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復活のタコ

現代に生きるタコチュウデザイン

ロッテの「たこちゅう」は1976年〜1977年に発売されたチョコレート菓子で、

オマケとして付けられた吸盤のついたタコの玩具が大ヒットした。

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球体に2個の吸盤をつけただけというシンプルなデザインで、

最近の彩色された精密な食玩とは比較にならないほとチープなものだが、

そのシンプルなデザインが逆に想像力をかき立て、販売期間は1年前後だったのに、

ある特定の年代には今も印象に残るおまけである。

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このデザインの考案者が判明した。

考案者は浅山守一。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」という本の編著者である。

奥付の編著者略歴には以下のように記載されている。

浅山守一

1929年福岡県生まれ。
東京美術学校中退。
その後、アドマンとして活躍。独自のノベルティーズ理論を編み出し、注目される。
浅山ノベルティ研究所主幹。
尚、風景画家としても、伊豆を中心に活躍中である。

考案した「おまけ」には、アメリカン・クラッカー(リズムボール)、
ジャンピオン(跳ねる虫)、タコチュー(吸着盤)、
カニタン(連鎖動構造)等多数。

この本には、タコの吸付、タコチューと表現されている。

「”タコチュー”という名称でL社にて商品化されて大ヒットしたもの」とあるが、

ロッテから発売された当時の名称は「たこちゅう」であった。

著者はノベルティのデザインを大手菓子メーカーに提案して、採用されることを目指す、

いわゆる玩具デザイナー、トイデザイナー、おまけデザイナーだったようである。

ほとんどのおまけは社内のスタッフで作成されていたと思われるが、著者は「浅山ノベルティ研究所」を設立し、

フリーで活動していたもののようである。

そのため、「同社ではその後、パート2(写真)もだされたが、初代があまりに強烈だっっため、

あまりパッとしなかったようである。」と、

初代タコチュウのデザインの優秀性をさり気なく主張し、後のことはあまり詳しくないところを臭わせているのは、

企画の立ち上げの際にデザインに関与し、その後の展開は直接タッチしていなかったのではないかと思われる。

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ロッテから「たこちゅう」が発売された1976年当時、

昨今のように商標や意匠を登録をすることが一般的で無かったようで、

たこちゅうを商標登録したかどうか、不明である。

このホームページを作成するにあたって調べた時も、古い情報は登録番号がわからないと検索できず

明確な情報には行き会わなかった。

そこで、現在の状況を確認すべく、電子特許図書館で確認したところ、

商標としての「たこちゅう」はタカラトミーアーツ(旧ユージン)が持っていることがわかった。

ネットによると、ユージンがタカラトミーアーツに社名変更したのは2009年1月5日なので

登録は当初ユージンでなされたものと思われる。

(111) 【登録番号】 第5183929号
(151) 【登録日】 平成20年(2008)11月28日
(210) 【出願番号】 商願2008−30616
(220) 【出願日】 平成20年(2008)4月18日
    【先願権発生日】 平成20年(2008)4月18日
    【最終処分日】
    【最終処分種別】
    【出願種別】
    【商標(検索用)】 たこちゅう
(541) 【標準文字商標】 たこちゅう
(561) 【称呼】 タコチュウ,タコチュー
(531) 【ウィーン図形分類】
(732) 【権利者】
    【氏名又は名称】 株式会社タカラトミーアーツ
    【類似群】 24A01 24B01 24B02 24C01
    【国際分類版表示】 第9版
(500) 【区分数】 1
(511) (512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
28 おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具

この2008年に登録された「たこちゅう」こそが、今回紹介する「平成版たこちゅう」である。

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2008年6月。

ガチャガチャ(プライズ)玩具に興味がなかったので、普段は見ることのないコレクターショップのホームページを見ていて

衝撃的な広告を発見した。

ユージンから、「たこちゅう」が復刻される!!

