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やっぱあったんだ!

動物ピコタンのパチモン

明治製菓のチョコレート菓子「ピコタン」のおまけは、

1パーツの簡単なものでありながら、全身のジョイントを使って様々に合体させることができ、

また、40種類(前・後期各20種)という沢山の種類があり、

「<集めて繋ぐ>オマケの先駆者」(『おまけの玩具(おもちゃ)』より)だった。

最盛期はお菓子屋では売り切れが続出して、駄菓子屋では驚く程多くの種類のパチモンが売られていたことがわかっている。

ピコタンのパチモンに関しては「ピコタン大図鑑」を、それぞれ参照されたい。

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一世を風靡したピコタンはその後、「どうぶつ編」・「うんどうかい編」と新シリーズが発売されたが、

「大ヒットした商品は二番煎じがきかないというが、パート2、パート3と、動物などの形をした人形が出されたが

あまりぱっとしなかったようである。」(『おまけの玩具(おもちゃ)』より)

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駄菓子屋を中心にお土産屋や玩具店、ガチャガチャなどで発売されたパチモンは、

第一弾の人間型のものは20種類前後のタイプが確認されているが、

「どうぶつ編」・「うんどうかい編」の頃は人気が下火になったためか、パチモンは見つかっていなかった。

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先日、某クションでまとめて落札した、パチモンピコタンやジャボタン(大型パチモン)、

ピエロ型がごっそり入ったセットの中に、ピエロ型のスポーツバージョンが発見された。

ピエロ型スポーツ。左からキャッチャー、ヤキュウ

ピエロ型スポーツ。左からキャッチャー、ヤキュウ

ピエロ型は、大阪の藤田屋商店からピコタンの発売(1974年・昭和49年)から5年も前、1969年・昭和44年には発売されていたものである。

商品名は「ブロックボーイ」とか、「ピンキーブロック」であった。

当時はこのピエロ型は見たことが無く、大学の先輩からもらったのが最初だったが、

その後、某クション等で調べた結果、ピコタンの元祖と言うべきものであった。

某クション等ではピコタンのパチモンと一緒に見つかることも多く、「人間型ブロック」ということで

ピコタンの発売後も継続して売られていたようである。

このピエロ型のスポーツバージョンは、藤田屋商店のものよりも若干小さく、厚さも半分しか無い。

左からピエロA型、ピエロB型、ピエロ型スポーツ

このピエロ型のスポーツバージョンは、見つかったサンプルも少なく、

大型パチモンのジャボタンや各種のパチモンと一緒に見つかっていることから、

ピコタンの発売後、ピコタンの各種パチモンが出たのと同時期に売られたものと考えられる。

絵柄にスポーツ、ことに野球を採用したのは、ピコタンの「うんどうかい編」の影響であると考えられる。

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ここまでが前置き。

ピコタンは、最初の人間型の他に「どうぶつ編」・「うんどうかい編」が出されたこと。

人間型には数多くのパチモンが見つかっていること。

「うんどうかい編」のパチモンは見つかっていないが、ピエロ型に運動会編の影響が見られるパチモンが発見されていること。

このくらいを抑えておいてください。

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んでもって、こっからが今回の本題

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某クションでパチモンピコタンを落札した。

内訳は、以下の通りであった。

1、顔ありB型 2、顔ありC型 3、顔ありC-2型 4、顔ありD型
5、顔ありE型 6、顔無しC型 7、顔無しF型 8、顔無しG型
9、顔無しJ型

どのパチモンも数が少なく、顔の有る無しを含めて9種類もの違った型が一度に発見されているのは興味深い。

顔ありB型(1)や顔ありC型(2)、顔なしC型(6)等はタグ付き小袋入りで売られていることがわかっている。

顔無しG型(8)は、プラスチックケース入りで売られていた。

また、小型の顔ありC-2型(3)はガチャガチャに入っていたことが確認されている。

顔無しJ型はチョコレート菓子のスティックだった。

どれも数が少ないので入手方法は不明だが、ガチャガチャによるものが多かったと思われる。

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これらの多様なパチモンと一緒に、動物型のピコタンが3種類発見された。

