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手を変え品を変え

パチモンピコタンの販売形態

明治製菓のチョコウエハース「ピコタン」が発売されたのは昭和49年(1974年)だった。

明治製菓の純正が品薄になるくらい流行ったようで、駄菓子屋や、玩具店、観光地のお土産屋の店頭、

ガチャガチャ等で様々なパチモンが、様々な販売形態で売られていたことがわかってきた。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい

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 近所の山本君が、「自分はロボコンの超合金を集めることにしたから」と、

ピコタンをごっそり譲ってくれたのは、1975年だったろうか。

純正とパチモンをまとめて二百数十個くれた。

どのように集めたのか、パチモンも十種類以上が入っていた。

顔ありパチモンがA〜G(A2、B、C2型を除く)までとK型、顔無しパチモンがA〜Gまであったように覚えている。

ガチャガチャで入手したのか、だれかと交換したのか、

1個、2個しかなかったものも多く、それらの少数派のパチモンがどのように売られていたかは、当時は知る由もなかった。

顔ありA型は3個、顔ありD型、顔無しF型は2個、顔ありE型、顔ありF型、顔ありK型、顔無しG型は1個しかなかったと思う。

そのような少数派だったパチモンも、ネットが繋がり某クションで日本中の駄玩具をていねいに集めて行くと

氏素性がだんだんと見えてくるようになった。

例えば、パチモン顔ありK型は、丁寧な作りと前期と後期の純正の特徴をあわせ持っていたため、

純正の一種かと思っていたが、最近の発見で末広玩具というメーカーから「ブロック人形」という名称で売られていた、

立派なパチモンであることが判明した。

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そんな少数派パチモンの中でも、この数年で格段に情報量が増えたのが、

パチモン顔ありF型と命名したタイプである。

純正と同じ左上から右下へ向う平行線があるが、間隔がまちまちで角度も微妙にずれている。

顔は鼻のあたりが純正の学生服後期に似るが、頭はまん中分けでポケットは1個しかない。

脇と首の凹部の成形は非常にラフで、手首が細い。

純正に比較して格段に加工精度が低いことがわかる。

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2000年を過ぎた頃から某クションで、昭和の駄菓子屋や玩具屋のデッドストックが出てくるようになった。

そんな中で、早い時期に見つけたパチモンが、プラスチックケースに入ったパチモン顔ありF型であった。

ケースには20個のパチモンが入っており、その中の3個が顔ありF型であった。

その3個を見てみると、ちょうど3種類あるのが確認できた。

左からポケット2個、ポケット右のみ、4つボタン

3種類が見つかったが、それぞれのタイプにさらに細かい亜種が存在することがわかった。

一つポケットは鼻の形や、目の角度、唇の形から少なくとも以下の6パターンがあることがわかった。

1 2 3
4 5 6

二つポケットについては、ポケットの間隔で少なくとも3種類があることがわかった。

4つボタンは後述する湯口の位置が、左足にあるもの、右足にあるものの少なくとも2種類があった。

加工精度の低さから、顔をつける裏面の型が左右にずれているものがあり、

いくつの亜種があるのかはよくわからないが、微妙にずれているものが他にもあるようである。

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一緒に入っていた残りの17個は、入手当時は知らなかったタイプであった。

片目の海賊風と、一つ目小僧、ダダ星人のような覆面の3種類であった。

このタイプをパチモン顔ありH型と命名することにした。

オリジナルの影響がより強い顔ありF型を作ったメーカーが、

著作権・意匠権の問題が徐々に重要視されるようになり、一層オリジナルと遠いデザインで、

敵役にもできるようなインパクトのある顔が作られたのではないかと考えられる。

左から片目、一つ目、ダダ星人

ピコタン型の人間型ブロックは、頭の部分に成形時の材料を流し込む口(湯口)があるのが一般的であった。

唯一の例外は胴体中央部から注入するためか、その部分にしわのある、顔ありD型と顔無しD型で、

この両者は顔の有無を除いて、プロポーションも大きさも等しく、同じ型で顔を作ったりなくしたりしたものと思われた。

この時入手した顔ありF型も顔ありH型も、頭の上部に湯口のあるものもあったが、

特徴的なのは足の先に湯口が存在することがわかった。

ケースに一緒に入っていた顔ありF型と、顔ありH型は同じ製造方法で作られたと考えた。

さらに詳しく両者の形状を検討してみたところ、足に湯口のあるのは顔ありF型では4つボタンのみで、

顔ありH型ではダダ星人のみであることがわかった。湯口の位置は左右どちらかの足で決まっていない。

脇のしたの突起は、顔ありH型のほうが若干大きいが、身長や頭の大きさ等のプロポーション、手首が著しく細いこと等の形状から

非常に近い系列であると考えられることがわかった。

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ケース入りの顔ありH型は17個のほとんどすべてが違う色になっており、

色調の管理が緩いことがわかった。最終的には20色を越えるバリエーションが見つかっている。

この色調管理が緩いのは顔ありF型も同じで、現在までに十数色のバリエーションが確認されている。

これらのことから、顔ありF型と顔ありH型は同じメーカーの製品である可能性が非常に高いと考えられる。

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顔ありH型は、加工精度特にが低く、顔の型が上下逆に装着されたと思われるエラー品も見つかっている。

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顔ありF型と顔ありH型は、その後も両方が一緒に袋に入ったものを見つけた。

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また、顔ありF型と形状が同じで、顔のないものが見つかった。

プロポーションや脇の薄さ、手首の細さといった形状がほとんど同じであり、

さらには、顔ありF型にある脇の部分の切り欠き(矢印の部分)が同じであることから、

顔ありF型の型を加工して、顔を消したものと思われる。

この顔のないタイプを、顔無しI型と呼ぶことにした。

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顔ありF型のメーカーは不明だったが、メーカーを特定できるサンプルを発見した。