ユージンのホームページには、企画担当者がたこちゅうを紹介したムービーもあり、

「若い人にはわからないだろうけど、これ、流行ったんですよ。」的な紹介がされていた。

とりあえず、コレクターショップのホームページをあたったが、その段階で品切れの店も多く、

やっと広島のコレクターショップから取り.寄せることができた。

発売は8月。基本的にはガチャのプライズなので、入っているガチャ機を見つけないと手に入らない。

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最近のガチャカプセルは大きくなったもので、上下に空気抜き穴が開いて誤飲対策がなされているのが当世っぽい。

これで1個100円が高いのか、安いのか・・・。

当時の20円ガチャと大きさを比較してみた。

左から純正たこちゅう、20円ガチャカプセル、100円ガチャカプセル

中には、色刷りのパンフレット(?)と、小台紙に乗せられ袋詰めされたたこちゅうが2個入っていた。

昔はカプセルに1個、コロっと入っていたものであるが、さすが、平成の世になると厳重なものである。

ただ、このビニールのため、かえって吸盤が変型してしまったものも見受けられた。

パンフレットは4色/1色で、紙質も厚く良く出来ている。

カラーは、緑、赤、黄色、青、黒、ピンク、クリア緑、クリア赤の8種類であった。

カプセルには2個ずつ入っているが、組み合わせは

緑と赤、黄色と青、黒とピンク、クリア緑とクリア赤の4パターンに決まっていた。

顔は4種類。ビックリダコ、イカリタコ、ホレタコ、ネムタコの4種類である。

たこちゅう純正は、普通目、怒り目、ウインク、泣き目、眠り目の5種があった。

上段は純正後期型、下段は純正太目型

スッポリタコが投入された際、一般型たこちゅうの顔も変更された。その際に眠り目が廃された。

純正最後期型

パチタコでは、眉が下がり半眼と、眠り目と泣き目の両方の特長を持ったものが見られた。これを泣き眠り目と命名した。

オリジナルとの類似性の高さと顔の種類の多さから、C・H型と命名したパチタコを元に、多くの種類が派生したものと思われる。

(タコチュウの分類や派生に関しては、附)タコチュウ分類一覧表、附)タコチュウ派生一覧表を参照されたい。)

