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こっちのほうがタコっぽいね

吸盤付きタコ型駄玩具

1976年〜1977年に発売されたロッテのチョコレート菓子「たこちゅう」には

吸盤付きのオマケが大ヒットした。

球体の本体に2個の吸盤が直角に付いているシンプルなデザインで、

人気にともない、多くの駄玩具メーカーからパチモンが作られた。

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部品のない1パーツでありながら、2個の吸盤というギミックは、

窓ガラスにくっ付けて耐久力を競ったり、暇つぶしに机に付けたり取ったり、

赤熱したストーブにくっ付けて溶かしたりして、楽しまれた。

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たまたまデパートの古書展で見つけたノベルティの本に、このタコチュウの事が書かれているのを発見した。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(昭和58(1983)年、自由現代社)という本で、

オマケシールが流行する中、ギミックを持ったオマケを制作するためのアイデア集である。

この本には、「タコの吸付」というタイトルでタコチューについて触れられている。

「”タコチュー”という名称でL社にて商品化されて大ヒットしたもの」と記されており、

発売当初の大流行と、その後の釣鐘型の脚吸盤を持つ「スッポリダコ」タイプをパート2と称している。

偽物が作られたことにも言及されているのが興味深い。

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奥付の著者紹介を見たところ、著者の浅山守一はタコチューの考案者であることがわかった。.

浅山守一

1929年福岡県生まれ。
東京美術学校中退。
その後、アドマンとして活躍。独自のノベルティーズ理論を編み出し、注目される。
浅山ノベルティ研究所主幹。
尚、風景画家としても、伊豆を中心に活躍中である。

考案した「おまけ」には、アメリカン・クラッカー(リズムボール)、
ジャンピオン(跳ねる虫)、タコチュー(吸着盤)、
カニタン(連鎖動構造)等多数。

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「たこちゅう」のデザインの最大の特徴は、本体に付いた2個の吸盤であると言える。

しかし、吸盤が1個しかないものが見つかった。

某クションで入手したのだが、出品者によると、

これは100円のガチャガチャで入手したもので、1998年前後に入手したとのことであった。

たこちゅうの発売から実に20年を経て発売されたもので、出品者は入手した頃はたこちゅうを知らなかったそうである。

吸盤が2個あると、口の吸盤を押し込んで型から外すため成形型が4分割される必要があるが、

吸盤が1個なら3つの型で作れるため簡易化ができる。

カプセル兼用の壺型容器に4個入っており、100円だったそうである。

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タコチュウのプラスチックは、吸盤の直径が小さいこともあって、それほど吸着力が強いとは言えなかった。

そのため、本体に吸着力の強い素材で作った吸盤を接着するという方法が採用されたものもあった。

本体が消ゴム素材で作られており、脚の吸盤は省略され、エンピツに差し込むための穴があけられている。

これも某クションで入手したのであるが、当初はどういう駄玩具なのか不明であった。

ところが暫くして、パッケージ付きのデッドストックを入手することができた。

商品名は「チューチューターコ」。英文で「Chu~Chu~Ta~co」と書かれている。

裏面を確認すると、これがサンリオから出されたものであることがわかった。

サンリオのホームページで調べてみたところ、これは1993年に発売されたものであることが判明した。

株式会社サンリオHPより引用

チューチューターコ 1993年

ボーイフレンドのイカのコータくんに「ちゅーしよっ」って言っちゃう積極的なタコの女のコ!

クリクリおめめと、ピンクのくちびるがチャームポイント♪

1993年といえば、ロッテの「たこちゅう」の発売された1977年から16年経っているので、

もし発売時に意匠権登録をしたとしても、期限切れになっており、吸盤が1個しかない消ゴムということで

模倣であると文句を言われることもなかったのではないかと思われる。

ただ、デザインの類似点がないわけではない。

パッケージデザインにはチューをしているタコが描かれているが、これは多くのパチモンタコチュウの台紙等にも見られる。

チューチュータコのタグイラスト

左上からG・K・L型、H・C型、左下からJ・B型台紙、J2・F型台紙

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チューチューターコのデザインの特徴は、脚吸盤の代りに放射状に8個の突起があることである。

口の吸盤は消ゴム素材の本体部分と異なり、吸着力に富んだ硬質プラスチック製になっている。

下面には鉛筆に差し込むためと思われる穴があけられており、鉛筆の後端に付けて鉛筆につける消ゴムであると

屁理屈を言って学校に持っていける様にしたものと思われる。

このような強弁消ゴムには、他にもタコモチーフのものが見つかっている。

詳細は不明だが(某クションでの出品情報には、三菱鉛筆のノベルティという記述のあるものがあった)、

扇子とハチマキというデザインは、パチモンタコチュウにも見られるモチーフである。

例えば、「Wに顔」ロゴが付いたB型とJ型のセットが入っていたプラケースの中の台紙は、

まさに日の丸の扇子とハチマキが描かれている。

他にも、「これは消ゴム付き鉛筆です」強弁物件として、ハチマキをしたタコのデザインの消ゴムが見つかっている。

「ペンリング」という商品名で、下部に穴が空いているタコの消ゴムよりも、

疲労軽減のため鉛筆に付けるリングがメインの商品である。

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話が強弁消ゴムに逸れたが、本筋に戻って、サンリオの「チューチューターコ」に戻る。

