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捲土重来のカニタン

クリスタルカニタン

お菓子のオマケといえば、アニメやマンガのキャラクターを採用して売り上げをアップするのが常道だが、

キャラクターの使用権がビジネスとして認知され、高騰する様になると、

子供が買える、子供が買ってもらえる価格に抑えなければならない子供用のお菓子は、

新しい工夫を迫られることになった。

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キャラクターに頼れないとなると、オマケの魅力自体で勝負する必要があり様々な工夫がなされた。

その中で、「繋げて遊ぶ」ことで数を集めさせ、販売数を増加させるという画期的なアイデアを実現したのが明治製菓の「ピコタン」であった。

人間型のプラスチック製のブロックは手足や頭にジョイントを持ち、様々に繋げて遊ぶことができた。

「Meiji SWEETS GUIDE No.12」より引用

ピコタンの発売は1974年で、明治製菓の社史にも掲載されているほど、一時期を代表するヒットになった。

「明治製菓の歩み 買う気で作って60年」より引用

繋げて遊ぶというアイデアはピコタン以前にもあり、その出所は海外由来で玩具として製造されていたことがわかった。

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玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用 玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

人間型ブロックの出所についての詳細は、

徹底解明!ピコタンのできるまでpart.2」を参照されたい。

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セットで売るのではなく、菓子に少量をつけることで、沢山繋ぐために沢山買ってもらうというアイデアを実現したものとして、

ノベルティのアイデア集にも紹介されている。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(昭和58(1983)年、自由現代社)は、

ギミック別に紹介されたノベルティーのアイデア集だが、つなぎ人形と云うタイトルで、ピコタンが紹介されている。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」より引用

投じ、ピコタンは大流行して、明治製菓の純製品以外にも多くのパチモンが作られた。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を参照されたい

プラスチック製品の成形のための型の作成には、比較的高い出費が必要だが、

それでも多くの駄玩具会社がパチモンを作っていたことは、その人気の高さをうかがわせるものである。

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大人気を博したピコタンだが、飽きやすい子供相手で直ぐに飽きられたのか、

第二弾「どうぶつピコタン」、第三弾「うんどうかいピコタン」と、矢継ぎ早に新型を投入した。

「明治製菓の歩み 買う気でつくって60年」より(1976)

「明治製菓の歩み 創業から70年」より(1986)

これらは後に社史に掲載された画像だが、繋げるオマケの代表作として掲載されていたものである。

ただ、前掲の「おまけの玩具(おもちゃ)」にあるように、後に出たものはパチモンの種類が非常に少なく、

独自の進化をしたものも多いようである。

また、発売時期は不明だが、明治のニューココアのオマケに、どうぶつピコタンが封入されていたことが、

「昭和のレトロパッケージ」(初見健一著 グラフィック社 2016)に記載されているのが発見された。

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明治製菓では、ピコタンのヒットに気をよくしたのか、繋げるアイデアのオマケはその後も作られた。