泣き眠り目の例。後列左からJ、H型、前列左からA、A2、B、C、D型

今回のユージン版の顔を純正と比較すると、かなり影響は見られるが、

わざと一ひねりして違いを持たせようとしたのがわかる。

また、泣き目が無くされたことから、元になったのは純正では無く、

泣き眠り目を含む4種類の顔があったC・H型であった可能性が高い。

普通目には左右にチョンチョンをつけてビックリタコとしている。

怒り目は純正と違い、まゆげを上げるだけで表現している。

ウインクは廃されて、代わりにハート目のホレタコとしている。

泣き眠り目の系列であるネムタコは眉が水平に近く、純正後期の眉の角度に似ている。

ネット情報では、青のネムタコと黄色のイカリタコはレアだといった情報があったが、

兵力秘匿のため具体的な数は明かさないが、それなりの数のサンプルを分析した結果、

顔の出現数に目立ったばらつきはなかった。

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形状は、純正に比べて球体部分の直径が2mmほど小さい。

吸盤の直径も1mm弱小さくなっている。

吸盤の付け根は細く長くなっている。

素材は水に浮くもので、吸盤の直径が小さい割に吸着力は高い。

ユージン版タコチュウの外見状の最大の特長は、純正や他のすべてのパチモンでは前部頭頂にある湯口が、側面にあることである。

口吸盤には型からはく離させるための突起の後が残っているが、足吸盤はその痕跡がなく綺麗になっている。

このため、湯口の位置だが違うだけで、型の構成は純正等と同じであると考えられる。

ユージン版にも前後の型をあわせたと思われるパーティングラインが幽かに確認できる。

ユージン版のほうが湯口が頭頂にあるものよりも、不整形の部分が多く、その点では側面にある湯口は好ましいと言えない。

不思議なのは、湯口の位置が統一されていないことである。

湯口の位置がイカリタコは右側のみ、ネムタコは左側のみにあるが、

ビックリタコとホレタコには、湯口が右にあるものと左にあるものがあることである。

それぞれのタイプの出現率を計算すると以下の通りで、4種がほぼ20数%で等しいと言える。

出現率
イカリタコ(右) 21%
ネムタコ(左) 30%
ビックリタコ(右) 12%
ビックリタコ(左) 12%
ホレタコ(右) 13%
ホレタコ(左) 12%

この出現率を実現するためには、イカリタコ×2個、ビックリタコ・ホレタコ×各1個を、

ネムタコ×2個、ビックリタコ・ホレタコ×各1個を、それぞれ一度に作る必要がある。

湯口を側面にした、横にした状態の型を使用する利点がわからないが、

もし4種の顔を2個づつ同時に作る型で製作したとすると、

ビックリタコ・ホレタコをなぜ2種類、それも湯口の方向を変えたものを作ったのかは不明である。

ホレタコについては、湯口が右にあるものの方が左にあるものよりも、口吸盤の付け根の長さが短い。

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ユージン版たこちゅうは、純正に比べて吸盤のサイズが小さい。

このことから、当時の今野産業のバイ菌軍団と、その吸盤の直径がほぼ等しくなった。

その結果、バイ菌軍団の機甲部隊バージョンの戦車に載せられるようになった。

バイ菌軍団は本来は背面に吸盤があるのだが、

機甲部隊バージョンは下部に吸盤がつき、戦車消ゴムの車体部分を流用して砲塔の差し込み穴を広げて、

バイ菌軍団を差し込んだものであった。

バイ菌軍団機甲部隊の車体は近年入手してあったが、

当時のタコチュウはどれも吸盤サイズが大きく、適合しなかった。

30年経った今になってこのような組み合わせが可能になるとは思わなかった。

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このユージン版の「たこちゅう」はガチャのプライズのため、販売期間は1ヶ月強だったようである。

それまでプライズには全く興味がなかったので、どこに行けばあるのか、どうやって探せばいいのか全くわからず、

新宿の某家電量販店のガチャ専門フロアで見つけた他は、全く見かけなかった。

1回100円は、当時の20円よりは体感的に安価であるとはいえ、なかなか高価であるには変わり無く、

仕事のついでに新宿を回り、昼飯をおにぎりにしてガチャガチャやったものだった。

得意先が変わり、新宿に行かなくなったこともあり、いつまで発売されていたかはよくわからない。

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丁度同じ頃、今度はゲームセンターのプライズの景品にたこちゅうが見つかったとの書き込みが、ある掲示板になされた、

