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生きた化石

ピコタン ハウスケース入り

明治製菓のチョコレートのオマケであったピコタンは、1970年代中盤に大流行した。

1パーツで形状も比較的簡単だったこと、意匠権への規制が今程厳しくなかったことから、

多くの種類のパチモンが作られ、玩具屋や地方のお土産屋、近所の駄菓子屋などで売られていた。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい

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純正ピコタンが実際に販売されていた期間は、前期後期あわせても1年前後ではないかと思われる。

1973年か1974年くらいには発売されていたように思われる。

「ちびっこ広告図案帳70's」(おおこしたかのぶ編 オークラ出版オークラ出版 2003年)には、

「エースプレミアム」というと言う会社が、海外や輸出専門の玩具メーカーなどの商品をアレンジして、

製菓メーカーのキャンペーン企画に プレミアムを提案してきたなかの一つであったことがわかった。

詳細は「徹底解明!ピコタンのできるまで」を参照されたい。

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パチモンの中で「人間ブロック」という名前のプラケース入りやタグ付き袋入りのパチモン(顔ありC型)や、

ブロックマン」というプラケース入りのパチモン(顔ありG型)には、

説明書に「ブロックマンの遊び方」とかかれたイラストがあり、首と足をつないだとき、

踵が首の部分にぴったりとくっつく様に描かれている。

「人間ブロック」プラケース入り(顔ありC型)

「人間ブロック」タグ付き袋入り(顔ありC型)

「ブロックマン」プラケース入り(顔ありG型)

ピコタン型の駄玩具では、足で頭をまたいで挟むように合体し、このようにぴったりくっつくことはない。

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だが、先日、このイラストのようにぴったりくっつく、新発見のタイプを入手した。これを顔ありL型と命名した。

左から純正、顔ありL型

この顔ありL型では首の凹部に爪先がはまるので、爪先の間隔が狭く、胴体の穴の間隔も狭くなっている。

しかし、爪先の間隔が狭いため、ピコタン型駄玩具の特徴である、脇の凹部と首の凹部に斜めに足先を合体させることができない。

左から純正、顔ありL型

このL型は、純正前期の「吊りズボン 野球帽」をかなり忠実に模倣しているが、足の形状は独自の解釈を採用している。

左から純正後期、純正前期、顔ありL型

腕の反りも純正に比べて少なく、純正では8個でサークルを作れるがこのパチモンは13個必要になる。

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左から顔ありL型、純正後期

成型精度はかなり高く、腕も足も大変合がいい。優れた加工技術を持つメーカーの製品であることが考えられる。

いままでこのタイプのパチモンは見つかっておらず、まとまった数で入手されたことから、

プラケースや大きな袋入りでお土産屋等で売られていたものではないかと思われたが、

その正体は不明であると言わざるをえなかった。

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以前、ピコタンの先祖であるところのピエロ型をくれた先輩が、

玩具業者の展示会でピコタンが出ていたと資料を送ってくれた。

浅野製作所カタログ vol.4(2007春夏号)

表紙にも見られるブロックやそれにあわせる人形。また、プラ製オハジキ、ケースなどが載っている中に、

なんと、そのまんまピコタンのネーミングで載っていたのである。

浅野製作所カタログ vol.4(2007春夏号)より

写真を見ると、「つなげてあそぼう!」と書かれたバックの写真には、

首と足がぴったりくっついているのがわかる。

まさにこれは、新たな謎、顔ありパチモンL型であった!

この謎のパチモンは、まだ現役で作られている玩具だったのである!

一緒に送られてきた2004年の秋冬号を見ると、このピコタンが新商品として紹介されている。

2004年 秋・冬 商品カタログ

ピコタンの名前を使っていいのか?!とも思ったが、オリジナルの発売からすでに30年以上たっているので、

意匠権的な縛りも既にないという判断かと思われる。

加工精度のいいのは、平成の技術レベルで作られたためであることがわかった。

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早速、電話で連絡を取ってみた。

御担当のかたからお話を伺ったところ以下のことがわかった。

・明治製菓のピコタンが販売されているころ、パチモンピコタンを製造していた。

・当時の型はすでに廃棄されている。

・広告代理店(?)から、キャンペーンのノベルティとして、作成を頼まれ、今回型を新造した。

・キャンペーン終了後、その型を再利用し、ケースに入れて販売することにした。

・・・ということであった。

明治製菓のピコタンは、首と足がきっちり嵌まることはなく、脇の部分、または脇と首に

爪先を嵌めて合体させることができる。首と足をぴったり合体させ、そのために脇と首に爪先を嵌められない

パチモン顔ありL型のデザインは、パチモンである「人間ブロック」等のイラストを参考にしたと思われる。

模様に関しては純正の「吊りズボン 野球帽」を正確に模しているので、

純正に関する資料が全くなかったわけではないと考えられるが、

何故か形状はパチモンの、それもパッケージを参考にしているのかはわからない。

なんのキャンペーンのノベルティかは、製造業者の浅野製作所には詳しく知らされていなかったためか、

販売担当の方は、覚えていないとのことであった。

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で、送られてきたものは、先に入手したL型と同じものであった。

ピコタン ハウスケース入り

先に紹介したカタログには貯金箱として載っていたものに、パチモンピコタンを約80個詰めたものであった。

当時、パチモンのタグ付き袋入りは20個前後入って50円であった。

25年以上経っていること、ケースがついていることから考えても、そんなに高くなったとは思えない。

加工精度は高く、斜めに組めない所が残念ではあるが、たくさん集めて、動物や乗物、ロボットの形に組んでみると面白い。

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子供のころ、ビンボーで、ピコタンをじゃらじゃら言わせられなかった人のために問い合わせ先を紹介しておく。

”良い物を安く町工場から”
浅野製作所

郵便番号332-0003
埼玉県川口市東領家5-14-23
048-223-6323
asa-ss-f@cablenet.ne.jp

http://www.cablenet.ne.jp/~asa-ss/

当時そのままのオハジキやリング等と共に、ブロック玩具に付けられるipodのキャラクターなども作っているようで、

そんな中にピコタンが復刻され、ラインナップに加えられたのは喜ばしいことである。

オークションでたまたま新種のパチピコを見つけ、先輩からの情報でその正体がわかり、

更にはそれが現役の商品であったことが判明した。

ピコタンの先祖だったピエロ型を、最初にくれたのもこの先輩で、またまたピコタン学の進展のキッカケを与えてくれたことになる。

25年以上前の駄玩具のどうでもいい研究を心にかけてくれて、情報を送ってもらったことに

ヒッジョーに感謝するものである。

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