赤いサルは少し大きく、足の突起の大きさも純正よりも大きく互換性はない。

残りの2種は突起の大きさが純正に近くオリジナルの大きさを踏襲したものと思われる。

某クションの出品から調べたところ、この青いのは「りす」であることがわかった。

社史に掲載されている当時の広告にオリジナルが写っているのを発見した。

この写真で見る限りは形状を模倣しているのがわかるが、ジョイント部分の成形精度はかなり甘くなっていると言える。

すべての純正ピコタンは、突起の反対側に模様が描かれている。

模様と反対側の、突起のある側には、動物編には、「丸C 明治製菓」の文字と、ひらがなの種類名が入っている。

うんどうかい編には、「丸C 明治製菓」とひらがなの種類名の他に材質をあらわす「ポリエチ」の文字が追加されている。

上段中央がうんどうかい編、上段右側が純正の動物編

パチモンと思われる3種のどれにも「丸C 明治製菓」や種類名等の刻印はない。

ピコタンの後に発売されたカニタンやカメタンにも「丸C 明治製菓」と材質の刻印があることから、

材質の記載のあるうんどうかい編のほうが、どうぶつ編よりも新しいと考えられる。

見つかった動物編パチモンのうち、緑色には突起がない。青いものには模様と反対の面に突起がある。

赤いサルは突起のある面に顔が描かれている。この突起は先端が平面で純正を含むほとんどのピコタンと違っている。

これらのことから、赤いサルとそれ以外の2種類は別系統のパチモンであることがわかった。

パチモンの動物ピコタンが「ミニ ブロック」、

赤いサルが「モンキーブロック」という商品であることがわかった。

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爆発的なブームを作ったピコタンは、優れたデザイン性と組み立ての自由度が大変高かったことから多くのパチモンが作られたが、

2尾目、3尾目のどじょうをねらった「動物編」・「運動会編」になると、かなり人気が落ちたと見られていた。

そのため、敏感な駄玩具業者はこれらのパチモンは作っていないのでは無いかと思っていたが、

先に紹介したピエロ型のスポーツバージョンや、今回発見された2種類の動物ピコタンのパチモンが見つかったことで、

人間型ピコタン以外のシリーズにもパチモンがあることが確認された。

1970年代後半にかけての合体性・コレクション性の高いおまけには、ほとんどの場合、パチモンが作られていたことがわかったことで、

当時の著作権・意匠権に対する意識の問題も含めて非常に多くのことを教えてくれていて興味深い。

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今回、動物編のパチモンと一緒に発見されたパチモンピコタンを調査したところ、いくつかの発見があった。

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1、顔ありB型

顔ありB型は6個見つかったが、青は光沢のある材質であった。この材質は「ピョコピョコ組立ブロック」の顔ありE型にも見られる。この2種類はどちらも突起面の模様が細かいドットになっている。E型はドットの他に3本の縦線がある。

3本の縦線は顔ありC型にも見られるが、B型は「人形ブロック」という名称で、C型は「人間ブロック」という名称で売られていた。ドットと3本線のデザインは、どれが先かは判らないがパッケージのデザインからどれも別のメーカーの製品であるように思われる。

パチモンピコタンの層の厚さを示す例と言うことができる。

上段がB型、下段がE型。右が光沢のある青

顔ありB型は、「ズボン吊りブタ鼻」、「怪獣被り物」、「おじいさん」、「学生服」、「潜水服」の5種類があり、「ズボン吊りブタ鼻」は下半身の模様が省略されたものが見つかっていた。

今回、潜水服が2個見つかったが、腹部のベルトの表現が1本線のものが見つかった。そこで今まであるものと比較したところ、3つのどれもが違う型であることがわかった。

左からベルト1本、2本間隔大、2本間隔小

改めて種類ごとに比較した結果、ドットの分布や、顔の模様の線の太さ等から数種類の亜種があることがわかった。全数を調査していないので詳細は不明だがかなりのバリエーションがあると考えられる。