発売は2008年11月で、商品名は「チュウペット」。

チュウペット オフィシャルサイト

顔はノーマル、スマイル、スター、しょぼん、ハートの5種類で、

第一弾はイエロー、ピンク、オレンジ、グリーン、ブルー、レッドの6種類。計30種類であった。

大きさは大型のパチモンタコチュウよりもさらに大きい。

左からたこちゅう純正前期、大型パチタコJ型、チュウペット

当時のたこちゅうやユージン版のように型に素材を充填して作るのでは無く、

チュウペットは硬質な中空の球体の2ケ所に穴を開けて、柔軟な材質の吸盤を嵌め込み接着することで作られている。

印刷はタンポ印刷と思われかなり精巧にできている。

後部に「誤飲注意 U・F >ATBC−PVC< CHINA」と書かれている。

ネットで検索したところ、素材について以下のことがわかった。

「ATBC−PVC」は、Acetyl tributyl citrate-polyvinyl chlorideの略。

ポリ塩化ビニル (PVC)に代わって、幼児が口に入れてしまう可能性のある玩具等に使われるようになった素材ということであった。

熱や経年変化が少なく、ポリ塩化ビニルのような臭いもないそうである。

U・Fはわからないが、ネット検索によると、尿素樹脂(ユリア樹脂、Urea Formaldehyde Resin−UF)のことではないかと思われる。

本体はかなり固く、それに反して吸盤は非常に柔軟性に富み、吸着力は強い。

チュウペットをストラップにつけてみたが、使用している間に熱のためか、

暫くすると吸盤に亀裂が入り、ぼろぼろになってしまい、最終的には脱落してしまった。

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メーカーはフリュー株式会社

業務用ゲーム機、ゲームソフト、プライズなどを広く扱っているようである。

プライズは企画・開発・製造・販売とトータルで関わっているようである。

有名キャラクターをあしらった商品や、オリジナルキャラクターの開発も行っている。

チュウペットがあまりに「たこちゅう」に似ているため、

オリジナルたこちゅうとの関連性をメーカーに問い合わせたところ、以下のような情報を得ることが出来た。

チュウペットはタコチュウのデザインを敷衍して開発したものである。

当時のたこちゅうを知っている担当者が企画したもので、ユージンとも協力しあい製作した。

ロッテには事前に確認を取り、許可を受けて進行した企画である。

ユージンが「たこちゅう」という名称でガチャガチャで、フリューは「チュウペット」という商品名で住み分けをはかることになっている。

硬質で滑らかな表面の球体に、フラットな印刷で顔を入れることで、たこちゅう同士の吸着が強くできるようになり、遊びの幅が広がることを意図して設計した。

確かに当時のタコチュウは本体部分に成形時のしわがあり、タコチュウ同士を吸着することがほとんどできなかった。

超合金の敵役的に悪の宇宙人にする他は、窓やテーブルにくっつけて、プチュプチュいわすくらいしか使い道が無かった。

ネットでは、だるまストーブの煙突に押し付けて、こげたにおいを教室に充満させて怒られたという、

ひどいことをしていた思い出も見つかった。

そう考えると、なぜタコチュウがあんなに流行ったのか。

tadatakoさんみたいに大宇宙戦争をしなかった当時の普通のお子さん方がタコチュウをどうやって遊んだのか。

考えてみたら全く想像できないことに気がついた。

・・・何が楽しくて、あんなに集めたんでしょうねぇ・・・。

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フリューの「チュウペット」はその後、様々なバリエーションが作られた。

(詳細はメーカーホームページ内の図鑑ページを参照のこと)

先に紹介したチュウペット第1弾(30種)が2008年11月に発売されたのを皮切りに、

チュウペット第2弾(ビビッドカラー) 30種が2008年12月に発売された。

色が濃くなり、ラメ入りの透明タコチュウができたことが注目に値する。

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その次は2009年3月にチュウペット(ネオンカラー) 25種が発売された。

このシリーズの特長は蛍光で、明るいところに置いておくと、かなり明るく光る。

先に紹介した携帯電話のストラップにはこの蛍光バージョンをつけたが、

携帯電話の目覚まし機能を使う時、時計の在り処がわかって非常に便利である。

・・・吸盤は無くなっちゃったけど。

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2009年4月発売されたのは、チュウペット ひよこ 25種で、

本体後部に膨らみを持たせひよこになった。ピヨチュウと命名した。

既にタコじゃないじゃんか!と思ったけど、これはチュウペット。

だれもタコだなんていって無いのである。

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ピヨチュウの1ヶ月後、2009年5月には、チュウペット かえるさん 30種が発売された。

本体丈夫に2個のちいさい球を足して、カエルの顔にしている。

これをケロチュウと命名した。

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これは入手していないが、2009年6月発売 チュウペット レインボー 28種として、

普通型のチュウペットの色違いが出ている。

このバージョンには、目が×になったしょんぼり顔が無くなっているが、7色のカラーバリエーションが揃えられた。

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2009年7月には、チュウペット ハート 25種が発売された。

もうこれは・・・。見たままハート形なんだろうけど、初めて見た時の印象から、

尻チュウと命名した。

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2009年7月されたのはチュウペット キューブタイプ(小文字アルファベット) 30種であった。

