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目のつけ所がちがうでしょ

パチモンタコチュウC型・H型系の再検討

「たこちゅう」は、ロッテのチョコレート菓子のオマケであった。

当時は結構流行っていたようで、非常に多くのニセモノ(パチモン)が出回った。

販売期間は長くなく、1年半前後といわれるが、ロッテの社史にも出てこず、

駄菓子・駄玩具関係の書物に取り上げられることもほとんどない。

ウルトラマンや仮面ライダーといったヒーローものキャラクター食玩と

ビックリマンチョコの大ヒットの間隙にいくつも作られた泡沫的オリジナルキャラクターの一つである。

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しかし、簡単な形状と一時的な大流行の結果、現在確認されているだけでも数系統のパチモンがある。

パチモンの中でも、当時沢村君からまとめてもらった中に沢山あり、タコチュウ艦の編成上でも主力となった、

C型・H型と命名したタイプがある。

前列がC型、後列がH型

小さい方をC型と命名した。大きさは純正とほぼ同じで、色は緑、青、黒、赤、黄の5色があった。

大きい方をH型と命名した。大きさは純正よりも大きく胴体の直径が175mm程度である。

ロッテの社史にすら載っていない「たこちゅう」の、それもニセモノである。

書籍等に載ることなどありそうもないが、たまたま写真に写り込んでいるのを発見した

「別冊太陽 子供の遊び集-明治・大正・昭和-」(平凡社1985)の

「東京・台東区立下町風俗資料館内に復元されている関東大震災前の駄菓子屋の店先。

置かれているのは現代でも観られる駄菓子、おもちゃの数々」という写真に、

大きな台紙に小台紙入りの小袋に入ったパチタコを見ることができる。

「別冊太陽 子供の遊び集-明治・大正・昭和-」(平凡社1985)

この白い矢印の部分を拡大したのが下の写真である。

タコチュウの絵柄の台紙に、クリア系のタコチュウが大小2個ずつの4個入っているのがわかる。

色はオレンジ、黄色、赤、緑、黒の5色である。

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この写真のパチタコの種類は分からなかったが、

クリア系の赤い素材を使っている大型のパチモンが写っていることから、I型と命名したパチモンではないかと考えた。

しかし、その後、このI型のクリア青とクリアではない黄色が見つかった。

当時から持っていたD型と命名した小型のパチモンは黄色とクリア青があったが、

I型の2色が見つかった時に、併せてこのD型のクリアの赤も一緒に見つかった。

そのため、I型もD型も成形色が同じで、どちらも顔の種類が1種類しかないことと、

当時、この2種を同じガチャガチャで入手したことから、同じ系列のパチモンであると確信するにいたった。

前列がD型、後列がI型

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I型にはクリア赤の大型はあるが、黄色はクリアでないし、写真には青いのは写っていなかった。

・・・と、すると、この写真に写っているパチモンはなにか?

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そんなとき、某クションでクリア系パチモンを小台紙付きで入手した。

クリア系のパチモンと小台紙

写真には、大きな台紙に、小さな台紙と大2個、小2個のクリア系のパチモンが写っていた。

この時見つかった台紙は写真に写った小台紙と同じように見える。

見つかったのは大2個、小1個だが、これは紛失によるものと思われる。

このクリア系のパチモンは、目の彫り込み部分の傷から、

それまでに知られていたC型・H型と全く同じ元型を基に作られた顔であることがわかった。

左がクリア、右がH型・C型

形状に注目すると、小型のものは若干足が太い様に見えるがほとんどC型とかわらない。

大形のものの方は、口と足の付け根部分の長さが短くなっている。

(このクリアなH型・C型をH2型・C2型と称することにした。)

脚の長さや吸盤の造りがちがうということは、同じ顔の元型を遣いながらも別の金型がつくられたことがわかる。

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その後の調査で、写真に写っていたものと似た台紙付き完ピンを入手した。

商品名はないが、タコのイラストが描かれており、小台紙が入れられた袋が12個ホチキス留めされていた。

中身はH型・C型で、色は青と濃い緑、赤、黄色、黒の5色だった。

一袋にはH型(大)が2個・C型(小)が3個入っている。

先の写真に写ったクリアタイプが入っていた袋には大小各2個が入れられており、

同価格で売られていたとすると小1個が減って実質値上げされたことになり、

今回見つかったものよりも新しいのではないかと思われる。

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また、このH型系列で、顔の位置が口と足の間になってしまったエラー品を発見した。

左からH型、エラー品、H2型

形状的な特徴と素材はH2型に近いが、色はH型に近い。

怒り目の彫刻はどれも酷似していて、目の部分のみは同じ型から作られたと考えられる。

左からH型、エラー品、H2型

この顔の位置が違っているエラー品をH3型とした。

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このH3型(エラー品)の発見により、吸盤や本体の寸法や形状がちがうが、

