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研究は絶えず進歩する

タコチュウ分類学の進展に関する報告

「たこちゅう」とは、1976年〜1977年に発売されたロッテ製菓のチョコレート菓子のおまけである。

この時期は、テレビやマンガのキャラクターに頼らず、製菓メーカー各社が独自のキャラクターを案出し

種類のバリエーションを作ることでコレクション性の高いオマケを競ってつけていた。

先行する明治製菓の「ピコタン」や「合体チョコボール」と共に、ほんの1〜2年の販売期間中は大流行し、

同時に駄玩具メーカー等から、非常に沢山のパチモン(ニセモノ)が作られた。

発売から30年以上過ぎた現在、地道な研究の結果、その分類は徐々に進みつつある。

今回は、最近の発見と研究の進展をまとめて紹介したい。

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ロッテの「たこちゅう」は、チョコレート菓子で、厚紙の台紙に2つのチョコバーが載り、

その上に箱に入ったオマケがついていた。

オマケが入っていた紙の箱は6種類が見つかっており、中に入っている種類によって箱が違っていることがわかってきた。

赤箱A型 青箱A型 青箱B型
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赤箱B型 緑箱A型 緑箱B型

水に浮く素材で作られている初期型で箱に入っているものは未だに見つかっていない。

また、目の大きな「太目型」と命名したタイプは、水に浮く初期型でも水に沈む後期型でも、箱入りは見つかっていなかった。

水に沈む素材の後期型は箱に入ったものが見つかっているが、すべてが赤箱A型であった。

スッポリタイプと呼ばれる新しい型が追加されるにあたって、在来型のたこちゅうも最後期型と呼ぶタイプに変更された。

それまでは普通目、ウインク、怒り目、泣き目、眠り目の5種だったが、最後期型になって眠り目がなくなり4種類になった。

この最後期型やA型と分類した大小のスッポリ型は、赤箱B型、青箱A型、緑箱A型の3種類にランダムに入っているのがわかっている。

スッポリ型には、標準的なA型の他に、それ以外の型が存在していて、

それらは青箱B型、緑箱B型と分類したタイプの箱に入っているのがわかってきた。

このA型以外のタイプは数が少なく、同じ顔でも形状に違いのあるものもあり、分類研究は進んでいない。

左からスッポリ大D型、大B型2個、大C型、大A型

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で、まぁ、出てくる時は出てくるもんで・・・。

箱入りのたこちゅうを2箱入手した。

左からスッポリ大型、純正太目、純正後期

一つは緑箱B型で、A型系列以外のたこちゅうが入っている種類である。

中にあったのはスッポリ大の青であった。

口の吸盤に段差がなく半球形の頭部、脚部吸盤内の肉抜き穴が大きいことから、A型系列ではないことがわかる。

左からスッポリ大A型、今回の発掘品、大D型、大B型

高校生になってから、千葉の医大に行ったW辺君からもらった中にあったのは大B型であった(上の写真の右端)。

大きめな段差のない口の吸盤と細い付け根が特徴的であった。

某クションで最後期のたこちゅうと混ざって見つかったのが、スッポリ大A型(上の写真の左端)で、

6種類の顔があり、スッポリ小に混じって比較的多く見つかっている。

カラーは赤が多く、黄色もあるがそれ以外の色は見つかっていない。

暫くして大B型と同じ二重丸リボン付きにバリエーションが見つかった。

大B型と比較すると、背が若干小さく、口の吸盤の直径が若干小さく深さがある。口の付け根は大B型に比較して太い。

これだけの違いが見つかったことから、新しく見つかった方をD型と命名した。

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そこで、今回の発見品であるが、吸盤は段差がなく、正面の足のモールドが長いことから非A型系列であることがわかる。

背の高さは大B型に近いが、吸盤の直径が小さく大D型よりもさらに深さがある。

付け根の太さはB型より太くD型よりも細く、ちょうど中間という感じである。

肉抜きの穴はB型に近く、D型よりも小さくなっている。

左から今回の発掘品、スッポリ大D型、スッポリ大B型

このようなバラつきが、それぞれに一つのタイプとして分類されるべきかは、まだ確信を得られていない。

純正も後期バージョンには口の吸盤の付け根の太さや長さにいくつかの種類が見られることから、

これらの非A型系列は、A型以外のタイプと言う一つの型のバリエーションとも考えられるが、結論を出せるほどのサンプル数を得られていない。

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今回見つかったのはスッポリ大の怒り目だったが、この顔はすでにA型でも見つかっている。