正六面体に2個の吸盤がついているが、それ以外の4面にアルファベットが印刷されてある。

また、口吸盤の位置には、誤飲注意と素材が印刷されていて、かなり手の込んだものである。

当時のパチモンにも、キューブに吸盤が4つついたものがあった。

これを、カクチュウとかロボチュウとか言っていた。

本体を四角にした上に吸盤を4つもつけるという、オリジナルを越えたスペックのパチモンで、

加工精度は良く無かったが、人気があるアイテムであったようである。

このアルファベットシリーズはサイズ違いがあった。

後述するが、チュウペットには大型のものが作られている。

このキューブタイプは、大文字が大型、小文字がオリジナルサイズになっている。

チュウペットの吸盤は強力なので、

アルファベットを使って鏡やガラス面に張り付けてディスプレイすることを目したものである。

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2009年8月には、セサミストリート セサミシーズ チュウペット 7種が発売された。

この特長は、吸盤が上下についていることで、ここまで来ると、たこちゅうの面影は非常に少なくなってきてしまう。

まあ、チュウペットでたこちゅうじゃないんだから、当然と言えば当然だが。

セサミストリートを起用するところも、ちょっとずれてる気がするが、

そのキャラクターを簡略化して、オスカーだとか、グローバーだとかいわれても良くわからない。

左から、アーニーバート、クッキーモンスター、エルモ、オスカー、グローバー、ビッグバード

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2009年9月にはチュウペット 電車チュウペット 10種が発売された。

先に紹介したキューブタイプと同じもので、5色のそれぞれに先頭車輌と中間車の2種がある。

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2009年10月には、他社の超有名キャラクターとのコラボレ−ション商品が出てしまう。

チュウペット ハローキティ 25種である。

本体はオリジナルのチューペットよりも若干小さく、耳の膨らみが作られている。

本体は白一色だが、吸盤と追い刷りされたリボンが5色ある。顔は5種類あるという。

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2009年11月には、チュウペット 「くまさん」 30種が発売された。

先に発売された「かえるさん」と同じ形状だが、かえるさんで目に見立てた突起を、耳に見立てている。

色は6色。顔が5種類あるという。

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メーカーのオフィシャルホームページにある図鑑には、

2010年1月にチュウペット「変形ver.」 20種が発売されたとある。

これは未入手だが、共通の本体に1〜4個の吸盤がついた4個セットで色が5種あるらしい。

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図鑑ページはここで終わっているが、某クションで同じシリーズと思われるものを発見した。

今度はなんと、ドラえもんバージョンである。

何種類あるのかは不明だが、胴体が球体のドラえもんと、ハローキティと同じ形状の胴体の黄色いドラえもん、

背中にリボンを背負っているドラみちゃんの3種が見つかっている。

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ユージン版がたった1ヶ月の単発商品だったのに対して、

チュウペットは1年以上もの間、手を替え品を変え、さまざまなキャラクターとのコラボ展開も行われ、

たこちゅうデザインを大切に再生してくれた、フリューの開発担当者の好意と熱意に

人事ながら深い共感と感謝を感じるものである。

デザイン考案者の浅山氏もさぞ喜んでおられることと思う。

・・・生きていれば、かもしれないけど。

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ところで、このチュウペットには、3種類のサイズバリエーションがある。

大型のテニスボールサイズ、中形のゴルフボールサイズと言う。

左から、テニスボールサイズ、ゴルフボールサイズ、ノーマルチュウペット、パチJ型、純正、ユージン版

本体の球形部分の直径はテニスボールサイズは約70mm、ゴルフボールサイズは約43mm、

ノーマルサイズのチュウペットは約21mmである。

パチモンJ型で直径は約20mm、純正は12.5mm、ユージン版は約11mmであった。

テニスボールサイズも、ゴルフボールサイズも吸着力は極めて高く、また、硬質な本体はちょっとした凶器になりうる。

胴体が中空なためか、見た目程重く無いが、それでも、この丸くて重いものをプライズ機から引っ張りだすのは

なかなか困難だったと思われる。

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大型のテニスボールサイズはノーマルタイプしかないが、

一回り小さい中型のゴルフボールサイズには、ひよこ型、カエル型(くま型)、ハート形、キューブ型がある。

吸着力が大変強いが柔らかいため、吸盤が変型しやすそうで保存には注意が必要かも知れない。

後列がゴルフボールサイズ、前列がノーマルサイズ

..