ビニールケースに顔ありF型が111個(+なぜか純正前期が1個)入っていた。

色は緑・黄緑・水色・白・ピンク・黄色・赤の7色であった。

袋には「おもちゃのシマデン」という名前と兜のロゴが入っていた。

シマデンはプラスチック駄玩具の製造メーカーで、恐竜のプラ玩具などを作っていたことがわかっている。

メーカーホームページはなくなってしまったようだが、大阪府大阪市東住吉区の「島伝」のことではないかと思われる。

シマデンは駄玩具メーカーとしては大きな会社だったようで、自社での製造もしていたが他社製品を仕入れて販売もしていたという。

そのため、このパチモン顔ありF型がシマデンの製造かどうかは疑問が残るが、販売に関わっていたであろうことは確かであろうと考える。

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シマデンのロゴは他に、どうぶつピコタンのパチモンである、

ミニ ブロック(MINI BROCK)」のタグにも見つかった。

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タグの右上のロゴは、先に紹介したビニールケースに印刷されたものと同様であった。

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さらに、別のパッケージで顔ありF型を販売した例を発見した。

名称は「人形ブロック」で、この名称は他にも多くの種類のパチモンに使われていたことがわかっている。

台紙にブリスターパックが接着されていたようだが、中古品のためかはがれていて、

新し目のホチキスで留めてある。

台紙の上部中央にはフックにかけたり、ヒモを通したりするための穴が開いている。

パッケージには少女マンガ風の女の子とウサギ、鳥の回りに花が咲き乱れ、非常にいい加減なタッチの人形ブロックが点在している。

中には顔ありF型ばかりが入っており、顔は4つボタン・一つポケット・二つポケットの3種類で、

緑×8・青×10・白×5・ピンク×7・黄色×8・赤×8の計46個が入っていた。

青や黄色は色調管理の緩さからくる、カラーバリエーションがみられる。

中途半端な数なのは50個程度のセットだったものが、いくつか脱落し紛失したものであると思われる。

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台紙の右側下部にメーカー名と思われる文字があるのを発見した。

S.D.S.TOYと書かれている。

これは、シマ・デン・セーフティ(?) TOYではないかと思われるが、よくわからない。

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顔ありF型と同じ形状の顔がないタイプ(顔無しI型)があることを紹介したが、

その販売形態がわかるサンプルを入手した。

100と書かれたシールが貼ってある円盤型の容器に、色はバラバラで20個程度のパチモンピコタン顔無しI型が入っている。

20個で100円は高い気もするが、このケース代がかかることを考えれば妥当な値段かも知れない。

このケースは最初に紹介した顔ありF型と顔ありH型が一緒に入っていたものと同じものである。

左が今回見つかった顔無しI型の入った箱、右が最初に紹介した容器

この同じケースに顔ありF型、顔ありH型、顔無しI型が入っていたことから、

この3種のパチモンがごく近縁なシリーズであることが、一層確かになった。

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といっても、只で終わらないのが、駄玩具のいいとろ。(^^;)

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顔ありF型、顔ありH型、顔無しI型は、どれも同じメーカーの製品であり、

少なくともシマデンのロゴのあるパッケージがあったところから、

これら3種はシマデンの製品である!・・・と簡単に結論が出せないんである。

すんなり行かないのが駄玩具研究の特徴なのである。

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プラスチックケースに入った、パチモン顔なしI型が見つかった。

緑×5・青×7・白×6・ピンク×6・黄色×6・赤×6の計36個が入っていた。

ケースの底には厚紙が敷かれている。

これもシマデン製かと思ったところ違ったロゴシールが貼ってあった。

東京の文字と、富士山にSTの文字のロゴマークが描かれている。

このロゴマークのメーカーがどこか、今のところ不明と言わざるを得ない。

駄玩具業界は製造メーカーと販売メーカーが違うことが一般的だそうなので、

このSTマークがなんというメーカーのものなのかはわからない。

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たった1個のパチモンピコタンから出発して、様々な販売形態から、近縁のパチモンまで多くの事がわかった。

プラスチックの恐竜で有名なシマデンがパチモンピコタンも作っていたとは興味深い事実が判明したと言える。

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顔ありF型、H型、顔なしI型が混在するサンプルが見つかった。

駄玩具のセットの中に、タグ付き袋入りのパチピコが入っていた。

顔ありF型(2個)と顔ありH型(7個)、顔無しI型(6個)の全てが混在している。

他に顔ありB型と命名した別種のパチモンと純正前期型のクリアっぽいオレンジが入っていた。

タグは女子向けの駄玩具のタグを流用したようで「「Pretty Toy」と書かれている。

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同時に見つかった、シールをタグに流用した袋入りには、

顔ありF型(20個)と顔ありH型(1個)、どうぶつピコタンのパチモンが一緒に入っていた。

同様にシールをタグにした袋入りには、顔ありF型が32個入っていた。

これらの袋入りは、顔ありF型、H型、顔なしI型、どうぶつピコタンのパチモンが

どれもシマデンの系統の製品であることが一層確かになった。

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で?・・・で?って、言われても・・・。

つまり、いろいろな駄玩具があったってことで、どうすか?

特にこの顔ありF型、顔ありH型、顔無しI型なんて、出来がいいとは言えない造型ですから。

そんなピコタン人気の泡沫パチモンのことなんて、誰も調べませんよ。

って、ことは、ここだけの話し、ってことです。

広いネットの世界でウチだけのコンテンツ。

金になるかならないかは別にして、オリジナリティの高い貴重な情報ですよ。

自分で言うのもナンだけど。(^^;)

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