左からスッポリ大A型、今回の発掘品

半月型の目に瞳があるが、今回見つかったもののほうが丸くなっている。

両方とも鉢巻があるが、結び目の所はA型では実線だが、今回の発掘品は細い線でアウトラインになっている。

この違いは、非A型で若干背が低いスッポリ大C型にも見られた。

この鉢巻の線の種類の違いはA型と非A型の識別点として有効であると思われる。

左からスッポリ大A型、今回の発掘品、スッポリ大C型、スッポリ大A型

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今回発見された非A型は、今まで発見されたものと、違うといえば違うが、

口の吸盤の滑らかな点や本体内部の肉抜き穴の大きさ等の共通点も多い。

スッポリ大B型とスッポリ大D型に同じ顔が見つかったように、

怒り目で、スッポリB型やD型と同じ形状的な特徴を持ったものが見つかった時に初めて、

この非A型の正確な分類が判明するのである。

とりあえず、このスッポリ型をスッポリ大E型と命名する。

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もうひと箱には赤箱A型に、純正太目の水に沈む素材の緑と、純正後期型の普通目のオレンジが入っていた。

左から純正太目の水に沈む素材の緑、純正後期型の普通目のオレンジ

オマケの箱には、純正やスッポリの小であれば2個ずつが入っている。

前述のように赤い箱には2種類あり、赤箱A型と名付けたものには、純正の後期型が入っている。

赤箱B型と名付けたものには、スッポリ小が2個か、純正最後期型が2個かのどちらかが入っている。

今まで見つかった赤箱A型には、水に沈む素材でできた純正後期型ばかりが見つかって、

水に浮かぶ素材の純正前期型や太目型が見つかることはなかった。

今回、箱入りの太目型が初めて見つかり、後期以外のタイプも箱入りであったことが確かめられた。

当時を知る人の情報によると、たこちゅうの販売時期の最後の頃は、様々なタイプのたこちゅうが

ごちゃごちゃに入っていたと言う記憶があるという。

ということは、この後期と太目の組み合わせも、残り物を適当に箱詰めしたため偶然こうなったと考えることもできる。

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たこちゅうには多くのパチモンが作られたことがわかっている。

しかし、パチモンの分類は、某クションでの入手によりサンプル数が増えた最近になって初めてわかったことも多い。

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強力な吸盤を持った大型パチモンであるJ型と命名したタイプがある。

J型

顔は泣き眠り目で、純正の眠り目と泣き目の中間的なデザインであった。

後列左からJ型、C型、前列左からA型、A2型、B型、C型、D型

この泣き眠り目は複数のタイプのパチモンに見られるもので、

純正によく似た表情を持つH型・C型系列で作られ、他のパチモンにも波及したものと思われる。

大きく深い吸着力の強い吸盤を持つA型(写真前列左)はJ型の泣き眠り目に非常によく似ている。

A型は当時一つだけしかなかったため、A型とJ型が同じ系列かどうかは確定できなかった。

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だが、某クションで、色も吸盤もJ型眠り目に非常によく似た普通目のパチモンが見つかった。

