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回る、回るよ、他でも回る
お好み我楽多パレード
日本初の繋げるオマケといわれる明治製菓の「ピコタン」が発売されたのは1974年の秋の事であった。
戦前から、お菓子に小さな玩具をオマケとすることは、グリコのキャラメルにもあったが、
オマケ同士を沢山集めて、ブロック玩具の様に繋げるというコンセプトは、ピコタンが最初のようである。
このことは、当時のギミックを多用したノベルティのアイデア集である、「
ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)
」
(昭和58(1983)年 浅山守一: 自由現代社)という書籍に書かれている。
「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」より引用
著者の浅山守一氏は1970年代の多くのノベルティ制作に深く係っていたらしく、
「たこちゅう」も同氏の発案であることが書かれている。
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「ピコタン」は、発売当初は大人気を博し、多くのパチモンが作られた。
形状や顔の有無から30種類近いパチモンが確認されている。
ピコタンのパチモンに関しては「
ピコタン大図鑑
」を参照されたい
デッドストックとして入手されたものには、パッケージからメーカー名がわかったものもある。
例えば、この「
メリーゴーランド
」は、台紙の右下にメーカーロゴが入っている。
この三日月にマル産のロゴは、他のパチモンのパッケージにあるSTマークを読み解くことで、
マルコー産業というプラスチック玩具を多く作っている会社のものであることがわかっている。
具体的には、マルコー産業のロゴのあるパッケージにSTマークがある場合、
マークに記載された番号のアルファベットと3桁は、P527と記載されている(P544やP541との記載もある)。
マルコー産業とSTマークに関しては、「
たこちゅうセット帽子ケース
」に記載がある。
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マルコー産業の作るピコタンのパチモンは人間ブロックという商品名であることがわかっている。
その他にも、「ピコタン」というそのままのネーミングのケース入りも発見された。
このパチモンには裏面(つま先と反対側の面)に、胴体中央部に3本の縦線があることが特徴である。
色は緑、青、黄色、赤、白、ピンクの6色で、顔は8種類である。
このタイプを顔ありC型と命名した。
顔ありC型
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先にマルコー産業のロゴの例としてあげた、「メリーゴーランド」に付いているパチピコも顔ありC型であった。
しかし、歯車に挿すために足に突起が追加されている。
台座には9個の歯車が付いているが、いくつも買って台座を繋げて拡張することができるようになっている。
「人形の立て方でおもしろくなります?」と、?マークを自分で入れてしまっているが、
こういう遊び方をするオマケの存在の可能性を感じられた。
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某クションを見ていたところ、
メリーゴーランドの元
になった思われるオマケを発見した。
商品名は不明だが、裏面には明治製菓の刻印があった。
歯車には内側に2個、外周に3個の穴があり、台座の中央部にある穴には、
歯車を固定するパーツがあった可能性が高い。
今回はこの穴に挿す小部品も見つかった。
旗と自動車で、種類や数は不明だがこのようなパーツが同梱されて居たものと思われる。
これにより、メリーゴーランドにも、元になった大手メーカーのオマケがあったことが確認された。
歯車の穴に挿すものを、パチモンピコタンにしたのはなかなかおもしろいアイデアであるが、
人形型のオマケに足の突起を追加するデザインは、明治合体チョコボールの最晩期型にも見られる。
明治製菓の歯車オマケが何時発売されたかは不明だが、ピコタンより1年後輩の明治合体チョコボールの、
それも最晩期型よりも新しく制作されたとも考えられる。
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明治製菓の名将不明の歯車のオマケを元に、マルコー産業の「メリーゴーランド」が作られたことがわかったわけだが、
例によって、ここまでは前置きで、ここから今回の本題に入る。
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某クションで、メリーゴーランドの歯車に良く似た駄玩具を発見した。
出品者の写真に比較できるものがなかったので、大きさはブツを見るまでわからなかった。
入り数が多そうだったので、セット売りだとすると、かなり高額の価格設定になるのではないかと推測された。
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商品名は「お好み 我楽多パレード」という。
シールの下部には「東京 進藤商店 特製」と書かれ、上部には「マルに進」のロゴマークがある。
残念ながらSTマークがないため、販売年がわからない。
商品名の下に、「全玩規協東 NO.140」とあり、
その下には、円マークと「付」の文字が書かれた欄があり、金額等は空白になっている。
このことから、シールは汎用で、内容によって値段等を書き入れるという運用が考えられる。
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実際に、ケースの蓋部分に取り説様の紙が入っており、「ギヤ−ブロック数当」と書かれている。
くじ引き型式で売る際は一回20円で、番号によってもらえる数が変わり合計は180個。
くじは80回分で売り上げは1600円になる。
くじにしないで売る際は、1個10円で180個あるので、売り上げは1800円になる。
どちらの型式で売るか最初に決めなければならない。
ただ回る歯車を180個も売り切るのは難しいと思われ、売り上げは少なくともくじ型式で売られていたのではないかと思われる。
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取説の下にはボール紙製のくじが入っている。表は赤ベタに白抜きで「数字合せ」と書かれている。
ミシン目が入っていて、切り離せる様になっている。裏面は紫色の薄い紙が貼ってあり、印刷された数字を隠している。
興味深いのは、上部に1〜10、右側に11、21、31・・・71と数字が入っている。
これで、くじのシートをバラバラにしてしまう前には、番号が判別できたことがわかった。
つまり、大当たりの1〜4番のくじは分けておいて、実際にはアタリの入っていないくじをお客(子供)に引かせることができるのである。
祭りのヒモを引っ張るくじをはじめとして、この手の商品には何かと疑義が出ていたものだが、
やっぱり!どれがアタリか、わかってるんじゃん!!
