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残念!これ持ってって

引き籤のハズレへの流用に関して

「たこちゅう」とは、1976年〜1977年に発売されたロッテ製菓のチョコレート菓子のおまけである。

当時は大流行し、入手困難な純製品に代わって、多くのパチモンが流通した。

本体の球体に吸盤を2個付けただけのシンプルなデザインであったこと、

当時は意匠権についての意識が低く、1年〜2年程度の短期間に販売するオマケのデザインについて、

保護しようという意識がなかったため、多くのパチモンが作られた。

9系統、23種類が見つかっている(吸盤4個で本体が立方体のカクチュウを除く)。

詳しくはタコチュウ分類一覧表を参照されたい。

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これらのパチモンは、駄菓子屋でタグ付き袋入りや、小台紙袋入り、

また、ガチャガチャに入ったものや、各種のプラスチックケースに入れて玩具店・土産屋で売られるなど

様々な販売形態で売られていたことが、某クションやフリマ等でデッドストック状態で見つかることで明らかになってきた。

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当時から存在が知られていたパチモンで、J型と命名した大型と、B型と命名した小型のものがある。

口と足の付け根の長さがほぼ等しいJ型に対して、B型は足が長いことが形態上の特長となっている。

このような外観上の差異がるものを同じ系統であると決め得るのか確信が持てなかったが、

顔が、純正にはない泣き眠り目と名付けたタイプで、顔の特長が似ていることから同じ系統であると推測していた。

左からB型正面・側面、J型正面・側面

某クション等で発見されたサンプルが増えるにしたがって、J型にも普通目が見つかり、

B型・J型とも、顔の種類が普通目と泣き眠り目の2種類しかないことが確認された。

左からB型、J型

また、この系列でのみしか見つかっていない、特殊な色の素材で作られたものがB型・J型双方に見つかり、

いよいよ同じ系列であることが確かになった。

左から蛍光ピンクのB型2種、J型2種

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最近になって、この両種が一つのパッケージに入っているセットが見つかった。

商品名は「たこちゅう」。B型が10個、J型が4個入っていた。

これによって、やっと両種が同じ系統であると確信することができた。

ケース内の台紙には、アルファベットのWに顔の入ったメーカーロゴが確認された。

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別の出品者から、このJ型と新種のパチモンが一緒に入ったデッドストックを入手した。

落札したパチモンタコチュウ

中に入っていたのはJ型が2個、今回新たに確認されたP型と命名した小型パチモンが5個入っていた。

緑色はちょっと白っぽいが、これは一緒に見つかった白に使った白色の素材を混入して作ったと考えれる。

今までにJ型でも白にパチタコを見付けているので、この点もこのセットが今まで見つかったJ型と同じ系列であることの傍証になる。

小型のPにも先に紹介したクリアピンクの物があり、B型・J型と同じ系列であると思われる。

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また一緒に見つかった小台紙はC・H型小台紙を真似たと思われる絵柄だが、

