の顔にデザインが良く似ており、彫り込みであることから、純正に非常によく似せたパチモンであると言える。

この泣き眠り目と非常によく似た顔のデザインが、パート2といわれたスッポリダコの発売に合わせて作られた箱に発見された。

純正最後期緑箱A型、パチタコH型泣き眠り目

箱にイラストが追加されたのは、スッポリダコの発売の際ということになり、

パチモンの泣き眠り目のデザインが、この箱を元にした仮定すると、

発売当初の大人気だった時期にパチモンが作られていなかったことになってしまう。

上掲の「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」にも、

「同社ではその後、パート2(写真)もだされたが、初代があまりにも強烈だったため、あまりぱっとしなかったようである。」

と書かれており、

パッとしなくなった「たこちゅう」のパチモンを駄玩具メーカーが競って作ったとは考えにくい。

確信はないが、パチモンの泣き眠り目が作られていたのを、新しい箱のデザインに参考にしたかもしれない。

あるいは、パチモンの泣き眠り目にも、新しい箱絵にも採用される程メジャーな、

他にキャラクターの様なものがあり、それを箱絵もパチモンも同じように真似たとも考えられる。

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H・C型と似た、クリア素材の泣き眠り目にD型がある。

当時、ガチャで大きなI型と一緒に入手した記憶があったが、

某クションで一緒に入手する機会が多かったこと、数が増えてもどちらも1種類の顔しか見つからないこと、

素材の色が大変良く似ていることからI型とD型は同じ系統であると考えるに至った。

後列がI型、前列がD型

クリア素材の青と赤に対して、I型もD型も黄色は不透明素材が見つかったことで同系統である確信を持ったが、

クリア素材のD型も発見された。

I型・D型とも顔はエンボスで、I型のウインクは瞑った目のまつげは、純正後期や純正最後期、

パチタコH・C型系と同様、6本になっている。

H・C型系よりも顔の種類数が減っていること、彫込みではなくエンボスであることから、

I・D型系はH・C型系よりも、純正デザインから派生したタイミングは遠くなっていると言える。

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泣き眠り目が存在するパチモンとしては、パチタコJ・B型系もある。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

当時から両方ともあったが、吸盤の深く吸着力の強いJ型と、

足が長く薄い吸盤を持つB型の形状的な共通性が薄かったことから、

長く同系列であるという確信が持てなかった。

左からB型正面・側面、J型正面・側面

しかし、両方とも泣き眠り目と普通目しかないこと、他の種類にはない蛍光ピンクが両方の型で確認されたこと、

顔のないJ・B型が見つかったこと(顔なしをJ4型・B2型と命名した)等から、

J型とB型を同系列であると考えた。

実際にJ型とB型が同じプラケースに入っているのが確認された。

それぞれ2色、J型が4個、B型が10個入っている。

台紙にはWに顔のロゴがある。

大きなJ型は、緑、赤、クリアピンクの3色。

小さなB型には緑、赤、クリアピンクと黄色の4色があった。

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んでもって、ここからが今回の新しい内容なんであるが。

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某クションでたこちゅうの団体さんを入手した。

J型が2個で、1個は黄色で、J型の黄色は、B型に黄色があることから、その存在を予想されていたものである。

これでJ・B型には、緑、赤、クリアピンク、黄色が確認された。

後列がJ型、前列がB型

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余談だが、Wに顔のロゴの入ったパチピコには、もう1種類が確認された。

発見されたパチモンタコチュウ

H・C型の台紙に良く似た小台紙にJ型と、P型と命名したラフなパチタコが入っていた。

特徴的なのは、白系の色が見つかったことである。

緑も今まで見つかったJ・B型系の緑よりも白っぽいものであった。

白い色材なのか、安定材なのか、他のパチモンよりも多く使われているようである。

別の機会には白いJ型も見つかっているので、Wに顔のロゴのメーカーでは、

白系の素材を使えたものと考えられる。

J型の泣き眠り目のカラーバリエーション

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今回入手した中に、大きな厚めな吸盤を持つA型と命名したパチモンがあった。

左からJ型、A型

パチタコA型はガチャで入手したような記憶があるが、出現数が少なく、今でもメーカー名等は不明である。

吸盤の深さがあり軟質な素材と相まって吸着力は大変強い。

当時あったA型は泣き眠り目であったので、その時にあった泣き眠り目のバリエーションを比較してみた。

その結果、J型とB型に比較して、目の間隔があいているところはJ型とA型は似ているが、

目を横切る線の傾きはJ型とB型は良く似ている。

左からJ型、B型、A型、D型

サンプル数が少なかった当時は非常に迷ったが、その後サンプル数が増えるに連れて、J型と同じメーカー製はB型であると判明した。

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サイトを作ってから、A型の泣き眠り目と酷似した顔をもつパチモンが見つかった。

