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パチモンのパチモンのちっちゃいの

ガチャカプセル入り小型パチピコ

明治製菓のピコタンは1974年に発売され大流行した。

人気にあやかり、駄菓子屋やお土産物屋、玩具店等で多くのパチモンが販売された。

オリジナルのデザインを模倣したものや、独自解釈をいれたもの、

顔の刻印の無いものも含めて、20数種類のパチモンが確認されている。

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多種多様なパチモンの中でも、当時から馴染み深かったのが、

胴体に3本の縦線がある、C型と命名したタイプであった。

腕や脇のジョイントも比較的しっかりした造形で組みやすく、出来の良いパチモンという印象があった。

顔は「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」、

「帽子」、「真ん中分け」、「七三分け」、「おかっぱ」の8種類がある。

「帽子」以下の4種類はオリジナルの顔デザインに似ているが、スマイル等は独自のデザインと思われる。

色は、緑、青、白、ピンク、黄色、赤の6色であった。

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このタイプは比較的初期の段階で、リンゴ型のケースに入ったサンプルが発見されている。

商品名は「人間ブロック」という。

3パーツからなるプラスチックケースに、72個のC型が入っていた。

入り数から考えても価格は数百円はしたと思われ、観光地のお土産屋や玩具店等で販売されたと思われる。

顔は、オリジナルの影響を受けていると思われる「帽子」、「真ん中分け」、「七三分け」、「おかっぱ」の、

4種類が入っていた。

純正の影響の強いこの4種類が先にあり、他のスマイルタイプ等が追加されたのかも知れない。

ケースには「P5270005」と付番されたSTマークのシールが貼られていた。

STマークは、アルファベットが所属団体、次の3桁がメーカーの符号になっている。

4桁目が昭和の下一桁を表し、最後の3桁がその年に登録された番号になっていることがわかっている。

4桁目の「0」から、昭和50(1975)年の発売とわかる。

「P527」は、2パーツパチピコの「ロボくんブロック」にも見られた。

このパッケージの左下にはSTマークが、右下にはマルコー産業のロゴマークが見られる。

腰に球状のジョイントを追加したパチモンの意匠は、マルコー産業から意匠登録がなされている。

意匠公報471097(クリックで別ウインドウで拡大)

このタイプの2パーツパチモンは、「ポーズブロック」としてタグ付き大袋入りで売られていたのも見つかっている。

タグには左下にメーカーロゴがあり、PAT.Pの文字があることから、意匠権登録前の初期の段階と思われる。

腰に球形ジョイントを持つこの2パーツパチピコは、顔は5種類あるが、普通目と二重丸目があり、

パチモンピコタン顔ありC型とデザインが似ている。

2パーツパチピコは、他にもメーカーロゴが入っていたり、STマークが同じだったりして、

どれもマルコー産業の商品であったと思われる。

商品名 ネタ元 STマークメーカー記号 登録年 ロゴマーク
合体基地別バージョン 明治合体 K541 - マークロゴ
スポーツ大将 ピコタン2パーツ K5413301 昭和53(1978)年 アルファベットロゴ
ロボ君ブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 マークロゴ
ポーズブロック ピコタン2パーツ P5270012 昭和50(1975)年 (株)エンゼルボール
人間ブロック ピコタン P5270005 昭和50(1975)年 ロゴなし

たこちゅうセットリンゴケース

たこちゅう

P5270005

昭和50(1975)年

メーカー名
たこちゅうセット帽子ケース たこちゅう P5441200 昭和51(1976)年 ロゴなし
UFO合体基地セット 明治合体 P5440150 昭和50(1975)年 ロゴなし
合体スリー P5444 昭和54(1979)年 マークロゴ
合体スリー K5412224 昭和52(1977)年 アルファベットロゴ
スペースインベーダー たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし
UFO軍団 たこちゅう M2592005 昭和52(1977)年 ロゴなし

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同じリンゴ型ケースにたこちゅうのパチモンが入っていたものも見つかっている。

ロッテから「たこちゅう」が発売されたのは1976年〜1977年なので、

STマークの4桁目の「0」は整合性が取れない。

パチモンタコチュウのケースに「オリジナルトイ」と書かれた帯が入っているので、

タコチュウ型の駄玩具がマルコー産業によって作られたと言う可能性も否定できないが、

このケース入り駄玩具の形態をSTマークに登録したと考えるべきなのではないかと考える。

このケースには、蓋をとめるヒモにパチモンピコタン顔ありC型が使われていた。

当時書かれたと思われる「52、7、29 ¥400」の文字が読め、比較的高価な買価であったことがわかる。

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この、胴体に3本線のあるタイプは、他の駄玩具にも転用されている。

足に突起を追加されたパチモンピコタンを、回転する台座に付けてまわして遊ぶ

メリーゴーランド」という駄玩具にもこのC型が見つかっている。

台紙には右下にマルコー産業のロゴマークが見られる。

台座に挿すための突起が追加されたC型は10個入っており、

顔は「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」の4種があった。

突起を追加されたものには純正に似た4種類が見られなかったことからも、

「スマイル」以下の4種類の方が新しいのではないかと思われる。

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C型は、駄菓子屋でも販売されていたようで、駄菓子屋売りの一般的な販売方式である大台紙、タグ付き袋入りも見つかっている。