先のB・J型の台紙にあったのと同じ「Wに顔」のロゴが見つかった。

左からC・H型、P・J型、B・J型小台紙

以上の事から、B・J型と、P型は、同じ「Wに顔」のロゴマークのメーカー製であったことがわかった。

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例によって、ここまでが前フリ。

何時も情報を教えていただいている、ぜんまい太郎さんからの情報で、

ハズレにパチモンタコチュウが使われている引き籤が出品されていることを知らせていただいた。

パチモンタコチュウの入った引き籤

アクセサリーがメインの当て物で、そのハズレでパチモンタコチュウが入っている。

蓋には「New Fashion Toys」と書かれている。その下には恵比須様の顔が書かれている。

1〜20番までがアタリで、色々なネックレスがある。

1番〜20番までのアクセサリー

セロテープで留めたヘアピン様のものが2個追加されたのか、23番〜100番までがその下の枡に割り当てられている。

23番〜100番までのハズレ

あまり保存状態が良くなく、ハズレの部分は特に乱れが大きかったが、大体こんな感じだったのではないかと思われる。

23番〜40番は髪留めや指輪等、当初の内容物と思われるものが入っていたが、

他に、何かの超合金のミサイル発射装置と思われる黒いパーツとミサイルが3発入っていた。

23番〜40番までのハズレ

次の枡にパチモンタコチュウと、サルのハサミもの駄玩具の小型版が入っていた。

41番〜60番までのハズレ

タコチュウはB型で、緑3、黄色7、赤1、クリアピンク3の14個が見つかった。

この色の構成は先に紹介した「たこちゅう」プラケース入りと共通している。

14個統べてが普通目と泣き眠り目であり、このことからもB型にはこの2種類しかないことが裏付けられたと考えられる。

サルのハサミもの駄玩具は、顔の種類が統べて違っていた。

以前「モンキーハンド」という商品名の大台紙付きの完品があった。

今回見つかったものはかなり小型で半分程度の大きさしかない。

モンキーハンドは顔が10種類あった事から、今回見つかった小型の物にも最大で10種類だった可能性がある。

モンキーハンドのバリエーション

次の枡には、4種類の軟質プラスチック製のロボット駄玩具が入っていた。

巨大ロボットに関しては知識がないので調べようがないが、なんらかのアニメを基にして作った可能性がある。

61番〜100番までのハズレ

この枡には特撮ヒーローと思われる人形3体が混入していた。

ぜんまい太郎氏の掲示板でお伺いしたところ、

このヒーローは電子戦隊デンジマンであると御指摘いただいた。

そこで画像検索をかけたところ、この人形と先のミサイル発射装置は、

ポピニカの「デンジバギー」というジープの玩具のパーツであったことがわかった。

ネット上の情報では1980年(昭和55年)2月2日から1981年(昭和56年)1月31日に放送されたそうで、

たこちゅうの販売からは4年が経っている。

もっとも、このパーツの混入のタイミングは販売時ではなく、

フリマや中古玩具業者が扱っている内に、ロボット駄玩具と似たような大きさのパーツを適当に混ぜたのかも知れない。

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蓋の側面には、棚に積んだ時の識別に便利なように、タイトルが書かれている。

一回の籤は20円で、100の商品(と、籤)が入っていたと思われる。

タイトルにペンダント当とあり、「女物」であったことがわかる。

ここにも恵比須の顔が描かれている。

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蓋の中央下部には、「全玩規協 大512」と書かれている。

ネットで「全玩規協」を検索すると、「大」、「東」、「名」等の種類があるようで、

これは大阪、東京、名古屋のそれぞれに協会があり、会員企業に3桁の番号を振っていたと考えられる。

東京の一部メーカーについては番号とメーカー名が判っている例もあるようである。

この「大512」という番号が書かれているのは、ぜんまい太郎氏のホームページでの引き籤の紹介記事に、

「外箱のフタには、大きな恵比寿さまの顔と。全玩規協 大512と印刷されています。」

(『30 ニューライト当(100付)』紹介記事より引用)

とあり、同じメーカー製で、同じロゴマークだったと思われる。

業界誌の記念号にあたったが、少なくとも2003年頃にはこの名称の協会は見つけられなかった。

(「おもちゃのメーカーと問屋の歴史と今がわかる本」トイジャ−ナル編集局 2003)

この「全玩規協」について、ぜんまい太郎氏から氏の掲示板で教えていただいた。

「ザ・駄菓子百科事典」(串間努 扶桑社、2002)の年表に、

昭和25年1月 全国食玩連合会を解散、新たに全国食玩協会を設立

昭和44年 全国景品付玩具、菓子規制協議会を結成、東京、名古屋、大阪の各支部ごとに登録制度

問いう記載があるそうである。

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「全国玩具人形商標総覧 復刻版」(日本二輪史研究会 2003)を調べてみたところ、

「綜合玩具・布帛玩具・その他 問屋・製造の部」に恵比須のロゴを見つけた。

取り扱い品目に、「当物玩具」とあるし、所在地は大阪になっている。

この事から、今回見つかった引き籤は、この「佐々木商店」の商品では無いかと考える。

当初、B・J型のパチタコのメーカーと考えられている「Wに顔」のロゴの顔とえびす顔に関連があるのかと思ったが、

もし、この佐々木商店の製品であるとするとWが説明できない。

この手の駄玩具は、製造メーカーと販売メーカーが違うことが多いと、ぜんまい太郎氏に御教授いただいたことがある。

・・・とすると、B・J・P型の製造は「Wに顔」のロゴのメーカーが作り、

他の製造メーカーのアクセサリー等と合わせて引き籤にまとめた上で、佐々木商店が販売したのかもしれない。

後に某クションで、「Wに顔」ロゴの付いた同様な引き籤が出品された。

蓋に書かれた商品名は「NEW FASHION ACCESSARY」で、「Wに顔」ロゴと、全玩規協 大535と書かれている。

アタリは工具や爪きり。中アタリは将棋のコマのキーホルダー等で、最下段にクマ(?)の根付と一緒に、パチタコB型の

赤、黄色、緑、蛍光ピンクが合わせて20数個程度入っているのが確認された。

同じパチタコが、メーカーロゴも、全玩規協の番号も違う商品に入っていることが確認されたことで、

前述の生産メーカーと販売メーカーが様々な商品を作っていたことが考えられる。

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今回の引き籤により、タコチュウのパチモンの新しい販売形態が見つかったことになる。

ロッテのたこちゅうは1976年から一年程度販売されたが人気は長くは続かなかった。

近年のケース入りデッドストックの発見からは、その商品名が「たこちゅう」に近いものが多く、

純製品の人気にあやかったものが多かったことが見えてきたが、流行が過ぎてからは、

ガチャガチャのハズレとして、また、今回のような引き籤のハズレとして、

雑に使われて行ったものと思われる。

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アニメ等のキャラクターに依拠するものではないですから。

飽きられたらただの駄玩具ですもん。

ハズレ扱いもしょうがないっすよ。

えっ?だから何だって?

いや、いろいろに使われて行ったんだなぁ、と。感慨深いじゃないですか。

わからない?

あー、それはしょうがないですね。

ある意味、わからないほうが正解ですよ。

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