<タコチュウ遊びにおける平成のタコチュウの扱いについて>

シナリオの設定では「タコチュウ砲の製造技術は失われ」ショウワ期に製造されたものが発掘されて使用されているとした。このことから、平成になって新たに製造された「ユージン版たこちゅう」、「チュウペット」は違った扱いにする必要がある。そこで、「ユージン版たこちゅう」は、ショウワ期の技術を元にヘイセイ期に新造されたタコチュウ砲という扱いにすることにした。ただ、砲の威力は古代の技術には及ばず、威力はEランク(機動歩兵の携帯火器と同レベル)の小口径両用砲とする。搭載艦は、戦時量産型の船団護衛用の護衛駆逐艦とする。「チュウペット」に関しては吸盤の直径が大きすぎるため、砲塔台座の磁石を多く使用せねばならず、構造的に弱くなるため速力も低下する。そこで、これも戦時量産型の低性能砲とし、ランクはD型と同等とする。大型のテニスボールサイズは不使用。ゴルフボールサイズは、必要に応じて要塞砲として使用することとする。

..

「たこちゅう」の名称は商標登録されているが、

某クションで似たような名前のプライズがヒットするようになった。

その名は「たこっちゅ」。

たこっちゅ公式ホームページ

積み上げて遊ぶらしいが、名前の「ちゅ」からくっつくイメージで、コピーには

「いつでも どこでも くっついちゃう カラフルで とってもかわいい たこっちゅ登場!」とある。

このシリーズもクリアタイプやタコ焼塗装のものなど、いくつものバリエーションが出たようである。

しばらくして、この「たこっちゅ」に進化したバージョンが出たことが某クションからわかった。

なんと、口の吸盤が追加されたのである。

うーーん。なんか、どっかで見たことあるなぁ、と思ったら・・・。

「チュウペット」っぽい感じになってしまっていた。

時期的にはチュウペットの方が先行していたが、一概に真似たとか、パクったとか、

そういうことがあったかどうかは不明である。

左からチュウペット、たこっちゅ

吸盤はチュウペットの方が若干小さい。吸盤の素材は同じ様な柔軟性を持ち、吸着力は双方とも同じくらい大きい。

吸盤の厚みもほぼ同じと思われる。

硬質な本体に穴を開けて、柔軟な素材で出来た吸盤を挿入して接着しているのがわかる。

左からチュウペット、たこっちゅ

吸盤無し「たこっちゅ」の本体は積み上げやすいようにするためか、表面が非常に細かい梨地になっているが、

吸盤あり「たこっちゅ」は、チュウペットと同様のすべすべな表面を持っている。

吸盤でたこっちゅ同士を吸着させるために、素材の選択に変更が行われたものと思われる。

素材の標記がないかと裏面を見てみたが、ロゴと、「対象年齢6才以上」食べられません!としか書かれていない。

左から吸盤無し「たこっちゅ」、吸盤あり「たこっちゅ」

脚部を確認したところ、どちらもメーカー名と思われる「丸C PINE」の文字が刻印されているだけであった。

左から吸盤無し「たこっちゅ」、吸盤あり「たこっちゅ」

中央の穴は貫通しており、本体の内部は中空である。

脚部も含めた本体を成形し、脚部内側を蓋の様にはめて融着させて製造したと思われる。

..

