.

復活のガチャガチャ駄玩具!

バイキン軍団

「たこちゅう」とほぼ同時期にガチャガチャで販売されていたバイキン軍団

研究家のハマール氏(バイキン軍団の部屋から、吸盤の研究用に派遣していただいた。

これがバイキン軍団である。左からウンチ菌、水虫菌である。本体の後に大きな吸盤を付けている。

バイキン軍団の部屋によると、この2つは一番最初のシリーズで「バイキン軍団大行進」という最初のシリーズのものである。

このシリーズは、前期・中期・後期で42種類があり、水虫菌は前期、ウンチ菌は中期のキャラクターである。

材質はプラスチックで、吸盤は大きいが厚く吸着力は強くない。

.

バイキン軍団の吸盤に注目したのは、氏のページの中で「その他のシリーズ」に「コ吸盤シリーズ」として紹介しているものであった。

左がコ吸盤、右が普通の吸盤(「その他のシリーズ」より引用)

コ吸盤の特徴としては、吸盤の先端に円筒部分が付いており、吸盤の根元が普通のものに比べて太くなっている。

また、吸盤の中心の円形な平坦部が深く凹んでいることがあげられる。

この吸盤のものは非常に少なく同じ色の同じ菌が2個しか見つかっていないということである。

.

タコチュウにも同様な平坦部の凹みのあるものが見つかっている。

これは純正後期の眠り目であるが、吸盤の平坦部が凹んでおり、付け根が太くなっている。

また、同じ眠り目で足の吸盤に円筒状の部分のあるものも見つかった。

左から中心部が凹んだもの、足に円筒部分があるもの、普通のもの

この中央部分が陥没し、根元が太くなったものは、パチモンのタコチュウJ4型でも確認されている。

左から中央部が陥没したものとそうでないもの

足吸盤の下部に円筒状の部分があるものもパチモンで発見された。

パチモンC型の足吸盤の違うサンプル

また、タコチュウには同じ顔で吸盤部分の形状のちがうものが発見されている。H型とH2型、A1型とA2型である。

顔は全く同じなのだが、本体の形状や直径が微妙に違っている。

左がH型、H2型

左がA型、A2型

バイキン軍団と違ってタコチュウは吸盤が2個あるため、足の吸盤の凹部を下から抑える必要が在り、

そのことを考慮に入れて以下のような型構成で製造するのではないかと想像される。

これに比べてバイキン軍団は吸盤が一個しかないため、上部と下部の型と吸盤の部分を抑える型が必要になる。

このように吸盤部分があるために、タコチュウもバイキン軍団も3個以上の型と吸盤部分を型から外すためのなんらかの仕組みが必要になることがわかる。

タコチュウの足の部分は下側から抑えるが、タコチュウの口の部分とバイキンの吸盤は上から押さえる形になる。

その部分には以下のような蓋状の可動部分があることが必要である。

バイキンの型を例に取ると、上図の前面型と後面型を密着し、後面型に付けられた溝(ランナー)を通して素材を充填する。

このとき吸盤整形突起を装入しておいて、素材が硬化したらこの中央の棒状の部分を押すか、引き抜いて空気を入れることによって、

吸盤部分を型からはずしたものと考えられる。

バイキンのコ吸盤タイプは、この可動部分中央の棒状のパーツを押し込んでしまったために、完全に硬化していない材料に変形が起こったものと考えられる。

吸盤整形突起は、後面型の上にさらに一枚型を重ねたか、上の図のように厚みのある後面型の孔に蓋状の部品で抑えたか、

確定することはできないが、コ吸盤やタコチュウのC型や純正後期の眠り目の例のように、吸盤に円筒形の部分が出来た例から、

このような蓋状のパーツがあった可能性が高いように思われる。

.

ハマール氏のページの「謎のシリーズ」のコーナーに以下のようなパチモンと思われるモノが紹介されている。

凸吸盤シリーズ(「その他のシリーズ」より引用)

このタイプは、オリジナルより若干小さく、後部の吸盤が突起に変更されている。

上記のように吸盤部分の成型には、可動部分を持つ型を追加せねばならず、高度な技術と余分な型の製造費が必要になる。

オリジナルより小さいことからも、オリジナルをもとに型取りしたもので、上下の2つの型で作れるように吸盤を省略したパチモン出あることが考えられる。

.

さらには、以下のように、背面の突起すらなくしてしまったシリーズも存在する。

硬質シリーズ(「その他のシリーズ」より引用)

これはオリジナルよりも二回りも小さく、更に刻印と吸盤が削除されている。湯抜き孔が追加されており、素材もオリジナルと違う硬質なものである。

これも吸盤部分を省略することによって、上下2個の型で作れるように簡素化されたものであると考えられる。

タコチュウは吸盤を取り去るとただの球になってしまうので、吸盤を省略することはできないが、

バイキン軍団は本体自体の造形に多くのバリエーションがあったため、パチモン化するに当たって工程を減らす意味もあって、

吸盤の機能を無くしたものが作られた可能性が高いものと考える。

.