このタイプをA2型と命名することにした。

A型よりも硬質で吸盤は平たく直径は大きい。

本体直径は若干小さく、足と口の付け根が若干細い。

左からA型、A2型泣き眠り目、白目

泣き眠り目を比較すると、向って右側の目の線が途切れているところも良く似ているが、

A2型の方が線がくっきりしている。

どちらが先かは俄に確言できないが、線のクリアなところから、Aの方が元である可能性もある。

左からA型、A2型の泣き眠り目部分のアップ

しばらくして、A型を3個、某ショップの通販で発見した。

色は水色と緑で、水色は泣き眠り目で、緑は普通目とウインクであった。

顔の種類数でいえば、当初泣き眠り目の元と考えていたJ・B型の2種よりも多くなり、

パチモンの派生の歴史を変えねば成らなくなった。

左から当時持っていたA型、入手した3個のA型

同じ泣き眠り目を比べると、新たに見つかった方が線が一層乱れている。

線の傾きや大きさは良く似ている。

左から当時から持っているA型、新たに発見されたA型

ウインクと普通目は瞳が中央で寄り目になっている。純正は向って左の目が瞑っているが、A型では逆になっている。

線はラフで他のパチモンに比べて細く見にくくなっている。

左からA型ウインク、A型普通目

A2型で見つかった瞳のないように見えたのを白目と命名した。

今回見つかったA型の赤は瞳が上にあるようにも見えるがはっきりしない。

純正も太目タイプの普通目は瞳が上に向いている。

この白目タイプは、太目タイプを元に作ったのかもしれない。

左から今回見つかったA型白目、A2型白目

A型もA2型も、線の乱れに多少の相違があるが、どちらも泣き眠り目、白目が確認され、

同じ顔を使った型違いであることが確認された。

左から3個目と5個目がA2型

さらにA型にウインクと普通目が見つかったことは、泣き眠り目と普通目しかないJ・B型よりも

純正のデザインに似た顔のバリエーションが多いことが確認され、

当時のサンプルから予想していたH・C型→J・B型→A型と順番に派生したのではなく、

A・A型とJ・B型は、I・D型と共に、H・C型から放射状に派生したと考えることしようと思う。

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<たこちゅう派生図>

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今回の入手品の中には、4吸盤の青紫が入っていた。

4吸盤は今まで1個しか見つかっておらず、カラーバリエーションの存在が初めて確認された。

本体が立方体の多吸盤タイプは、俗に「カクチュウ」や「ロボチュウ」と言われていたそうであるが、

これもガチャガチャでの販売がメインだったためか、サンプル数も販売形態に関する情報も少ない。

本体が立方体のパチタコ(既にタコですらないが)は、4吸盤のN型、3吸盤のR型と命名した2種類が見つかっている。

左からN型、R型

3吸盤のR型は、パチタコJ・O型と同じ、Wに顔のロゴのある小台紙袋入りで見つかった。

左からN型、R型

3吸盤のカラーバリエーションはJ・B・P型系に似ていて、同じメーカーである可能性が極めて高い。

J・B・P型系に特有の蛍光ピンクも見つかっている。

左からJ型、B型、P型、3吸盤

4吸盤のN型はピンクが見つかっていたため、B2型にピンクがあったことから、J・B・P型系かと思っていた。

しかし、小台紙にセットされた状態で3吸盤のR型が見つかってしまったので、N型のメーカーはわからなくなった。

今回、青紫が見つかったことから、顔のないJ4型(青と緑)、B2型(ピンクと赤)と似た

カラーバリエーションであるというころができる。

J・B・P型系には、しっかりした作りのB型と割とラフな造形のP型の2種類のハイローミックスであるので、

Wに顔のロゴのメーカー製である3吸盤R型と、ラフな4吸盤のN型が同じメーカーである可能性もある。

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特異な形状の上、サンプル数も少なかったので、派生図にいれていなかったN型だが、

よりしっかりした造形のR型が発見されたことから、R型→N型へ派生したという仮説を示しておくことにする。

<たこちゅう派生図>

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このサイトも十数年間研究を続けてきて、駄菓子屋の廃業と某クションの普及という絶妙なタイミングによって、

非常に多くのパチモンタコチュウを入手することができた。

それらはパッケージに入ったままのものもあり、商品名や製造メーカーについてもわかってきたことが多い。

今までに確認された様々なパチモン

後列左からH型、H2型、H3型、I型、J型、J4型、J2型、J3型、M型、K型である。

前列左からC型、C2型、E型、A型、A2型、D型、B型、P型、B2型、F型、O型、G型、L型である。

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これらのパチモンは、ロッテの純正たこちゅうに顔のデザインが近いこと、素材、形状が似ていることを基準に、

純正たこちゅうから遠いもの程、派生的に下位にあると仮定して、上掲のような派生図を提案してきた。

個々のパチモンについては、文献資料もなく、各メーカーにも資料はないと思われ、

考古学的な手法で事実を積み重ねていく他無く、正解を確認することはできない。

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まぁ、どんなに事実を積み重ねても、ただのパチモンですよ。

どれが純正でどれがパチモンか区別してしまうことで、

ショップなんかではパチモンは捨て値で売られたりするかもしれない。

でも、ホントの面白さは、正解のないパチモンの世界を隅々まで明らかにすることにあるんだと思うんですがね。

だれにでもわかる面白さじゃないことは重々承知してて。

それでも続けるんですねぇ。

因果なモンでござんすねぇ。

((((((((((^^;)

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あ、今回も入手にあたって、名誉姉のT女史に御迷惑をかけた。

もうホント申し訳ないっす。

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