この「たこっちゅ」にたこちゅうからの影響があるかどうかはわかっていないが、

多少の影響の存在を予想させるサンプルが見つかった。

「たこっちゅ」ストラップである。

この黒い方は目が怒り目になっている。

先行の「チュウペット」には怒りを表す三日月型の目を持つものは無かった。

この怒りの表情、表情のバリエーションとして考え付きやすいための偶然かも知れないが、

平成版「たこちゅう」、あるいはさらに遡って、当時もののタコチュウの影響を考えてみると興味深い。

..

吸盤が無い時には気がつかなかったが、この吸盤付き「たこっちゅ」を以前見たような記憶があり、

過去のトピックを見直したところ、非常に似たデザインを見つけた。

サイト開設からあまり時を経ずして紹介した「タコチュウ消しゴム(仮名)」である。

左から吸盤あり「たこっちゅ」、タコチュウ消ゴム(仮名)

このタコチュウ消ゴム(仮名)は某クションで落札したもので、古いものと言う以外は出品者から聞くことはできなかった。

消ゴム製の本体に柔軟な吸盤が差し込まれ接着されている。

発売時期やメーカーについては不祥だが、製造時期を推測させると思われる特長が、本体下部に見つかった。

写真左側の消ゴムの下部には鉛筆を刺すと思われる穴が開いている。

鉛筆に差し込む穴がある消ゴムでは、三菱鉛筆の「ユニ坊主」が有名だが、

1980年代に100円のシャープペンシルが発売されると、鉛筆の使用は急速に減っていたように思う。

シャープペンは芯を入れるためにキャップがついているため、

このタコチュウ消ゴム(仮名)や「ユニ坊主」などのような穴に差し込む消ゴムにはそぐわない。

とすると、この穴があるということは、シャープペンシルの普及前、1980年代のデザインと言ってもよいと思われる。

最近になって、この吸盤付き消ゴムが、サンリオから1993年に発売された、

「チューチューターコ」という商品であることがわかった。

1976年から十数年経った1993年の発売と言うことで、

たこちゅうとたこっちゅのちょうど中間に位置するものであることがわかった。

と、いうことは・・・。

吸盤付き「たこっちゅ」は、30年前のデザインに偶然似てしまったと考えられる。

30年といえば、大卒のサラリーマンが入社してすぐに手掛けて、定年前にギリギリ間に合うくらいの長い時間で、

とても同一人物の手によるものとは思えない。

「たこっちゅ」は、当初のデザインでは吸盤がなかったことから、吸盤をつけたとたんに、過去のデザインに偶然似てしまったと考えられる。

廉価なノベルティのこと故、できることは限られているのはわかるが、30年前のデザインに酷似してしまう。

モノを作るということの面白さと同時に、人間が考え出せることの限界、デザインの恐さも感じられるサンプルであった。

特典画像:裏面を撮ろうと固定した両面テープが
手ぬぐいっぽく見えた

..