J型普通目

同じ普通目だが左側のほうは目の位置が少し高く、間隔が広い。

右側の蛍光ピンクは他の種類にはなく、大変珍しい色である。

この発見により、J型は泣き眠り目と普通目の2種類があることがわかった。

泣き眠り目と普通目の2種類があるパチモンといえば、脚部の長いB型というタイプがある。

左からB型、J型

J型は脚部と口の吸盤の付け根の長さがほぼ等しい。

それに比してB型は客部の付け根が長く、側面のシルエットがJ型と違っているために気が付かなかったが、

この2種が同じ系列であると判断できる資料が次々に見つかったのであった。

J型とB型がプラケースに入っているモノがデッドストックで見つかった。

J型の黄色も見つかり、両方の型に主要なカラーのサンプルがあることが確認できた。

別の機会にこのJ型と素材もプロポーションもそっくりな、顔のないパチモンを発見した。

この顔無しタイプをJ4型と命名した。

左からJ型、J4型

このJ4型と一緒に、B型と同じプロポーションで顔のないものが見つかった。

これをB2型と命名した。

左からB型2色、B2型2色

J型とB型にそれぞれ顔のないタイプが発見されたことで、この2種類の型が同じ系列であることが確かめられた。

J型泣き眠り目は白いものも見つかった。

同系列と思われるB2型にはピンク色と赤があり、赤の素材と、このJ型で見つかった白い素材をあわせると、

B2型で見られたピンク色が合成できる。

これも、この2種が大変近い関係にあることを示唆するといえる。

J型の泣き眠り目のカラーバリエーション

さらに、先に紹介した蛍光ピンクのJ型泣き眠り目、B型普通目が相次いで発見された。

これにより他のタイプで見られない独特な色のJ型・B型に、泣き眠り目と普通目が揃い、

J型とB型が同じ系列であることが確認された。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

J型は緑、赤(他に白と蛍光ピンク)が、見つかっており、B型は緑と黄色が確認されている。

双方のタイプに緑があるが、J型の緑は普通目が見つかっていない。

某ショップの閉店セールで見つけたタコチュウのなかに、B型の赤で普通目と泣き眠り目が見つかった。

これにより、赤でもJ・B型のそれぞれに普通目と泣き眠り目が揃った。

この赤いB型は、顔のないB2型の赤と素材感が非常に良く似ており、

J型・B型が、顔のないJ4型、B2型と関連があることが一層はっきりした。

左から赤のB型2種、J型2種

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先述の泣き眠り目の中で、A型と命名した種類が当時から1個だけあった。

これは、ガチャガチャで入手したような記憶がある。

左からA型、J型

A型の泣き眠り目はJ型に似ているが、左右の棒の傾斜と長さが違っている。

このA型は当初、J型の泣き眠り目と同じ系統と考えていた。

B型には泣き眠り目の他に普通目もあったことから、普通目が見つかっていなかったJ型と同様、

どちらも泣き眠り目1種類で一つの型なのではないかと考えていた。

しかし、吸盤の形が違うが、同じ泣き眠り目を持ったパチモンが発見された。

それと同時に同じ吸盤の型の普通目が見つかった。

これをA2型と命名した。

左からA型、A2型

A型に比べて、この薄い吸盤を持つA2型は本体直径がA型に比べて若干大きい。

足や口の吸盤の付け根も細く、全体に華奢な印象を与える。

泣き眠り目の部分に注目すると、A2型のほうがA型よりもラインがクリアで、エッジが立っているように見える。

特に向って右側の目の外方にはみだした部分は、A型ではぼけて見える。

しかし、この部分は両方の型のどちらもが目を横断する斜線との接合に段差があり、

同じ元型を使ったことが伺われる。

普通目は外枠のみで瞳は表現されていない。

左からA型、A2型の泣き眠り目部分のアップ

発見された順序からA型とA2型と分類したが、吸盤が薄い2型とした方が元になったとも考えた。

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だが、某ショップの閉店セールで、このA型が出ているのを発見し、ただちに捕獲してみた。

左から当時持っていたA型、入手した3個のA型

当時からあるA型同様、吸盤は大きく非常に深さがある。

口の吸盤を、素材の硬直後に押し出すための棒の跡が目立つ。

顔は泣き眠り目の他に、普通目とウインクが見つかった。

普通目はA2型とちがい、中に瞳が丸く描かれている。

ウインクは、純正では向って右の目をつぶっているが、A型のそれは、左目を閉じている。

これは、わざと純正や他の系列のウインクと違わせるため、というより、

顔の型を作る時、モデルにしたウインクをそのままコピーしようとして、

逆に彫ってしまった可能性も考えられる。

目の彫刻はどれもかなりラフで線が細く、

純正やパチモンC・H型のようなきれいな仕上がりになっていず、手作り感が濃く出ている。

左から当時から持っているA型、今回見つかったA型

同じA型の泣き眠り目だが、当時から持っているものの目よりも、今回見つかったものの方が、

一層線が乱れた感じになっている。特に向って右側の目の右上は歪んでいるし、右下は線が二重になって見える。

これはロットの違いなのか、同時に複数の同じ顔を成形するために、複数の目の部分の型があるのかは、

これだけのサンプルではわからない。

A型の普通目とA2型の普通目は瞳の有無から、別の種としA2型の方を白目タイプと呼ぶことにした。

A型とA2型は近い系統であると思われていたが、A型にも赤の白目タイプが見つかった。

このためA2型で見られた顔のタイプは両方ともA型で確認されたため、

A2型はA型の吸盤の形が違う型違いであることがわかった。

左から3個目と5個目がA2型

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このA型は当初、泣き眠り目が1個しか見つかっておらず、

後にA2型が発見された際も、泣き眠り目と普通目しかなかったこと、

その普通目に瞳が省略されていたことから、

J型・B型→A型・A2型が派生したと考えていた。

しかし、今回、A型にウインクが発見されたことで、顔の種類がA型系の方が多くなり、

派生状況的に見れば、純正かそれに似たC・H型から

J型・B型と少なくとも同等、もしかするとA型系→J型・B型が生まれた可能性が出てきた。

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普通目・泣き眠り目が見つかったB・J型から、共に同じ2種類の顔が見つかったA・A2型、O・J3型が派生したものと考えていたが、

