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吸盤が4つもついてます

ピッタシマン

「たこちゅう」がロッテ製菓から販売されたのは1976年〜1977年であった。

球体に吸盤が2個付いただけのシンプルなデザインで非常に人気がでて、多くのパチモンが製造販売された。

(タコチュウの分類は、タコチュウ分類一覧表を参照されたい)

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たこちゅうについての文献は多く無いが、

たまたまデパートの古書市で見つけた本から、たこちゅうの生みの親に関する記述が発見された。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」

菓子などのオマケとして付けられるノベルティーのアイデア集で、

「転がる」、「風で動く」といった、一工夫加えたオマケ玩具を作る際のギミックを集めたものである。

この書籍の著者プロフィールに以下のように記されている。

浅山守一

1929年福岡県生まれ。
東京美術学校中退。
その後、アドマンとして活躍。独自のノベルティーズ理論を編み出し、注目される。
浅山ノベルティ研究所主幹。
尚、風景画家としても、伊豆を中心に活躍中である。

考案した「おまけ」には、アメリカン・クラッカー(リズムボール)、
ジャンピオン(跳ねる虫)、タコチュー(吸着盤)、
カニタン(連鎖動構造)等多数。

タコチューを考案?カニタンも?!作ったの?この人が!

というわけで、たこちゅうの生みの親が見つかってしまったのである。

「17、くっつく」の項目には、「2、たこの吸付」としてタコチュウが紹介されている。.

この本にも「”タコチュー”のヒットにともなって偽物も出まわり、結構売れたようであった。」と

なんとも微妙な距離感でタコチューフィーバーを見ているのがわかる。

「同社ではその後、パート2(写真)もだされたが、初代が余りにも強烈であったため

あまりパッとしなかったようである。」と、

あー、生みの親としてスッポリダコに対して、これまた微妙な距離感が感じられて面白い。

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当時、吸盤というギミックに対する興味は強かったようで、、

「17、くっつく」の章には、他にも「1、吸付動物」として、複数の吸盤を持つ、様々な形の吸盤玩具が紹介されている。

タコチューよりも吸盤が多く、プラスチックではなく、シリコン樹脂で出来ていることを指摘している。

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このイラストのタコに似たものを、某クションで発見した。

多足型パチタコと命名したが、吸盤が脚の先に4個付いている。

本体上部中央にある顔は、イラストに似ている。

額の三本線は、スッポリダコにも見られ、たこちゅうの影響が考えられる。

左からスッポリ小B型、小A型

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その後、某クションで、多くの種類が入ったデッドストック状態のサンプルを発見した。

商品名は「すいつき虫」。

タグ付き袋入りで、タグには壁掛けのフックに直接懸けたり、

掛けるためのビニールヒモをつけたりするための丸穴がある。

虫といいながら、タグにはカエル、カメレオン、イモリ、ヘビが描かれている。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」のイラストにはカタツムリやワニ等があり、

もっと多くの種類があった可能性がある。

メーカー名は無く、何かの番号「No.10」と入り数を示すと思われる「100入」の文字が印刷されている。

100入りと言っておきながら、98個しか入っていない。

吸盤の付け根が細長いものも多く、絡まったりして正確な数が入れられなかったものと思われる。

緑、青、紫、ピンク、黄色、赤の6色があり、これは先に紹介した多足型パチタコと同じであった。

種類は10種類あり、動物から虫まで幅広いラインナップである。

吸盤は足の先にハチが6個、その他動物とタコが4個、ヘビ等の長いものは3個が並んで配されている。

材質は硬めで、吸盤は小さく、封入されている間の変形で吸着しにくいものも多い。

先述の、「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」で、

「1、吸付動物」には、「最近ではシリコン樹脂を用いたタコのおもちゃが流行し売れたようである」とあるのは、

多足型パチタコやこの「すいつき虫」のタコのことかもしれない。

様々な種類のうち、たこちゅうの影響があったかどうか、タコのみが分離されて売られたのが、

多足型パチタコとして紹介した形だった可能性がある。

サル ネコ
トカゲ ハチ
カメ カエル
タコ ムカデ
イモムシ ヘビ

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で。

ここからが、本題。

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硬めな素材で小さい吸盤。吸盤の付け根が細長い「すいつき虫」が、