たこつながりということで、これも2008年頃に入手した、ガチャ玩具を紹介して、本稿をしめたいと思う。

「平成タコポン」である。

平成と断るからには、昭和タコポンもあったのかも知れないが、詳細はわからない。

ネットでは復刻版であるとの情報もあるので、昭和のタコデザインの復活なのかもしれない。

戦車にタコが乗ってるデザインで、口から大砲の弾を発射する。

キャタピラ+生物というデザインは、ウルトラセブンに恐竜戦車というのがあったが、まぁ、それ系の形である。

柔軟な素材の本体は中空になっていて、プラスチック製の砲弾を口にくわえさせ、

本体を急激に圧迫することで、圧縮した空気で弾丸を発射するおもちゃである。

近年、「やわらか戦車」というネットアニメがあったが、それにも似ている。

これも偶然だが、バイ菌軍団機甲部隊にユージン版タコチュウを載せたものとも大変似ている。

砲身下部に「丸C KSC」MADE IN CHINAの文字がある。

カプセルに同梱のパンフには、今野産業株式会社とあるので、KSCは社名を表すと思われる。

今野産業といえば、あのバイ菌軍団の発売元。

最近は彩色フィギュアとかを作っているらしいが、ガチャ玩具の製作もしていることがわかる。

材質は本体パーツがPVC(ポリ塩化ビニル)で、ヒモは化繊でできている。

「非フタル酸系可塑剤を使用しております」と書かれている。

STマークから2008年に出来た商品であることがわかる。

タコ戦車タイプ、爆弾パンチタイプ、ドッカン大砲タイプが各2色ずつあった。

一回200円と高価なため、この2種類しか入手できなかった。

砲身の部分が長い分、タコ戦車タイプの方が弾に威力がでるようである。

..

「たこちゅう」の発売が1976年。

これ等の昭和のタコデザインが復刻された2008年は、発売から30年になる。

当時のたこちゅう世代が大人になり、その一部が大人になっても駄玩具の呪縛から逃れられず仕事にするようになって、

その分野である程度経験を積み、自分で企画が通せるようになって来たのではないかと思われる。

すくなくともユージン版とチュウペットは当時のタコチュウを知っていたことがわかっている。

..

・・・30年。

思えば随分長い時間が経ったものである。

タコチューのデザインを考案した浅山氏の次の(もしかするとさらに次の)世代が、

簡素にして発展の余地をもつデザインを忘れず、復活させ、さらに発展させたことは瞠目に値する。

これもタコチューデザインの優秀さを表すものと言えるだろう。

..

でも、そのデザインが優秀なのと、イイトシしてまだたこちゅうから卒業できないでいるのと、

一緒にしていいものかどうかは、判断の別れるところ。

まぁ、いいんじゃないですか?

人と同じことしてなきゃいけないってモノでもないし。

..

タコチュウと同様に、簡略にして発展性に富み、工夫して遊べるデザインに、

明治製菓「ピコタン」で採用された人間型ブロックがある。

もともとは1960年代にドイツの見本市で見かけたデザインが元になり、

駄玩具を製造販売していた藤田屋商店が作った「ブロックボーイ」や「ピンキーブロック」という名前のブロックが作られ、

その後に「ピコタン」が明治製菓のノベルティに採用されたものである。

(この辺の詳細は、「ピンキーブロックのバリエーション part.3」を参照されたい)

..

携帯ゲーム機が普及し、リアルな3DCGが普通になり、彩色フィギュアが並ぶこの時代。

未だにこの人間型ブロックのアイデアが生き続け、商品化されていることが確認されたので、

ついでにまとめておく。

..

くもん出版の「kumi・kumi(くみくみ)くん」である。

(メーカーホームページ:使い方のヒント kumi・kumi(くみくみ)くん

右手前はピコタン純正

全長82mm、厚さ23mmと、純正ピコタンと比較してもわかるように、かなり大きい。

これは対象年令が3歳からと、低い知育玩具であることから、誤飲されずに扱いやすい大きさにしたものと思われる。

材質は ABS樹脂で、見た目ほど重くなく、しっかりした作りになっている。

右足には「KUMON」のロゴが刻印されている。

頭部と脚部や、腕部と胴体の凹部、胴体凹部と脚部と、様々につなげられる。

厚みがあるため、平面的にだけでなく、立体的に組み上げることも出来て、

50個セットであることからも、かなり大掛かりに遊ぶことができる。

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以前紹介した、トミーの「タックルボーイ」(1968)の時も感じたことだが、

低い年令でこのようなしっかりした作りの、多パーツのおもちゃに出会えるということは非常に幸せなことである。

この手のブロックは数がまとまらないと面白くないが、

セット価格が高くなるのでなかなか買ってもらいにくくなる。

「kumi・kumi(くみくみ)くん」は50個セットで4000円弱。

入数の割にリーズナブルな価格とも言える。

メーカーホームページの「手先の器用さ、創造力、空間構成力などを養います。」というコピーも頷ける。

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良いデザインは時代を越えて残るものである。

残っていることに気がつくかどうかは、別の問題であるが。

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