バイキン軍団は1980年代の「バイキン軍団大行進シリーズ」の後、

同じ原形を用い戦車消しゴムの車体に乗せられるように吸盤を下部に移した「バイキン軍団戦車部隊大行進シリーズ」

「バイキン軍団大行進シリーズ」と「バイキン軍団戦車部隊大行進シリーズ」を流用し、射的ゲームの的にするよう台座を付けた「夏祭りシリーズ」

新造形で足を伸ばしバイクに乗せられるようにした「バイキン軍団大暴走シリーズ」

バイキンが軍人の扮装をし、磁石素材を使用し吸盤をなくした「バイキン軍団機甲部隊シリーズ」

新造形でヘッドホンやローラースケートを履き吸盤を後部に復活させた「バイキン軍団ローラー族vsヘッドホン族」等、様々な展開がなされた。

その後、1995年(平成7年)に新造形でマイクを持ったものが100円ガチャ用に再度販売された。

これが「バイキン缶シリーズ」で、カプセルに数個が入って100円ガチャに入れられた。

.

ハマール氏のホームページには「ローラー族vsヘッドホン族」に吸盤違いがあることを紹介している。

吸盤の大きさの違うローラー族vsヘッドホン族(ローラー族vsヘッドホン族から引用)

これは未確認ではあるが、平成になってから「バイキン缶シリーズ」を復刻したとき、「ローラー族vsヘッドホン族」もいくつか一緒に

復刻された可能性があると分析している。このことから、同じ原形をもとに型を作っても、その都度吸盤の部分を別に作っている可能性を示唆するものである。

.

さらに2004年に(株)ユージン等が「バイキン軍団大行進!!」という個展を開き、それを機に、

当時の原形から再度金型を新造し再版した。

復刻されたバイキン軍団

今回復刻されたのは、現存する原形から、「バイキン缶シリーズ」から17種、「バイキン軍団大暴走シリーズ」から5種、

「バイキン軍団機甲部隊シリーズ」から2種の24種が復刻された。

「バイキン軍団機甲部隊シリーズ」はオリジナルは磁石素材を使っていたため吸盤がなかったが、今回の復刻版はプラ素材で吸盤が付いている。

このことからも、原形から型を起こすときに吸盤部分は別に作って取り付けることがわかる。

.

当時のものに比べて、復刻版は材質が堅く、しかし吸盤部分の直径が小さいにもかかわらず厚さも薄く精度がよいためか、吸着力は遜色ない。

左が復刻版、右が当時モノ

復刻されたバイキンの吸盤は、「バイキン缶シリーズ」と一緒に復刻された可能性がある「ローラー族vsヘッドホン族」の

小さいほうの吸盤と大きさや形状が似ている。1980年代の後半から1990年代中盤は、ガンダムのプラモデルの流行や

ミリタリープラモの精密化の流れの中で、プラ成型の精度が飛躍的に上がった時期に相当し、

この吸盤の大きさの違いも、1990年代に復刻されるにあたって吸盤が新造された可能性を示唆する。

..

先に紹介した2004年の個展では様々な興味深い展示品が見られたという。(ワッキー氏のページに紹介されている)

ハマール氏の情報によると、この個展で、1980年当時と、1995年に作られたテストショットが展示されていたという。

その写真をもとに、型の構成を図にしたのが以下のものである。

この構成図を見ると、1980年の初期の型は、幹になる太いランナーから樹状に枝分かれした簡単な構成で、28個を同時に作れるが、

1995年の「バイキン缶シリーズ」の型はプラモデルのように複雑に枝分かれした型から一度に40個前後が作られており、

復刻時には、成型技術が目に見えて向上していた可能性を伺わせる。

1980年の型には28個が一度に作られているが、前期のものと中期のものがどちらも見られる。

前期、中期はそれぞれ14種類があるとのことなので、この型はそれを一時に作るものであると考えられる。

1995年の型は、解説板に書かれている通り、「バイキン缶シリーズ」に「ヘッドフォンシリーズ」のウンチ菌が入っていることから、

やはり復刻されたものと考えられる。

吸盤の大きさは1980年のモノに比べて小さく、復刻時に作られた吸盤はやはり小さかったと考えられる。

.