商品名は「人間ブロック」で、タグ付き小袋には20個のC型が入っている。

大台紙には12個の小袋がホチキス留めされている。

このような販売形態では、小袋は50円で販売されていたものが多く、「人間ブロック」も50円で売られていたと思われる。

顔は、純正に似た4種と、「スマイル」を初めとした独自デザイン4種の計8種が入っていた。

大台紙にはメーカーロゴの記載はなく、STマークも貼られていない。

イラストは胴体が太く、先行して発売された「ブロックボーイ」、「ピンキーブロック」に似ている。

このピンキーブロックは、昭和44(1969)年に、藤田屋商店によって発売された。

このタイプは「ピエロ型」と命名し、パチモンピコタンの一種かと考えていたが、古い業界紙に広告があり、

こちらの方が先に玩具として販売されていたことがわかった。

玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用

玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

玩具商報によると、テレビCMも打たれていた可能性があり、人気の商品であった様である。

藤田屋商店に取材したところ、海外の玩具見本市で見つけたこのデザインを、

海外の権利者に意匠権の費用を払って国産したという。

暫くして明治製菓の関係者から、海外の権利者に関して問い合わせがあったが、

権利者と連絡が取れなくなったことを伝えたところ、しばらくして明治製菓から「ピコタン」が発売されたということであった。

駄玩具として「ピコタン」のパチモンとして発売された「人間ブロック」は、

業界でメジャーだった「ブロックボーイ」、「ピンキーブロック」のパチモンと認識されていたのかも知れない。

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この大台紙にタグ付き小台紙の「人間ブロック」には、顔のないタイプも見つかった。

大台紙、タグは先の顔ありC型のものと同じだが、中身は同じプロポーションだが顔の無いタイプが20個入っていた。

この顔のないパチモンを顔無しL型と命名した。

左から顔無しB型、顔ありC型、顔無しA型、顔無しL型

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以上の事から、胴体に3本線のあるパチピコはマルコー産業製であったことがわかった。

この3本線デザインには、サイズの違うものも見つかっている。

プロポーションは似ているが、大きさが6割程しか無い。

ジョイントの成型はしっかりしており、このサイズでも腕を繋いで円にできるほど出来が良い。

この小型パチモンをパチモン顔ありC−2型と命名した。

顔は、「帽子」、「スマイル」、「二重目スマイル」、「怒り顔」、「泣き顔」の5種類が見つかっている。

色は緑、青、ピンク、黄色、赤の5種類であった。

某クションで40個がまとまって見つかったことがあるので、袋入りかケース入りか、比較的高価な設定で売られたこともあるようである。

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また、ガチャガチャのカプセルに入ったものも見つかった。

買価はわからないが、20円カプセルよりも直径が大きいものに9個が入っていた。

透明なカプセルには50と刻印されており、50円ガチャの景品だった可能性がある。

中身は緑、ピンク、黄色、赤の4色で、顔は「泣き顔」以外の4種があった。

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で、ここからが本題。

カプセル入りのC−2型がまた見つかった。

中身は黄色5個、青3個の計8個で、前回見つかったものより少ない。

どちらもデッドストックだったという確証がないので、大きいカプセルに9個、20円カプセルに8個と、

カプセルによって入数が違っていたと言い切ることができないのが残念である。

色は青と黄色、顔は「泣き顔」、「帽子をかぶった丸眼鏡」、「怒り顔」、「スマイル」の4種であった。

先に見つかったものと合わせて、色も顔も全ての種類がカプセルに入って見つかった。

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50円のタグ付き小台紙に20個も入っていたので、カプセル入りで9〜8個という入数は多いとは言えない。

しかし、カプセルに入ってまとまった数が入手できるのはなかなか魅力的である。

今の所この小型パチピコにメーカー名が特定できるパッケージは見つかっていない。

デザインから先のマルコー産業製であると考えるが、他のメーカーが作ったパチモンのパチモンである可能性もある。

明治製菓製のオリジナルが買えないので、数をまとめて欲しいから選ぶパチモンよりもさらにチープな、

パチモンのパチモンという選択肢が、当時の子供には残されていたということであり、

パチモン駄玩具の奥の深さを感じさせるものであると言える。

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胴体に3本線のデザインに注目したところ、ピコタンのパチモンのバリエーションと、

パチモン駄玩具を手広く作っていたマルコー産業の存在が浮かび上がってきた。

でも、パチモンの種類とか、ましてそのメーカーがどこかなんて、どうでもいいっちゃぁ、どうでもいいことで・・・。

多分、マルコー産業に聞いたって当時を知ってる人なんか居ないと思うし。

全ては時の流れの中に沈んでしまっているわけで。

40年以上前ですからねぇ。

別にいいんですけどね。

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