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よくも捨てずに・・・

オマケのケースあれこれ

1970年代中期以降、お菓子のオマケは、繋げて遊ぶことで数を集めさせるものが増えた。

それ以前は、アニメやマンガのキャラクターを起用したものが多かったが、

コンテンツ使用や監修が厳しくなると、既存のキャラクターに頼らない商品開発が必要になったと思われる。

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ノベルティを実際に作成していた作者によるノベルティーのアイデア集である、

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」(昭和58(1983)年、:浅山守一著、自由現代社)という本に

以下の記載がある。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」より引用

明治製菓(上掲の記事ではM社)からピコタンが発売されたのは、社史によると昭和49(1974)年だったことがわかった。

「明治製菓の歩み 買う気で作って60年」より引用

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人間型のブロック玩具のルーツはヨーロッパで、日本の玩具メーカーから似たようなデザインのブロックが、

ピコタンよりも5年も早く販売されていたことがわかった。

このような広胴のデザインを、ピエロの顔模様があったことから、「ピエロ型」と称する。

このピエロ型は「HONGKONG」の刻印がある小型のものも見つかっており、

海外産のデザインの玩具であると思われる。

.玩具商報(昭和44年1月1日号)より引用

.玩具商報(昭和44年8月15日号)より引用

藤田屋商店に問い合わせたところ、

ドイツの玩具見本市で見つけたこのブロックを、藤田屋商店が見い出し、ロイヤリティを払って

「ブロックボーイ」や「モーレツ・ピンキーブロック」という名称で広く玩具店等で販売していた。

暫くして、国内の版権者と連絡がつかなくなったところで、明治製菓から藤田屋商店に問い合わせがあったが、

意匠権の支払先が無くなったことを伝えたところ、暫くして明治製菓から「ピコタン」が発売されたという。

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ピエロ型は、ブロック玩具としてではなく、ケースの形状としてもっと前にも意匠登録されていたことがわかった。

発行は昭和41(1966)年6月28日。出願は昭和39(1964)年。意(匠出)願番号は、昭39-9267。

登録は昭和41(1966)年5月25日となっている。

藤田屋商店がブロック玩具として海外で見つけて製品化したさらに数年前に、同じ形状が別の分野で登録されていた。

こちらは、大きさも大きく、容器であることから1個が高価になるので、

「数があれば繋げられる」という程度で、多数を繋げるために集めるという性格のものでは無かったと思われる。

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他社から玩具として発売されていた人間型ブロックを、明治製菓のオマケとして提案したのが、

明治チョコレートのプレミアム、「おれ、ゴリラ。」の開発者である、エースプレミアム代表 太田俊策氏だったことが、

「ちびっこ広告図案帳70's」(おおこしたかのぶ編 オークラ出版オークラ出版 2003年)に、書かれている。

.--------.--------------「ちびっこ広告図案帳70's」より引用

キャプションでは75年以降の仕事となっているが、ピコタンの発売は74年であり、

会社自体は1972年に設立しているということなので、話者の記憶違いであると思われる。

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ピコタンが新発売された当時のカタログを入手した。

「Meiji SWEETS GUIDE No.12 1974年秋 明治製菓製品」という販促用の冊子である。

チョコレートの章に、新製品としてピコタンが紹介されている。

「ストロベリークリームウェハーチョコ2本入」で、50円で売られていたことがわかる。

パッケージには「おもちゃいり」とかかれており、「ピコタン人形」という記載はない。

記憶によるとビニール製の袋の中に、黒い薄手の厚紙製の台紙が入っており、

その上にチョコが2個と、オマケが2個入った厚紙のケースがおさめられていた。

参考図版:たこちゅうのパッケージ構成

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「ピコタン」は大流行し、当時の子供達の記憶に深く刻まれたものであった。

人気にあやかり、駄玩具メーカーは競ってパチモンを作り、駄菓子屋やお土産屋等で多くのパチモンが作られた。

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しかし、飽きやすい子供の事である。

売り上げの維持のためには商品を改良し、新しいオマケを投入する必要があった。

「どうぶつピコタン」や「うんどうかいピコタン」がそれで、販売開始時期や販売期間の詳細は不明だが、

そんなに長く無い期間に次々と投入され、全部のシリーズが販売されていたのは1年程では無かったかと思われる。

「明治製菓の歩み 買う気でつくって60年」より(1976)