この個展では、原形も多数展示されている。これらの型は木製で一人の原型師によって作られたという。

写真は今野産業でハマール氏が撮影したもの
     (今野産業突撃レポートより引用)

この写真からも、原型を作るときは吸盤の部分は作られないことがわかった。

これは非常に重要な発見であり、同時期に同じような吸盤を持っていたタコチュウも、原型は顔だけで吸盤は後付けされた可能性が非常に高いことがわかる。

上の写真は、吸盤が切り取られた状態で発見された純正前期のモノだが、

このような形の顔だけの原型が作られ、型を作り直すたびに吸盤だけ新造されたことが一層確からしくなってきた。

純正には以下のように、同じ顔で吸盤の付け根の形状の違うものがあるが、

この相違も、同じ顔の原型からその度に吸盤を新造した複数の型が作られたために現出したものと考えられる。

吸盤の付け根が太いもの(上)と同じ太さのもの(下)

同じ純正といえども、このように複数の型が存在した可能性があることがわかってきた。

いくつの型のバリエーションがあるかは、吸盤の形状の違いが型によるのか成型時の引け等によるのか見極めねばならず、

今のところ明言できないが、折りをみて全数調査をするなどして更に詳しい分類を行おうと思う。

.

また、パチモンH3型と分類した、顔の位置が吸盤の間にあるエラー品も、

顔のみの原型の向きを間違って吸盤の位置が違ってしまったものと考えて間違いないものと思われる。

H型とH2型も顔は全く同じだが、吸盤の大きさ、厚さが違うが、これも同じ顔の原型から作られた別の型であることがわかる。

左からH型、H3型、H2型

.

ハマール氏から、実際にタコチュウを量産する場合の型の構成について、非常に確からしい案を御教示いただいた。

それをもとに、タコチュウのパーティションライン等から量産用の型の構成以下のように想定してみた。

.

当時の型の製造技術と、足と口の2個の吸盤を同時に整形しないといけないため、

中央にランナーを通し、それを中心に上下に配する。脚部の吸盤を押さえる型を別に作り、それを上下両方に置くことで足の吸盤の凹部を形成する。

前面用型には、前述した口の吸盤を作成ための可動パーツを、タコチュウの数だけ置かなくてはならない。

このように前面用・後面用・脚部吸盤形成用×2が基本的な型の構成になると考えられる。

これに、一度に作るタコチュウの数だけ口の吸盤を整形するための可動パーツが必要になり、かなり高度な技術が必要であると考えられる。

.

一度作るタコチュウの数であるが、口と足の2個の吸盤に吸着力を持たせられるように均一に作るには、

精度のよい型にかなり高圧で材料を注入する必要があるため、そんなに多くはないのではないかと思われる。

純正の顔の種類は前期・後期で5種類である。これが一度に作られるタコチュウの数ではないかと考えられる。

多くてもこの倍の10個がいい所ではないかと思われる。

某クションに、オマケ製造業者が廃業したため出品された、グリコ等のオマケの型を見ることがあるが、

一度に作られる数は、複雑な構成のものでも同じ形のもので数個。上下2型で作られるものでもあまり数は変わらない。

このことから、当時のオマケの生産は、想像以上に小規模の型で量産されていたことがわかる。

最晩期の純正は4種類、スッポリは小が12種類、大が6種類確認されている。

スッポリは、脚部の吸盤が大きいため成型には高い技術が必要とされると思われ、

特に小スッポリには口吸盤に材料が十分回らなかったための成型不良がみられる。

口部分の可動パーツは加工が面倒な可能性があるので、小スッポリも12種一括で作るのではなく、

6種類ずつ2つの型を作ることで、可動パーツを6個で済ませるなどの工夫があったことも想像される。

.

Plastic Hysterieのハンター氏のページの掲示板から、材料の注入口は中央にあった場合が多かったと考えられるという記載から、

タコチュウの型も注入口は中央部にあったのではないかと考えた。

また、合わせて口吸盤の可動パーツを一まとめにする大きな型を想定することで、3段構成になるのではないかと考えた。

こうすることによって、剥離時の作業効率が高められると思われる。

.

ほぼ同じ時期に流通した、同じような吸盤をもつ駄玩具を分析することにより、タコチュウの成型に関する疑問を明らかにすることが出来た。

今となっては貴重なバイキン軍団を、研究のため送ってくださったハマール氏に感謝するとともに、

同じ駄玩具研究の同志の協力がもたらす成果が非常に大きなことを再確認した。

このページの画像のうち、氏のページからの引用画像があることを明記しておく。

最後に詳細なバイキン軍団の分析が紹介されている、氏のホームページをあらためて紹介して擱筆したいと思う。

「バイキン軍団の部屋」

http://www.ne.jp/asahi/hamerl/syumijin/

※このページ内の写真で引用の注記のあるものは上記の「バイキン軍団の部屋」の各シリーズから引用させていただきました。

.

一切の内容の無断転載、流用を禁止する。

戻る