といっても、射幸心がなかったので、この手のくじをやったことはないんだけど。
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最後に明治の純正歯車オマケと、マルコー産業の「メリーゴーランド」、今回発見された「ギヤ−ブロック」のサイズを比較しておくこととする。
左上が明治純正、左下がギヤ−ブロック、右がメリーゴーランド
純正の歯車の直径が一番小さく、小パーツを挿す穴は数が多く、直径は小さい。
これは非常に小さいパーツが用意できる技術力を持つ純製品だからであると思われる。
メリーゴーランドは大きな台座に9個もの歯車が付いており、その直径も大きい。
今回見つかった「ギヤ−ブロック」は小さな台座に歯車が1個しかなく、
ピコタンとセットで比較的高価に販売できるメリーゴーランドに対して、
一回10円という低価格のくじで売るため最小限の構成にしたためであろう。
パーツを挿す穴は、ギヤーブロックとメリーゴーランドの2種類はほぼ等しく、
マッチ棒とか、旗の付いたつまようじとか、比較的直径の大きな、自前で安価に用意できるパーツを嵌めるためであると思われる。
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台座の形状は、明治純正は正方形に、凸2ケ所、凹2ケ所の接合部がある。
他の2種は四方の接合部の形状は同じで、どの向きにも拡張できる。
四辺が同じ形状であることがメリットになるのか、一瞬思いまどったが、
上部の歯車が回転するだけなので、前後方向の差異はないので、あまり忌みないことに気が付いた。
マルコ−産業、進藤商店という駄玩具メーカーの商品が両方とも四辺の形状を合わせてあるのは、
純正とのデザイン上の相違点を作ろうという意図を感じられる。
左上が明治純正、左下がギヤ−ブロック、右がメリーゴーランド
どちらのパチモンが先かはわからないが、足に突起をつけたピコタンをわざわざ作ったことから考えて、
マルコー産業が先にパチモンを制作し、進藤商店が「お好み 我楽多パレード」というシリーズの1アイテムとして
「ギヤ−ブロック」と名づけた、パチモンのパチモンを作ったと考えるのが妥当であろう。
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ピコタンをはじめとして、明治製菓は様々な繋ぐオマケを、手を変え品を変え出してきた。
ピコタンの大ヒット以降、大手製菓メーカーのオマケのパチモンを作るということが珍しくなくなっていたようである。
そして、パチモンを作る駄玩具メーカー同士でも、真似たり真似られたりという関係ができていたことがわかる。
ピコタンにしろ、タコチュウにしろ、明治合体チョコボールにしろ、
パチモンの特徴的なデザインを他社がさらに真似てリメイクすることが多かったため、
今でも多くのパチモンが存在することになったのだろう。
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パチモンのパチモンとか、当時にはわからなかったことが次々と判明する当サイトのトピックも、
次回で150本目になる。
よくもまぁ、短期間しか販売されたかったオマケだの、そのパチモンだの、
おおよそ堂でもいいことを続けてきたものだと、我ながら感心している。
とりあえず、できるところまで、誠実に、そして事実と仮説を明確に区別しながら、続けて行きたいと思う。
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