「明治製菓の歩み 創業から70年」より(1986)

「ピコタン」人間型であったが、「どうぶつピコタン」や「うんどうかいピコタン」はもっと自由なデザインで、種類も多かった。

パッケージや中身のウエハースやオマケのケースについては大きな変更はなかったと記憶している。

ピコタンのパッケージについては、うんどうかいピコタンのビニールが見つかった。

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「ピコタン」に続くものとして、「カニタン」や「カメタン」が発売された。

これらの新商品はパーツ数が2個になり、つなげる他に単体でも挟む動作を追加されている。

「明治製菓の歩み 創業から70年」より(1986)

先の「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」にも紹介されているのを確認した。

「9、つなぐ」の項目に、「3、かにのおもちゃ」としてカニタンが紹介されている。

「10、はさむ」の項目には、「5、かみつきかめ」としてカメタンが紹介されている。

カニタンやカメタンの発売時期について、明記した資料は今のところ見つかっていないが、1970年代の後半であったと思われる。

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明治製菓は1975年には「きのこの山」を発売して大ヒットしている他、

社史等には書かれていないが、きのこの山のサイトに一時掲載されていた記事によると、

「明治合体チョコボール」を発売していたことがわかっている。

※明治製菓様より画像使用許諾。無断転載を禁ず。

これらの商品が相前後して、店頭に並んだものと思われる。

明治合体チョコボールのオマケは紙箱にチョコと一緒に入っていた記憶がある。

1976年にはロッテから「たこちゅう」が発売された。

「ノベルティーズ製作ヒント集 おまけの玩具(おもちゃ)」の

「17、くっつく」の項目には、「2、たこの吸付」としてタコチュウが紹介されている。.

いわゆるブロックではないが、吸盤でお互いをくっつけたり、

写真の右側に写るパート2と紹介されている後期のスッポリタイプは脚吸盤と頭部をくっつけることができる。

箱にはたこちゅうどうしをくっつけているイラストが描かれ、集めるオマケであることをアピールしている。

赤箱B型 .

青箱A型

緑箱A型

ビックリマンシールや野球カードといった紙モノの大流行の前の一時期、

このようなオリジナルキャラクターのつなげるオマケ付きのスナック菓子が多く発売されたのである。

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んでもって。

ここからが、今回の本題。

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某クションで当時のこの辺のオマケのケース入りが出品された。

どうぶつピコタン、うんどうかいピコタン、カニタン、そして、

たこちゅうの箱入りがシュリンクされているものが見つかった!