「おまけの玩具(おもちゃ)」には、「かにのおもちゃ」というタイトルで、明治製菓のカニタンが紹介されている。

ピコタンと違って、2パーツを繋げることで、挟むという動的な要素を追加し、

併せて、下部パーツの結合面の凹んだレール部に、そこを動く突起を上部パーツの目玉の付け根につけることによって、

目を上下させる動作をも実現している。

カニタンの構造

カニタンの発売は1977年であったことが、明治製菓のカタログからわかった。

Meiji SWEETS GUIDE No.25より

ピコタンと同様にウエハース菓子のオマケで、2パーツであるためか、価格は70円とピコタンよりも高い設定になっている。

カニタンは、色は緑、水色、黄色、赤、オレンジ、紺の6種類で、顔は12種類が確認されている。

胴体部分の口と、目玉部分にもモールドが見られる。

A型

B型

C型

D型

E型

F型

G型

H型

I型

J型

K型

L型

細長いパッケージの中には厚紙製の台紙が入っていた様に思われる。

カニタンは1個入りで、紙製のケースに包まれ、同じ紙質のベルトで留められていた。

紙製のケース

ケースにも帯にも、「どんどん あつめて つなげて あそぼう」というコピーが印されている。

これは、どうぶつピコタンやうんどうかいピコタンのケースにも用いられており、ピコタンからカニタンへの連続性をうかがわせる。

どうぶつケースA型

どうぶつケースB型

うんどうかいケースA型

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カニタンにもパチモンの存在が確認された。

最初はバラで、後にタグ付き袋入りのデッドストック状態で入手された。

商品名は「カニタンブロック」。

タグには商品名と、「たのしくつないであそぼう」のコピーが見られる。

裏面には「穴にさしこむと、カニがつながります」、「上下にのびる!」のコピーが入っている。

中身のカニタンは、純正と同じような色の他に、ピンクや白、青もあり、緑や黄色には若干クリアな色調のものもある。

注目すべきは、裏面の刻印で、純正には「明治製菓」刻印があるが、パチモンは刻印が消されている。

左がパチモン、右が純正

刻印の消され方は複数の種類が認められ、多数のカニタンの上下パーツを一時に成形したためと思われる。

顔の種類は12種類あり、一つの大きな金型から、少なくとも12個のカニタンを作るため、24個のパーツが一度に作製されたと思われる。

このカニタンブロックは、顔の種類も形状もほぼ純正のカニタンと違いがないように見られ、

違うのはメーカー名の刻印の有無だけであった。

これはつまり、純正の成形型が販売終了後に何らかの理由で駄玩具メーカーに流れ、

明治の刻印を潰した以外はそのままで、パチモンの製造に転用されたものと考えられる。

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挟むギミックを持つカニ型の駄玩具には、他にも独自の型で作製されたパチモンも見つかっている。

商品名は「目玉のうごく!カニさん」である。

カニと籤が1個ずつビニールに入れられ、10袋づつがホチキスでとめらており、5束をタグで挟みブルーのビニール紐でくくってある。

この紐で軒先などに吊るしてあったものと思われる。

1回10円のくじで、アタリがでるともう1個もらえると云うルールだったようだが、

「50+5」と書いてある割に50袋きっかりしか付いていない。

色は4色で顔は1種類しかない。

カラーバリエーション

上から見て左側に凸部があり、反対側に凹部があり、繋げられる。

パチモンのほうが若干全長も穴の大きさも小さいがために、純正と繋げることは極めて困難である。

純正は胴体が円形だが、パチモンは台形(六角形?)で、足は曲げてありカニっぽさが強く出ている。

左が純正、右が目玉のうごくカニさん

純正も挟むと目玉が動くが、純正では腕を広げると目が上がったが、

パチモンでは、腕を閉じると目が上がる様になっている。

純正が先述のように、目玉の根元にある突起が凹部をなぞり傾斜を上がることで目玉が上がる機構であるのに対し、

パチモンは足を閉じた時に、目玉の付け根の突起が下部パーツの凸部に乗り上げることで目玉が上がるようになっている。

右が純正、左が「目玉のうごく!カニさん」

このタイプのパチモンには、ゴム素材で作られたものも見つかっている。

左から「目玉のうごくカニさん」、同ゴムバージョン

20円ガチャのカプセルに開いたまま入れられており、足はカプセルに詰め込まれたためしなってしまっており、

開閉するのは難しい。茶色と黒の2種類が見つかっている。

目玉のうごくカニさんのガチャバージョンに新色が発見された。

某クションで入手したのはゴムバージョンの青が2個であった。

素材は、カプセルとともに見つかった茶色と黒と同じ軟質なもので、カプセルに入っていたものか、若干歪んでいた。

このガチャ用の軟質素材のものには他の色が存在した可能性が高いと思われる。

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つないで遊ぶオマケで、「○○タン」という名前の一連のシリーズは、カニタンの後、もう1種類発売された。

1978年発売と思われる「カメタン」である。

ピコタンやカニタンと同様にウエハース菓子に付けられ、前肢を推すと口が左右に開く亀型のオマケである。

紙箱に1個入っており、箱の側面にはピコタンのパッケージにもあった、

「あそびかたをいろいろかんがえよう」というコピーが印され、同じ流れの商品群であることがわかる。

「おまけの玩具(おもちゃ)」には、「かみつきかめ」として掲載されている。

文中にある様に2パーツで、丈夫な甲羅をポリエチ、可動する本体をポリプロピレンと、

それぞれの材質を変えることでスムーズな可動を実現している。

繋げるオマケの人気が衰えたのか、2パーツを違った素材で作りわけるのが困難だったか、

カメタンになると、それほど爆発的なヒットになったという記憶はなく、パチモンも作られていないようである。

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で、ここまでが明治製菓の鋏モノオマケについての概説である。