A型にウインクが発見されたことから、A型系列はB・J型からの派生と言い切れないことがわかったため、派生図を修正した。

(※表内の数字はタコチュウ派生一覧表の分類に対応する)

今回、A型にウインクが発見され、泣き眠り目、普通目、ウインクと3種が見つかったことから、

普通目と泣き眠り目のみで構成されたB・J型からの派生ではなく、C・H型からの派生と修正した。

左側がいままでの派生図。右側が(15)A・A2型をB・J型と同列にした新しい派生図

パチモンタコチュウの派生の詳細は、

タコチュウ派生一覧表」を参照されたい。

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最近になって、帽子型ケースに入ったK・L・G型のセットをぜんまい太郎氏からいただいた。ケースには「たこちゅうセット」というそのまんまのネーミングがシール貼りされていた。

そのイラストが、H・C型の大台紙に似ていることがわかった。

イラストの感じから、K・L・G型のシールのほうが、H・C型の台紙イラストよりも先行する可能性が出て来た。

左からK・L・G型シール、H・C型系大台紙(部分)

そのために、K・L・G型からH・C型が派生したように派生図を変更した。

左が今までのパチモンの派生図、右がG・K・L型系列をH・C型の上位にしたもの

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パチモンタコチュウの中にはロットの違いに起因すると思われるカラーバリエーションがみられるが、

近年某クション等でパチモンを含めてタコチュウを入手して行くに従って、

ジグソーパズルがはまっていくように新色が見つかってきている。

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パチモンタコチュウH・C型は、青や緑のバリエーションや、クリアタイプ(C2・H2型)、

目のつけ所が違っているもの(H3型)といった多彩な構成を特長としている。

緑色は数の多いクリアな濃い緑の他に、ビリジアンに近いもの、黄緑色のバリエーションがみつかっている。

C型のバリエーション

大型のH型でもカラーバリエーションが見られ、ロットや保存状態で様々な色のものが見られる。

H型のバリエーション

C・H型では、特に青色系は安定した発色をせずカラーバリエーションが多く見られる。

C型のバリエーション

H型でも普通系の水色に近い青の他に、濃くクリアなH3型と、より黒っぽいH型が見つかった。

H型のバリエーション

クリアで目のつけ所の違うH3型と、濃い青のH型は、それぞれC型の青と一緒に見つかった。

このことはカラーバリエーションがロットによって生じることの証左となると言える。

セットごとに色が違う

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このような色のバリエーションは、F・J2型と命名したパチモンでも見られた。

このタイプは「チュチュ たこちゃん チュ!」という商品名で売られていたことが確認された。

左から「チュチュたこ」のF・J2型、当時からあるJ2型。近年見つかったF型3個。

左側の小(F型)と大(J2型)が、近年「チュチュたこ」といい、小台紙付きブリスターパック入で、

または「チュチュ たこちゃん チュ!」という名称で、大台紙に「チュチュたこ」が12パックホチキス留めされて売られていたものである。

当時から持っていたのは中央の黄緑色の大型で、今回、それに似た黄緑色の小(F型)が見つかった。

右から2・3番目の緑色のF型は、それぞれ違う出品者から入手したもので、色の濃さに若干の違いが見られる。

一番右の青いF型は、2番目の緑色のF型や、足の長いB型や純正と共に見つかったもの。

F型だけでなくJ2型でも、この系列で青はこの1個しか無い。

製造時期によるロットの違いではないかと考えられる。

青いJ2型が存在するのかは今の所わかっていない。

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たこちゅうの発売から30年以上が経た現在、地道な収集の結果、パチモンタコチュウの分類に関する分析は

徐々にではあるが進んでいることを報告できたことは、大変喜ばしく思う。

この調子で倦まず弛まず研究を進めていこうと決意を新たにしたtadatakoさんなのであった。

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まあ、30年も前のお菓子のオマケの、それも、パチモンですよ。

純正がメーカーの社史から落ちてるようなマイナー商品のパチモン。

それが一時如何に流行したといっても、調べる奴もいなきゃぁ、知ってどうなるもんじゃ無い。

こんなもん、別にどうでもいいんですけどね。((((((((((^^;)

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