※シュリンク包装:フィルムを過熱して商品の形状に密着させる包装法。

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なんといっても子供向けのお菓子のオマケであるので、

よっぽど意識が高く愛着をもっていないと、子供がケースまで保存することは稀であると言える。

ビニール包装を破って菓子を食べ、中のオマケを一刻も早く見たいがために、

厚紙のケースは荒々しく破ってしまうことが多かったと思われる。

そのため、デッドストックででもない限りこのようなケースが見つかることは少ない。

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まずは、どうぶつピコタンのケースである。

今回は2種類が見つかった。

それぞれA型・B型と命名した。

中身は2個ずつのどうぶつピコタンが入っている。

どうぶつケースA型

どうぶつケースB型

どちらのケースも、それぞれの面に

「あそびかたを いろいろ かんがえよう」、

「どんどん あつめて つなげて あそぼう」と書かれている。

商品名の表記が、A型は「どうぶつピコタン」の全てに雲型の下地がある。

それに比して、B型は「ピコタン」の部分のみに下地がある。

次に紹介するうんどうかいピコタンと配置が同じなので、Bタイプのほうが新しいのでは無いかと思われる。

もっとも、たこちゅうには、同じ時期に2種類の系統が売られていたので、

この2バリエーションも同じ時期に販売されていた可能性もある。

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うんどうかいピコタンのケースも見つかった。

中にはうんどうかいピコタンが2個ずつ入っている。

うんどうかいケースA型

「あそびかたを いろいろ かんがえよう」、

「どんどん あつめて つなげて あそぼう」の部分のフォントも先のどうぶつケースB型と似ている。

「ピコタン」の文字のピの撥音記号が、どうぶつケースB型では「どんどんあつめて〜」の面は

二重丸になっていたが、こちらは簡略化されてただの丸になっている。

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ケースには、ピコタンが2個ずつ入っている。

ピコタンのケースには、中身のピコタンが出てしまわないように、

厚紙製の帯がついていた様に記憶している。

後述のカニタンにはこの帯も保存されていることから、当時のオーナーは、

ケースは必要だが、出し入れに不便な帯は棄ててしまうと判断したのではないかと思われる。

後に出たカニタンを買う頃には、この帯も含めてコレクションじゃね?と思うようになり、

帯も一緒に保管していたのではないかと考える。

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カニタンのケースも入手された。

ピコタンに比べて全長が長いカニタンに合わせた細長いケースで、

中にはカニタンが畳んだ状態で1個入っている。

カニタンケース

カニタンのケースにも、どうぶつピコタン、うんどうかいピコタンと同様に、

「あそびかたを いろいろ かんがえよう」、

「どんどん あつめて つなげて あそぼう」と書かれている。

このことからも、ピコタンシリーズの後継としてカニタンが投入されたと考えてよいと思われる。

今回入手したカニタンのケースには厚紙製の帯が残っていた。

帯にもケース同様に「あそびかたを いろいろ かんがえよう」、

「どんどん あつめて つなげて あそぼう」の文字が書かれている。

帯はかなりキツキツで、上手くはめないと切れてしまいそうである。

このことも帯の現存例が少ないことの一因であると思われる。

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この系統のオマケで、カニタンの後に出たのがカメタンである。

カメタンのケースは以前に入手済みであるが、

カメタンの形状に合わせてほぼ正方形の蓋付きのケースである。

「カメタンいり」と書かれており、

「くいついたりつみかさねてあそべる」

「あたまがとびだすよ!!」という商品説明コピーが入っている。

カメタンには甲羅の下面に凹部が有り、この部分を使って複数個を重ねることができる。

結構不安定で、いくつ重ねられるかを競うだけでも楽しめる。

側面には「あそびかたをいろいろかんがえよう」という、

ピコタンシリーズやカニタンでも見られたコピーが入っている。

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このように見ていくと、ピコタンからカニタン、カメタンまでの一連のオマケが、

集めてくっつけて遊び方を考えて使うことを想定した同じ思想で作られたことが、

ケースのデザインからもわかった。

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今回、同一の出品者から明治製菓のつなげるオマケのケースを落札したが、

ほぼ同一の時期に販売されたたこちゅうのケースも落札することが出来た。

たこちゅうのケース自体は、某クションを中心に発見されることが有り、珍しいものでは無い。

しかし、今回の落札品が特徴的なのは、シュリンク包装が残っていることである。

赤箱A型と命名した、ロゴの「テ」の字の一画目と二画目の間隔が狭いタイプで、

このタイプには、純正前期・後期・太目系のたこちゅうがはいっていることが極めて多い。

一つはシュリンクが剥がされていたので中身を確認したところ、純正後期型が入っていた。

シュリンクの保護のため、残りについては開封しないが、同様に後期型が入っている可能性が高いと思われる。

シュリンクの機械については知識が無いのでよくわからないが、

フィルムの圧着面は側面を取り巻くようについている。

純正のピコタンには当時、チョコレートの甘い匂いがついていた記憶が有る。

さすがに現在ではプラスチック素材のものと思われる匂いがあるだけで、

チョコレートの香りはわからない。

当初からたこちゅうにはチョコレートの香りが無かったような記憶があるが、

このシュリンク包装によるものかもしれない。

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今回はオリジナルキャラを集めて繋げて楽しむ一連のオマケの、

ケースまで残しているところに学術的な価値がある。

書かれたコピーが同じだったことによって、メーカーが同一の思想で次々に新製品をだしていったことがわかる。

今回は、最も初期のピコタンのケースが発見されなかったのは残念だが、

今後も蒐集を続けて行こうと考える。

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発売から40年以上を経た今、

まだまだ新しいことがわかるということは、テレビゲームには無い奥深さを持つコレクションであると言える。

だからといって、骨董店に持ち込んでも、値段がつくとは思えないが・・・。

なにやってんすかねぇ。

別にいいですけどね。

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