キャラクターの絵柄を印刷すれば売れる、安易な時代は過ぎ、顧客である子供が楽しめるオマケを提案しなければならなくなった。

そんなとき、集めること、動くことで、一時代を築いたオマケがあったことを、まず、理解されたい。

カメタンにはパチモンが見つかっていないことは前述したが、1977年には、ロッテからビックリマンチョコが発売され、

徐々にオマケのシールが流行しだしたことも、ギミック付きオマケの販売に翳りがでたことに密接に影響すると思われる。

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で、ここからが本題なのであるが・・・。

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カニタンを検索していたら、カニタンのスナック菓子について紹介しているページを発見した。

「ひこねのりおの六十年史(仮)」スナック菓子『カメタン』
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「カールおじさん」のデザインをしたアニメーターのひこねのりお氏の作品を紹介するブログで、

カニタンのパッケージイラストをひこね氏が制作したことを紹介している。

このページのパッケージ画像によると、商品名は「明治のスナック カニタン」であった。

価格は80円で、「めだまがうごくクリスタルカニタン入り」の文字が見られる。

先のチョコウエハース2本とカニタン1個で70円だったので、スナックのほうが割安感を感じられる。

表面には5種類の顔のカニタンが描かれている。

裏面には「サクッとうまいカニ〜」や「カニの風味がいきているか〜るいおいしさのスナックです。」とある。

内容は不明だが、「おっとっと」のカニ風味のようなものであったのではないかと思われる。

L型とB型のイラストの周りには「つないであそぼう」、「マスコットにもなるよ」というコピーが書かれている。

その下には小さい字で

「おかあさまがたへ

カニタンモデルは衛生的に配慮されている材料で作られていますが、口に入れない様にお子様に注意してあげてください。」

と書かれている。

このことからも、50円以上のスナック菓子は、親が子供に買い与える価格帯の商品だったことがうかがわれる。

下部右側には、「60.1.14製造」と印字されており、昭和60年(1985年)の商品であることがわかった。

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ウエハース版のカニタンが発売されたのは、商品カタログの発行年から1977年であったことがわかっている。

パチモンである「カニタンブロック」の製造年は不明であるが、

「’80東京小物玩具見本市 出品商品リスト(附・協栄会会員名簿)」という小冊子を入手したところ、

カニタンブロックが出品されていたことが確認されているので、

1980年までには成形型が流出し、刻印を潰したパチモンが販売されていたと考えられる。

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1980年までには刻印を潰されていることが確認されたとすると、その5年後に明治製菓から発売されたクリアカニタンは、

どのように作られたのかがわからなかった。

明治製菓で再利用する予定がないから廃棄され流出したとすれば、再度明治製菓の新商品の為に同じ型を使うのは難しいのではないかと思われた。

しかし、某クションの出品が象からは明治製菓の刻印は見られなかった。

青、黄色、黒のクリアタイプが出品されており、とりあえず、万難を廃して1個を落札した。

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届いたクリアカニタンを見たところ、驚愕の事実が判明した!

顔は、ウエハース版と、それを流用したカニタンブロックとは違っていて、新種であることが確認された。

他の出品のクリアカニタンも、どれもが微妙に顔が新しいものの様に見える。

下部パーツは、明治製菓の刻印だけではなく、材質のポリエチの文字もないものであった。

上面の目玉の部分は、それまでの純正では目のモールドがあったが、

クリアカニタンにはモールドがない代りに、気泡が入っているために目玉が入っている様に見える。

左から純正、クリスタルカニタン、パチモン

改めて比較すると、同じ型から作られた純正とパチモンは同じ形状であるが、

クリアカニタンは目の付け根が他のものより長く、胴体側面の3本足のうち、後部にある短い1本の先端に丸みがあるのがわかる。

鋏の部分の接合も、それまでのものに比べてしっかりとしており、鋏の部分のくぼみが直線的にみえる。

以上の所見から、クリスタルカニタンは、1985年の発売に際して、型を新造して発売された新商品であることが確認された。

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1985年といえば、カードやシールが流行していたころで、

ギミックのあるオマケは衰退期で会ったと思われるが、それでも型を新造してまでも復活させたが、

あまり反響はなかったのではないかと思われる。

少なくとも、ある程度大きくなってしまっていた自分のアンテナに引っ掛かることはなかったため、

カニタンが復活していたことは全く知らなかった。

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カニタンスナックの発売から38年。

年明けにつなぐオマケ関係の新しい情報をまとめることができたということは喜ばしいことである。

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それがどうした?って言われましても・・・。

このサイトはそういうところですので、そういうもんだと思っていただく他ないんですが・・・。

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