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夏といったらこれでしょう

ジャンボ注射器 水てっぽう

「ピコタン」は、1974年9月に発売された明治製菓のチョコレート菓子であった。

オマケの人型のプラスチック製ブロックは大流行し、多くの駄玩具業者がコピーした。

大台紙にタグ付き袋入りで20個程が50円で、主に売られていたが、

プラケース入りや、ガチャガチャに入れられたりと、様々は販売形態があったことが知られている。

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パチモンピコタン単体で売られただけでなく、駄玩具のパーツとして使われたこともある。

「メリーゴーランド」は、マルコー産業製で、組み合わせられる台座に回転する歯車を付けた

明治製菓の「クルクルランド」をもとにしたと思われ、

クルクルランドに付いていた旗の代わりに、足に突起を追加されたパチモンピコタンが入れられていた。

入っていたパチモンピコタンは顔ありC型と命名した、胴体に3本線が入ったものに突起が追加されたものであった。

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他にも、注射器のピストン部に、なぜかピコタンが封入されたものも見つかった。

取り出すにはスポイトを破壊しなければならず、飾りとして入れられたもののようである。

プラスチック製の注射器の中に、パチモン顔ありA1型と命名したパチモンが3個封入されている。

ゴム製の蓋はピストン部に接着されていて、パチモンピコタンを取り出すことは難しい。

発売当初はゴム製の蓋が外せて、ピコタンを的に使ったものかもしれないが、

当時でもかなり強引に抉じ開けないとピコタンは取りだせなかったのではないかと思われる。

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ピコタンが封入された注射器の駄玩具は他のタイプも見つかっている。

厚紙を折って6本が固定出来るようになっている。150円の値札シールが貼られている。

ピストン部の中には、3本はパチモン顔ありA2型1個、パチモン顔ありD型2個の組み合わせで、

残りの2本はパチモン顔ありD型3個が入っていた。

左から顔ありC型2個、顔ありA2型

顔ありA1型もA2型も、表面の斜線が純正とは逆になっている。

左から純正後期、顔ありA1型、A2型2個

パチモン顔ありA型も、顔ありD型も、純正のデザインを忠実に模している。

左から純正前期、純正後期、顔ありA型、顔ありD型

それに比べて、パチモン顔ありA1型は、多少でザインに変更が見られる。

例えば、ネックレスの女性は、顔ありD型ではネックレスも球状の連なりになっているが、

A1型では、線とペンダントヘッドに換えられている。

左から、純正前期、純正後期、顔ありA1型、顔ありD型

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2種類の注射器は、入っているパチモンピコタンの種類が違うだけでなく、ピストン部の部品構成も違っている。

(外筒は酷似している。)

上が顔ありC型2個、A2型が入ったもの、下が顔ありA1型の入ったもの。

A1型が入ったものは、透明な蓋が1つになっているが、

A2型とC型が入ったものは緑色のプラスチックパーツの突起に、赤いゴム製の蓋がはめられている。

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パチモンピコタンの製造メーカーについてはまだまだわかっていないことが多いが、

これらの注射器の玩具は、封入されたパチモンの種類の違い、ピストン部の部品構成の違いから、

別のメーカーの製品であると考えられる。

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・・・で。

ここからが本題である。

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パチモン顔ありA1型が入った注射器のタグ付き完品が見つかった。

商品名は「ジャンボ注射器 水てっぽう」である。

店頭のフックにかけるための穴が開いたタグに、1本ごとのスペースを圧着したビニール袋に6本入っている。

それぞれにパチモン顔ありA1型が3個入っている。色は緑、青、黄色、赤の4種類で、

2種類の顔が必ず入っている。

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タグには商品名とメーカーロゴが入っている。

なぜかキリンと注射器を持った男の子が印刷されている。青と茶と赤と黒の4色で刷られている。

右下にはメーカーロゴが入っている。

東京・高藤の文字が見られる。

「高藤・玩具」や「株式会社・高藤」等で検索したところ、メーカーホームページ等は見つからなかったが、

過去のオークションの記録では、マシンガン型の水鉄砲や、かえるの玩具と言った水遊び用に玩具に「高藤」の名前があった。

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パチモン顔ありA1型が高藤というメーカーの製品とも考えられるが、

この手の駄玩具は、他社が製造したパチモンを他のメーカーの商品を組み合わせ、

さらに別のメーカーが販売するといったような入り組んだ関係があることが考えられるため、

軽々に結論を急がない方が良いと思われる。

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顔ありパチモンA2型は、顔のデザインは純正に良く似ており、表面には向きこそ違うが、純正同様の斜線が見られる。

A2型と一緒に入っていた顔ありパチモンD型は、同じ形状の顔無しパチモンD型のタグから、

マルコー産業の影響が色濃く見られる。

しかし、マルコー産業は、先に紹介したメリーゴーランドに使われていた様に、

胴体に3本の縦線が入った、顔ありパチモンC型を作っていたことがわかっている。

一つの駄玩具メーカーが、2種類のパチモンを作ったのかどうかが、疑問であり、D型もC型も同じメーカーであるとは言いがたい。

しかし、明治合体チョコボールのパチモンの「合体基地」(合体チョコパチA型)はブリスターパックにマルコー産業のロゴが見つかっており、

そのタグのイラストは「合体基地ブロック」(合体チョコパチD型)と同じであったことから、

どちらも同じメーカーの製品である可能性が否定できず、一つのメーカーがなんらかの理由で

複数の型のパチモンを製造していた可能性が否定しきれないのである。

この辺の考察は「パチピコタン入り注射器 part.2」に詳しい。

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今回、メーカーが判明した高藤製の「ジャンボ注射器 水てっぽう」と、

マルコー産業製と思われる顔ありパチモンD型が入った注射器玩具は、外筒のパーツが同じものであるようであった。

となると、どちらかのメーカーが(あるいは第三のメーカーが)、供給した外筒に

それぞれの会社がピストン部を製造し、自社のパチモンを封入したとも、

様々なタイプの注射器水鉄砲を供給した会社の製品に、これも仕入れてきたパチモンピコタンを封入して販売したとも、

様々な可能性が考えられるのである。

ことに、今回判明した「高藤」というメーカーは水遊び用品に強いメーカーだったようなので、

製造販売したのか、販売のみだったのかが判断しにくいところである。

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これだけの資料では、もちろん結論は出せないが、

パチモンピコタンに係ったメーカー名が新たに判明したことは大変興味深い。

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ただ、なんとしても発売から40年以上経ってしまっており、

少ない資料から、考えれば考える程、様々な可能性が見えてきて、しかも、それを確定することはほぼ不可能なので、

・・・ストレス溜まるわぁ。

まあ、しょうがないんですけどねぇ。

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