球形の本体に吸盤が付いた、タコチュウに類似したデザインであるが、

脚部は足を表す8個の突起がある。

「チューチューターコ」の発売は1993年であったことが、サンリオのサイトから判明した。

これに非常に似たデザインの商品が、十数年後に発売されたのを発見した。

左から吸盤あり「たこっちゅ」、タコチュウ消ゴム(仮名)

商品名は「たこっちゅ」。

ゲームセンターに置いてあるクレーンゲームに入っていたものである。

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2008年、ユージンから、ガチャガチャ用のプライズとして「たこちゅう」が復刻された。

それと時を同じくして、クレーンゲーム用として、フリューから「チューペット」が発売された。

チューペットは硬質の本体に柔軟性に富んだ吸盤を接着したもので、チューペット同士でもしっかりくっつく。

左からたこちゅう純正前期、大型パチタコJ型、チュウペット

たこちゅうのデザインを復刻したいというアイデアが出て、2社でロッテに交渉し許可を取った上で、

それぞれの販売方法を住み分けた上で、発売したということをフリューの担当者からお聞きした。

「たこっちゅ」はその後、数年に渡って、大きさや色、形が違う様々なタイプが発売され、

ドラえもんやキティーちゃんとコラボしながら販売が続けられた。

左から、テニスボールサイズ、ゴルフボールサイズ、ノーマルチュウペット、パチJ型、純正、ユージン版

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このチューペットのヒットに刺激されたものかは不明だが、

ほぼ同時期にパイン・クリエイトから発売されたのが、「たこっちゅ」であった。

当初は積み上げることを楽しむ玩具であったようである。

下部は頭の彎曲に合わせて凹みが作られており、8つの足を表す突起がある。

後に口吸盤が追加された新型が出現した。

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当サイトでは、球形の本体と2つの吸盤を持った「タコチュウ型」の駄玩具を収集・研究しているが、

球形本体と口吸盤しかなく、脚吸盤がないものについても範囲を広げている。

このようなデザインが、1993年と、2008年前後と、十数年して繰り返し出現したことは興味深い。

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驚いたことに、ここまでは前振りなのである!!

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某クションは、日本中のコレクターや業者が昭和レトロな商品を出品しており、

このサイトで扱ってきたタコチュウやピコタン等のパチモンも多くを入手してきた。

しかし、ここに来て某ガレージセールサイトにも、このての駄玩具が出品されることが見られる様になった。

このメル狩、某クションの様に、一部の心無いコレクターによって、骨董品でもあるまいに、

万の単位の値段になることもなく、ほぼ不要品を、まぁ、欲しい人が居るなら・・・、くらいの価格で出ており、

なかなか有り難いサービスになっている。

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で、たまたま見つけたのが、以下の「球形本体と口吸盤、脚部は足突起」の駄玩具であった。

素材は、硬質な本体と柔軟な吸盤と異なっており、現代のチューペットやたこっちゅに似ている。

吸盤は、全高の2/3にもなる大直径で、吸着力が強い。

硬質な本体は側面にパーティションラインが入っている。

本体は前後の2パーツ合わせて成形されている。

底面には湯口がある。

本体内が中空になっているかは、見た目や重さからはわからない。

表情はシンプルな丸い目になっている。

1個しか見つかっていないので、他の表情や色があるかどうかわからない。

吸盤を子細に見てみると中央部に16という文字の刻印が確認された。

この数字は、一つの成形金型から多数の同形のパーツを生産する際に、

それぞれの型に番号をつけ、不良品の発生時に不具合を起こした型を特定するのに使用するものと思われる。

このような数字の刻印は、2パーツパチピコにも見られた。

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出品者に訊ねたが、40年程前に入手したものということであった。

素材の違う本体に吸盤を接着した、サンリオの「ちゅーちゅーたーこ」の発売は1993年であるので、

約30年前という計算になる。

硬質な素材の本体に柔軟な吸盤を接着した「チューペット」や「たこっちゅ」の発売は2008年あたりなので、約15年になる。

左からたこっちゅ、ちゅーちゅー・たーこ、今回の発掘品

たこちゅうの発売は1976年なので47年も前になるから、それよりは新しいが、他の関連グッズよりは古いということになる。

駄玩具は、同時に入手したものから年代がわかることがあり、出品者の他の商品を見るとさらにヒントになることがある。

そこで、この駄玩具の出品者の他の出品を見てみたが、企業モノからお菓子のオマケまで、

それも、かなり古いものから最新のモノまで、非常に広範なコレクションが出品されていたため、全くヒントにならなかった。

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何かのお菓子のオマケなのか、あるいはガチャの景品か、古いものであることはわかったが、詳細は全くわからない。

某クションでも、この30年見かけなかったものなので非常に数が少ないということのようである。

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詳細は全く不明で出自はわからないが、今回発見された吸盤玩具もたこちゅうの派生物と考えたい。

この期に及んで、新種が見つかったことは、

ただでさえ遅れている「タコチュウ図鑑」の完成がまた遠のくことになるのである。

そうですね。たこちゅう発売50周年までには図鑑もまとめたいものですねぇ。

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