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」の「1、吸付動物」で描かれているものであることは

確からしいが、ちゃんとした(?)菓子メーカーのオマケとして、似たような形状のものがあったことが判明した。

商品名は「ピッタシマン」。

今回はパッケージと一緒に見つかったため、カネボウ製であることがわかった。

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長い箱にはチョコボールが入っていたものと思われる。

側面はタイトルロゴとメーカー名が入っている。

値段は60エンだったことがわかる。

チョコボールの上には<ビスケット>と書かれていた。

反対側には原材料と、販売者名が記載されている。

<ビスケット>と対応する(マル準 チョコレート菓子)の記載がある。

蓋の下部は不良品の報告先を明記してあり、

ちゃんとした消費者課が、この時代からあるところが大きな企業のちゃんとした組織の存在を感じさせる。

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グリコのキャラメルと同じく、本体とオマケ用の2箱の構成になっていた。

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箱の上部には「たのしいおもちゃ」とある。

ピコタンのパッケージにもあるが、オマケをおもちゃと言っていたことがわかる。

側面は一つながりのイラストが書かれている。4種類(火星人型はダブっている)のオマケが書かれている。

「つないだりはりつけたりしてたのしくあそぼう!!」と書かれている。

価格は60円だった。

また、小さな文字で「30種類あるよ!!」とさらっと書かれている。

明治合体チョコボールも、発売時、

「パッケージ裏面(20種類)及びおまけ(24種類)が合体します」と広告されたし、

ピコタンも20種類があったので、極端に多いとは言えないが、

ダブらずに買っても1800円となり、かなりの高額になる。

中身のオマケは、顔のある本体から長く伸びた細い腕が4本出ていて、その先端に吸盤が1個ずつ、計4個付いている。

裏面は平らになっており、刻印等は見られない。

本体と脚部の上半分が一つの方になっており、

脚の部分に下からもう一つの型で厚みを増している。

下の写真の矢印の部分が上下の型の接合部である。

吸盤は下部の型で作られ、椀状の部分を下から押し上げて剥離したことが、吸盤の中央部の凹部からわかる。

湯抜き穴は右側の2本の吸盤にある。

ピッタシマンに新種が発見された。

サルのはさみものの新種と一緒に1個が見つかった。

パッケージのイラストにハート形はなく、刻印等もないが、

素材の色や全長、腕の裏面の盛り上がり、吸盤の直径がほぼ等しいので、ピッタシマンの1種と考える。

パッケージには30種類があると書かれているので、その一つかと思われる。

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1970年代に入り、著作権の意識が一般的になってきたのか、

それまでのようにお菓子のオマケにテレビやマンガのキャラクターが使いにくくなると、

オマケ自身の魅力が無ければ人気が出ないことがはっきりしたのだと思われる。

そのため、ギミックに一工夫したオマケを考案することが仕事として成り立ち、

先述の「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」のような書籍が出版されるようになったのであろう。

大手のカネボウが作った「ピッタシマン」と、駄玩具の「すいつき虫」の、

どちらが先にあったかはわからないが、同じようなアイデアの商品が複数あったことが、

子どもの吸盤というものへの人気の高さを表していると思われる。

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「ピッタシマン」のパッケージイラストでは吸盤同士をくっつけたり、コップに貼付けたりしてはいるが、

そんなに吸着力も強く無く、すぐにはがれてしまいそうなものである。

たこちゅうでもピッタシマンでも、吸盤があるだけで楽しめた当時の子供は「遊ぶ力」が強かったと言える。

ルールブックや取り扱い説明書がないと遊べない高級な玩具で、

その通りにしか遊べない今の子供には、楽しめない面白さがあったのではないかと思われる。

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今、これを使って、おじさんがなにか遊べるかと言うと・・・。

思い浮かばないですねぇ。

別にどうでもいいんですけどね。((((((((((^^;)

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