今回、光沢のある青の他に、赤も発見されたことにより、7色のカラーバリエーションが確認された。

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4、顔ありD型

胴体中央部から材料を注入したと思われる、腹部に模様のある顔ありD型は、10種類の顔と、7色が知られていたが、今回の入手品に白が見つかり、カラーバリエーションが8色に増えた。

8、顔無しG型

寸胴なプロポーションが特長の顔無しG型は、当時は青が一個だけしかなく、正体不明のパチモンであったが、今回黄色が見つかった。このタイプは「ブロックマン」と言う名称でプラケース入りが見つかっている。


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<追加情報>パチピコの黒

動物ピコタンと一緒に、新しく白が見つかった顔ありD型だが、某クションで今度は黒が見つかった。

今回入手されたのは、9種53個で、顔ありA1型のオレンジと、顔ありD型の黒が新しく見つかった。

状態が良く、まとまって残っていたサンプルと言えるが、注目すべきは、まとまって見つかった顔ありC型以外、

数個ずつ、9種類の多系列のパチモンが一緒に見つかったことである。

プラケースで販売されていたことが確認されている顔ありC型、顔無しG型の他にも

タグ付き小袋で売られていたものが少数ずつ一緒に見つかったと言うことは、

当時、多くのメーカーがパチモンを販売しており、今まで確認されているようなケース入り、袋売りの他に

ガチャガチャ等でも売られていた可能性があることを示唆している。

また、パチモンであることを気にしなければ、多種類の大量なパチモンを入手出来たと言うことである。

うんどうかい編に続き、どうぶつ編にもパチモンが発見された。

サンプルが少なくメーカー等の確定には至らなかったが、

これで、ピコタン3部作のすべてになんらかのパチモンがあることがわかった。

どうぶつピコタンのパチモンのパッケージが発見された。

商品名は「ミニブロック(MINI BLOCK)」。

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タグの右上には、兜のマークとシマデンと書かれたロゴが見られた。

このロゴは、素材の色調からどうぶつパチピコと同じ系統ではないかと思われた、

顔ありF型が入ったビニールケースからも見つかっている。

また、昆虫のシールをタグに転用した袋入りのサンプルには、

顔ありF型、H型と一緒にミニブロックが1個混入していたことからも、

これらはシマデンという製造メーカーの製品であることが確実と思われる。

純正ピコタンのレアカラーであるクリア黄色と動物ピコタンが一緒に見つかった。

一緒に入手されたスーパーカーや「およげ!たいやきくん」、

ダイアポロンの駄玩具から見て、1976年頃のものと思われる。

人間型のピコタンがクリア黄色のみと言うのが珍しい。

この内、1個は黄色味が薄い新色である。

純正ピコタンの太めの方を前期、細身の方を後期としてきたが、

たこちゅうの純正と太目の様に、生産量等の理由から型違いのタイプがほぼ同時に存在した様に、

ピコタンについても、前期タイプとした太目のものが、動物ピコタンに切り替わる頃も

販売されていた可能性がでてきた。

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純正ピコタンは緑、水色、オレンジ、黄色、赤が基本的な色で、

動物ピコタンや運動会ピコタンもこの5色のみが見られる。

明治合体チョコボールもほとんどがこの5色である。

他に、紺、白、薄いオレンジ、薄い黄色がある。

これらの色は前期・後期ともに見られる。

明治合体チョコボールでは薄い黄色がごく少数見つかっている。

ピコタンの前期のみに、薄い緑とクリア黄色がある。

これらは色調にばらつきがある。

色味のちがいをばらつきと見るか、新種とするべきかは微妙な問題であり、

今の所19色を識別しているが、保管状況からの劣化等により変化しているものもあると思われる。

著作権・意匠権的にどうよ?!って声はあるかも知れないが、

まぁ、これが昭和の駄玩具の逞しいところなわけで。

淡々と記録して行くわけなんだなぁ、これが。

・・・別にどうでもいいことなんですがね。

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