顔の部分が全く同じ型で作られたバリエーションが3パターンもあることが確認された。

駄玩具やプラモデルといったプラスチックを素材とする玩具の型は非常に高価であるという印象があったが、

このように、パチモン駄玩具のような大量生産されるわけでもないものにも、

型違いが複数あるということは、プラスチックの金型が比較的容易に作られていたことを推測させる。

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で、ここからが、本題なんですけど・・・。

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この型違いのエラー品を含むH型・C型系のセットが、同じ絵柄の小台紙と一緒に発見された。

濃い青と赤のH3型と、緑、濃い青、赤、黄色のC型が一緒に見つかった。

左が今回見つかった小台紙、右がH2型・C2型と一緒に見つかったもの

一緒に見つかった小台紙は、先にクリアカラーのH2型・C2型と一緒に見つかった台紙と同じ絵柄であった。

色が多少違っているが、これは蛍光灯下や太陽光線にあったための褪色であると考えられる。

今回見つかった小台紙には大きめのホチキス留めされた穴があいている。

これは、小台紙入りの袋が、大きな台紙にホチキス留めされたことを示すと考えられ、

先に見つかっているH型・C型の台紙付き完ピンと同じ販売形態であったことがわかる。

H2型・C2型と一緒に見つかった小台紙にはホチキス留めの穴がなかったので、

一回り大きな袋に入って、袋に直接ホチキス留めした可能性がある。

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今回、見つかったのは大2個小4個の6個と小台紙であった。

パチタコ自体は非常にきれいなのでデッドストックの可能性が高いが、

このことから、H3型が入ったセットの入り数が6個であると結論付けることはできない。

現状で写真のあったH2型のセットは大小各2個の4個入りで、

実物の完ピンが残っていたH型のセットは大2個小3個の5個入りであったことが分かっている。

このH3型を含むセットは、H型のセットに素材色が近く、

クリア系のH2型より近いものであると考えられるが、最初に出たと思われるH型よりも

入り数が増えたとは考えにくいからである。

ただ、それぞれのH型系のセットで入数がそれぞれ違う可能性も否定できず、

この点に関しては明らかにデッドストックであることがわかるサンプルをさらに入手して分析する必要がある。

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.H型系は、赤、黄色に関しては色が安定しているが(黒はH型・C型でしか見つかっていない)、

緑および青に関しては多くのカラーバリエーションが見つかっている。

左端が今回見つかったC型。

今回見つかったC型はデッドストックで汚れがないことだけではなく、素材色的にも非常に鮮やかで濃い色であった。

特に青は、パチモンD型にも似た独自のものであった。

青の右から3番目は台紙付き完ピンと同時期に入手したもので、

他の出品者からまとまった数を入手した右から2番目と明らかに濃度がちがっている。

青の左から2・3番目は当時からあるもので、経年変化による褪色の可能性もあるが、

左端の今回入手したものとは違った色調である。

緑色の右から2番目はかなり黄色っぽい色になっている。

右端の緑は2個しか見つかっていないが、同時に見つかったH型は、左から2番目の物に近く、

同じセット(と考えられる)でも色のバリエーションがあった可能性がある。

このシリーズは成形技術は優れているが、色の管理は甘かったことがわかる。

純正たこちゅうと一緒に見つかったH型・C型のセット

このC型・H型のパチモンは純正と一緒に発見されることが多く、濃い青が見つかった。

この濃い青は当時からC型では見られたが、H型の発見例はなく、

目のつけ所が違っているH3型で見つかったのが唯一の例だった。

しかし、普通目でも見つかったことから、ロット違いによるだけで珍しいものではなかったと考えられる。

純正たこちゅうと一緒に見つかったH型・C型のセット

今回見つかった濃い青のH型・C型は、H3型の濃い青よりも、さらに色が濃く、

以前から持っていたC型に近い色あいをしている。

左2個はH3型と一緒に見つかったC型、右が今回見つかった濃い青

C・H型と一緒に見つかる小台紙と一緒に、C型のみが入ったものも発見されている。

C型のみが7個入っており、大型のH型は入っていない。

緑、黄色、赤と青系の4色で、青系は普通の青と紺色のものが入っているものが見つかった。

このことからも、青系は同じ商品のカラーバリエーション、というか、

色調管理の緩さからくる、色のブレであることがわかる。

紺色のものは、円筒形プラケース入りの「タコチュー」にも見られた。

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当時からパチタコの主力として活躍したH型・C型には、

実はたくさんのバリエーションがあり、何度も型から作られたヒット商品だったことを改めて確認した。

小台紙にはもちろん、大きな台紙にも商品名もメーカーロゴもなかったことから詳細は不明だが、

30年も前の駄玩具も詳細に見ていくと様々な分類学的な知見を発見することができることがわかった。

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って、いっても、社史にすら無視されたお菓子の、それもパチモンですよ。

どうでもいいっちゃあ、これ以上どうでもいいこともないんですがね。

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